2010年12月29日水曜日

宇宙の巨大リング (補足)

このブログの 12月 15日付記事「宇宙の巨大リング」で紹介したロジャー・ペンローズ博士らの研究成果について、『ナショナル・ジオグラフィック』誌の日本語版サイトがわかりやすい記事を掲載しています:

土星に異変!

以下の写真をご覧ください。土星探査機カッシーニが 12月 24日に撮影したものです:

以下のブログ(スペイン語)には、異なるフィルターで撮影された複数の写真を合成してカラー画像にしたものが多数掲載されています (写真をクリックすると拡大します):

まるでコーヒーに垂らしたミルクのようなパターンで、土星大気中の単なる渦巻きや、木星で何回か観測されたことがある彗星や小惑星の衝突痕とは思えません。上掲のブログの筆者も 「土星の噴火」 というタイトルをつけているように、土星の大気の下から何かが噴き上がってきているように見えます。白い楕円形の部分の内側には 2つの円形(あるいはリング状)の模様が見えています。海底火山の噴火で海面に現れた変色域に似ているように思います。

このパターンは、アマチュアが最初に発見したものです。12月 14日に撮影された写真には写っていますが、10日の写真には見あたらないので、12月 10日から 14日の間に出現したものと推定されます。


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2010年12月27日月曜日

マントル構成鉱物の超塑性を実験で確認

「地球内部のマントルと同じ組成を持つ鉱物が、溶けてもいないのに水あめのように変形」する超塑性(superplasticity)と呼ばれる現象が実験的に確認されました。固体のマントルがなぜ流動するのかについての理解が進むことが期待されます:
  1. 鉱物が水あめ状に変形 地球内部の「超塑性」初確認
  2. 地球の岩板、水アメ状に変形 東大など、地震解明に道
  3. Mantle superplasticity and its self-made demise (マントルの超塑性とその自律的停止)

『産経新聞』の記事(上掲 1)では 「地震予知に役立つ可能性もあるだろう」 としか書かれていませんが、『日本経済新聞』の記事(上掲 2)には以下のように記述されています:
地震が発生する際は、地下の断層でくっついていた硬い岩が割れてはがれ、揺れを引き起こす。このとき、断層より深い部分の岩石が超塑性で曲がると、ひずみを蓄積するため、地震の発生などに影響する可能性がある。超塑性を考慮して断層を調べれば、地震の発生時期や大きさなどの研究に役立つとしている。

超塑性による変形が進むと鉱物粒子が成長するため、変形が自律的にストップするとのことです。深発地震の謎の解明にも結びつくかも知れません。

12月初旬には、以下のようなニュースもありました。地球の外核とマントルの間に 「硫黄や酸素などの軽い元素を約5%含むと推定される」 層が存在することが、地震波の解析によって明らかになったという記事です:

地球の核から軽い元素が分離・上昇することは、地磁気を発生させているダイナモ作用の維持に関与している可能性があるとのことです。


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光柱現象 ― 岩手県大船渡市

12月 26日、岩手県大船渡市で光柱現象が見られました。幻想的な美しさです:

以下は先日の皆既月食の際に撮影された光柱です。撮影場所はカナダのノースウェスト準州トゥクトヤクトゥク(地図)で、オーロラも一緒に写っています:

2010年12月26日日曜日

イエローストーンは噴火するか? (その 2)

イエローストーンの噴火の可能性について、専門家はどのように考えているのでしょうか。以下はアメリカのニュースサイトに掲載された記事です。一般からの質問に専門の科学者が答えるコラムですが、「イエローストーン国立公園内のスーパーボルケーノは今後 100年以内に噴火することがあるのでしょうか?」という質問が取り上げられています(記事は今年の 10月 7日付ですが、すでに掲載期限が切れたらしく “Unfortunately, that page could not be found” とのメッセージが表示されます。しかし、情報の出典を明示するためにリンクは残しておきます):

以下は、答えの部分の意訳です:
これは重要な質問で、(イエローストーンに隣接している)ワイオミング州、モンタナ州、アイダホ州に住む多くの人たちが答えを聞きたいと思っている質問でもあります。イエローストーンは過去 210万年間に 3回のスーパー噴火をおこしています。その規模は、ワシントン州南西部を荒廃させた 1980年のセント・ヘレンズ山の噴火の 700倍から 6000倍とされています。

たった 3回の過去のスーパー噴火にもとづいて、正確な長期予知をするのはほとんど不可能です。イエローストーンの噴火が完全にランダムに発生し、平均 70万年の間隔でスーパー噴火が起きるのであれば、任意の 100年間にスーパー噴火が起きる確率は 7000分の 1です。イエローストーンの一番最近のスーパー噴火は今から 64万年前に起きましたが、それ以降に規模が小さい噴火が 80回起きています。この事実から、小規模な噴火は 8000年間隔で発生すると考えられます。一番最近の小規模噴火は 7万年前に起きています。したがって、小規模な噴火については、すでに期限切れでいつ噴火が起きてもおかしくない状態ともいえますし、イエローストーンの火山系が(小規模噴火すら起こさない)静穏期に入っているとも考えられます。

米国地質調査所(USGS)は、噴火につながるような火山活動の異変を監視するために、イエローストーンで火山監視プログラムを実施しています。イエローストーンは非常に活発な地域で、多くの小規模地震、微小な土地の隆起、温泉や間欠泉の変化が毎年起きています。今年も、1月 15日から 2月 7日にかけてイエローストーンの地下で 2350回の小規模地震からなる群発地震が発生しました。地震の観測データを分析した結果によると、地表からわずか数キロメートルのところにマグマが存在することがわかっていますが、幸いなことにこのマグマは一部が固化しており、噴火をおこす可能性はほとんどないものです。

イエローストーンのマグマ溜まりは、次の噴火が起こる前に地下深部から新しいマグマの補給を受ける必要がある、と科学者たちは考えています。噴火が起きる場合にはどの程度の前兆が現れるのでしょうか? この疑問に答えるのは簡単ではありません。しかし、現在の広範囲にわたる監視体制によって、小規模噴火の場合は数日から数ヶ月前に、スーパー噴火の場合は数ヶ月から数年前にその予兆を捉えられる可能性が高いと言えるでしょう。

冒頭のあなたの質問にもどりましょう。近い将来、スーパー噴火が起こることを示すような活動は現在のイエローストーンには見あたりません。今後 100年のうちにイエローストーンで大きな噴火が起きる可能性はきわめて低いと考えられます。30年前にセント・ヘレンズ山が噴火して以降、私たちは火山について多くのことを学んできました。しかし、それでもなお火山噴火予知は精密科学とは言えない状態にありますので、ここで私が述べた予測が正しいことを望むばかりです。

イエローストーンの最新火山情報と震央地図は以下にあります:

(完)


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イエローストーンは噴火するか? (その 1)

このブログのアクセス統計を見ていて気づいたのですが、今週、イエローストーン関連の過去記事へのアクセスが急増しました。どうやら、テレビ番組でイエローストーンの大噴火を取り上げたことが影響しているようです。

その番組とは、日本テレビ系で 12月 20日に放送された『不可思議探偵団』です。私は録画で流し見しましたが、イエローストーンの噴火が差し迫っているという印象を与える作為的な構成でした。現地に若手タレントを送り込み、間欠泉や温泉地帯のただの湯煙を指して「あれヤバクないですか」と言わせたり、琉球大学の木村政昭名誉教授を登場させて 2011年は危ないという結論に無理やり持っていったり ・・・。この種の民放番組製作者の浅薄さや節度のなさには、いつもながらあきれさせられます。

番組では、イエローストーンで今年の初めに発生した群発地震がマグマの大噴出に繋がる可能性も否定できない、としていました。群発地震があったのは事実です(このブログの 1月21日付「イエローストーンの群発地震」を参照してください)。「否定はできない」のも事実です。なぜなら、現在の火山学の水準では、100% 確実な噴火予知は困難ですから。しかし、ほとんどの専門家が、この群発地震がすぐに大きな噴火に結びつくことはない、としている事実も忘れてはなりません。

「否定はできない」、たとえば「万が一」、つまり 10000 に 1つの可能性があるからといって、その点ばかりを強調して残りの 9999 をなおざりにしたのでは、物事の正しい理解は得られません。そのようなバランスを欠いた手法で自分の望む結論の正当化を図ったところで、牽強付会のそしりを免れないのはいうまでもありません。

このように「否定はできない」ことを 100% の肯定にすり替えるのは、トンデモ説の論者がよく使う手口でもあります。


(続く)

2010年12月25日土曜日

ブロモ山の噴煙で観光産業が麻痺 ― インドネシア

ジャワ島東部のブロモ山(Bromo、地図)は 11月初めごろから活発化の兆候を見せ、同月 26日に噴火しました。その後、小康状態の時期もありましたが、ここに来て大量の噴煙を噴き上げるようになり、クリスマス・シーズンでにぎわうはずの定期航空路や観光産業に影響を与えています。オーストラリアから有名な観光地・バリ島に向かう航空便に欠航もでています:

以下は、ブロモ山の現状を捉えた写真集です:

今のところブロモ山の影響は局地的ですが、年末・年始にインドネシア方面、特にジャワ島やバリ島を訪れる方は、ブロモ山の動向を頭の片隅に入れておいた方が良いでしょう。


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驚くほど浅いところにあったマグマ溜まり ― ハワイ

『ナショナル・ジオグラフィック』誌の記事です。ハワイ諸島の地下にある巨大マグマ溜まりは、地表から 3~4km のところにあり、これまで計測された他のマグマ溜まりと比べて地表に近いことが、火山岩の化学成分の分析から推定される、という内容です:

上記は英語版と日本語版の『ナショナル・ジオグラフィック』誌の記事ですが、日本語版の記事は誤解を与えやすい翻訳になっています。

まずタイトルですが、英語版の “Close to”(~に近い) という状態を表す表現を、「大接近」という運動をイメージさせる文言に翻訳しています。これでは、これまで深いところにあったマグマ溜まりが地表近いところまで上昇してきているとの印象を読者は受けてしまいます。

次に、最初のパラグラフですが英語版では次のようになっています:
A giant magma chamber burning beneath the Hawaiian Islands is closer to the surface than any other magma chamber yet measured―as little as 1.9 to 2.5 miles (3 to 4 kilometers) below the surface, scientists say.

