2011年8月31日水曜日

エレーニン彗星が「空中分解」


何かと話題になっているエレーニン(エレニン)彗星ですが、8月19日から20日の間に明るさが半減、さらに、核の部分が長く伸び拡散していることが観測されました。これは、氷でできている核が2つに分裂したか、さらに細かく分散してしまったことを示しているとのこと:

NASAがこの彗星につけていたニックネーム〝wimpy〟( = 弱虫、意気地なし、軟弱なやつ)が、ここに来て現実になったようです。上掲記事は、この彗星が近日点通過(太陽に最も接近するとき)に耐えられない(生き延びられない)だろうと正しく予測していた彗星観測者 John Bortle 氏の言葉を紹介しています:
I guess all those pseudoscientific bloggers who predicted planet-altering encounters with a cosmic visitor bright enough to be seen in broad daylight will just have to find something else to worry about.

宇宙からの来訪者(エレーニン彗星のこと)が白昼でも見えるほど明るくなり、それとの接近遭遇によって地球に惑星規模の大変動が起きると予想していたすべての疑似科学的ブロッガー連中は、何かほかの懸念材料を見つけなければならなくなったと思う。

エレーニン彗星について、不安をあおるようなことをブログや掲示板に書き散らかしていた日本のdoomsayer や fearmonger の方々も困ったことになりましたね。(^_^)v

高名な車いすの宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング博士の言葉を借りるならば、やはり「科学は勝つ」ということです。そもそも、彗星の核の大きさとコマの大きさの区別がつかないような疑似科学の徒輩に、初めから〝勝ち目〟はなかったのですが。


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金環日食 ― 2012年5月21日


来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、来年5月21日(月曜)の朝、日本で金環日食が見られます。金環日食が見られるのは、以下・国立天文台の資料に示されている帯状の「中心食帯」と呼ばれる地域です:

上記の地図を見ると、中心食帯が南海・東南海・東海や、日向灘、東京湾北部、房総半島沖、茨城県沖の想定震源域を通っています。日食と同期して大地震が発生したという事例はないと思いますが、天体の直列(金環日食の場合は太陽-月-地球)によって地震がおきると考えている人にとっては、この上なく不吉なことかも知れません。


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ウラン採掘地で火山噴火? ― ニジェール


西アフリカ・サハラ砂漠南縁に位置するニジェール共和国地図)のウラン鉱山地帯で、火山噴火のような現象が発生したとの情報があり、同国政府とフランスのアレバ社が調査を始めています:

以下は記事のテキトー訳です:
8月25日(ロイター発) ― ニジェール政府当局とフランスのアレバ・グループは、同国北部のアルリト(Arlit、地図)ウラン鉱山地区で山が噴火し噴煙やガスが噴出した現象を調査するために専門家を現地に派遣した、と同国のメディアが伝えた。

8月25日の週の初め、2日間にわたって火山噴火に類似した活動があったと地元住民から通報があった。サンプルを採取するために派遣された専門家は、山腹に複数の亀裂が入り、岩石が400mの距離まで飛散しているのを発見した。同地区にある鉱山に負傷者や被害が出たとの報告はない。

同国のラジオ放送は、「大きな爆発音が聞こえ、初めは地震か火山噴火だと思った」という、当局に通報した目撃者(複数)の証言を伝えている。

「山から轟音が聞こえ、山が崩れるのかと思った。黒い噴煙が立ちのぼり、燃料のようなガスの臭いがした」とのこと。

地元自治体と、同地域にウラン採掘権益を保有するアレバ社から派遣された地質学者と化学者が火曜日(8月23日)に現象のあった山を訪れサンプルを採取した、と同国のラジオ放送は伝えている。

アルリト(Arlit)の北東にはアイル山地(Air mountains、地図の中心部があるが、同山地の火山活動は終わってしまっていると長らく考えられてきた。これ以上の詳細な情報は今のところ入っていない。

ちなみに、アレバ(アレヴァ)は、福島第一原子力発電所で発生した放射能汚染水の浄化装置を製造した企業のひとつとして、日本でも知名度が上がりました。


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2011年8月28日日曜日

ハリケーン・アイリーンの脇に ……


ハリケーン・アイリーンは8月27日にノース・カロライナ州に上陸し、バージニア州の沿岸部沿いを北上しています。以下は、米国東部標準時8月26日午後12時30分(日本時間27日午前1時30分)に人工衛星から撮影されたアイリーンです:

よく見ると、ハリケーンの左下、メキシコ湾上にリング状の不思議な雲が写っています。以下の高解像度のオリジナル写真で見ると、ほぼ完璧な円形をしていることがわかります:
  • Photo / All sizes (ファイル・サイズが大きいので全体が表示されるまで時間がかかります。)

どういうメカニズムでこのように完璧な形ができるのでしょうか。周辺にも似たような雲がいくつか発生しています。


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2011年8月27日土曜日

深さ 10km ちょうどの地震 (その2)


以下の事例4と事例5は、本気で書いているのかどうか。半信半疑のようでもあります。


【事例4】ミャンマーでもM6.8の地震 またまた震源の深さは10キロ これって。。

2011年3月24日にミャンマーで発生したM6.8の地震について述べています:
ミャンマーでも大きな地震だそうだ。

(中略)

やれやれ、またまた震源の深さ10キロだそうです。。

これは、完全に狙われてますね。。ミャンマーだし。。

地球の地震活動が活発になっているというより、どこかの国の活動が活発化してるような気がしてなりません。

ちなみに、パキスタンで地下核実験をやった時のマグニチュードは6.8だったそうです。

核廃絶で使わなくなった核兵器余ってるからなあ。


【事例5】種子島で地震 震源の深さはまたまた10キロ

2011年4月9日に種子島南東沖で発生した地震(M5.7、最大震度3)について述べています:
昨夜、またまた震源の深さ10キロの地震が起きたのだが、なぜか種子島です。

(中略)

これは。。種子島宇宙センター狙いの地震が始まったのですかね??

日本が開発したロケット(またの名を大陸間弾道弾とも言う)って、いつも出来る直前に配線が切られていたりするのですが、最近、珍しく、打ち上がってしまったんですよねえ。。

これ、大丈夫か??と思ってました。というのも、どこかの国に届くから、いつも切られていたはずなのに変だなあ、などと思っていたところ、この地震ですか。


続く


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深さ 10km ちょうどの地震 (その1)


地震について気象庁の発表や米国地質調査所(USGS)のリストを見ていると、震源の深さが 10km ちょうどという場合が多い …… これは不自然だ!と疑問に思う人が少なくないようです。

気象庁やUSGSのサイトにはちゃんと理由が書いてあるのですが、中にはそういった基本的な確認を怠って、こんなことは自然の地震ではありえない、だからこれは影の組織の陰謀による「人工地震」の証拠だ、某国の「地震兵器」が使われた痕跡だなどと論理を飛躍させ、さまざまな妄想を膨らませる人もいるようです。

私がネット上で収集した事例をいくつか下に紹介します。

【事例1】アラビアプレートで何かが起きている?: アデン湾で観測されている異常な群発地震

英文のブログ記事を日本語に翻訳して紹介しています。その英文の記事には、以下のような記述があります(以下の翻訳は私がおこなったものです):
A closer look reveals something that appears highly unusual. That is, so far 20 of the earthquakes have been at a depth of exactly 10.0 km.

(地震のデータを)よく見てみると、きわめて異常な点があることに気づく。すなわち、これまでにおきた地震のうちの20件が厳密に10.0kmの深さで発生しているのだ。

日本語の執筆者は次のように述べています:
その不思議さは、「大体10キロ」なのではなく、「完全に10.0キロ・ジャストの深さ」なのです。群発地震として発生することが多いです。原因はわからないですが、ずっと興味を持っていた現象です。

【事例2】アデン湾と同じことが起こり始めた日本の父島近海

2010年12月21日に小笠原諸島(Bonin Islands)の父島近海で発生したM7.4の地震の余震について、以下のように述べています:
アメリカ地質調査所 USGS より、最初の地震からの現在(12月22日午後9時)までの地震の全記録を記しておきます(スクリーンショット)。BONIN ISLANDS, JAPAN REGIONというのが、父島での地震です。すごい回数であることがおわかりになると思います。USGS ではマグニチュード 2.5以上のものだけをネット上でリスト化していますので、それ以下の群発はさらにあるはずです。

また、その「BONIN ISLANDS, JAPAN REGION」の手前の数字が「震源の深さ」です。10.0キロメートルが非常に多いことがおわかりだと思います。

【事例3】『異常現象に気付いたらお知らせください。』(http://www.progoo.com/rental/normal_bbs/bbs.php?pid=11087)という掲示板にあった投稿です:
No.117244 異変 投稿者:東京 投稿日:2010/12/06(Mon) 14:35

最近世界で発生している地震データを良く見てください、明らかに自然ではないと思われる震源の深さ?? 10kmが多いのは何故でしょう!? 昨日は2kmもあります、異常を感じます。


続く

2011年8月26日金曜日

地震戦争 ― 日本の反撃が始まった?


