2009年8月29日土曜日

モーニング・グローリー

オーストラリア北部・カーペンタリア湾に出現した「モーニング・グローリー」と呼ばれる雲の写真です。全長 1000 km に達するとのことです:
カーペンタリア湾では毎年春(北半球では秋)になるとこの雲が出現するそうです。この雲を目当てに航空機からのクラウド・サーフィンを楽しもうという観光客も毎年訪れるそうです。「モーニング・グローリー」はこのカーペンタリア湾に現れる雲をさす固有名詞のようで、ほかの地域に現れた場合は、roll cloud(円筒状の雲) とか tubular cloud(管状の雲)と呼ばれるようです。

以下は、モーニング・グローリーを撮影した動画です。2分05秒目以降には、なぜこの雲が発生するのかを示したアニメーションがあります。カーペンタリア湾の東にある大きなヨーク岬半島(オーストラリア大陸に生えた角)の上空で二つの気流がぶつかり、水平な回転軸をもつ長大な筒状の大気の渦が発生することによってこの雲が現れると説明しています:
以下は、モーニング・グローリーの写真集です:
以下は、モーニング・グローリーの衛星写真です:
同じ種類の雲は、きわめてまれですが日本にも現れます。2007年 6月 18日にオホーツク海上空に現れた「しま模様を作る太いひも状の雲」が、パトロール中の海上保安庁の航空機によって撮影されています。6月 19日付の毎日新聞に掲載された説明は以下のとおりです(記事に掲載された写真を保存していますが、著作権の制約でここに載せることができません):
札幌管区気象台によると、比較的低い高度で空を覆うように発生する「層積雲」に気流が流れ込むと、このような形の雲になることがある。ひも状の部分は雲がロール状に渦巻いており「層積雲は一般的だが、ロールがはっきりと確認できる写真は珍しい」という。
このような珍しい形状の雲が出現すると、日本では「地震雲」にされてしまいます。以下はその例です:
★ 2007年06月19日火曜日、12時半更新

(前略) オホーツク海で超巨大な畝状雲が発生したようだ。筆者らがこれまで観察してきた規模のものとはケタが違う。気象庁が成因を分析しているらしいが、地震雲さえ理解できない蒙昧な彼らに理解できるはずがない。
 これは電磁波によって発生する地震雲である。例えば、鉄粉を撒いた紙の下に磁石のNとSを近づけると、この雲とそっくりの畝模様ができる。つまり、地殻内部で巨大な電荷が分離し、磁界が発生し、巨大な磁界鉄粉模様が生まれたと思えばよい。これほどの規模だと、おそらくスマトラクラスのスーパー震源で、筆者が昨年から繰り返し指摘しているように、千島第三巨大地震の震源が浮上したことによると考えている。
 おそらく推定M9.5以上の歴史上最大級の震源ではなかろうか。これほどの規模だと、これから猛烈な宏観現象が繰り返し出現するので、目を離せない。先月から始まった過去に例をみない電磁波異常伝播は、この震源と断定してよいと思う。やっとでできたな! というところだ。(後略)

(引用:「東海アマ地震予知情報」 http://web.archive.org/web/20070630065653/http://www1.odn.ne.jp/cam22440/yoti01.htm
結局、該当するような巨大地震は発生しませんでした。この種の「地震予知」サイトでは、「予知」が的中した場合には大々的に成果を強調するのですが、該当する地震が発生しなかった場合に、その反省や検証をおこなっているところはまれです。これでは、何十年「研究」を続けても、進歩はありません。

上の文章は、この種の「地震予知」サイトにしばしば見られる断定癖・誇張癖を典型的に示しています。また、自己の経験がきわめて限られているにも関わらず、その限られた経験にない現象はすなわち異常であるとして、地震の前兆と思いこんでしまうという短絡思考の見本でもあります。もっと広く世界を見渡す必要があると思います。

地震の前兆として放出されると考えられている電磁波と雲の相互作用については、上記引用のように小学校の授業でおこなう程度の磁石と砂鉄・鉄粉による実験をイメージする人が多いようです。しかし、その実験とのアナロジーで説明できるほど、雲の成因は単純ではありません。また、電磁波と電気・磁気は別物で、その及ぼす作用も異なっていますが、「地震予知」サイトでは混同している記述をしばしば見かけます。上の引用もその一例と言えます。

上の文章を掲載したサイトを典型とする多くの「地震予知」サイトと、それらの支持者(多くは科学知識や科学的手法に疎い)の存在が、宏観異常による地震予知がいつまでたっても色眼鏡で見られ、際物・色物としてあつかわれる原因となっているのではないでしょうか。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

携帯電話が 1位!?