(ハワイ諸島の地下で煮えたぎっている巨大なマグマ溜まりは、これまで計測された他のマグマ溜まりのどれよりも地表に近いところにある ― 地表からわずかに 3km ないし 4km ほど、と科学者は語る。)

ところが、日本語版では:
新たな研究によると、ハワイ諸島の地下にある巨大なマグマ溜まりが、地表から約3~4キロ地点にまで接近していることがわかった。以前の測定距離を大幅に下回っている。

となっています。「接近している」、「以前の測定距離」などの表現から、件の巨大マグマ溜まりが時間的経過とともに上昇して地表に近づいているかのような翻訳結果になっています。

いずれにせよ、記事のタイトルに「?」がつけられていることに留意する必要があります。なぜなら、この研究結果は、先週、サンフランシスコでおこなわれた米国地球物理学連合の秋季大会で発表されたもので、ピア・レビュー(査読制度)のある学術雑誌に掲載されたものではないからです。

なお記事中に 「2008年、ハワイ島で地熱発電の試掘中の作業員から、キラウエア火山付近の浅いマグマ溜まりに偶然到達したと報告があった」 との記述がありますが、これについてはこのブログの 2008年12月18日付記事「マグマ溜まりに孔をあけてしまった男たち」をお読みください。


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赤鼻のトナカイ

イギリス・ニューカッスル大学の研究者たちが、脳の海馬領域を拡大撮影したときに現れた血管のパターンだそうです:

メリー・クリスマス!

2010年12月24日金曜日

青い夕焼けと部分日食 ― 火星

NASA が公表した動画です。いずれの動画も、火星探査車オポチュニティが今年 11月に撮影した静止画をつないだものです。1本目が青い夕焼け、2本目が部分日食(衛星フォボスの日面経過)です:

フォボスは地球の月に比べると非常に小さい衛星ですが、火星面からの距離が近いので太陽面のかなりの部分を隠します。このような地球以外の天体での日食を見ると、地球の月の大きさと軌道半径が絶妙の関係にあることが分かります。太陽を完全に隠して皆既日食にしたり、わずかに太陽の縁を残して金環日食にしたり ・・・。


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地震がないはずの韓国で大きな地震が増えている

日経ビジネス』誌の記事です。 「1978年には5回しかなかった地震が2009年には80回以上に増えた。東海岸を中心に震度3.0以上の地震が5回以上起きている。韓国気象庁が観測を始めて以来、最大の震度記録は震度5.3である。1980年1月、北朝鮮の平安北道で発生した地震だ。これに次ぐものとして、2007年1月には北朝鮮に近い江原道で震度4.8、2004年5月には慶尚北道で震度5.2を記録している 」 :

記事の執筆者は、小学校から高校卒業まで東京で育った韓国人女性です。震度とマグニチュードを混同しているようですので、記事中の「震度」は「マグニチュード」に読み替える必要があります。『日経ビジネス』の校閲担当者は気づかなかったのでしょうか。たとえば「2007年1月には北朝鮮に近い江原道で震度4.8」とあるので当時の記録を調べてみると、この地震のマグニチュードは 4.8 でした。

中朝国境の白頭山(長白山)についても触れて、災害対策の分野での日本・中国・韓国の協力に言及しています。


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2010年12月23日木曜日

小笠原諸島 vs. ボニン諸島

小笠原諸島・父島近海で昨日発生した M7.4 の大地震。多くの海外メディアが伝えています。小笠原諸島の英語名は Ogasawara Islands と Bonin Islands の 2通りあります。後者は「無人島」の「無人(ぶにん)」が訛ったものだといわれています。

USGS の地震情報では Bonin が使われていますが、海外英語メディアはどちらを多く使っているのでしょうか。ちょっと気になったので調べてみました。使用したのは、今日 11:00 現在でグーグル・ニュース検索にヒットした記事の数です:
  • Ogasawara Islands: 79
  • Bonin Islands:199
  • 両者並記:136

「両者並記」とは、“the islands of Ogasawara (Bonin)”(『ボイス・オブ・ロシア』紙)のように括弧で補足しているもの、記事のタイトルでは “Japan's Bonin Islands” と書き、本文では “Ogasawara Islands”(中国・新華社通信)を使用しているもの、また “Bonin Islands, which are also known in Japan as the Ogasawara Islands”(Island Crisis 紙)のように注釈を加えているものなどを指します。

上記の数字には、同じ通信社から配信された記事をそのまま載せている “そっくり記事” が多数含まれているので、それらの重複を除くと以下のように小笠原とボニンはほぼ互角となります:
  • Ogasawara Islands: 22
  • Bonin Islands:24
  • 両者並記:25

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2010年12月22日水曜日

雌阿寒岳で火山性微動や地震

札幌管区気象台火山監視・情報センターが 12月 20日付で発表した下記資料によると、雌阿寒岳では 12月 17日に振幅の小さな火山性微動が発生し、その後、体に感じない振幅の小さな火山性地震がやや増加したとのことです。噴煙の状況や地殻変動のデータに特に変化はないとのことですが、微動発生後に一時的に白色噴煙の高さが 100mほど高くなったことが観測されています(気象の影響の可能性あり)。

皆既月食と冬至

昨日 12月 21日は皆既月食、今日 22日は冬至。日本ではこのように月食と冬至が 1日ずれていましたが、欧米では時差の関係で皆既月食が冬至と同じ 21日に起こりました。

月食が冬至または夏至の当日に起こるのはきわめて珍しいことなのだそうです。NASA の資料によると、米海軍天文台の研究者が調べたところ、西暦 1年以降の約 2000年間で、冬至または夏至の日に月食が起きたのはわずかに 1回 ―― 1638年 12月 21日 ―― しかないとのことです。また、次に同様の現象が起きるのは 2094年 12月 21日とのことです。

以下の記事には、占星術やキリスト教の観点では冬至の日の皆既月食が何を意味しているのかについて書かれています:

以下は上掲記事からの摘記・意訳です:
占星術師にとって、冬至と月食が重なることには重大な意味がある。このような現象は、我々の宇宙に存在するすべての力の統合を意味するからだ。

月食の起きている間は、月・地球・冬至の太陽・銀河の中心が完璧な整列状態になる。占星術師は今回の月食が、我々が共鳴・調和することのできるエネルギーに満ちあふれた期間の始まりになると考える。占星術の観点からいえば、今回の天体の整列は、われわれ自身を自分の目的やすべての潜在能力と整合性の取れた状態にもどし、進むべき道に回帰させる絶好のタイミングである。それゆえに、今回の月食は変化を実現する最適の時なのである。

キリスト教信仰では、赤い、もしくは血の色をした月はメシア(救世主)の再来を意味する。それは、この世の終末を告げる 7つの予兆のうちの第 6の封印にあたる。キリスト教徒はこの信仰を語るとき、『ヨハネの黙示録』の第 6章 12節と 13節を引き合いに出す。そこには次のように書かれている:  「また、見ていると、小羊が第六の封印を開いた。そのとき、大地震が起きて、太陽は毛の粗い布地のように暗くなり、月は全体が血のようになって、天の星は地上に落ちた。まるで、いちじくの青い実が、大風に揺さぶられて振り落とされるようだった。 」

この『ヨハネの黙示録』の記述は、2012年 12月 21日を世界の終わりの日とする陰謀説にとっては願ったりかなったりである。しかし、インターネット上では 2012年 12月ではなく、2010年 12月 21日が本当の終末の日であるとする新しい説が勢いを得ている。

もし明日(この記事は月食の前日、12月 20日付で掲載されたものです)、この世界がまだ存在していたら、寒波にひるまず屋外に出て、数世紀に 1度しかない記念すべき光景を眺めようではないか。

前回冬至の日に月食があった 1638年、日本は 3代将軍・徳川家光の治世でした。2月に島原の乱が鎮圧され、多数のキリシタンが虐殺されました。夏から翌春にかけて「お蔭参り」が流行しました。9月にはキリスト教が厳禁され、翌年には鎖国体制が完成します。