たまには陰謀説風に(笑)  ……

最近アメリカでおきた2つの被害地震。発生間隔は12時間(正確には12時間4分45秒)。コロラド州の地震はロッキー山脈の東側、バージニア州の地震はアパラチア山脈の東側が震央で、ほとんど同じ緯度でおきています。コロラド州の地震は北緯 37.070度、バージニア州の地震は北緯 37.936度。緯度は微妙にずれていますが、2つの震央を結ぶ測地線を延長すると、そのずれに意味があることがわかります。

コロラド州の地震の発生時刻は日本標準時で午後2時46分19秒。東北地方太平洋沖地震の発生時刻は、同じく日本標準時で午後2時46分18.1秒。1秒未満の差しかなく、人為的に合わせたかのように、かなり精確に一致しています。

震源の深さは、コロラド州の地震が4km、バージニア州の地震が6km、東北地方太平洋沖地震が24km(=4×6)。

このブログの2010年1月7日付記事「日本版 HAARP ?」で紹介したように、日本も HAARP類似の施設をもっています。ただし、本家HAARPが北極圏にあるのに対して、日本版は赤道地帯と南極大陸です。

<妄想モード on>
日本政府高官がオフレコを条件に次のように語ったと伝わっている ――

コロラドとバージニアの地震は、アメリカ政府に対する日本からの警告である。日本は、アメリカの一部勢力による非道な攻撃、すなわち阪神大震災に対しては、当時の首相の意向もあり、平和憲法の精神に則って隠忍自重し報復しなかった。しかし、あろうことか、ふたたびその勢力によって東日本大震災がおこされたのみならず、日本の産業基盤を破壊しようとする「超円高攻撃」が続くにおよんで、もはや実力で対抗するしかないと判断するに至った。これは超法規的措置である。

アメリカ政府は、同国内に巣くう影の勢力の影響を排除し根絶せよ。アメリカ政府は、地震の発生時刻や震源の深さに込められたメッセージを理解しているはずだ。日本の要求に可及的速やかに応じない場合には、第3の、より深刻な地震をおみまいすることになる。
第1と第2の地震は、人道的観点から人口密度の低い場所を選び規模を抑えた。死者は出なかったはずである。日本は、アメリカのようにいきなり人口密集地に核兵器を投下するようなことはしない。しかし、第3の地震は無慈悲な鉄槌となる。第3の標的がどこか、第1と第2の震央をもとに熟考すればわかるはずだ。アメリカ政府が事の重大性に気づき、早急に対応することを望む。大都市が破壊され、多数の人命が失われても、その責任はすべてアメリカ政府にある。そのような事態を回避できるか否かは、ひとえにアメリカ政府次第なのだ。

日本政府は、我が国領土の不法占拠を続けるロシアに対しても無言の警告を発した。18日には同国の新型の放送・通信衛星が行方不明になり、25日には国際宇宙ステーションに食料などを運ぶ無人宇宙貨物船「プログレス」が打ち上げ直後に墜落した。その結果、ロシアは、高い信頼性を誇っていたソユーズ・ロケットの打ち上げを凍結せざるをえなくなった。ロシア政府はこれらの原因がわかっているはずだ。これは、日本との間に同様の問題を抱える韓国や中国に対する警告でもある。

ロシアは、スペースシャトル退役後の有人宇宙飛行における優越的地位にあぐらをかくべきではない。日本には宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)があり、いつでも有人型に改装できる。

日本との間に利害の対立を抱える諸国は、日本に強力な地震兵器、電磁気兵器があることを忘れてはならない。攻撃があれば必ず報復する。現在の日本は手負いの猛獣である。専守防衛のお人好しではない。他国と事を構えることに、これまでのように臆病ではない。いや、むしろ戦争を望んでさえいる …… 膨大な債務を清算するために。
<妄想モード off>

お粗末でした。(^_^;)

以下は参考記事です:

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地震がきたら、うんこがいっぱいでるん?


子供の、ものごとに捕らわれない発想や、すなおな疑問にはいつも驚かされます <娘がトイレットペーパーの買い占めについて、「地震がきたら、うんこがいっぱいでるん?」と言っていた>:

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謎の発光現象 ― 上海、北京


8月20日、光を発する巨大な〝球体〟が上海と北京で同時に目撃されました:

最初に報告したのは航空機のパイロットで、〝球体〟は次第に大きくなるとともに薄れていき、最終的には月の100倍ほどに広がって見えなくなった、とのこと。見えていたのは20分間。

記事では、2日前に打ち上げられたロシアの人工衛星の破片ではないか、という上海UFO研究センターの専門家の見解を紹介しています。

このブログの7月27日付記事「謎の発光現象 ― ハワイ」で紹介した事象と非常によく似ています。このときは、アメリカが直前に試射した大陸間弾道ミサイルから放出された燃焼ガスか液体が、大気圏上層で拡散したためという説明がもっとも可能性が高いと考えられました。今回も同様の現象ではないかと思われます。ミサイルあるいはロケットを発射したのはロシアではないでしょうか。


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2011年8月25日木曜日

地震で聴力が回復


8月23日にバージニア州中部で発生したM5.8の地震で、聴力がもどった老人の話:

以下に記事をまとめます:
首都ワシントン在住のRobert Valderzakさん(75歳)は、6月19日に転んだことが原因で聴力を失った。がん患者でもあるValderzakさんは、それ以来、バージニア・メディカル・センターに入院。意思疎通には特別のスピーカー・フォーンとオーディオ・システムが必要になった。

8月23日、4人の子供たちが見舞いに来ている時に地震が発生。不思議なことがおきた。揺れが収まるとValderzakさんはベッドの上で起き上がり、「また聞こえるようになった。待合室にいる人たちの話し声まで全部聞こえる」と子供たちに話しかけた。Valderzakさんによれば、ベッドの中で揺すられている間に頭の中で何かがおこって、急に聞いたり話したりできるようになった、とのこと。

バージニア・メディカル・センターの主任であるRoss Fletcher医師によると、Valderzakさんは聴覚神経に加えて、耳の中の液体か骨(耳小骨)にも問題があった。「検査をすれば、まだ部分的に残っている聴力障害が見つかるかも知れない。オーディオグラム(聴力図)を調べる設備もある」と同医師は話している。

Valderzakさんは検査のことを意に介していない。自分に何がおきたのかはわかっているから。「私にとっては奇跡です。天上にまします神の恵みです。これ以上のことは望めません。」

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カナリア諸島で地震続発(続報)


スペイン領カナリア諸島のエル・イエロ島(エル・ヒエロ島、地図)で7月中旬から急増した地震は、その後も増減をくり返しています(8月1日以降の震央地図)。以下は、カナリア諸島火山研究所(Instituto Volcanológico de Canarias)が8月24日付で出した週報です:

スペイン語ですので若干の説明を加えます:
▼左上の地図: 地震計やGPSなどの観測機器が設置されている場所を示しています。

▼左下の棒グラフ: 7月17日から8月23日までに、エル・イエロ島内およびその周辺に設置された国営地震観測網(Red Sismica Nacional)の観測機器で観測された地震の数。

▼中央の信号機の絵: 現在の警戒レベルがグリーン(VERDE)であることを示しています。

▼右側、一番上の棒グラフ: 二酸化炭素ガスの放出量。上から順番に、過去7日間の平均、過去30日間の平均、通常の放出量{B}、観測された最大放出量。水平方向の目盛りは{B}の何倍かを示しているが、対数目盛になっていることに留意。

▼右側、上から2番目の棒グラフ: 温度(地表の温度なのか火山ガスの温度なのか不明)。上から順番に、過去7日間の平均、過去30日間の平均、通常の温度{B}、観測された最高温度。水平方向の目盛りは{B}の何倍かを示している。