「大地震の際に持ち出したい物を一つだけ選ぶ質問で、27% が携帯電話と答えた。(中略) 2位は財布(24%)、3位は通帳・印鑑(9%)だった」そうです。住んでいる環境や季節などの条件によって携行品の優先順位は違うのでしょうが、携帯電話が最も必要になるような状況というのは少ないと思います。私だったら現金、水、食料、冬場だったら防寒着、人を助けるためのバールや医薬品などから選ぶと思います:
「電気や水道の復旧はわりと早かった。でもガスがなかなか元には戻らず」という状況を想定して、カセットコンロとボンベ 1本で風呂が沸かせるかを実験しています:

2009年8月27日木曜日

グーグル・アースにネス湖の怪獣が写っている?

ネス湖の怪獣(ネッシー)のようなものが、グーグル・アースの航空写真に写っているとして話題になっています:
下記 グーグル・マップでも怪獣(?)の姿を見ることができます。中央部に白く見えています。左上のスケールを操作して、倍率を適宜調節してください:
私には、ボートとその航跡のように見えますが、どうでしょうか。その左側に写っている白い不規則な形のものの方が私は気になります。

地震情報と政見放送

8月 25日に、緊急地震速報が誤って流された件で、NHK は同じ時間帯に放映されていた衆議院議員選挙の政見放送を再放送することにしたとのことです:
緊急地震速報の場合は、気象庁から情報が届くと、放送中の番組内容の如何を問わず自動的に画面に日本地図が表示され、音声による警告も流されるので、このような事態になったのだろうと思います。

一方、通常の地震情報の場合は、人間の判断が介在し、政見放送の間は地震情報を流さないようにしているようです。それに気づいたのは、8月 21日(金)に、千葉県北西部を震源とするマグニチュード 4.1、最大震度 3 の地震があったときです。

地震が発生したのは 午前 8時 51分ごろ。揺れを感じたため NHK の画面に地震情報のテロップが流れるのを待っていましたが、なかなか情報が現れません。しびれをきらしてフジテレビに切り替えると、地震の数分後には地震情報のテロップがすでに流れていました。

NHK では、8時 35分から〈衆議院小選挙区政見放送「群馬」〉、9時 5分から〈衆議院小選挙区政見放送「千葉」〉が放送されており、地震の情報を NHK が伝えたのは、それらの番組が終了した 9時 26分になってからで、揺れを感じてから実に 30分以上が経過していました。

どの程度の地震なら、政見放送よりも優先されるのでしょうか。揺れを感じた場合、早急に被害の有無や交通機関への影響などを知りたい場合もあるのですが、そのようなときはインターネットや他局など別の手段で調べてくれということなのでしょうか。

2009年8月26日水曜日

イスラエルが人工地震実験

イスラエルが 8月 26日に、地下で大規模な爆発を起こすことによって人工地震を発生させる実験をおこなうとの報道がなされています:
記事を書いた記者自身がよくわかっていないせいか、実験の目的が今ひとつはっきりしません。上記 2つの記事をまとめると以下のようになります:
ネゲブ砂漠南部にある軍事基地の地下で 80トンの火薬を爆発させ、人工地震を起こす。