『ヨハネの黙示録』の第 6章 12節と 13節の日本語訳は、財団法人 日本聖書協会のウェブサイトにある 「聖書本文検索」から新共同訳を引用させて頂きました。


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2010年12月19日日曜日

緑色の霧

アメリカ・ニューヨーク州の州都オルバニー(Albany; オーバニの方が現地の発音に近い)。その北にあるコロニー(Colonie)という街のマクスウェル・ロード(Maxwell Road、地図)一帯に 12月 18日の午後、緑色の霧が漂いました。一帯は安全を確保するために封鎖されましたが、検査の結果、危険な化学物質やガスは検出されなかったため、間もなく封鎖は解除されました:

緑色の霧は、森林から漂ってきたとの目撃情報があります。子供がしばしば遊びで使う花火の一種 smoke bomb (発煙弾)が発生源ではないか、との推測がありますが確認されていません。


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2010年12月17日金曜日

ハッブルの天体写真 2010

『ボストン・グローブ』紙の “ザ・ビッグ・ピクチャー”が、今年もハッブル宇宙望遠鏡の写真集を始めています。12月 1日からクリスマスの 25日まで、毎日 1枚ずつ新しい写真が追加されていきます:

冒頭の渦巻きの写真については、このブログの 9月 7日付記事「宇宙の暗い渦巻き」を参照してください。

私が惹かれるのは 4番と 9番の写真です。無数の島宇宙が写っており、宇宙の広大無辺さを感じさせてくれます。子供のころ読んだ本にあった 「有限な人間の心は、無限の宇宙を理解できない」 という言葉が思い出されます。

4番の写真には、重力レンズの効果によって筋状に引き伸ばされた島宇宙の姿がいくつも見えています。

もう一つ、忘れてはならないのが 11番です。木星の上空に浮かぶ衛星イオと、木星の表面に映るイオの影です。スケールの大きさに圧倒されます。

同じような趣向の写真として以下もご覧ください。火星の衛星フォボスが火星の表面を背景に映っています。ハッブル宇宙望遠鏡ではなく、ESA(欧州宇宙機関)の火星探査機マーズ・エクスプレスが撮影したものですが、センス・オブ・ワンダーを感じさせるすばらしい写真です。

フォボスは、その奇妙な軌道と密度の低さから、中空の人工天体ではないかと考えられたり、薄い金属板で作られた人工物ではないかとの説が出されたりしたことがありました。詳しくは以下をお読みください:

ハッブルのウェブサイトでは、今年もクリスマスカードの素材を提供しています:

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2010年12月16日木曜日

黒い砂

「黒い砂」ってまるで松本清張の推理小説のタイトルにありそうですが、12月 15日に湘南地域などに降った黒い砂の正体は何なのでしょうか:
  1. 神奈川・湘南地域に黒い砂降る? 人体に影響はなし
  2. 湘南に謎の黒い砂降る 県西部含め13自治体に

砂粒の大きさはおおよそ 0.1mm ということで、黄砂などと比べると一桁から二桁ほど大きく、大気中にそれほど長期間漂っていたとは考えられません。比較的近距離から飛来したか、上空から落下してきたかでしょう。

12月 14日に出現の極大を迎えた「ふたご座α」流星群の火球がまき散らした流星塵かとも考えましたが、粒子の直径が大きすぎますし、何よりも量が多すぎます。また、そのような火球の目撃情報もありません。

報道によれば黄砂の飛来、火山の噴火、工場事故などはなかったということです。『朝日新聞』の記事(上掲 1)では、専門家が「成分を見ると、何かの焼却灰のようにも思える」と指摘しています。

『東京新聞』の記事(上掲 2)には、「(神奈川)県内では今年四月、北西部の山北町で黒い砂が降ったとの情報が県に寄せられたが、砂を採取できず、原因は分からなかった」との情報が載っています。山北町は、今回も黒い砂が降った地域に含まれています。

群馬大学の火山学者・早川由紀夫教授のブログには、「富士山の表面をつくっている黒い軽石(スコリア)の細粉が強風で飛ばされたものだろう」との見解が示されています:

関東ローム層は富士山の噴火のときに降り積もったと思い込んでいましたが、「噴火しなくても富士山から砂が巻き上げられて関東平野に降り積もる事例が日本社会の記憶に残るといい。これが何度も繰り返されれば、関東ロームが富士山の噴火で降り積もったと誤解する人はそのうちいなくなるだろう」とのことです。

2010年12月15日水曜日

宇宙の巨大リング

まず、以下の図を見てください。中心部の小さな円とそれを囲む 2つのリング。NASA の WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe、ウィルキンスン・マイクロ波非等方性探査衛星)が観測した宇宙マイクロ波背景放射のデータに現れた巨大なリング状のパターンです:

このパターンは、イギリスの高名な数学者・宇宙物理学者・理論物理学者であるロジャー・ペンローズ博士と、アルメニアのエレバン物理学研究所・エレバン国立大学の Vahe Gurzadyan 氏が 11月 16日に報告したものです。

以下は、上記の報告をかみ砕いて解説している記事です:

以下に、上記記事から摘記・意訳します:
ペンローズ博士たちが報告したリング状のパターンは、天球上の全方向からほぼ等方的に放射されていると考えられている宇宙マイクロ波背景放射の中に見いだされた。宇宙マイクロ波背景放射は、ビッグバンの名残であると考えられ、ビッグバン宇宙論の有力な証拠とされている。
リング状のパターンは、宇宙が始まりと終わりを繰り返していることを示している、とペンローズ博士たちは考えている。

リング状の領域は、宇宙マイクロ波背景放射にあるわずかな温度のばらつきが平均よりも小さい部分である。

このリング状のパターンは、現在定説化しているインフレーション宇宙論では説明できない。インフレーション宇宙論では、生まれたての宇宙が、その直後に原子のサイズからグレープフルーツのサイズに急激に膨張したとしている。このようなインフレーションが起きていたとすれば、今回発見されたリング状のパターンは消されてしまうであろうし、インフレーションによってリング状のパターンが生成されるとは考えられない。

プリンストン大学の宇宙論学者 David Spergel 氏は次のように語っている: 「このような形状の、巨大なスケールで一貫した特徴がマイクロ波背景放射に存在するということは、インフレーション・モデルと矛盾し、宇宙が誕生と死滅を周期的に繰り返すというペンローズ・モデルの非常に特徴的な証拠であると考えられる。しかし、ペンローズ博士たちが発表した論文には、このリング状のパターンが実際に存在するか否かを検証するための詳細情報が十分には記載されていない。

一番最近に起きたビッグバンの前に存在した宇宙(ペンローズ博士はビッグバンによって区切られる個々の宇宙を “aeon” と呼んでいる)の情報をこのリング状のパターンが見せていると解釈している。

このリング状のパターンはビッグバン以前の宇宙で発生した超巨大ブラックホールどうしの衝突によって形成されたのではないか、と博士は示唆している。衝突したブラックホールは重力波(巨大な質量の加速によって生起する時空のさざ波)の「不協和音」を発生させのではないか、というのである。発生した時空の波は球状で均一に分布していたはずである。

ペンローズ博士の計算によれば、均一に分布した重力波が一つ前の aeon から現在の aeon に入るとエネルギーのパルスに変貌する。このパルスは、この宇宙の全質量の 80% 以上を占めるとされる目に見えないダークマターに対して均一な力を及ぼす。これが、マイクロ波背景放射に見られるかなり均一なリング状のパターンとして観測される。

ペンローズ博士たちは、WMAP の観測データに加えて、気球によってマイクロ波背景放射を観測した BOOMERANG 実験 のデータも解析し、同様のパターンを見いだした。2つの異なる観測装置のデータに同様のパターンが見つかったことから、観測機器のノイズやその他の人為的な要因によってこのようなパターンが現れた可能性は低い、とペンローズ博士たちは考えている。
宇宙マイクロ波背景放射については、ESA(欧州宇宙機関)のプランク・ミッションによってさらに詳細な観測データが集められている。ペンローズ博士は、自分の理論がこのデータによってさらに決定的に検証されるであろうと考えている。

このペンローズ博士たちの報告については、すでに批判や反論が出ています。その一つは上記記事中にも少し書かれていますが、WMAP の観測方法がリング状のパターンの原因ではないか、とするものです。WMAP の観測では、天球上の観測場所によって観測時間に差があります。観測時間が長い場所ほどノイズの影響が小さくなり、観測データに現れるマイクロ波背景放射の温度のゆらぎが小さくなります。このようなゆらぎの少ない部分がリング状のパターンの原因ではないか、それをペンローズ博士たちは自分たちの「周期的な宇宙」論に牽強付会しているのではないか、というものです。


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2010年12月11日土曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 23)

エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)周辺とカトラ山周辺では、現地時間 12月 5日 20:23 に M0.4 の地震が発生して以降、地震がまったく発生しない状態が続いています。今年 3月にエイヤフィヤトラヨークトル氷河の下で火山噴火が始まり、4月末に隣接するカトラ山で地震が起き始めて以降で、このように静穏な状態が 5日以上継続するのは初めてのことです。

このまま地震と火山の活動が終息に向かうのでしょうか。それとも、 「嵐の前の静けさ」なのでしょうか。


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2010年12月10日金曜日

ドラゴン宇宙船に極秘の積荷

アメリカのスペースX社が日本時間 12月 9日に商業用ロケット「ファルコン 9」で打ち上げた 7人乗り(今回は無人で打ち上げ)宇宙船「ドラゴン」は、地球を 2周したのち、大気圏に再突入して無事に太平洋に着水しました。民間企業としては初の快挙です:

このドラゴン宇宙船には「極秘」の積荷が載せられていたのですが、その中身が明らかになりました:

民間企業ならではというところでしょうか。この積荷の謂れは、往年のテレビ番組 「空飛ぶモンティ・パイソン」 まで溯るようです。


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東南海地震と最近の小地震パターン

今朝の『朝日新聞』科学面に 「東南海 最近の小地震パターン 1944年大地震前と似る」 と題する記事が掲載されていました。防災科学技術研究所の調査結果を紹介しているのですが、当該記事が現時点ではネット上に見つからないので、以下に紙面から抜粋します:
  • 東南海地震の震源域での小地震の発生パターンがこの 10年、1944年に起きた大地震の直前の 10年間に似てきた。
  • 前回の東南海地震までの 10年間に震源域で起こったマグニチュード 3.5 以上の地震の発生傾向を、最近の 10年間と比較した。その結果、双方とも 51~90年の 40年間に比べ、志摩半島南側などで地震が増え、逆に渥美半島先端などでは減少。最近の傾向は、前回の直前と似ていることが分かった。
  • 震源域には固着の強い部分と弱い部分があるが、弱い固着が徐々にはがれ、大地震の直前には強く固着した場所にエネルギーが偏ると考えられている。この偏りの影響で、大地震の前に震源域周辺で起こる小地震の発生パターンも変化するとみられる。

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2010年12月7日火曜日

カンピ・フレグレイに火山活動の兆候 ― イタリア

イタリアの有名な観光地・ナポリは 2つの火山にはさまれています。東に 15km ほど行ったところにはヴェスヴィオ山。西暦 79年に噴火し、ローマ帝国の都市ポンペイを火砕流で、またヘルクラネウム(現エルコラーノ)を土石流で埋め尽くしたことで有名です。一方、ナポリの西にはカンピ・フレグレイ(Campi Flegrei)と呼ばれる幅 13km のカルデラが広がり、多くのクレーターが分布しています(地図)。

このカルデラの西端にあるアヴェルヌス湖(Lake Avernus、地図)の地下で、12月 6日午前 7時 30分から 8時にかけて、マグニチュード 4.8、4.8、5.6、5.7 の地震が相次いで発生しました:

アヴェルヌス湖の内部には、火山爆発指数(VEI) 7 クラスの噴火をおこす可能性のある火口があり、今回の連続地震はその火山活動が始まったことを示しているのではないか、と上記記事は伝えています。1558年には、この湖の南東岸にある火口(Monte Nuovo)が噴火し、一つの集落が壊滅したとのことです。

2010年12月6日月曜日

X-37B が帰還

12月 3日 午前 1時 16分(現地時間)、アメリカ空軍の無人スペース・プレーン X-37B がカリフォルニア州にあるバンデンバーグ空軍基地に着陸しました。4月 22日に打ち上げられてから 225日(約 7ヶ月)ぶりの帰還です:

空軍の担当者は、軌道上で予定されていたすべての目的を達成した、と述べています。

以下の記事には、着陸時の動画(暗視カメラの映像)や、着陸後の様子を撮した写真が掲載されています:

動画には、X-37B が滑空しているところは含まれておらず、着陸後に滑走路上を移動しているところしか写っていません。目撃者の少ない深夜を選んで着陸したことと合わせて考えると、滑空する様子に何か秘密があるのかも知れません。

X-37B の機体のそばに人が写っている写真を見ると、同機のサイズがいかに小さいかわかると思います。貨物室は小形のピックアップ・トラックの荷台と同程度の大きさといわれており、そこに太陽電池パネルも収納していることを考えると、大きな積荷は搭載できないことがわかります。

作業をしている人が防護服を着ているのは、機体に残っている燃料が有毒であるためだとのことです。


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エルタアレ山から溶岩流出 ― エチオピア

エチオピアのエルタアレ山(Erta Ale、地図)の山頂クレーターにある溶岩湖は、今年初め頃から徐々に湖面が上昇していましたが、11月 21日から 23日にかけてストロンボリ式噴火とともに溶岩があふれ出したとのことです:

エルタアレ山は、粘性の低い溶岩によって形成された平たい盾状火山です。理科年表(丸善書店)には、「1967年より溶岩湖常在」との記載があります。

このブログの 11月 15日付記事 「紅海南端部-アデン湾最奥部で群発地震」 で記しましたが、エルタアレ山から南東に約 350km 離れたアデン湾では 11月 14日から数日にわたって浅い地震が多数発生しています。

また、アデン湾に面するソマリランドでは、11月 22日から 23日にかけての深夜に強い地震が発生しています。下記記事によれば、1980年代初頭以来最大級の地震であるとのことですが、同地域には地震観測計器が設置されていないので、マグニチュードなどは不明です:

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トゥングラワ山が噴火 ― エクアドル

エクアドル領のアンデス山中にあるトゥングラワ山(Tungurahua、地図)は、 11月 22日にいきなり噴煙を 7000m を超える高さまで噴き上げて人びとを驚かせましたが、12月 4日になって溶岩の流出をともなう本格的な噴火を始めました:

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2010年11月27日土曜日

ネス湖の怪物?

ネス湖の怪物・ネッシーが水面に背中のコブを出しているところではないか、とみられる写真が話題になっています:

上記記事に掲載されている写真は、27歳の造園設計家がネス湖畔にある Aldourie 城の庭園から撮影した複数の写真の中の 1枚だそうです。撮影された日付は記載されていませんが、時刻は午後 3時ごろと書かれています。

対岸に写っている家の白い壁が湖面に反射したものという意見もあるようですが、どうでしょうか。

2010年11月26日金曜日

ブルサン山の火山活動で休戦実現 ― フィリピン

フィリピン・ルソン島最南端に位置するブルサン山(地図)は、11月初め頃から大量の火山灰を噴出する活動を続けており、周辺住民の生活や農業生産に影響を与えています:

ブルサン山周辺は NPA(新人民軍)という共産ゲリラの活動領域であるため、救助・救援活動に支障を来していましたが、このほど NPA 側が一方的に休戦を宣言し政府軍側もこれを受け入れたため、暫定的な和平が実現しました:

休戦の範囲はブルサン山から 10km の範囲内、期限は同山の活動が収まるまでとなっています。


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2010年11月25日木曜日

木星の南赤道縞に復活の兆し

5月 17日付「木星の南赤道縞が消失」の続報です。完全に消えて見えなくなっていた南赤道縞の位置に、復活の兆しではないかとみられる模様が出現し始めています。以下はアメリカの惑星協会(The Planetary Society)のブログ記事です:
  1. The Disturbance is Starting
  2. Jupiter's outbreak is spreading

上掲「1」の記事の最初の写真は、2009年 6月と 2010年 5月の比較です(北が上)。後者では南赤道縞(SEB)が見えなくなっています。2枚目(北が上)、3枚目(赤外線写真、南が上)、4枚目(南が上)の写真は今年 11月 9日から 10日にかけて撮影されたものですが、南赤道縞のあるべき位置に白斑が出現しています。

「2」の記事の最初の写真(南が上)には、コンマのような形をした奇妙な黒い模様が南赤道縞のあるべき位置に写っています。

これらのパターンは、南赤道縞のあるべき位置に何らかの大気の擾乱が発生していることを示しており、南赤道縞が復活する予兆の可能性があるとのことです。


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2010年11月24日水曜日

X-37B の高度が低下

アメリカ空軍が極秘にテストしているスペース・プレーン X-37B の高度が徐々に低下しており、地表に帰還する時期が近づいているのではないか、との推測が流れています:

4月 22日に打ち上げられた X-37B は、軌道上に最長で 270日間(約 9ヶ月)とどまる能力があると公表されています。これが正しければ、来年 1月後半まで軌道飛行を続けることができまるはずです。しかし、X-37B の軌道を追跡しているアマチュア観測者のネットワークによると、同機は、ここのところ軌道を変更するたびにより低い軌道に移っており、近々、メイン・エンジンを吹かして減速し、地表に帰還するのではないかと推測されています。

アメリカ空軍が X-37B の運用目的を明らかにしていないため、専門家の間でさまざまな推測が取り沙汰されています。その大勢は、兵器の搭載や他国の衛星の査察・捕獲・破壊などは無理で、偵察任務であろうということで一致していますが、これまでそれを裏付ける決め手がありませんでした。ところが、アマチュア観測者が、X-37B のこれまでの軌道データを収集・分析したところ、最終的な結論ではないものの、同機は軌道傾角 40度前後で数日毎に地表の同じ地点の上空を通過する軌道をとっていることが明らかになりました。これはアメリカの偵察(スパイ)衛星がとる軌道の特徴と同じで、X-37B の目的が偵察であろうという推測を裏付けるものとなっています。

アメリカ空軍は X-37B の 2号機を建造中で、来年 3月の打ち上げを目指しているとのことです。

1990年代の後半に開発が進められ、2001年にお蔵入りとなったスペース・プレーン X-34 2機を格納庫から引き出して、再飛行させる動きも伝えられています。X-37B がロケットで打ち上げられるのに対して、X-34 は飛行機に搭載されて高空に達し、切り離された後、自前のロケットを使って軌道にのる方式を採用しています:

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ブロモ山の警戒レベルが最高度に ― インドネシア

インドネシア・ジャワ島東部にあるブロモ山(Mt. Bromo、地図)の噴火警戒レベルが、最高度の “レッド” に引き上げられました:

ジャワ島では、同島中部の古都ジョクジャカルタの近くでムラピ山が活発な活動を続けており、死者がすでに 300人を超えています。ブロモ山はムラピ山から東に約 275km 離れたところにあり、11月 8日から活発化の兆候を見せていました。

なお、ジャワ島の西では、スマトラ島との間にあるスンダ海峡で、クラカタウ山(アナク・クラカタウ山)が活発な活動を続けています:

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2010年11月20日土曜日

パナマ運河に大地震のリスク

中央アメリカのパナマ地峡を掘削して作られ、太平洋と大西洋を結ぶ海運の要衝・パナマ運河は、これまで考えられていた以上に大地震に襲われるリスクが高いことがわかりました:
  1. Panama canal is due a big earthquake (断層の地図あり)
  2. Earthquake risk high in Panama, data suggests
  3. Panama Canal said at earthquake risk

『ニュー・サイエンティスト』の記事(上掲 1)の主要部分を以下に意訳します:
現在、パナマ運河では 2014年の完成を目指して拡幅・改良工事がおこなわれている。

運河のすぐ近くに 2つの断層が存在することはわかっていたが、これらの断層はこれまで考えられていたよりもはるかに活動的であることが調査によって判明した。

調査の報告者(複数)は、これらの断層では 300~900年の間隔で地震が発生していると推定している。一番最近の地震は 1621年に発生しているので、次の地震がいつ発生してもおかしくない状態である。

2つの断層に沿って、地面は 1年あたり 0.5cm の割合でずれ続けており、歪みが蓄積し続けている。

(断層が歪みに耐えきれなくなって地震が発生すると)最悪の場合、大地は最大 3m ずれることになるだろうと、調査チームの責任者であるサン・ディエゴ州立大学のトム・ロックウェル(Tom Rockwell)教授は語る。

ロックウェル教授によると ―― 耐震性を考慮せずに建設されているパナマ・シティ内の建物に大きな被害が出る可能性が高い。運河についてもっとも懸念されるのは閘門の被害である。もし閘門が損傷すれば、(運河内の)水流を制御するすべが失われ、船舶の通行は大きく阻害される ―― とのことである。

2つの断層のうちペドロ・ミゲル断層は、運河の直下を走っているが、幸いなことに、閘門の直下を走っているわけではない。もう一つのリモン断層は、ペドロ・ミゲル断層のおおよそ北への延長である。

ロックウェル教授のチームは、断層に沿ってトレンチを掘って調査した結果、次のような結論を得た ―― 過去 1400年間に少なくとも 3回の大地震がペドロ・ミゲル断層とリモン断層で発生している。一番最近の大地震はペドロ・ミゲル断層で 1621年に発生した。当時の記録によれば、採掘した金をロバを使って運ぶためにスペイン人が丸石を敷き詰めて築いた Camino de Cruces という名の道路に 3m のずれを生じた。このような地震が現代に起これば劇的な結果がもたらされるだろう、とロックウェル教授は語る。

教授のチームが痕跡を見つけることのできたもっとも早い時期の地震は、西暦 455年のものである。さらに心配なのは、西暦 700年前後に発生した地震では、ペドロ・ミゲル断層とリモン断層が連動して動いた形跡があることである。研究チームは、このようなことが再び起こる可能性があると警告している。

2010年11月18日木曜日

カンタベリー大地震と動物の行動

ラジオ・ニュージーランドのサイトが掲載している記事です:

以下は記事のテキトー訳です:
9月 4日に発生したカンタベリー大地震の直前に、動物がいつもとは違うふるまいふるまいをしていなかったか、ある科学者が調査している。

ニール・ホワイトヘッド博士は DSIR (Department of Scientific and Industrial Research、科学技術研究庁)で働いていたが、日本で地震前の動物の行動について研究した経験もある。

ホワイトヘッド博士は 『Country Life』(ラジオ番組の名前)で、「地震の前に何らかの反応を見せる動物は少数派にすぎないが、群を作って生活するウシやヒツジなども例外的に反応を示すようだ」 と語った。

9月 4日の大地震について博士が実施した調査に、500人以上が回答を寄せた。その中の農家(複数)からの報告には、ヒツジやウシがそれまで見たことがない塊状に群れた、ウシが凶暴になった、異常に多くのウシやヒツジがいっせいに横になった(伏せた)、というものがあった。渡りの時期に匹敵するほどの鳥の群が、地震の数日前に飛び去った、というものもあった。

これらの現象には、岩石に圧力がかかったときに発生する周波数の低い電磁波か、人間の可聴域よりも低い周波数の音波が関与している、とホワイトヘッド博士は推測している。

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2010年11月17日水曜日

白頭山噴火の可能性 ― 中・韓の温度差

しばらく下火になっていましたが、白頭山(中国名・長白山)の噴火の可能性についての報道です。まず、韓国側の報道から:

韓国政府は、噴火の危険性に対する南北協力が必要と考えて北朝鮮側に問題提起しているようですが、北朝鮮側はこれといった反応を示していないとのことです。

中国側はどうでしょうか。以下は政府系といわれる『環球時報』の記事です:

近い将来に長白山が噴火する可能性は低い、というのが中国側専門家の見解ですが、長白山に近い地域の住民にはパニックに近い反応も見られるようです。以下は上記記事の摘記・テキトー訳です:
中国の科学者(複数)は、北朝鮮との国境に近い吉林省にある長白山中の天池火山が、一部に言われていているように近い将来に噴火する可能性は低いと言明している。

しかし、そのような声明で、家に灰や火が降り注いでくるかも知れないという不安からくる一般大衆のパニックを押しとどめることはできない。

『Changchun Evening News』 が 11月 16日に伝えたところによると、一部の住民は長白山が今後数年以内に噴火するという根拠のない話を信じている。吉林省北東部の白山(Baishan)市に住む Jiang という女性は、噴火が恐ろしいので自分が経営している衣料品店を売り払って、白山市から出ていく予定だ、と同紙に語った。

長白山の北に住んでいる Zhao Xiaoyu という 28歳の英語教師は、『環球時報』に次のように語った ―― 以前から、長白山が噴火するかもしれないという噂が流れていたが、韓国の専門家が長白山は 2~3年のうちに噴火するという予測を公にしたことによって、住民はパニックに近い状態になった。私たちは誰を信じていいのかわからない。できることといえば、噴火が起こらないように祈るだけだ。

長白山の近くに何世代にもわたって暮らしてきた Zhao 氏の家族や近隣の住民には、今のところ移住する計画はない。

韓国のソウルにある Yonhap News Agency によると、韓国・釜山国立大学の地質学教授 Yun Sung-whyo 氏が今年 6月 18日に、長白山が「2014年~ 2015年に噴火する可能性がある」と発表している。

中国の専門家(複数)は、韓国の発表を否定している。吉林省地震局の地震・火山分析・予知センターの責任者である Yang Qingfu 氏は新華社通信(Xinhua News Agency、中国の国営通信社)に対して、観測データは火山が安定した状態にあることを示しており、すぐに噴火する兆候はない、と語っている。

長白山の天池火山は、中国本土で噴火の可能性があるもっとも危険な火山の一つである。それに加えて、山頂部にたたえられている 20億立方メートルの水が噴火の際の危険性を高めている。同火山が最後に噴火したのは、1903年のことである(訳注: 日露戦争の前年)。

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2010年11月16日火曜日

大地震の後に心霊現象(?)が急増

9月 4日にニュージーランド第 2の都市・クライストチャーチを中心とした地域を襲ったカンタベリー大地震では、物的な被害は大きかったものの、人的な被害は死傷者 0、負傷者 2 という最小限にとどまりました。マグニチュード 7クラスの大地震で、震源が大都市の近くの深さ 10km という浅いところにあったにもかかわらず、犠牲者が出なかったことはニュージーランドの地震対策が効果的であったことを物語っています。

カンタベリー大地震の余震はまだ続いていますが、本震のあと、超常現象研究団体に寄せられる心霊現象の相談が急増しているそうです:

以下は記事からの摘記・テキトー訳です:
「クライストチャーチ超常現象調査隊」(Christchurch Paranormal Investigators)という団体の創設者・アントン・ヘイリック(Anton Heyrick)氏によると、カンタベリー大地震のあと、同団体に寄せられる問い合わせの電話や e-メールの数が 2倍以上に急増したとのことである。

「何かが家の中にいるといつも感じる」という類の電話による相談は地震の前からあったが、地震後はそれが急増した、とヘイリック氏は語る。ほとんどのケースは奇妙な音が聞こえるというものだが、ある男性は幽霊に襲われたと訴えている。

超常現象の増加の背景には、大地震の強い揺れがある、また、大地震によって傷んだ古い建物の数も要因となっている、とヘイリック氏は語る。

超常現象の研究者の間ではよく知られていることだが、古い建物の修理や改築があると、それまで静かにしていた霊を目覚めさせ、心霊現象が突然現れるようになる、と彼は語る。