▼右側、上から3番目のグラフ: 水平(東西)方向の変形。上が東。単位はメートル。左端が2011年初、右端が2012年初。

▼右側、上から4番目のグラフ: 水平(南北)方向の変形。上が北。単位はメートル。左端が2011年初、右端が2012年初。

以上のグラフから、エル・イエロ島の火山では、二酸化炭素ガスの放出量がやや増え、温度も上昇傾向にあること、また山体の膨張が2011年5月ごろから始まっていることがわかります。


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2011年8月24日水曜日

バージニア州で被害地震 ― アメリカ


現地時間8月23日午後1時51分(日本時間24日午前2時51分)、アメリカ東海岸バージニア州中部・ミネラルの南南西8kmの地点を震央(地図)とする地震がありました。地震の規模はM5.8、震源の深さは 6km。ワシントン大聖堂や国会議事堂の一部が損壊するなどの被害が出ています:

アメリカ東海岸は地震が少なく、バージニア州でマグニチュードが5を超える地震が起きたのは1897年以来とのことです

アメリカ東海岸一帯、特にニューヨーク州からノースカロライナ州にかけては揺れが大きかったため、地震に慣れていない人々が建物から飛び出したり、管制官が避難して空港が閉鎖されるなどの事態が起きました。首都ワシントンでは、「何かにつかまらないと立っていられないほどの横揺れが数十秒間続いた」との報道があるので、日本の気象庁の震度階級で少なくとも「5弱」程度の揺れがあったのではないでしょうか。アメリカならではかも知れませんが、爆発物によるテロ攻撃と勘違いした人もかなりいたようです。

震源から約20kmのところにあるノースアナ原子力発電所では、稼働中の原子炉2基が地震によって外部電源を喪失。非常用のディーゼル発電機4機を稼働させて原子炉の冷却をするものの、そのうちの1機が故障するという事態がおきています。

USGS(アメリカ地質調査所)は、今回の地震について次のように解説しています:
2011年8月23日のバージニア地震は、既知の地震帯である〝中央バージニア地震帯〟(Central Virginia Seismic Zone)の中で、北または北東の走向を持つ逆断層が滑ることによって発生しました。この地震帯は、少なくとも18世紀から小・中規模の地震をおこしてきました。この地震帯最大の歴史地震は1875年に発生しました。この地震は実用的な地震計が発明される前に発生したものですが、揺れが感じられた地域の広さからM4.8の規模であったと推定されています。この地震では、いくつかの場所で煙突の煉瓦が崩れ、漆喰の壁や窓が壊れ、家具が転倒したと記録に残っています。2003年12月9日に発生したM4.5の地震でも小規模の被害が出ています。

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コロラド州で被害地震 ― アメリカ


現地時間8月22日午後11時46分(日本時間23日午後2時46分)、コロラド州南部・トリニダードの西南西15kmの地点を震央(地図)とする地震がありました。地震の規模はM5.3、震源の深さは 4km。建物の屋根が壊れたり、壁に亀裂が入ったりする被害が出ました:

上記記事によると、コロラド州では通常、マグニチュード2から3の地震が年間15回から25回発生; 今回のM5.3は、1973年に同州北西部でおきたM5.7以来最大の規模; この地震の前には同じ震源域でM4.6とM2.9、地震の後にはM3.5とM3.8の余震が発生した、とのこと。

今回のM5.3について、USGS(米国地質調査所)のサイトには以下のように書かれています:
2011年8月23日(=協定世界時、コロラド州の地方時では22日)の地震は、正断層の動きによって発生したもので、震源は浅いところにありました。この地震の位置と深さの暫定値や断層のタイプは、2001年におきた群発地震と非常によく似ています。2001年の群発地震は、既知の断層でおきたものではありません。2001年の群発地震中最大の地震と今回の地震で、原因となったと考えられる断層の走向は、北あるいは北-北東向きですが、これは震央の西にあるリオ・グランデ地溝帯を形成した東西方向の伸張応力と整合的です。

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2011年8月23日火曜日

12日の遠州灘 M5.2 ― 東海地震と同型ではない


このブログの8月13日付記事「12日の遠州灘 M5.2 ― 東海地震と同じメカニズム 」では、8月12日未明に遠州灘で発生したM5.2の地震について、「想定東海地震と同じメカニズムで発生した可能性が高い」との気象庁の見解を紹介しました。しかし、8月22日に開かれた地震予知連絡会では、防災科学技術研究所がこの地震について「プレート境界型地震ではない」、「懸念される東海地震と同じではない」との見解を発表したとのことです:

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ヘビが原因の停電 ― 三重県


8月22日夜9時過ぎ、三重県松阪市(地図)で、ヘビが高さ5mの高圧線にのぼって感電したことによるとみられる停電が発生しました:

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2011年8月21日日曜日

カトラ山の噴火についてわかっていること


アイスランドのニュース・サイト『Iceland Review Online』が、カトラ山(地図)の噴火について過去の傾向をまとめた記事を7月31日付で掲載しています:

ヨーロッパの航空路を大混乱に陥れたエイヤフィヤトラヨークトル氷河の噴火が始まったのは昨年3月のことですが、これまでの事例では、カトラ山はエイヤフィヤトラヨークトル氷河で火山噴火がおきてから2年以内に噴火しているとのことです。

以下は、上記記事のテキトー訳です:
カトラ山の周辺でくり返される地震や洪水、そしてほかの火山の噴火を見るにつけ、多くの人たちが思いを巡らせている ―― カトラ山はいつ噴火するのだろうか、噴火したらそれはどのくらい続くのだろうか、と。

ミルダルスヨークトル(Mýrdalsjökull)氷河の下に埋もれているカトラ山は、最初の植民者(*1)がアイスランドにやってきて以降、少なくとも20回の噴火を起こしている。噴火は、短いもので2週間、長いものでは4ヶ月間続いた。一番最近の噴火とされる1918年の噴火(*2)は24日間、1823年の噴火は28日間続いたが、記録に残っている噴火としては最大である1755年の噴火はおよそ120日間継続した。

エイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull)の噴火がカトラ山の噴火に先行することもある。1821年の噴火はその例である。このような場合には、カトラ山は常にエイヤフィヤトラヨークトルの噴火から2年以内に噴火を起こしている。

最後にカトラ山が目に見える(氷河を突き破って噴煙が出てくる)噴火を起こしてから93年が経過しているが、1955年に氷河の下で小規模な噴火が発生し Múlakvísl の洪水を引き起こした可能性がある、と考える地質学者もいる。2011年7月9日、Múlakvísl で洪水が発生し橋を押し流した。これによって、カトラ山の噴火圧力が減少した可能性がある。

カトラ山は、平均して50年ごとに噴火し、現在継続中の(93年という)静穏期間より前では、最長の静穏期間は80年、最短は14年であった。

多くの人たちがカトラ山が次に噴火するのはいつかを推測している。これは今に始まったことではない。2004年、ノルディック火山センターの Freysteinn Sigmundsson は、3年以内にカトラ山が噴火する可能性があり、5年以内に噴火する可能性が非常に高い、との予測を述べている。

噴火を予測するのは非常に困難である。アイスランドの著名な地質学者である Sigurdur Thórarinsson は1975年に、「確実に言えることは、噴火が日に日に近づいているということだけである」と語っている。


(*1) アイスランドの植民については、『世界大百科事典』(平凡社)に次のような記述があります:
アイスランドの本格的な植民開拓は870年ころに始まり、930年ころに全国集会アルシングの設置をもって終了。最初期の植民者は主としてノルウェー西部の出身だったが、さらにブリテン諸島人、他の北欧人もいた。アイスランドからは10世紀後半以後グリーンランドへの植民がなされ、そこから北アメリカ大陸への移住も試みられたとされる。

(*2) この噴火以降も、噴火が氷河の下だけで完結し、噴煙などが氷河を突き破って出てくることがなかった小規模な噴火が少なくとも2回あった、という説もあります。


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2011年8月20日土曜日

火星の蟻地獄?


