2011年3月6日日曜日

隕石中に地球外生物の化石!?


1864年にフランスに落下したオルゲイユ隕石の中に地球外生物の化石を発見したと、NASA・マーシャル宇宙飛行センターの宇宙生物学者リチャード・B・フーバー博士が発表しました:

オルゲイユ隕石は炭素質コンドライトと呼ばれる希少なタイプの隕石です:

以下は、発表された論文に掲載されている顕微鏡写真からの抜粋です。フィラメント状あるいはリボン状の構造が見られます:

これまでにも、隕石の中に地球外生物の痕跡を発見したという発表は何度も行われています。フーバー博士自身も 2007年に今回とは別の論文を発表しています。しかし、これまででもっとも大きな反響を呼んだのは 1996年に NASA が発表したアランヒルズ隕石 ALH84001 についてのものでした。NASA が周到に検証した上で発表したにもかかわらず多くの反論・批判が寄せられ、ALH84001 の内部に見つかった「微化石」や化学的な痕跡が地球外生物のものなのか否かは、現在でも結論が出ていません。

ALH84001 のときに出された反論や批判は 2つのポイントに集約できます。一つ目は、「微化石」のように見える構造や化学的な痕跡は、隕石が地球に落下した後に隕石内部に浸入した地球上の物質や生物によって「汚染」された結果ではないか、という疑問。二つ目は、それらの構造や化学的な痕跡が生命活動以外でも生じうるのではないか、という疑問です。

一つ目の疑問については、フーバー博士は次のように答えています ――
エネルギー分散 X線分光分析(EDS)によると、フィラメント状の「微化石」の鞘(さや)は炭素に富んでおり、その内部は硫酸マグネシウムなどの炭素質コンドライトに特徴的な鉱物で充填されている。フィラメントのサイズ、構造、微細な形態的な特徴は既知の鉱物と合致しない。

地球上の鉱物や生体物質 (たとえば、マグネシウム硫酸塩の針状結晶、フィラメント状のシアノバクテリア、ミイラやマンモスの毛髪や組織、シアノバクテリア・三葉虫・琥珀に閉じこめられた昆虫のなどの化石) に対して EDS を行うと、数千年経過した生体物質でも窒素の残存が検出可能であるのに対して、太古の化石では窒素が検出できない。今回見つかったフィラメント状の「微化石」の窒素含有率はほとんどの場合で検出限界以下であった。

つまり、今回発見された「微化石」は隕石が落下(1864年)した後に形成されたものではなく、太古から隕石内部に存在していたというわけです。

二つ目の疑問については、論文所載の顕微鏡写真に示されている複雑な構造を見る限りでは、それが生命活動以外で形成されるとは考えにくいのではないでしょうか。

いずれにせよ、アランヒルズ隕石のときと同じように科学者たちの間で激しい論争が起きることでしょう。今後の展開に注目していきたいと思っています。


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