「地震があると、建物の壁は粉々に崩れ落ち、天井や床は崩落する。それが(それまで静かにしていた霊に対して)どのような効果を及ぼすか、想像できるでしょう。」

調査隊は、無償で調査をおこなっているが、これまでに 2件の徹底調査を完了し、さらに数件の調査を予定している。

「ニュージーランド懐疑主義者」(New Zealand Skeptics)の議長であるゴールド(Gold)氏は、心霊現象の相談が増えているのは、大地震後の状況が人びとの心理に影響しているからだと考えている。

「余震の中には無感のものもあります。無感であっても、カタカタ、コトコトと音を立てることはあります。人びとの心は、(地震によって心に生じた)空白を埋めようとしますが、残念なことに、空白を埋めるために使われるのは往々にして(幽霊などの)おとぎ話なのです。」

大地震の揺れによって、建物のあちこちにゆがみが生じたり、不具合が生じたりします。そのような条件下で余震の揺れが来れば、無感地震であっても、人のいないはずの部屋でこれまで聞いたことのない音がしたりすることは十分にありうることです。「幽霊」というよけいな仮説を導入せずとも、心霊現象の通報増加は十分に説明がつくことだと思います。


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カリフォルニア沖で正体不明のロケットが上昇? (続報)

11月10日付「カリフォルニア沖で正体不明のロケットが上昇?」の続報です。以下の記事は、8日に西海岸で目撃された「ロケット」あるいは「ミサイル」と似たものが、10日に東海岸のニューヨークでも目撃・撮影された、と伝えています:

上記記事に掲載されている写真を見る限り、夕日に照らされて明るく輝いている飛行機雲と断定して差しつかえないと思います。写真が撮影された場所の周辺には、J.F.ケネディ空港を初めとする 3つの空港がひしめいています。

翌 11日にも、ニューヨークで別の飛行物体が撮影されています:
  • That cheeky 'contrail' is at it again! (写真 4葉、動画 1本あり、動画は記事の一番下にありますが、画面が現れるまでに時間がかかることがあります)

こちらは、西海岸の事例と同じく報道関係のカメラマンが撮影したものです。マンハッタンの高層ビル群の上を何かが水平に高速で移動しています。専門家は、飛行機雲が太陽光を反射して明るく見えているものだと言っています。気象条件によっては、飛行機雲はあまり長く尾を引かず、飛行機の後方ですぐに消滅するので、このように見えても不思議はないということです。

ニューヨークでは、先月 13日に複数の輝く物体が空に現れて「UFO」騒ぎが起こりましたが、その後の調査でこれらの「UFO」は近くの学校の行事で放たれた風船であることが判明しています。


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2010年11月15日月曜日

紅海南端部-アデン湾最奥部で群発地震

日本時間 11月 14日(日) 15:30 ごろから、イエメン沖=ジブチ沖(紅海の南端部=アデン湾の最奥部)を中心として地震が群発しています:

USGS の資料にもとづいて日本時間 15日(月) 10:00 現在で集計すると、地震の数は 36。すべての地震が、マグニチュード 4の後半から 5の前半で、最大は M5.4。深さは 10km 前後です (データ数が少なく深さの詳細が決定困難な浅い地震については、一律に 10km あるいは 5km とすることがあるので注意が必要ですが、浅い地震であることにかわりはありません)。

現場は、スエズ運河を通過した船舶が紅海を南下してアデン湾-アラビア海-インド洋に至る出口にあたり、紅海の幅が最も狭くなるバベル・マンデブ海峡(アルマンデブ海峡)という海上交通の要衝の直近に位置しています。

群発する地震の一部については USGS の資料に発震機構が示されていますが、横ずれ断層が主体となっています。アフリカ・プレートとアラビア・プレートの境界にある海嶺か、そこから伸びるトランスフォーム断層で地震が発生しているのだと考えられます。海底火山の噴火につながる可能性は低いと思います。


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2010年11月14日日曜日

地震につきまとわれるクリントン長官

アメリカのヒラリー・クリントン国務長官が外遊すると、その訪問先の国で地震が起きるというジンクスが続いています:

記事から摘記すると ―― クリントン氏は国務長官としては外国訪問が非常に少ない; 2009年 2月、国務長官として最初の訪問先となった日本で、睡眠中に地震で目を覚まされた; その 4ヶ月後、ホンジュラスで M5.0 の地震に遭遇; 2009年 10月、パキスタンで地震に遭遇; 2010年 2月、チリ訪問の直前に同国で M8.8 の地震発生、首都サンティアゴでの宿泊予定をキャンセルし、短時間の滞在に変更; 2010年 11月 3日、パプア・ニューギニア訪問中に M6.0; 2010年 11月 5日~6日、ニュージーランド滞在中、9月に起きたクライストチャーチ大地震(カンタベリー大地震、M7.0)の余震と見られる強い揺れで目を覚まされる。

クリントン国務長官は、10月 27日から 11月 6日にかけて、ベトナム、中国、タイ、カンボジア、マレーシア、パプア・ニューギニア、ニュージーランド、オーストラリアを訪問していますが、その移動経路を見ると、地震が多発しているインドネシアを避けているように見えます。

クリントン国務長官は、日本の横浜で現在開かれている APEC を欠席しています。過去に日本で地震に遭遇したことがトラウマになっているのでしょうか(冗)。アメリカの国務長官が APEC の首脳会議を欠席するのは 1992年以来のことだそうです。

地震にとりつかれたクリントン氏が来日しないのは、日本にとって良いことなのかも知れません。しかし、クリントン氏のジンクスが、現在日本に滞在中のオバマ大統領に乗り移っているかも知れません(冗)。G20 の行われた韓国と APEC が行われている日本を訪問する前に立ち寄ったインドネシアでは、到着後に M5.2 の地震が 2回発生しています:

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2010年11月11日木曜日

ムラピ山の噴火 ― インドネシア

10月 25日夜にスマトラ島沖で発生した M7.7 の地震(USGS資料)に引き続いて、翌 26日から噴火を始めたジャワ島のムラピ山は、その後も爆発的な噴火を繰り返し、死者の数は 200人に迫っています。死者のほとんどは高温の火山灰によるものです。『ボストン・グローブ』紙の “ザ・ビッグ・ピクチャー” が噴火や被害の様子を撮した写真を集めています:

5番の写真に写っているのは火山雷でしょうか。それとも通常の雷雲による稲妻でしょうか。

16番の写真は融けたラジカセです。降ってきた火山灰、あるいは火砕流がいかに高温であったかがわかります。

20番・21番・34番・39番の写真には、ムラピ山の山頂付近が写っています。富士山の大沢崩れのような深い亀裂が山体に入っていることがわかります。

28番の写真で運ばれているのは被災者ではなく、住民が避難した後の集落に入り込んで略奪を行った容疑者です。

インドネシアでは、すでに噴火しているシナブン山(スマトラ島北部)とムラピ山に加えて、複数の火山が活発化しており、その中には噴火の兆候を見せ始めているものもあります。以下はここ 2週間ほどの間に掲載された報道記事です:

上記の記事で活発化が伝えられている火山の筆頭は、スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡にあるクラカタウ山(アナク・クラカタウ山)です。その他、Galunggung 山(ジャワ島西部)、Dempo 山(スマトラ島南東部)、Karangetang 山(北スラウェシ州サンギヘ島)、Ibu 山(北マルク州ハルマヘラ島)、Semeru 山(ジャワ島東部)などの火山が活発化しているとのことです。各火山の位置については、以下の地図を参照してください:


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2010年11月10日水曜日

カリフォルニア沖で正体不明のロケットが上昇?

11月 8日の夕方(現地時間)、カリフォルニア州南部の沖合でロケットのようなものが上昇していく様子が、偶然ヘリコプターで付近を飛行中のテレビ局スタッフによってビデオ撮影され、大騒ぎになりました:

カリフォルニア州のカジノでは、客がテレビ報道にかじりついたため、売り上げが下がったとの報道もあります。

アメリカ国防総省(ペンタゴン)は、海軍・空軍・ミサイル防衛局に問い合わせた結果、いずれの部署もそのようなミサイルの発射は関知していないとの回答を得たと発表しました。NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)も、外国の軍事ミサイルがカリフォルニア沖で打ち上げられた形跡はないと回答しています。

さまざまな憶測が飛び交っています ―― アジアに対して軍事力を見せつけるために潜水艦発射型大陸間弾道ミサイルを発射した、艦船から迎撃ミサイルを発射した、レーザーを使ったミサイル防衛の実験だ、才能あるアマチュアの仕業だ、などなど。

連邦航空局は当時のレーダー記録を再生した結果、ロケットのように高速で移動する未確認の目標は見あたらず、また異常なものを目撃したとのパイロットからの報告もない、としています。

上記記事でも指摘されていますが、ミサイルの噴煙のようなもののすぐそばに小さくヘリコプターが映っています。これが謎を解くヒントになるかも知れません。

どうやら、ミサイルの打ち上げのように見えたものの正体は、ジェット機の飛行機雲であったようです:

上の CNN の記事では、軍事専門家が明らかに飛行機雲だと断定しています。「目の錯覚で上昇しているように見えるが、実際にはカメラの方に向かって来ている。ロケットにしては雲の先端の動きがあまりに遅すぎる。夕日に照らされて長く伸び、地平線につながっているように見える」とのことです。

