2004年 1月に火星に着陸して以来、設計寿命の 90日を大幅に超えて現在も活躍している 2機の探査車・スピリットとオポチュニティですが、火星表面の厳しい環境に長期間さらされて満身創痍の痛々しい状態となっています。数年前から、スピリットは右の前輪が回転しなくなり、その固定した車輪を引きずりながら後ろ向きに進むようになっています。一方のオポチュニティは、観測機器を搭載したロボティック・アームの動きに制約がでています。また、両機とも岩石の表面を研磨するための RAT と呼ばれる金属製の回転ブラシが摩耗して、満足に研磨ができない状態になっています。
これまで、両機は困難に遭遇するたびに、地球から回避手段の指令を受けたり、改良したコントロール・プログラムをダウンロードするなどして克服してきたのですが、ここに来てスピリットが最大の危機に直面しています。スピリットは、地球時間の 5月始め以来、トロイと名付けられた微細な粒子の砂地に車輪が埋まってしまい、動けなくなっています。さらに、砂地の中に埋もれていた岩の頂上部分がスピリットの腹(車体の下面)に接触していることが、事態をいっそう悪くしています。
以下は、スピリットがトロイに足を取られる直前の写真です。写真の左下に写っているのはスピリットの 6つある車輪のうち左の前輪、右側に写っているのは回転しなくなり固定したまま引きずられている右の前輪です。スピリットは、右前輪の問題を克服するために、後ろ向きに走行しています。左前輪が細かい粒子の砂を巻き上げはじめていることと、右の前輪が引きずられた跡が長くのびていることがわかります:
地球上ではスピリットが陥った状況を再現して、脱出方法を検討しています。スピリットは左に傾斜した砂地「トロイ」で、車輪が半分以上埋まってしまい、動けなくなっています。以下は、再現テストを写した写真です。スピリットの置かれている状況がよくわかります:
これまで数々の困難を克服して多大な成果を上げてきたスピリットですが、今度ばかりはギブ・アップかも知れません。