爆発によって発生した地震波や大気中を伝播する音波を観測し、観測方法の改善を目指す。観測には、キプロス、ギリシャ、フランス、ドイツも参加。

イスラエルは、2004年に 35トン、2005年に 20トンの火薬を使った同様の実験を行っている。

実験の主体はイスラエル地球物理学研究所(GII)。米国のハワイ大学が共同研究プロジェクトとして参加。実施費用は米国国防省が負担。

イスラエルの Infrastructure ministry(社会基盤省?)は、爆発はマグニチュード 3 の地震に相当するが、この規模の地震は 1週間に 1回は起こっており、実験場所に近い住民以外は何も感じないだろうと発表している。

実験のデータは、音波や地震の研究者に提供される。
実験の目的について、上記の記事(1)には次のように書かれています:
The experiment intends to improve scientists’ understanding of sound waves in the atmosphere. Scientists will then be able to fine-tune Israel’s seismological equipment to give advance warning of earthquakes.
記事(2)には次のように書かれています:
It aims at studying the sonic waves in the air (以下略)
どちらの記事も、地下爆発実験の目的が、大気中を伝播する音波についての理解を深めるためとしており、(1)ではそれにもとづいて、地震に先行して警報を出す地震観測機器を微調整するためだ、と書いています。音波を観測することによって日本の緊急地震速報のようなものを実現しようとしているのでしょうか。

なお、イスラエル当局は 80トンの火薬の爆発は、マグニチュード 3 の地震に相当すると発表しているようですが、これは(意図的な?)過小評価かも知れません。下記の資料によれば、TNT火薬 15トンの爆発がマグニチュード 4、同 475トンの爆発がマグニチュード 5 に相当するとのことですから、80トンの火薬はマグニチュード 4.x の地震規模に相当することになります。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

韓国の人工衛星 行方不明

昨日 25日に打ち上げられた韓国の人工衛星は、当初、ロケットからの分離に成功し、軌道に乗ったとされていましたが、その後、予定の軌道への投入に失敗していたことが明らかになりました。予定よりも 36km 高い位置でロケットから分離された衛星は、現在、位置がわからなくなっており、地上から指令を送ったり、衛星からの電波を受信したりできない状態が続いています。

【追記: その後の報道で、衛星はフェアリングの分離に失敗し落下、大気圏内で消滅した可能性が高まっています。
追記終わり】

下記の記事によれば、〈北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のレーダーと望遠鏡を使ってでも探さなくてはならない〉状態であるようです:
失敗の原因について、さまざまな説が出されています。下記の記事では、〈発射 215秒後に衛星のフェアリングが分離されるべきだったが、2つのうちの一方しか外れなかったということだ。政府の発表とは異なる関係者の証言だ〉、〈発射体が発射初期に揺れながら上がったのも政府側は意図したものだと述べたが、実際には大きな事故につながりうる危険な状況だった〉、〈望遠鏡を利用して「羅老」を観測したあるロケット愛好家は「羅老が肉眼で見えなくなった直後、大きな物体が落ちるのを目撃した」〉などさまざまな情報を記載しています:
失敗の責任追及も始まっています。1段目のロケットを開発したロシア企業は、自分たちの担当した部分は正常に動作したと表明しています:
韓国のメディアは、自国の技術によほど自信が持てなかったためか、以前から打ち上げ失敗に備えて予防線を張るかのような記事をしきりに掲載していました。これまで自力で衛星打ち上げに成功した 9ヵ国は、いずれも衛星打ち上げの初期段階では失敗を繰り返していたという内容です。よく引き合いに出されたのはアメリカと日本でした。今回の失敗を受けて、案の定と言うべきか、同様の記事が増えています:
北朝鮮は、4月に同国がおこなった「人工衛星」打ち上げに対して、「安保理決議違反」と非難する国連安保理議長声明が採択されたこと踏まえて、8月 10日に「南朝鮮(韓国)の衛星打ち上げも国連安全保障理事会に上程されるか注目している」とコメントしています。つまり、韓国の人工衛星打ち上げも安全保障理事会は非難すべきだということなのでしょう:
日本の河村官房長官は、先週 19日に、北朝鮮の「人工衛星」打ち上げとの違いを強調して、〈韓国のロケットは沖縄の上空を通過するが、日本政府は韓国政府から詳細な説明を受けており、また、韓国のロケットには有害な物質も搭載されていないので懸念していない〉という主旨の発言をしています:
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Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年8月25日火曜日