日本でも、日暮れ時に、夕日を反射して明るく輝く飛行機雲をたなびかせながら飛ぶジェット機を UFO と誤認するケースが多発していますが、これと同じような現象だったようです。

この軍事専門家は 「こんな単純な現象について政府内に誰も説明できる人間がいないことの方が問題だ」ともコメントしています。

2010年11月9日火曜日

カール・セーガン・デー 2010

今日、11月 9日はカール・セーガン・デーです。故セーガン博士の誕生日にちなむものですが、主な行事は参加者の都合を考えて直近の土曜日(今年は 11月 6日)に行われます。詳しいことは昨年の同じ日にこのブログに書いた 「カール・セーガン・デー」 を参照してください。

以下は、カール・セーガン・デーにちなむ記事です:

NASA のケプラー探査機(地球型太陽系外惑星を発見するための宇宙望遠鏡)のプロジェクト・チームと SETI 研究所が共同で、カール・セーガン博士にちなむエッセーを募集していましたが、その受賞作が今日発表されました:

上記のサイトに引用されているセーガン博士の言葉は印象的です。原文の雰囲気を壊しては申し訳ないので、翻訳はしません。我々が住む地球の表面を、宇宙という大海原に接する波打ち際にたとえています:
The surface of the Earth is the shore of the cosmic ocean. On this shore, we've learned most of what we know. Recently, we've waded a little way out, maybe ankle-deep, and the water seems inviting. Some part of our being knows this is where we came from. We long to return, and we can, because the cosmos is also within us. We're made of star stuff. We are a way for the cosmos to know itself.

セーガン博士の言葉は、トンデモ説や疑似科学的な主張に反駁する際にも引用されます。特に、“Extraordinary claims require extraordinary evidence.”(途方もない主張には、(それに応じた)途方もない証拠が必要である)(注1)というフレーズはしばしば目にします。以下はその例です。微妙に語彙が違っていますが、「Ctrl+F」キーを使って“Sagan”という文字列をページ内検索すると該当箇所がすぐに見つかります:

以下は、ワシントン・ポスト紙のブログに掲載された UFO関連記事です。読者が、肯定・否定などさまざまな立場のコメントを描き込んでいますが、その中にもセーガン博士の著書を読むように促すコメントがあります:

以下は、読者のコメントとその訳です:
Please read The Demon Haunted World by Carl Sagan before you go running around claiming that aliens are visiting our planet and/or the government is covering it up. I really miss scientific thinking and rational discourse in our society!

エーリアンが我々の惑星を訪れているとか、政府がその事実を隠蔽しているなどと吹聴してまわる前に、どうか、カール・セーガンの “The Demon Haunted World”(注2)をお読みになってください。科学的思考や理性的な話し合いが私たちの社会から失われていることが残念です。

(注1) このフレーズはセーガン博士の完全オリジナルというわけではありません。ウィキペディアの “Marcello Truzzi” についての解説によると、18世紀の哲学者デイヴィッド・ヒュームや数学者ピエール=シモン・ラプラスにまで遡るようです:
  • Sagan: Extraordinary claims require extraordinary evidence.
  • Truzzi: Extraordinary claims require extraordinary proof.
  • Laplace: The weight of evidence for an extraordinary claim must be proportioned to its strangeness.
  • Hume: A wise man, therefore, proportions his belief to the evidence.

(注2) 邦訳は、『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(新潮社)、『悪霊にさいなまれる世界 ― 「知の闇を照らす灯」としての科学』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 。


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2010年11月8日月曜日

ナイジェリアで火山噴火

11月 5日、アフリカのナイジェリアで火山噴火がありました:

噴火があったのは隣国カメルーンとの国境地帯にあるベヌエ州(Benue、ナイジェリアの州)。大きな震動とともに山の 6地点から噴火、溶岩が流出し逃げ遅れた少年 1人が死亡、多数の住民が着の身着のままで避難を余儀なくされているとのことです。

記事には噴火をおこした山の名前が書かれていません。USGS の火山地図で見る限り、ナイジェリア領内に火山の記載はありません。隣国カメルーンには、ベヌエ州やタラバ州(ナイジェリアの州)に近接してオク火山群(Oku Volcanic Field地図)があります。この火山群のナイジェリア側が噴火したということではないかと思います。

一方、John Seach という火山学者のウェブサイトには、ナイジェリアの火山としてビウ火山(Biu Volcano)が記載されています。しかし、その位置はナイジェリア北東部(10.75 N、12.00 E)であり、さらに最後の噴火が 84万年前と推定されているので、今回の噴火とは関係がなさそうです。

オク火山群には、有名なニオス湖があります。1986年 8月、この湖の底で何らかの爆発がおき、湖底に蓄積されていた 160万トンの二酸化炭素ガスの雲が山体斜面を急速に流下、湖から 20km 圏内にいた約 1,800人と家畜 3,500頭が窒息死しました。現在、このニオス湖の湖水を堰きとめている火山岩の天然ダムが決壊間近であるとの懸念が高まっています:

記事によると、ニオス湖の決壊によってナイジェリア領内に 1億 3200万立方メートルを超える水が流出、タラバ州を初めとするナイジェリアの 36州に被害が及ぶと見積もられています。


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2010年11月5日金曜日

エポキシ探査機がハートレイ第 2彗星に接近

11月 4日、NASA の彗星探査機エポキシが 103P/ハートレイ第 2周期彗星から約 700km のところを通過しました:

上の動画には、ハートレイ第 2彗星が自転しながら周囲に物質をまき散らしている様子が捉えられています。太陽に面した側で明るく輝く雲のようなものが発生し、それが自転にともなって反対側に回り込んでいます。

エポキシ探査機がハートレイ第 2彗星に最接近したおりに撮影した画像が以下にあります。まるで異形の宇宙船です。撮影順にしたがって左上から時計回りに画像が配列されています:

さらにアップの画像が以下にあります。中解像度の観測装置を使用したとのことで、あまり解像度がよくありませんが、ガスの噴出が彗星表面のどこで起きているかがはっきりわかります。太陽に面した側、夜の側、そして明暗境界線上からジェットが噴き出ています:

同じ彗星を地上のレーダーを使って観測した画像が以下にあります。エポキシ探査機が撮影した画像と比べてみてください:

ディープ・インパクトという彗星探査機を憶えている方も多いと思います。2005年 7月にテンペル第 1彗星に銅とアルミニウムからなる 重さ 370kg のインパクター(衝突体)を打ち込み、彗星の成分や内部構造を調査した探査機です。ディープ・インパクトは、テンペル第 1彗星の調査を終えた後も燃料などに余裕があったため、新たに 2つのミッションに転用されることになりました。それがエポキシです。エポキシ(EPOXI)は、新しい彗星(つまりハートレイ第 2彗星)を探査する「DIXI(Deep Impact Extended Investigation)」と、太陽系外惑星の観測を行う「EPOCh(Extrasolar Planet Observation and Characterization)」という 2つのミッション名を合成したものです。

今回エポキシが接近したハートレイ第 2彗星は、ディープ・インパクトの時に接近したテンペル第 1彗星の 100分の 1ほどの大きさで、長径 2.2km、質量 2億 8千万トン、公転周期は 6.46年、自転周期は 18時間ほどです。

NASA では、2つの異なる彗星をまったく同じ観測機器で接近調査し比較することは非常に有意義である、としています。


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2010年10月28日木曜日

地震予測プログラム

数ヶ月以内に発生する地震を予測するプログラムを比較するコンテストの結果、京都大学のプログラムが特に精度が高かったとのことです:

どういう手法で予測しているのかなど、詳しいことは記事に書かれていません。広島で開催中の日本地震学会で発表されたとのことなので、同学会の 「2010年秋季大会講演プログラム」(PDF 形式)を調べてみました。すると、「地震活動評価に基づく地震発生予測システムの構築に向けて」というセッションの中で、東京大学地震研究所が “Report on prospective evaluation of the 3_month CSEP_Japan earthquake forecasts” という発表を行っています。おそらくはこの発表に基づいて上記の記事は書かれたのだろうと思います。

CSEP については以下のサイトを参照してください:

どのような予測なのか、以下のブログ記事がわかりやすいと思います:

2010年10月26日火曜日

日暈は大地震の前兆だったのか ― インドネシア

昨夜(日本時間 25日午後 11時 42分、現地時間同日午後 9時 42分)、インドネシアのスマトラ島沖で大地震が発生しました。USGS(米国地質調査所)の発表では M7.7、気象庁の発表では M7.5 でした。大きな被害は出ていないようです。

以下の記事は、上記地震の 4日前にインドネシアのニュースサイトに掲載されたものです:

以下は記事の要約です:
  • 10月 21日の午前 10時ごろから、西スマトラ州・パダン市(地図)の上空で、太陽の周りに暈が出現した。
  • ほとんどの人が自宅やオフィスから外に出て、この自然の驚異を眺めたり写真に撮ったりした。
  • 多くの人たちが、この現象はパダン市を間もなく襲うであろう地震の前兆であると考え、不安を感じている。
  • 日暈が現れた時、空は晴れ渡っており、所々に小さな雲があるだけであった。
  • ウィキペディアによれば、日暈は、対流圏上部(高さ 5-10km)に現れる巻雲に含まれる氷の結晶によって起きる光学現象であるとのことである。

