2010年2月23日火曜日

リュウグウノツカイとオタマジャクシ

『スポーツニッポン』と『朝日新聞』が相次いで、リュウグウノツカイの連続漂着の謎を取り上げています:

『朝日新聞』の記事では、今冬の漂着数について「石川県や富山県を中心に少なくとも8府県で19匹。確認していないものの、見たという報告を含めると40匹近く」としています。『スポーツニッポン』の記事には、「京都府宮津市では年末年始の2カ月間で定置網に10匹が掛かったほか、岩手、兵庫、島根、山口、長崎の各県でも見つかった」と書かれています。このうち、京都府宮津市や岩手の事例はこのブログでは把握していませんでした。

なぜ今冬に限って多数が漂着するのか、『朝日新聞』では 3人の専門家の意見を記載しています:
  1. 「(リュウグウノツカイは)遊泳力の弱い魚なので、荒れた冬の日本海で海水がかき回されたせいだろうか」 (ただし、この季節に日本海が荒れるのは今年に限ったことではないとの反論あり。)
  2. 「(リュウグウノツカイは)元々暖流域にすむ魚。日本海では最近、今まで取れなかった南の魚が水揚げされるなどの報告が多い。海水温の上昇と関係があるのかも」
  3. 「そもそも、(リュウグウノツカイが)どこで産卵し、どう成長するのかも分からない。なぜ、これほど見つかるのか理由を特定するのは難しい」

一方、『スポーツニッポン』の記事には、NPO 法人大気イオン地震予測研究会の弘原海清理事長(環境地震学)の見解を載せています:
(弘原海氏は)「一般的に海底近くの深海魚は、海面付近の魚より活断層の動きに敏感」と話す。

だが、ほかに地震の前兆とみられる現象は報告されておらず、リュウグウノツカイも広範囲で見つかっているため、弘原海さんは「今のところ地震に直結するとは言えない」と懐疑的だ。

(ちなみに、弘原海氏とその NPO 法人は、昨年 7月から発信し続けていた「首都圏近郊の大規模地震」に関する警告を 10月に撤回、その理由付けとして HAARP を持ち出したことですっかり信用をなくしてしまったことは記憶に新しいところです。かつて、同じように首都圏周辺での大地震を予報して失敗した八ヶ岳南麓天文台の串田氏のように、経験則の蓄積不足などを率直に認めて、今後の研鑽を誓うような内容であったなら、ずっと良かったのですが残念です。)

私は、ひょっとしたら、リュウグウノツカイの実際の漂着数は例年と特に変わっていないのではないか、とも考えています。報道されることによって、連鎖反応的に報告が増えているだけではないのかと。これまでは、リュウグウノツカイが網にかかったり岸に打ち上げられたりしていても、地元の人たちは大して気にも留めず、報道されることも無かったが、報道されることによってリュウグウノツカイ漂着にニュース・バリューがあるということがわかり、報道機関や水族館に連絡する人が増えた、という側面もあるのではないでしょうか。たとえば、1月 28日に石川県羽咋市の千里浜海岸で 1度に 2匹のリュウグウノツカイが見つかった事例は、漂着が相次いでいるとの報道を見て、リュウグウノツカイを探しに現地を訪れていた NPO 法人のメンバーが見つけたものです(下記記事参照):

このことに関連して思い出すのは、昨年の夏、いろいろ報道された「空からオタマジャクシが降る」現象です。これも、地面にオタマジャクシなどの死骸が散乱しているという、以前は見過ごされていた現象が報道されることによって注目され、それが報道機関への通報を増やすという正のフィードバックがかかった結果とも考えられます。偶然でしょうが、このオタマジャクシ現象が最初に報道され、件数も多かったのは石川県でしたが、今冬のリュウグウノツカイ・ラッシュの中心も石川県です。オタマジャクシ現象については、このブログの以下の記事を参照してください:

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