韓国が衛星の打ち上げに成功

本日午後 5時、韓国が初の国産ロケット打ち上げに成功、人工衛星の分離にも成功したようです。
たびたび延期を繰り返し、先週 8月 19日には打ち上げ 7分56秒前に異常が見つかって発射中止のやむなきに到っていました。日本の領土・領海の上を通過していったようです。失敗してわが国に落下するおそれもあったのですが、自衛隊はなんの対応もとらなかったようです。

過去の関連記事
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

カムチャツカ半島で 6火山が同時に活発化


カムチャツカ半島で、6つの火山がほぼ同時に蒸気やガスを噴き出すなどの活発化の兆候を示し始めたと、ロシアの『ボストーク・メディア』が伝えています:
6つの火山とは:
  1. Koryaksky
  2. Shiveluch
  3. Bezimyanny
  4. Gorely
  5. Karymsky
  6. Klyuchevskaya Sopka
です。上記の地図で Gorely山を除く 5火山の位置が確認できます。記事によると、6つの火山がほぼ同時に活発化の兆候を見せたのは、この地域で 60年前に近代的な火山観測が始まって以降初めての、まれなことだそうです。

6つの火山のうち、Shiveluch山では噴火口から溶岩があふれそうな状態になっており、また、Gorely山では山頂の火口湖の水温が上昇しており、間もなく 22年ぶりの噴火を起こす可能性があると見られています。

Image Courtesy The Smithsonian Institution; Image source: SI / USGS Weekly Volcanic Activity Report http://www.volcano.si.edu/reports/usgs/index.cfm?content=maps

2009年8月10日月曜日

東海道南方沖の地震

昨夜 8時直前に起きた東海道南方沖の地震について、東京大学地震研究所のアウトリーチ推進室が簡潔な解説をしています:
この地震は「想定東海地震とは関係ありません」とのことです(そうは言われても、やっぱり不安だという人は多いと思います)。また、広い範囲で揺れを感じることになった異常震域の説明や、今回の地震の震源が東海地域の震源分布の中のどの辺で発生したのかを示す断面図も掲載されています。

この断面図と USGS(米国地質調査所)が提供している下記の発震機構解をつき合わせると、今回の地震は、沈み込んでいくフィリピン海プレートのスラブ内にできたほぼ南北方向に走る断層が、ほとんど鉛直の断層面に沿ってスパッと切れるように動いたことによって起きたのではないかと思われます。

2009年8月9日日曜日

昇る 3つの太陽

以下はポーランドのグダニスクで 7月 10日に撮影された日の出の写真です。水平線から 3つの太陽が昇ってきています:
カメラの光学系に生じたフレアかゴーストのようにも見えるのですが、撮影者は肉眼でも太陽が 3つ見えたと証言しています。3つの太陽が見えた原因については、以下のサイトで議論がおこなわれています。大気の状態によって太陽からの光線が変化したためという説と、二重ガラスの入った窓越しに撮影したためという説が有力です。私は、撮影者が二重ガラス越しに目撃・撮影したという説に説得力があると思っています。なぜなら、3つの太陽像とも、雲のかかりかたが同じだからです:
複数の太陽が見える現象としては、見え方はまったく違いますが、幻日があります。以下はその写真です:
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

ヘビが原因の停電 福岡県

8月 6日(木)夜、福岡県北東部の築上町(ちくじょうまち)で、ヘビが電柱に登り感電死したことによる停電が発生しています:
過去の類似事例は以下のとおりです:

2009年8月8日土曜日

立秋を誤解していませんか

昨日 8月7日午後 6時 1分、黄道上を春分点から太陽の位置まで測った経度(黄経)が 135°となり、立秋となりました。テレビでは、アナウンサーや気象予報士が相も変わらず「立秋を過ぎたのに暑い」とか、「暦の上ではもう秋なのに暑さがおさまらない」という意味の発言を繰り返しています。このような発言が出るのは、立秋という言葉の意味を誤解しているためと思われます。立秋という言葉に「秋」の字が含まれているため、そうした誤解が生じるのでしょう。