下記は、火星を周回中のNASAの探査機〝マーズ・リコネッサンス・オービター〟(MRO)が8月4日に撮影したすり鉢状の穴です:

すり鉢状の穴の底が抜けて天窓状になり、地下の洞窟が見えています。この天窓の直径は35m。洞窟の底に見える影から計算して、天窓から洞窟の底までは20mと推定されています。

上記のページで、右側に WALLPAPER と書かれたところの数字をクリックすると、さらに高解像度の画像を見ることができます。

月でも同じような穴がいくつか発見されていますが、成因は地球上にもある溶岩トンネル(溶岩チューブ)に向かって地面が陥没したためと推定されています。

このすり鉢状の穴は、火星の赤道近くにあるパボニス(Pavonis)火山の麓にあります(上記ページの下部にある地図参照)。この地域ではパボニス火山を含む3つの火山が等間隔で直線上に並んでいますが、これはかつて火星にもプレートの移動があったことを示していると考える研究者もいます。ホットスポットの上をプレートが移動してハワイ諸島が形成されたのと同じメカニズムが、この地域の火山の連なりにもはたらいていたというわけです。


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2011年8月18日木曜日

NASAがエレーニン彗星についてお答えします (その3)


NASA Answers Your Questions About Comet Elenin〟(NASAがエレーニン彗星についての質問にお答えします)のテキトー訳の続きです:
NASAの科学者は、この彗星のことを「ウィンピー」(wimpy = 弱虫、意気地なし、軟弱なやつ)と呼んでいますが、なぜですか?
「私たちNASAの科学者は、彗星が地球のそばを通り過ぎていくときにどのように見えるのかを話し合っています」と語るのは、NASAの地球近傍天体プログラム・オフィスのヨーマンズです。「1997年に現れたへール・ボップ彗星のように、惑星領域の外側からやってくる彗星という訪問者のなかには、内部太陽系を安全に通過していくときに夜空で明るく輝き、肉眼で容易に見えるようになるものがあります。しかし、エレーニン彗星にはそれらとは対極の傾向があります。最も明るくなるときでも、性能の良い双眼鏡と澄んだ空、そして人里離れた暗い場所という条件がそろわないと見ることができないでしょう。」

なぜ、あなたたちNASAの科学者はエレーニン彗星についてもっと語らないのですか? もし、このような天体は小さくて心配する必要がないのであれば、エレーニン彗星についての公開情報がこれまでなかったのはなぜですか?
エレーニン彗星は小さくかすかであるため、詳細に報道されることはあまりありませんでした。毎年いくつかの新彗星が発見されますが、それらについても(あまり報道されないため)あなた方が聞くことは普通はありません。インターネット上に投稿されたさまざまな真実ではない情報のせいで、エレーニン彗星は分不相応に大きな注目を集めることになってしまった、というのが真相なのです。NASAが持っているエレーニン彗星についての情報は、インターネットで容易に入手することができます。(http://www.nasa.gov/topics/solarsystem/features/comet20110504.html をご覧ください。)もしこの彗星が危険をもたらすのであれば、必ず知らされます。

NASAはエレーニン彗星をほかの彗星よりも頻繁に観測していると聞きましたが、本当ですか。NASAはこの彗星のことをもみ消そうとしているのではありませんか?
NASAは地球のそば通過する小惑星や彗星を、地上や宇宙の望遠鏡を使って定期的に検出・追跡し、その特性を調べています。通称〝スペースガード〟と呼ばれる地球近傍天体観測プログラムは、それらの天体を発見し、その一部について特性を明らかにし、さらに私たちの住む惑星にとって潜在的な危険があるかないかを決めるために軌道を予測します。詳細については、NASAとJPL(ジェット推進研究所)の地球近傍天体(Near Earth Objects)のサイト(http://www.jpl.nasa.gov/asteroidwatch/ や  http://neo.jpl.nasa.gov/)をご覧ください。

しかしながら、NASAもJPLもエレーニン彗星やほかの彗星を積極的に観測することを業務としているわけではありません。観測報告のほとんどは、世界中のアマチュア天文研究者から寄せられたものです。エレーニン彗星は非常に有名になってしまったため、当然のことですがさらに多くの観測者を引きつけています。

JPL(ジェット推進研究所)のウェブサイトにあるエレーニン彗星の軌道図を見ていて疑問に思ったのですが、軌道図を拡大するとエレーニン彗星の軌道に角があり滑らかではないのはなぜですか? ほかの彗星の図を見るとそのような角や曲がりはありません。
多くの方々が、JPLのウェブサイトにあるプログラムを使ってエレーニン彗星の軌道をプロットしようと試みていますが、そのプログラムは簡易な視覚化ツールにすぎないことに気づいていないようです。そのプログラムは最近、太陽の近くでももっと滑らかな軌道を描くように改良されたのですが、それでも精確な軌道を描くための科学的なプログラムというわけではありません。ヨーマンズは次のように説明しています ―― 地球近傍天体(Near-Earth Object)のウェブサイトにある軌道描画プログラムは、長期間の天体の真の動きを精確に描くことを目的とするものではありません。また、(彗星が太陽に近づくときなど)天体同士が接近遭遇する場合には精度が落ちてしまいます。

長期間にわたる精確な軌道図を描くためには、JPLのホライズンズ・システム(Horizons system)を代わりに使うことをヨーマンズは勧めています(http://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi?find_body=1&body_group=sb&sstr=C/2010%20X1)。

(完)


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タイタンの白い矢印


まず、以下の写真をご覧ください。土星の衛星・タイタンの大気中に現れた矢印形の白い雲です:

写真の上が北です。矢印は東を指していますが、東西に伸びる中心軸の雲の長さは1200km、北西と南西に伸びる部分の長さは1500kmです。この矢印形の雲は嵐にともなうもので、雲の下では雨が降っていると考えられています。その証拠に、雲が通り過ぎた後のタイタンの表面は色調が暗くなり、〝濡れた〟状態になっていることが後続の写真で確認されているとのこと。太陽系の中で雨が降ることが確認されている天体は、このタイタンと地球だけです。ただし、タイタンに降っているのは液体メタンかエタンの雨です。

この矢印形の雲が撮影されたのは昨年9月27日ですが、このほど、このような形状の雲がいかにして発生するのかをコンピューター・シミュレーションによって解き明かした論文が、8月14日付の『Nature Geoscience』誌に掲載されました。以下はそのことを伝える記事です:

どのようにして矢印形の雲が発生するのか、上記記事を読んでも今ひとつはっきりしません。一言でいえば、タイタンの赤道上で発生した複数の波が共鳴することによってこのような形状の雲ができる、ということらしいのですが、具体的な記述がないために得心がいきません。


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2011年8月17日水曜日

女子の流行は正しい?


以下は日経BP社が運営する働く女性のためのサイト『日経ウーマンオンライン』に掲載されている記事です。女性が仕事を変える、引っ越す、結婚する、妊娠するなどのケースが多いと思っていたら大震災が起きた、これは女性が本能的に危機を予感していたからだという主旨です:

上記記事によれば、断捨離、マラソンブーム、山ガールブーム、イケアの家具ブームなども、女性が危機の到来を予感していたがゆえの流行だったのだそうです。そして、「女子のみなさんは正しい。あとは自分の中から聞こえてくる本能の声を無視しないで、きちんと聞くだけ」と結論づけています。

お話としてはおもしろいですが、私に言わせれば、これは「こじつけ」でしかありません。都合の良い事例だけを集めれば、どんな結論でも導き出せます。執筆者は確証バイアス認知バイアスに囚われているのではないでしょうか。

記事のような粗雑な推論からデマや迷信というものは広がっていくものだと思います。本当に女性が本能によって危機の到来を察知できるのであれば、今回の震災で亡くなられた女性の数はもっと少なかったかも知れません。バイアスを排してきちんとした統計を取れば、記事のような結論は出てこないと思います。


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2011年8月16日火曜日

NASAがエレーニン彗星についてお答えします (その2)


NASA Answers Your Questions About Comet Elenin〟(NASAがエレーニン彗星についての質問にお答えします)のテキトー訳の続きです:

エレーニン彗星のせいで3日間の暗闇が訪れるという話を聞きました。エレーニン彗星は太陽の光を3日間にわたって遮るのですか?
「地球から見た場合、エレーニン彗星が太陽面を横切ることはありません」とヨーマンズ。

仮にエレーニン彗星が太陽を横切ることがあったとしても、地球が3日間も暗闇に包まれることはありえません。エレーニン彗星のサイズは3~5kmであるのに対して、太陽の直径はおおよそ139万2082kmもあるのですから、とデービッド・モリソンは指摘しています。