記事の書きぶりからすると、パダン市周辺では日暈がかなり珍しい現象であるように感じられます。

日暈が現れるときには、空にうっすらと靄か曇がかかっているように見える場合が多いですが、上の報道記事では空は晴れ渡っていて、所々に雲が浮かんでいる状態 (“the clear sky was only dotted with some clouds”) だったとのことです。

パダン市はほぼ赤道直下にあり、今回の大地震の震央からほぼ真北に約 280km 離れたところに位置しています。


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2010年10月25日月曜日

「かみなりきのこ」 ― キノコの生育と電磁気

昨日の記事「巨大キノコのオンパレード」では、巨大キノコの出現や、マツタケが大豊作だというニュースを取り上げましたが、それに関連して「かみなりきのこ」の研究を紹介します。今年の 4月にナショナル・ジオグラフィック誌のサイトに掲載されていたのですが、アイスランドの火山噴火があったため、このブログに書きそびれていたものです:

「日本では古くから落雷でキノコが豊作になるという言い伝えが信じられており、農家は農地への嵐の到来を歓迎してきた」、「1000万分の1秒間に5万~10万ボルトの電気を浴びせたときにキノコの生長が最も活発になることがわかった」、「今までに10種類のキノコで実験し、8種類で効果が確認された。最も効果が高かったのはシイタケとナメコ」とのことです。

ところで、巨大キノコの出現やマツタケの大豊作が伝えられる今年は、雷や落雷が多かったのでしょうか。包括的な統計データは見つけられませんでしたが、私が収集した気象関係の記事に以下のようなものがありました:

上記は長野県で発行されている 『信濃毎日新聞』 に 8月31日付で掲載された記事です。現時点では当該記事はサーバーから削除され、リンク切れ状態になっていますので、以下に一部を引用します:
今年6~8月に長野市の長野地方気象台が落雷を観測した日数は計20日に上り、過去10年で最多となったことが30日、分かった。

長野県以外でも同様の傾向であったとすると、巨大キノコの出現やマツタケの大豊作の一因が雷にあったのかも知れません。


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ムラピ山の警戒レベルが最高度に ― インドネシア

インドネシア・ジャワ島中央部にあるムラピ山(Merapi; 地図)は、かねてから火山活動の活発化が伝えられていましたが、その噴火警戒レベルが 10月 25日に最高度に引き上げられました:

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2010年10月24日日曜日

巨大キノコのオンパレード

北海道から九州まで、全国で巨大なキノコの報道が相次いでいます。今夏の猛暑や降水量の影響とのことです:

うれしいことに、今年はマツタケも大豊作です:

2010年10月23日土曜日

ニュージーランドの大地震と「硫黄の臭い」

ニュージーランド南島のクライストチャーチ市(地図)を中心とした地域で、現地時間 9月 4日(土)午前 4時半過ぎに発生した M7.0 の大地震(USGS 資料)では、地震以降少なくとも数日にわたって強い硫黄の臭い(strong smell of sulphur)がしたと報道されています:

井戸水も強い「硫黄の臭い」がしたため、沸騰させてしばらく放置しないと使えなかったとのことです。この場合の「硫黄の臭い」は、記事中に「ロトルアと同じような臭いがした」(it smelt similar to Rotorua)との文言があるので、硫化水素ガスの臭いと考えられます。ロトルア(地図)はニュージーランド北島の温泉地帯にある街です:

ニュージーランドの火山は北島に集中しており、南島にあるクライストチャーチ周辺に火山はありません。したがって、クライストチャーチ郊外に漂った「硫黄の臭い」は、本震あるいはその後に多発した余震と何らかの関係があるものと考えられます。


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硫黄の臭い?

このブログの 10月 20日付記事 「地震を予知していた女性 ― 米国・オクラホマ州」 で紹介した女性は、「硫黄の臭い」をもとに地震を予知していたということでした。この「硫黄の臭い」は文脈から硫化水素ガスの臭いであろうということがわかるのですが、「硫黄の臭い」という表現には曖昧なところがあります。

日本の地震前兆関係の掲示板でも、ときおり「硫黄の臭いがしています」という類の報告が見受けられます。短い報告文の場合、文脈から推定できないので、どのような臭いがしたのか解釈に迷います。

なぜ「硫黄の臭い」では曖昧なのでしょうか。それは、硫黄は常温では固体で臭わないからです。もちろん、硫黄の塊に鼻を近づけたり、細かく砕いた粉末を吸い込んだりすれば何らかの臭気を感じるかも知れませんけれど、「硫黄の臭い」を報告している人が感じているのはそのような臭いではないはずです。

つまり「硫黄の臭い」という言葉では、どんな臭いがしたのか明確ではありません。

可能性が高いのは、上記の記事と同じ硫化水素ガスの臭いか、硫黄が燃えたときなどに発生する亜硫酸ガス(二酸化硫黄ガス)の臭い(刺激臭)でしょう。前者であれば「温泉の臭い」、「腐った卵のような臭い」、「下水のような臭い」、後者であれば「硫黄が燃えたような刺激のある臭い」というように具体的に表現すれば、第三者にもわかりやすいと思います。

「メタン(ガス)のような臭い」という表現も見かけることがあります。しかし、メタンガスにも臭いはありません。無色無臭の気体です。これも実際は硫化水素ガスの臭いを表現している場合が多いようです。


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2010年10月22日金曜日

異常湧水 ― 静岡県富士宮市

静岡県富士宮市淀師(地図)で湧水量が増え、市が警戒本部を設置しました:

記事から摘記します:
  • 富士宮市淀師で湧水量が増え、住宅地調整池の一部が浮き上がるなどしている
  • 1998年に発生した異常湧水に比べれば、水位はまだ低い
  • 同じ富士山周辺の富士市は異常なし、三島市は目立った動きはないが地下水位は高め、山梨県側の富士五湖の水位は高めになっている
  • 台風9号による豪雨で市内の9月の雨量が大きく増えたことが原因か

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2010年10月20日水曜日

地震を予知していた女性 ― 米国・オクラホマ州

アメリカ合衆国中部のオクラホマ州で、現地時間 10月 13日(水)午前 9時過ぎ、 M4.3 の地震がありました。震央は同州の州都オクラホマ・シティの南南東 35km の地点で、震源の深さは 13km とされています(USGS 資料震央地図)。報道によると、数名の負傷者が出たとのことです。

日本に比べると地震がきわめて少なく、有感地震をまったく経験せずに一生を終わる人も多い土地柄ですので、人びとの受けたショックは相当なものだったようです。このめったにない地震を予知していた女性がいると、テレビ局系のニュースサイトが報じています:

以下に記事を抄訳します:
オクラホマ州エドモンド市(州都オクラホマ・シティの北約 20km、地図)に住むジェニファー・ビンガムさんは、地震の数週間前から、同市内の小川や川から発生する硫黄の悪臭(sulfur stench)に気づいていた。その臭いは地震発生の 2日前にもっともひどくなり、エドモンド市全体が下水道のように臭った、と彼女は語る。

「空気中に硫黄の臭いが漂っていて(smell sulfur in the air)、うちの近所の小川(複数)からものすごく強く臭って来たの。いままで、あんなに強く臭ったことはなかったわ」とビンガムさんは言う。

ビンガムさんはこれまでにも地震を経験している。彼女はカリフォルニア州からオクラホマ州に引っ越してきた。カリフォルニア州では、1989年 10月 17日にサンフランシスコ湾一帯を揺らした M6.9 の “Quake of '89” とよばれる地震(訳注:ロマ・プリータ地震)を経験している。

ビンガムさんによると、硫黄の臭いがする水(sulfur scented water)は大地震の最初の兆しで、地震発生前の数週間継続するとのことである。

「オクラホマ州に引っ越してきたのは、地震から逃れたかったから。カリフォルニア州に住んでいる両親を訪ねることすら嫌なんです。だって、カリフォルニア州でもうじき起こるといわれているビッグ・ワン(大地震)が怖くてしかたがないんです。ビッグ・ワンは発生時期を大幅に過ぎていて、いつ起きても不思議はないといわれているでしょ。」

ある地震学者(名前は記載されていません)は次のように語っている ―― 硫黄の臭い(sulfur smell)にもとづいて地震を予知することは可能である。世界中でそのような研究が行われている。硫黄の臭い以外にも、耳鳴り、吐き気、地震を予期したときのペットの静止状態などが地震の予兆と考えられている。

記事では「硫黄の臭い」(sulfur smell、sulfur stench など)という言葉が使われています。この「硫黄の臭い」は、「下水道のように臭った」や「近所の小川からものすごく強く臭って来た」という記述から、硫化水素ガスの臭いであると考えられます。

日本のようにほぼ毎日どこかで地震が発生する場所で 「地震が来る」 と何度も繰り返していれば、いつかはその「予知」が的中するのは当たり前で、そのような「予知」に価値はありません。一方、上記記事に見られるオクラホマ州のケースは、地震がまれな地域で、しかも同州の観測史上でもトップ 5(報道記事によってはトップ 2)に入るほどの規模の地震、つまり地震の中でも稀な地震を予測していたという点で、注目に値すると思います。


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