立秋の時期は暑くて当然なのです。暑さが頂点に達し、一年のうちで一番暑い時期だからこそ、立秋という名前がつけられたのです。立秋という言葉は「秋気立つ」から来ています。この時期から秋の気配が少しずつ現れ始めるという意味です。つまり、これまでは暑さが日に日に増していたが、この立秋の時点から少しずつ秋の気が入り始め、これ以上は暑さが増さないよ、ということなのです。気温のグラフでいえば、これまでは右上がりだったものが、立秋の時点で水平になり、それ以降は右下がりになるというイメージです。温度のグラフがピークに達するのが立秋なのです。

以下に、『天体観測ハンドブック』(鈴木敬信、誠文堂新光社、1965)の「二十四節気の言葉の意味」から、一部を引用します:
立春は「春の気立つ」の意味です。(中略)

ところで冬は寒いものですが、その冬の寒さもいつかは頂上に達するときがありましょう。寒さが頂上になったのですから、翌日からは暖かさがじわりじわりとしのびこんできて、寒さがやわらぐことになります。この寒さの頂上の日が立春なのです。「陰の気きわまって陽の気きざす」陽の気つまり春の気がしのびこみ始める日、それが立春、というわけです。

よく「立春だというのにこの寒さ、春はまだまだだ」などという言葉を聞くことがありますが、これは立春の意味をとりちがえている人のいうことです。立春だから最高の寒さなのです。まちがえぬようご注意ください。

なお、立夏・立秋・立冬も同じような考えかたから生まれた言葉です。つまり立夏は春たけなわのころ、立秋は夏たけなわのころ、立冬は秋たけなわのころ、のことであって、まちがっても「立秋だのに、ちっとも涼しくない」などといわないようにしてください。

(中略)

夏至(げし)は、夏になったとの意味、小暑・大暑は文字通りで、すこし暑くなった、たいへん暑くなったとの意味で、この暑さは立秋になって頂上に達します。

8月も下旬になりますと暑さがやわらぎ、朝夕はしのぎやすくなります。処暑(しょしょ)はこれを意味します。処とはおちつくこと、暑さが処分された、と考えてよろしいでしょう。

2009年8月7日金曜日

カリフォルニア湾の地震とペットの異常

現地時間 8月 3日(月)午後 6時ごろ(日本時間 8月 4日(火)午前 3時ごろ)に、メキシコ北西部のカリフォルニア湾(*)で M5.8、M6.9、M5.0、M6.2の地震が相次いで発生しました。規模は大きかったものの、震度はあまり大きくなく、また、震央周辺が人口密度の低い地域であったこともあって、大きな被害は出ていないようです。しかし、揺れは遠方まで伝わったようで、米国のカリフォルニア州やアリゾナ州でも揺れたことが報道されています。

4つの地震とも、太平洋プレートと北米プレートの境界が水平にずれて起きたものです。このことは、USGS(米国地質調査所)の発表している発震機構解にもよく現れています。その一例が以下にあります。円グラフがちょうど 25% ずつに 4分割されたような震源球が描かれていますが、これが横ずれ断層の特徴です:
地震が発生した場所は、東太平洋海膨(東太平洋海嶺)の北端部がカリフォルニア湾に入り込み、トランスフォーム断層化したところです。この断層をさらに北にたどると、カリフォルニア湾の最奥部で陸上に上がり、有名なサンアンドレアス断層につながります。

以下の記事では、アリゾナ州フェニックス在住の女性が、上記一連の地震の数日前から始まったペットの異常を紹介しています:
以下は、記事からの抜粋です:
「私の飼っている犬は土曜日からふだんとは様子がまったく違っていた。家族はみんな、どこか悪いところがあるのではないかと心配して、獣医に診てもらおうとしていた。ところが(地震が起こったあとの)今日はまったく普通の状態にもどっている。」

「私の飼っている犬たちは土曜日から喧嘩ばかりしていた。こんなことはめったにないのだが。月曜日の午後には最大の喧嘩騒ぎが起こり、犬たちを別々に隔離しなければならなかった。」