そのように小さな天体が太陽のように非常に大きな天体を遮ることが可能でしょうか?
(月が太陽を覆い隠す)日食について考えてみましょう。日食は太陽と地球の間に月が入ったときに起こります。月の直径は約4000kmですが、地球から約40万km ― 直径のおおよそ100倍 ― 離れているため、見かけ上の大きさは太陽と同じになります。一方、直径が3~5kmしかないエレーニン彗星の見かけ上の大きさが、太陽と同じ程度になって太陽を覆い隠すには、地球から400km以内に近づく必要があります。400kmは国際宇宙ステーションの軌道の高度と同じです。先に述べたように、エレーニン彗星は3500万kmまでしか近づかないので、この彗星によって太陽が覆い隠されることはありません。

エレーニン彗星は褐色矮星であるという説があると聞きました。褐色矮星の質量はホンダ彗星の軌道を大きく変えるに十分なのでしょうか? このことによって、エレーニン彗星の質量を決定することができますか?
この彗星について〝褐色矮星説〟は存在しないとモリソンは語っています。「彗星と褐色矮星はまったく異なるものです。」
「天文学者がある天体の質量を測定するときには、その天体が他の天体におよぼす重力の効果を用いるという点は、あなたの指摘のとおりです。しかし、彗星は小さすぎるため、他の天体へ測定可能なほどの重力的影響をおよぼさないのです。」

太陽系外縁部に黒色矮星や褐色矮星が存在したとしても、私たちは見ることができない(存在を知ることができない)のではありませんか?
「いいえ、それは正しくありません」とモリソン。「太陽系外縁部に褐色矮星が存在したとしたら、私たちはそれを見たり、赤外線エネルギーを検出したり、それが他の天体におよぼす摂動(重力的影響)を測定したりすることができます。太陽系に褐色矮星は存在しません。もし、存在しているとしたら、私たちはそれをすでに見つけているはずです。さらに付け加えるならば、黒色矮星などという天体は存在しません。」

エレーニン彗星は肉眼で見えるようになりますか? 私はへール・ボップ彗星を見逃したので、エレーニン彗星が近づいてきたときには空に何かが見えるかどうか知りたいのです?
エレーニン彗星が肉眼でも見えるようになるかどうか、(現時点でははっきりしたことは)わかりません。モリソンは次のように述べています。「これまでの経過から考えると、エレーニン彗星が最もよく見えるはずの10月初旬でも、(街の明かりや月のない)非常に暗い夜空と双眼鏡が必要になるでしょう。残念ながら、エレーニン彗星は、過去数十年間で最も明るくなったへール・ボップ彗星の代わりにはなりえません。」

ヨーマンズは次のように語っています。「エレーニン彗星がすばらしい天体ショーを提供することはないでしょう。この彗星が地球に害をもたらすことがないのと同様に確かです」、「しかし、驚異の念を抱かせる点もあるのです」、「この勇敢で小さな旅人は、太陽系の惑星領域のはるか彼方からやってきて、比較的若い彗星を研究する機会を天文学者たちに提供することでしょう。短い滞在ののち、この旅人はふたたび太陽系の外側に向かって去って行き、私たち人類が再び彼のことを見聞きするのは数千年先のことになります。」

(続く)

NASAがエレーニン彗星についてお答えします (その1)


エレーニン彗星について、当ブログの8月8日付の記事「エレーニン彗星についての Q&A (その1)」・「(その2) 」・「(その3)」では、オーストラリアの専門家によるQ&Aを紹介しましたが、今回はNASAが公開しているQ&Aの総集編を紹介します:

以下は、上記ウェブ・ページのテキトー訳です:
彗星は、映画やテレビではしばしば悲観的な未来の予兆として描かれます。しかし、ほとんどの彗星は地球の脅威となるものではありません。私たちのいる内部太陽系を訪れる彗星としては最新のものであるエレーニン彗星も例外ではありません。この彗星は、2011年10月16日に地球に最も近づきますが、そのときの地球までの距離は約3500万kmです。

天文学上の名前〝C/2010 X1〟としても知られているこの彗星は、ロシアのリュベルツイ(地図)在住の観測者レオニード・エレーニンによって2010年12月10日に発見されました。彼は、ニュー・メキシコ州にある天文台を遠隔使用することによってこの彗星を発見したのです。発見当時、エレーニン彗星は地球から約6億4700万km離れていました。それ以降、ほかのすべての彗星と同様に、エレーニン彗星は近日点(彗星の軌道上で太陽に最も近い点)に向かって移動を続け、それにともなって地球との距離も縮んできました。

NASAの科学者たちは過去数ヶ月間、皆さんから寄せられる質問に答えるために時間を割いてきました。以下に集めたのは、最も多かった質問のいくつかと、それに対する回答です。回答者は、NASAのジェット推進研究所(カリフォルニア州パサディナ)にあるNASA地球近傍天体プログラム・オフィスのドン・ヨーマンズ(Don Yeomans、写真)と、NASAエイムズ研究センター(カリフォルニア州モフェット・フィールド)にあるNASA宇宙生物学研究所のデービッド・モリソンです。

エレーニン彗星について最も多く寄せられた質問

エレーニン彗星が地球に最も近づくのはいつですか? 最も明るく見えるのはいつですか?
エレーニン彗星は2011年10月16日に地球に最も近づきますが、その少し前に最も明るくなるはずです。地球最接近時の距離は3500万kmです。

エレーニン彗星は地球に近づいたり、地球と月の間に入って来たりするのですか?
エレーニン彗星が3500万kmよりも地球に近づくことはありません。この3500万kmkという距離は、地球と月の距離の90倍を超えています。

この彗星が、現在の位置や将来の位置から私たちに影響をおよぼすことがありえますか? この天体が、海水や、さらには地球上のテクトニック・プレートの移動を起こすことがありますか?
エレーニン彗星と他の天体の整列によって地球上に何かがおきるとか、外部の力によってエレーニン彗星がさらに地球に近づくなどといった事実に反する憶測がインターネット上に見受けられます。
「エレーニン彗星と他の天体のいかなる近似的な整列も意味はまったくありません。また、エレーニン彗星がその軌道を変化させるような暗い天体と遭遇することもありませんし、地球上に住んでいる私たちにいかなる面でも影響を与えることはありません。」(ジェット推進研究所のドン・ヨーマンズ)

「エレーニン彗星は地球から遠いだけではなく、彗星としては小さな部類に入ります」、「そして、彗星は高密度な天体ではなく、ゆるく充填された氷玉と同じ程度の密度を持つものがほとんどです。」(ヨーマンズ)

「3500万km彼方かそれよりも遠いところに、ささやかなサイズで泥だらけの氷の球体があると想像してください」、「それが地球におよぼす影響は測定不可能なほど小さいものです」、「比較計算すると、私のサブコンパクト・サイズの乗用車の方がエレーニン彗星よりも大きな影響を海の潮汐に与えていることになります。」(ヨーマンズ)

(続く)

2011年8月15日月曜日

Falcon HTV-2 再び失敗


マッハ20を超える極超音速で飛行し、地球上のいかなる目標にも60分以内で到達できることを目標とする Falcon HTV-2(Falcon Hypersonic Technology Vehicle-2)の2回目の発射が8月11日におこなわれました。結果は1回目と同じく、飛行中に通信が途絶し太平洋に落下/墜落したとのことです:

上記『NewScientist』誌の記事では2回続いた失敗の原因について、「(極超音速飛行によって発生する)高熱だけが原因ではなく、機体の周囲に発生したイオン化した高温プラズマが深刻な電気的干渉を(機体内部の装置に)起こしているのではないか」と示唆しています。

Falcon HTV-2の飛行の様子を示すアニメーションが以下にあります。後端部に設けられた噴射装置で姿勢を制御しています。これは、極超音速飛行では通常の飛行機にあるような補助翼、昇降舵、方向舵が使えないか、使えたとしても極超音速やそれによって発生する高温(摂氏2000度前後)に耐えられるものを設計するのが困難だからと思われます:

動画中に現れるHTV-2の飛行経路図は以下にあります:

今回の結果について、Falcon HTV-2の研究開発をおこなっているDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency 国防総省国防高等研究事業局)は以下のような文書を発表しています:

タイトルからして遠回しな言い方で、本文でも「失敗」とは言っていません。2回連続の失敗をなんとかポジティブに表現しようと涙ぐましい努力をしたようです(笑)。『TIME』誌のブログは、試験飛行の失敗とこの発表の「失敗」を重ねて皮肉っています:

アメリカの財政状況からすると、今後、Falcon HTV-2の研究開発プロジェクトが打ち切られる可能性もあるのではないでしょうか。


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深海底に亀裂や段差 ― 3・11の震源域


「東北地方太平洋沖地震」震源海域の日本海溝陸側斜面の様子が、有人潜水調査船「しんかい6500」によって撮影され公開されました:

地震の震源域ですから亀裂や段差があるのは当然ですが、海底下からの湧水現象に伴うバクテリアマット(エネルギー源は湧水に含まれるメタンや硫化水素)や、以前は見られなかったウシナマコ類が高密度に生息している様子は意外でした。


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2011年8月13日土曜日

NASAがエレーニン彗星を撮影


太陽の活動を立体的に観測するための双子の探査機〝STEREO〟()。そのうちの1機を使って撮影したエレーニン彗星の画像が8月11日に公開されました。何の変哲もない普通の彗星です:

撮影されたのは8月6日。探査機から彗星までの距離は約700万km。写真につけられた解説によると ―― 現在、エレーニン彗星は探査機の観測対象である太陽とは違う方向にあるため、撮影のたびに探査機の向きを変える必要がある; 8月1日から12日まではこのような方法で、毎日1時間ほどの時間をかけて彗星を撮影するが、8月15日以降はエレーニン彗星が探査機の通常の観測範囲に入ってくるため、連続的な観測が可能になる ―― とのことです。


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12日の遠州灘 M5.2 ― 東海地震と同じメカニズム


以下の記事、心配な情報です:

12日午前04時37分頃に遠州灘で発生した最大震度2の地震は、気象庁によると「想定東海地震と同じメカニズムで発生した可能性が高い」、「直ちに東海地震に結びつくものではないが、しばらく注視する」とのこと。

原発事故に関連して耳にたこができるほど聞いた「直ちに……ではない」というフレーズが、ここでも登場です。その言葉の裏で進行していたことを考えると、あまり安心はできません。

静岡大学の教授は、「圧縮軸の方向もプレートの沈み込み方向と同じで、嫌な地震であることは確か。(中略)まだ慌てずに冷静に推移を見守る段階だ」とコメントしています。


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2011年8月12日金曜日

アセンション島で地震連続


大西洋中央部にあるイギリス領の孤島・アセンション島(地図)の近海で、日本時間の8月11日、地震が連続して発生しました:

アセンション島は大西洋中央海嶺沿いにある火山島です。

米国地質調査所(USGS)のリストによれば、地震の規模はM5.7、M4.8、M5.2。震源の深さは9.4km、10km、10kmです。震央の位置は 3つともほとんど同じで、大西洋中央海嶺のトランスフォーム断層です。今回の地震は、大西洋プレートの拡大にともなって海嶺周辺に蓄積したひずみが、トランスフォーム断層のずれによって解消される際に発生したものと考えられます。

アセンション島は知名度が低いと思いますので、『世界大百科事典』の記述を以下に引用します:
アセンション[島] Ascension  アフリカ大陸西方の南大西洋上にあるイギリス領の孤島。面積88km²、人口1007(1988)。火山島のため、小規模な野菜・果樹栽培がみられるにすぎないが、ウミガメ、海鳥の大繁殖地であり、ウサギや野生ヤギも生息する。1501年ポルトガル人が発見、1815年イギリス領となり、1922年にセント・ヘレナ植民地に編入された。船舶の飲料水補給地、海底電信の中継基地として利用されてきたが、最近ではアメリカのミサイル・人工衛星追跡基地が設置されている。中心集落はジョージタウン。

大西洋では、アセンション島の遙か北にあるカナリア諸島で群発地震が続いています。また、大西洋中央海嶺を北にたどったところにあるアイスランドでは、カトラ山の胎動が続いています。それらについては、当ブログの以下の記事を参照してください:

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今度は「お盆に大地震」説


もういい加減にしてほしいものです。「8月11日大地震説」が空振りに終わったとたんに、今度は「お盆に大地震説」。大地震の根拠は、HAARP波形に「8月5日夜から6日の朝にかけて、やはり大きな乱れがあった」からとのこと:

「お盆明けの16日までは要注意」のように日付を特定しての地震予知は、似非科学、トンデモの類いです。仮にその期間に大地震が起きたとしても、それはたまたまそうなっただけと考えるべきです。

上記記事中に登場する浜田和幸参院議員(震災復興担当の総務政務官)については、以下の記事を参照してください:

ジェシー・ベンチュラ元ミネソタ州知事については、元プロレスラーといった方がご存じの方が多いと思います:

元プロレスラーといえば、アントニオ猪木氏もかつて「永久電気」用発電機の開発に関わり、記者会見の席上でおこなった実験が大失敗に終わったことがあります。もしかすると、元プロレスラーの人というのは洋の東西を問わず、似非科学に引っかかりやすいのかも知れません。

ところで、上記の「お盆に大地震…」の記事を掲載した『税金と保険の情報サイト』。先日は「8月11日、また大地震がやってくる?」という記事を載せていました(当ブログの「8月11日大地震説」参照)。8月11日が何事もなく過ぎ去りそうになったタイミング(記事の記載を信じるならば8月11日16:00)で、次の大地震への不安をあおるような記事を載せるというのは、なんだか意図的なものを感じてしまいます。

当ブログの8月8日付「エレーニン彗星についての Q&A (その3)」で山本弘氏のブログ記事「エレーニン彗星衝突説が爆笑ものだった件」を紹介しましたが、その中でエレーニン彗星についての「デマを広めているところ」として名指しされた『防災グッズマガジン』。その記事と今回の『税金と保険の情報サイト』の記事の見た目を比べると、ウェブ・ページのデザインがよく似ていることに気づきます。たとえば、新着記事や広告バナーの配置、記事本文のセクション・ヘッダーのデザイン(ヘッダーの左と下に線を入れている)、「外部リンク」ヘッダーのデザイン、などを比較すると、そのことがわかると思います。

両サイトに記載されている運営会社の商号は、一方は「防災グッズマガジン」、他方は「株式会社リファイド」で異なっています。たまたま同じテンプレートを使っただけかも知れませんが、実際にコンテンツの更新をしている人あるいは会社が共通なのかも知れません。それにしても、この種の記事の掲載が続くと勘ぐりたくもなります ―― 大災害への不安をあおった方が防災グッズや保険の商売上好都合だから、トンデモ説でも何でもかまわずに利用しているのではないかと。


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2011年8月11日木曜日

低緯度地域にもオーロラ出現


最近の激しい太陽面爆発によって送り出された太陽風が地球に到達したため、ふだんオーロラを見ることができない低緯度地域(たとえばアメリカではネブラスカ州、ユタ州、コロラド州など)でもオーロラが目撃・撮影されています。また、ふだんからオーロラが見える地域では、いっそう見事なオーロラが出現しています:

オーロラが見えたと伝えられるアメリカのコロラド州は、北緯 37° から 41° に位置しています(地図)。日本では東北地方に相当する緯度です。したがって、日本でも東北地方や北海道で、北の地平線が赤く輝くなどの現象が現れているのではないでしょうか。


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クリーブランド山の噴火


アリューシャン列島の無人島にあるクリーブランド山(写真地図地図)は、7月19日以来、人工衛星からの観測で温度異常が伝えられるなど活発化の兆候を示していました。アラスカ火山観測所(AVO)も警戒レベルを〝オレンジ〟に上げていましたが、このほど、人工衛星から送られた画像によって噴火していることが確認されました:

噴火といっても激しい爆発や大量の溶岩の流出をともなうものではなく、雲仙普賢岳のように山頂の火口内に溶岩ドームを形成するタイプのようです。

クリーブランド山がそびえるChuginadak島は無人で、リアルタイムの観測機器は設置されていないため、AVOも人工衛星からの画像や民間航空機のパイロットからの通報などに頼らざるをえないようです。

以下は8月8日に航空機から撮影された火口の様子です。直径200mの火口内に直径60mほどの溶岩ドームが形成されています:

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秋田駒ケ岳で地表温度上昇


以下は、8月4日付で「日テレNEWS24」に掲載された秋田放送のニュースです(テレビ局のニュースは、一般にウェブ上の掲載期間が短く、現時点ではすでに削除されています):

記事をまとめると以下のようになります:
  • 仙台管区気象台による秋田駒ヶ岳(地図)の調査が、8月3日から3日間の日程でおこなわれた。
  • 噴火の兆候はない。
  • 東日本大震災のあと、秋田駒ヶ岳の山頂北側付近を震源とする微小な地震が若干増えている。
  • 女岳の山頂付近で、地表温度が昨年10月より2度前後上昇している。
  • 女岳の北東側斜面で、植物が枯れる範囲が広がっている。
  • 仙北市では、秋田駒ヶ岳の噴火に備えて防災計画の見直しを進めている。

以下も参考になります:

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2011年8月10日水曜日

8月11日大地震説


以下の記事によると、8月11日に大地震が起きる、という話が流布されているようです:

〝doomsdayer〟とか〝fearmonger〟(scaremonger)という人たちが関わっているのでしょう。言葉のニュアンスとしては、前者は自分もその話を信じてしまっている人、後者は自分は信じていないにもかかわらず、人が不安を感じるような話を流しておもしろがるか、何らかの利益を得ようとする人です。

上記の記事によれば、「過去の地震をマグニチュードの大きさで並べてみると、ワースト10の中で11日に発生したのは東日本大震災だけである。また被害の規模で並べると、ワースト10に11日は全く入ってこない」とのこと。つまり、8月11日大地震説には根拠がないということです。仮に8月11日に大地震が起きたとしても、それは11日だから起きたのではなく、たまたま11日だっただけのことです。


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2011年8月9日火曜日

井戸の水質悪化 ― 京都市伏見区


京都市伏見区にある御香宮神社(地図)の井戸水「御香水」は、国の「名水百選」にも選ばれていますが、水質検査で飲用基準に満たないとの結果がでたために、7月26日から飲用禁止になっています:

年に1回の検査が6月末におこなわれ、その時点で複数の検査項目が例年より悪化。7月半ばの再検査で飲用基準を満たせないレベルであったため、飲用禁止の措置が執られたとのことです。宮司は、「自然環境が変わったのかもしれないが、原因は分からない」と語っています。

 京都市伏見区は、三方-花折断層帯の南端部にあたり、有馬-高槻断層帯の延長線上に位置しています(断層地図)。


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クジラが川をさかのぼる ― 佐賀県伊万里市


8月4日、佐賀県伊万里市(地図)を流れる伊万里川で、2頭のクジラが目撃されました。目撃されたのは、河口から600mほどさかのぼった地点。2頭は体長3mほどで、コマッコウクジラと推定されています:

2頭は、水上バイクに誘導されて数時間後に伊万里湾にもどったとのことです。コマッコウクジラが「川で見つかることは珍しく、餌を追って迷い込んだか、体調不良で方向感覚を失ったか、などが考えられる」と記事は伝えています。


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3月11日の大津波で多数の氷山が誕生


3月11日の東北地方太平洋沖地震で発生した大津波が、震源域から13600kmも離れた南極大陸のサルズバーガー氷棚に到達し、多数の氷山を誕生させていたことが明らかになりました:

上記記事の冒頭の写真は、中央部の白い縦線をマウスで左右にドラッグすることで、津波到達前と後の画像を比較することができます。

津波は18時間かかって13600km離れたサルズバーガー湾に到達。到達時の波高は約30cmと推定されています。氷山が多数浮遊している海域では津波が減衰しますが、同湾にはほとんど氷山がなかったため、津波の力が直接氷棚におよんだと考えられています。

2004年のスマトラ島沖大地震でも津波が南極大陸に達したのですが、そのときは多数の氷山が浮遊していて津波のエネルギーを吸収したため、今回のような氷棚の分離は起きなかったのだそうです。

記録によると、過去46年間、サルズバーガー氷棚はほとんど動いていなかったとのこと。

津波によって氷棚から分離した氷塊の総面積は、アメリカ・ニューヨークのマンハッタン島の2倍。その氷塊が分裂してできた氷山のうち、最大のものはマンハッタン島と同じ面積があるとのことです。

1868年9月、チリ海軍が太平洋南部で季節外れの大きな氷山が漂っているのを発見しました。この氷山は、発見の1ヵ月前に発生した大地震と津波によって南極大陸の氷棚から分離した可能性があると推測されていたのですが、今回の事例によって、その可能性が最も高いことが確認されました。


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2011年8月8日月曜日

ヘビが原因の停電 ― 山梨県


久しぶりにヘビが原因とみられる停電の報道がありました。8月3日、山梨県昭和町、中央市、甲府市で停電と断水が発生。原因は中央市(地図)にある鉄塔でおきたショート。近くで感電したとみられるヘビの死骸が見つかりました:

ヘビが鉄塔を登ったか、鳥に捕まって運ばれる際に引っかかった可能性があると記事には書かれています。前者であれば地震前兆かも知れません。


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テンガイハタ、シャチブリ捕獲 ― 島根県、石川県


久しぶりに深海魚のニュースです。7月中旬、島根県出雲市大社町(地図)の沖で深海魚のテンガイハタが釣り上げられました。体長は140cm。「沖合の水深数百メートルに生息」とのことですが、釣り上げた水深は約120m。「釣り上げた例は聞いたことがない」のだそうです:

7月上旬には、石川県珠洲市(地図)の漁港に深海魚のシャチブリが水揚げされています。シャチブリが水揚げされたという報告は石川県内では初めてのことだそうです:

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エレーニン彗星についての Q&A (その3)


『ユニバース・トゥデイ』(Universe Today)誌所載FAQからの抜粋・テキトー訳の続きです:
エレーニン彗星のことが報道されないのはなぜですか?: 2010年中に発見されたほかの16個の彗星や、2011年になってから発見された5個の彗星が報道されなかったのと同じ理由です。報道で取り上げられるのは、見た目が見事で肉眼で容易に見ることができる彗星か、探査機が訪れる彗星だけです。〝2009 P1〟と名付けられた彗星は、エレーニン彗星より明るくはならないにしても、同じ程度には明るくなる彗星ですが、やはりニュースになることはありません。アマチュアや本職の天文学者たちはエレーニン彗星やほかの天体を熱心に観測し続けていますが、報道各社は私たちのそうした活動に関心を示そうとはしません。

どうしてNASAのウェブ・サイトにはエレーニン彗星の情報がないのですか?: なぜなら、NASAは天文に関わるすべてのことがらの判定者ではないからです。あなたは、〝C/2009 P1〟や〝C/2011 C1〟という彗星や、2010年と2011年に発見された暗い彗星の情報も見つけることはできないでしょう。探査機が訪れたことのある彗星や、ほかの面で関心のある彗星の情報をNASAが保有していることは確かですが、それはCometographyAerithのサイトが保有しているほど網羅的なものではありません。

(『Univers Today』の編集者の注記: NASAとジェット推進研究所(JPL)の〝Near Earth Object Office〟は、2011年5月にエレーニン彗星についての記事を公開し、同彗星が安全に地球の近くを通り過ぎていくことを確認しています。)

2010年8月、私は太陽のそばにエレーニン彗星を見ました / 今日現在もエレーニン彗星を見ることができます: 2010年8月の時点では、非常に強力な望遠鏡を使わなければエレーニン彗星を見ることは不可能でした。あなたは金星を見たのです。もし、今もあなたが朝の太陽のそばに明るい天体が見えるのだとしたら、それも金星なのです。

エレーニン彗星の画像はどこにありますか?: ここここにあります。また、NGC 3376という名前の星雲の近くに見えている〝C/2010 X1〟(エレーニン彗星)のすばらしい画像がここにあります。

日本でも、エレーニン彗星についてのトンデモ説を批判的に扱っているブログがあります。その中で私がおすすめしたいのは以下です。エレーニン彗星にまつわるデタラメ情報を笑い飛ばしています:

上記ブログ記事の最後の一節に、私はまったく同感です:
でもなあ、「エレーニン彗星」で検索すると、ずいぶん信じちゃってる人、多いんだよなあ。

天文に興味のない一般人は、そもそも彗星というのがどんな天体なのかすら知らないから、こんなデタラメな話を本気にしちゃうのだろうか。あるいは「NASA」とか「ホワイトハウス」とかいう固有名詞が出てくるだけで信憑性があると思っちゃうのか。

何にしても、もうちょっと頭を使ってほしいもんである。


(完)