このような現象の記録にはさまざまなバリエーションがある。しかし、動物には、何か悪いことが起きようとしていることを感じとる能力があることを、ほとんどの研究者が認めている。2003年 9月には、犬が激しく吠えたりかみついたりするなどの異常な行動が、地震の予測に使えるという日本の医師の研究が新聞紙面を飾った。

大昔の記録でも、このような動物たちの異常なふるまいを確認できる。紀元前 373年には、ネズミ、ヘビ、イタチがギリシャの Helice という都市から逃げだし、その数日後にその都市は大地震によって壊滅した、という記録が残っている。激しい反応を示す魚、巣を放棄するミツバチ、卵を産まなくなるニワトリなども動物たちの奇妙なふるまいとして記録されている。

私たちも、自分の飼っているペットが、そのようなふだんとは異なる行動をとるのを見ることがある。たとえば、理由もなく吠えたり悲しげにクンクンと鳴いたり、緊張感を示したり、物に囲まれた狭い場所に引きこもったり、等々。

生物学者のルパート・シェルドレイクは、著書「Dogs that Know When Their Owners Are Coming Home」(犬は飼い主が家に帰ってくる時を知っている)と「The Sense of Being Stared At」(何かに見つめられているという感覚)の中で、1994年のカリフォルニア州で発生したノースリッジ地震や 1999年のギリシャとトルコで発生した地震など、大地震の前の動物の反応について彼自身の研究成果を書き記している。彼によると、「夜中に犬がわけもなく吠えたり、かごの中の鳥が落ち着きをなくしたり、不安げなネコがどこかに隠れてしまったり、といったふだんとは違った行動がすべてのケースで地震の前に見られた」とのことである。
ルパート・シェルドレイクという天才?・奇才? については、以下をお読みください:
以下は日本人の著者がシェルドレイクの仮説について解説した本です。現在は文庫版になっているようですが、私はハードカバーが出版されたときにすぐ買い求めました:
(*)掲示板やブログには、カリフォルニア湾が米国の一部であるかのように書いているものがあります。しかし、これは誤解です。カリフォルニア州は米国の一部ですが、カリフォルニア湾やカリフォルニア半島はすべてメキシコの領海・領土です。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

2009年8月6日木曜日

火星にモノリス !?

火星を周回中のアメリカの探査機 Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)に搭載されている超高解像度カメラ(HiRISE: High Resolution Imaging Science Experiment)は、多数の非常に鮮明な映像を地球に送り続けています。その映像の中に、スタンリー・キューブリックの名作映画「2001年宇宙の旅」に登場する「モノリス」を思わせる長方形の物体が、火星表面に長い影を落としているように見える写真があり、話題になっています:
HiRISE を運用しているアリゾナ大学の HiRISE Operations Center が公開しているオリジナルの写真は以下にあります。この写真は非常に広い範囲を写したものですが、上に紹介した『The Sun』紙所載の写真と照らし合わせると、「モノリス」は写真中央部やや左上にあるらしいことがわかります:
おりしも、アポロ 11号で月に到達した元宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏が 、TV 番組のインタビューで、「人類は火星の衛星を目指すべきだ、なぜなら火星の衛星フォボスにはモノリスがあるからだ」という趣旨の発言をしており、話題に事欠きません。オルドリン氏のインタビューは上記記事に動画があります。また、フォボス上の「モノリス」の写真は、上に掲げた「Buzz Aldrin stokes the mystery of the monolith on Mars」という記事の中にあります。

専門家は、「モノリス」は自然にこのような形状になったありふれた岩塊にすぎず、大きさは 5m 程度、人工的な物体というニュアンスのある「モノリス」という言葉を使うのは賢明ではないと語っています。

今回わき起こった「火星のモノリス」騒ぎは当分尾を引きそうです。この種の話題というのは、専門家がどのように理を尽くして説明し、証拠を示して否定しても、背景知識に乏しい一般大衆には受け入れられないようです。そのことは、ようやく下火になった感のある「火星の顔」の一件がよく示していると思います。

2009年8月5日水曜日

韓国の人工衛星打ち上げ また延期か?