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エレーニン彗星についての Q&A (その2)


『ユニバース・トゥデイ』(Universe Today)誌所載FAQからの抜粋・テキトー訳の続きです:

エレーニン彗星は地震や異常な高潮、その他の災害を引き起こしますか?: いいえ。エレーニン彗星は直径3~5kmほどしかなく、地球に最も近づくときでもその潮汐力は月の10億分の1以下でしかありません。同様に、磁場の影響も無視できる程度です。月が、地球の地軸を傾けたり、高潮による大規模な洪水や地震を起こせないのですから、エレーニン彗星にもできるわけがありません。もっと地球に近づいた彗星がこれまでにもありましたが、悪影響はまったくありませんでした。

でも、Mensur Omerbashich氏の論文はエレーニン彗星が地震を引き起こすと指摘していますが?: その論文は、エレーニン彗星が地震を引き起こすことを論証できていません。彗星と地球の位置関係によって、ふだんよりも地震が増えることはありません。

でも、エレーニン彗星は木星よりも大きいそうじゃないですか!: いいえ。それはコマについての話です。コマとは、彗星の核を取り巻いている薄くかすんだガスや塵のことです。エレーニン彗星の核は直径がおおよそ3~5kmですが、コマの方はこの記事を書いている時点で約5万km(木星の直径の3分の1)に広がっています。コマの密度は、だいたい月の大気の密度と同じ程度です。太陽に近づく彗星のすべてにコマがあります。たとえば、〝81P〟ワイルド彗星(核の直径 4km)には5万kmに広がったコマがありました。また、〝103P〟ハートレー彗星の場合はコマが15万kmに広がっていました。1811年の大彗星は核の直径が約30kmで、コマは太陽(140万km)と同じぐらいの大きさでした。ハートレー彗星は核の直径が6×15kmありますが、最後に地球に近づいたときのコマは10万kmにまで広がっていました。私たちはそれらの彗星の接近によって滅亡することはありませんでしたし(〝103P〟ハートレー彗星はエレーニンが近づくとされている距離の半分まで地球に近づきました)、今度のエレーニン彗星の接近も何事もなくやりすごすことになるでしょう。

しかし、WikiSkyに掲載されているエレーニン彗星の写真は巨大ですよ!: それは(エレーニン彗星ではなくて)しし座CW星(CW Leonis)という炭素星です。

エレーニン彗星は褐色矮星の衛星ではないのですか?: いいえ、違います。
でも、褐色矮星は非常に温度が低いので、観測できないのではありませんか?(だからエレーニン彗星が褐色矮星の衛星であることがわからないのではないですか?): いいえ、そんなことはありません。これまでに見つかっている褐色矮星のうちで、もっとも温度が低いものは絶対温度でおおよそ370度(ホットコーヒーの温度程度)、もっとも温度が高いのは2200度前後で、ほとんどの褐色矮星の温度は500度から1000度の範囲です(絶対温度≒摂氏温度 + 273)。褐色矮星は低温であるため、自分から可視光線をだすことはあまりありませんが、光を反射します。木星は褐色矮星と同じような組成を持っています。木星の雲の最上部は絶対温度で128度と低温ですが、ちゃんと光を反射しています。褐色矮星が太陽系の内部に入ってきたとしたら、目が痛くなるほどはっきりと見えることでしょう。

地球が彗星の尾の中を通過したら、私たちに悪い影響があるでしょうか?: エレーニン彗星の尾はかなり小さいものですが、仮に地球がその中を通り過ぎても影響はありません。尾の密度は真空に近く、1立方cmに原子が100個程度の希薄さです。人類は、もっと巨大で密度の高い彗星の尾の中を通り過ぎたことがあります(1910年のハレー彗星や1861年の大彗星)が、いかなる影響も受けませんでした。

(続く)


エレーニン彗星についての Q&A (その1)


エレーニン彗星(Comet Elenin、エレニン彗星)という、特に変わったところがあるわけではない普通の彗星について、地球に衝突するとか、その重力や磁力によって地球に大地震や大津波を起こすなどといったデタラメな情報がネット上を飛び交っています。一方、天文関係のニュースサイトやブログには、そのような誤った情報を打ち消す解説記事が掲載されています。しかし、エレーニン彗星についてのデマ情報に不安を感じるような人たちは、もともと天文関係の知識に疎く、そのようなニュースサイトやブログの記事に目を通すことは少ないようです。

『ユニバース・トゥデイ』(Universe Today)誌のサイトは、天文関係のブロッガーとして有名なイアン・マスグレーブ(Ian Musgrave)氏のブログ記事・〝Comet Elenin: the FAQ for the worried.〟(エレーニン彗星: 心配している人たちのためのよくある質問と答え )を転載・紹介しています:

マスグレーブ氏は南オーストラリア州アデレード在住の天文研究者です。同氏のエレーニン彗星についてのブログ記事(複数)は、苦情の申し立てがあったため、ブログ運営会社によって一時的に削除される憂き目を見たのだそうです。その後、苦情には根拠がないことがわかって記事は復活したのですが、マスグレーブ氏はこの苦情申し立てはエレーニン彗星についてのトンデモ説を流布しようとしている人物(doomsdayers, 2012ers, and end-of-the-world scaremongers)による嫌がらせだと考えています。同氏のブログ以外にも、エレーニン彗星に関するデマ情報を打ち消そうとするブログが、同じような嫌がらせを受けているとのことです。

以下は上記FAQからの抜粋、テキトー訳です:
エレーニン彗星は地球に衝突するのですか?: いいえ。エレーニン彗星が地球に最も近づくのは2011年10月16日ですが、そのときの地球との距離は0.23天文単位(AU)です。1天文単位は地球から太陽までの(平均)距離です。0.23天文単位をもう少し噛みくだいて説明すると、これは金星が地球にもっとも近づくときの距離より少し近いだけで、地球から月までの距離の約100倍に相当します。0.23天文単位という接近距離は、最新のMPEC天体位置表に記載されているもので、エレーニン彗星を継続的に追跡観測している複数の天文台の100を超える観測にもとづいていますので、今後大きく変更されることはないでしょう。

エレーニン彗星が地球に衝突する場合、NASAや政府がその事実をもみ消すのではありませんか?: どこの国の政府がもみ消すのでしょうか。オーストラリア政府ですか、イギリス政府ですか。イタリア政府ですか。南アフリカ共和国政府でしょうか。世界中のアマチュア天文観測者たちがこの彗星の動きを観測し、ひっきりなしに情報を交換しています。彼らは、彗星の移動を予測するコンピューター・プログラムも使っています。もし、この彗星が(予想を超えて)私たちに近づいてくるようなことがあれば、最初に気づくのはアマチュア天文観測者たちのコミュニティです。そして、彼らを黙らせておくことは不可能です。小惑星アポフィスについての情報がどれだけ広まったかを考えてください。アポフィスは、かなりきわどい現実的な危険要因でした。(注記: 2004年に、アポフィスが2029年に地球と衝突するかもしれないと騒がれましたが、その後、少なくとも2029年の接近では衝突しないことが判明しています。)


(続く)

2011年8月7日日曜日

海底のUFO? ― バルト海


バルト海の海底に円盤状の物体が沈んでいるのを、スウェーデンの海底調査チームがソナーで発見し話題となっています。円盤状の物体の直径は約60mで、その周りには円盤が滑走したような海底の乱れもあり、墜落したUFOではないかとの憶測もでています:

さまざまな説が出ています ―― 墜落した地球外の宇宙船である、第2次世界大戦中の戦艦の回転式砲塔(rotating gun turret)である、古代の建物の遺跡である、などなど。ほとんどの報道が指摘しているのは、映画『スター・ウォーズ』に登場する〝ミレニアム・ファルコン号〟によく似ているという点です。

私は、カブトガニの甲羅を連想しました。また、以前話題になった「ハイチのUFO」にも少し似ているようです。ただし、「ハイチのUFO」映像はコンピューター・グラフィックスによる合成であることが、すでに明らかになっています。

以下は、UFO(地球外の宇宙船)説を批判している記事です:

直径から考えて戦艦の回転式砲塔とは考えにくく、古代の建造物の遺跡というのがもっとも可能性が高いのではないでしょうか。

ちなみに、海底で見つかった正体不明の物体や構造物を〝USO〟(Unidentified Sunken Object)と呼ぶようです。日本語では「うそ」になってしまいます。


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