これまで何度も延期を繰り返してきた韓国の人工衛星打ち上げ(当初の予定は 2006年 10月)ですが、来週 8月 11日に設定されていた打ち上げ予定が、またまた延期される可能性が出てきました:
韓国はこれまでも人工衛星を打ち上げていますが、ロシアなどが開発・製造したロケットを使い、打ち上げも海外でおこなってきました。しかし、今回打ち上げに使われるロケット KSLV-1 は、1段目が韓国とロシアの共同開発、2段目が韓国の独自開発です。部分的とはいえ国産のロケットを使うのは初めて、また、韓国領土内から打ち上げるのも初めてのことです。

韓国の教育・科学・技術省が昨日発表したところによると、先週木曜日に実施した試験で、ロシア側が開発を担当している部分にさらに検討を要する技術的問題が見つかったため、延期の公算が高くなったとのことです。

韓国は、台風などの影響を避けるため、打ち上げ可能期間を 8月 11日から 18日までとしており、見つかった技術的問題が期間内の打ち上げに間に合うように解決できなければ、台風シーズン後まで打ち上げが大幅に延期される可能性があります。

打ち上げがおこなわれた場合、北朝鮮はどのように反応するでしょうか。自国の「人工衛星」打ち上げが弾道ミサイルの試験であるとして国際的に非難された経緯から、韓国や国際社会に対して何らかの非難声明を出すかも知れません。

今回の打ち上げについて韓国内の報道を見ていると、ほとんどのメディアが 「アメリカも日本も、最初の打ち上げには失敗している」 という点を繰り返し強調している点が目につきます。打ち上げに対する自信のなさの現れであると同時に、不幸にして打ち上げに失敗した場合、自尊心のきわめて強い韓国民が受けるショックを予想してあらかじめ予防線を張っているように感じます。

過去の関連記事

木星の黒斑、金星の白斑

木星と金星の表面に、通常は見られない斑点が同じ日に発見され、話題になっています。どちらも発見されたのは 7月 19日。木星の南極近くに黒斑を発見したのはオーストラリアのアマチュア天文家、金星の南半球に白斑を発見したのはアメリカのアマチュア天文家です。

木星の黒斑は何らかの天体が衝突した痕跡ということで専門家の意見は一致しています。以前、シューメーカー・レビー第 9彗星が、木星の潮汐力によってバラバラに引き裂かれながら木星の大気圏に突入したことがありますが、そのときも同じような黒い斑点が大気上層に残されました(このときは、7月 16日から 7月 22日にかけて分裂した彗星核が相次いで木星の大気に突入しましたが、今回の黒斑の発見日 7月 19日と重なっています)。今回の黒斑については、衝突の瞬間が観測されていないので何が衝突したのかははっきりしていません。黒斑の分光分析の結果、水の分子が大量に検出されれば彗星、そうでなければ小惑星か隕石が衝突した(分厚い木星の大気圏に突入した)ということになると思います:
一方、金星の白斑については専門家も首をひねっています。この白斑は、紫外線の波長で明るく輝いており、現在も拡大しつつあるとのことです:
この白斑の成因については、以下のような可能性が考えられています:
  1. 隕石や小惑星の衝突 ― 斑点は紫外線領域で明るく輝いているので、岩石を主体とした天体が衝突した可能性は低い。そのような天体が大気圏に突入した場合、岩石質の粉塵によって紫外線は吸収されてしまう。水や氷に富む天体の場合はその限りではない。
  2. 火山噴火 ― 可能性は低い。金星の厚く濃密な大気層によって火山の噴煙は容易に遮られてしまう。
  3. 太陽からの荷電粒子と金星大気の相互作用
  4. 大気の流れによって明るい物質粒子が一定の領域に集められた

2009年8月4日火曜日

「透明マント」で地震波をやり過ごす

建物を地震波に対して「透明」にすることによって地震の被害をなくす方法を、イギリスとフランスの研究者が発明したとのことです:
記事をまとめると以下のとおりです:
地震波には実体波(P波、S波)と表面波(レイリー波、ラブ波)がある。このうち、大きな被害をもたらすとされる表面波に対して建物を「透明」にする(表面波を無害に通過させる)装置が発明された。

地震、太陽光線、ラジオ放送などは波で伝播するという共通点を持っている。発明のきっかけを与えたのはステルス航空機である。ステルス航空機は、特殊な形状に加工された特別の材料で表面を覆うことによって、レーダーの電波を吸収したり、レーダーとは違う方向にそらせてしまう。

地震波に対しても同じことができる。プラスチックや銅など、さまざまな柔軟性と剛性と持った材料から作られた多層の同心円状のリングからなる装置によって、地震波を無害にそらしてしまうことができる。

地震波の周波数の特定の範囲に対して 1対のリングが使われる。1対のリングはその周波数の揺れに対して上下に曲がるように運動し、装置に到達した地震波をもとの大きさのまま装置の外に放出する。この装置は地震波を反射するのではない。装置に到達した地震波は、装置がなかったときと同じ波形と強さで装置の後側から出ていく。複数のリング対を組み合わせることによって、広い範囲の周波数に対応することができる。

装置を構成するリングは、地震波を吸収したり、地震波の向きを変えることによって、リングの中央部を地震から保護する。将来の建物は、基礎にこれらのリングを設置して地震から守られるようになる。
上記記事の説明図にあるように、このリング状の装置を建物の基礎となる柱に使うと、柱が存在しなかったかのように地震波が通り過ぎていくことがわかります。

2009年8月2日日曜日

太陽観測衛星「ひので」が撮影した日食

日本の太陽観測衛星「ひので」が撮影した、ちょっと異質な日食映像です。静止画と動画があります。静止画はクリックすると拡大します:

皆既日食と動物の行動 (続報-4)

皆既日食中の動物の行動について、最後に日本の事例を紹介します:
「皆既日食は約4分間です。皆既日食中は砂地はほのかに明かりが残っていましたが、岩場は真っ暗でした。そして、暗闇と共に魚がまったくいなくなりました。一匹たりともいなくなったのです」とのことです。

過去の関連記事
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency

皆既日食と動物の行動 (続報-3)

もう一つ、中国の動物園からの情報です。以下は、武漢市(湖北省の省都)にある動物園からの報道です:
以下に記事をまとめます:
午前 9時を少し過ぎ、月が太陽の 3分の 1ほどを隠したとき、鳥類は混乱したように飛び交っていた。

動物園内のトラは落ち着きがなく不安げな様子で檻の中を行ったり来たりしていた。「今日はトラの様子がまったく違う。朝食のあといつもは静かに歩き回るのだが、今日はちょっと落ち着きがないようだ」と飼育員は語った。太陽が完全に月に隠されあたりが闇に包まれると、トラはさらに不安げになった。あたかも、獲物を狩る時間がやってきたと思っているようだった。

パンダの反応は違っていた。武漢市の動物園では 2頭のパンダが飼育されている。2頭は夜がやってきたのかと思い、眠ってしまった。太陽が再び明るさを取り戻すと、パンダはゆっくりを腕を伸ばし、楽しい夢を見ていたかのようであった。「朝のこの時間帯にはパンダは竹を食べている。しかし今日は日食による暗闇がパンダを混乱させたようだ。夜と思いこんで眠ってしまった」と動物園の主任技師は語った。

霊長類のほとんどは普通の日だと思っていたようだ。数分間の暗闇の後、太陽が月の影から顔を出すと、テナガザルはいつもの朝のようにやかましく鳴き始めた。

白鳥は明らかに怯えている様子がうかがえた唯一の動物だ。いつもの朝は、白鳥はゆったりと餌を探す。しかし今日は、白鳥たちは湖の中央部に集まり静かに何かを待ちかまえているようだった。何か緊急な事態が起きたときにすぐに逃げ出せるように備えているように見えた。再び太陽が輝きを取り戻したとき、白鳥たちは何事もなかったかのように散らばって、優雅に泳ぎ回った。
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Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency