2011年8月8日月曜日

エレーニン彗星についての Q&A (その2)


『ユニバース・トゥデイ』(Universe Today)誌所載FAQからの抜粋・テキトー訳の続きです:

エレーニン彗星は地震や異常な高潮、その他の災害を引き起こしますか?: いいえ。エレーニン彗星は直径3~5kmほどしかなく、地球に最も近づくときでもその潮汐力は月の10億分の1以下でしかありません。同様に、磁場の影響も無視できる程度です。月が、地球の地軸を傾けたり、高潮による大規模な洪水や地震を起こせないのですから、エレーニン彗星にもできるわけがありません。もっと地球に近づいた彗星がこれまでにもありましたが、悪影響はまったくありませんでした。

でも、Mensur Omerbashich氏の論文はエレーニン彗星が地震を引き起こすと指摘していますが?: その論文は、エレーニン彗星が地震を引き起こすことを論証できていません。彗星と地球の位置関係によって、ふだんよりも地震が増えることはありません。

でも、エレーニン彗星は木星よりも大きいそうじゃないですか!: いいえ。それはコマについての話です。コマとは、彗星の核を取り巻いている薄くかすんだガスや塵のことです。エレーニン彗星の核は直径がおおよそ3~5kmですが、コマの方はこの記事を書いている時点で約5万km(木星の直径の3分の1)に広がっています。コマの密度は、だいたい月の大気の密度と同じ程度です。太陽に近づく彗星のすべてにコマがあります。たとえば、〝81P〟ワイルド彗星(核の直径 4km)には5万kmに広がったコマがありました。また、〝103P〟ハートレー彗星の場合はコマが15万kmに広がっていました。1811年の大彗星は核の直径が約30kmで、コマは太陽(140万km)と同じぐらいの大きさでした。ハートレー彗星は核の直径が6×15kmありますが、最後に地球に近づいたときのコマは10万kmにまで広がっていました。私たちはそれらの彗星の接近によって滅亡することはありませんでしたし(〝103P〟ハートレー彗星はエレーニンが近づくとされている距離の半分まで地球に近づきました)、今度のエレーニン彗星の接近も何事もなくやりすごすことになるでしょう。

しかし、WikiSkyに掲載されているエレーニン彗星の写真は巨大ですよ!: それは(エレーニン彗星ではなくて)しし座CW星(CW Leonis)という炭素星です。

エレーニン彗星は褐色矮星の衛星ではないのですか?: いいえ、違います。
でも、褐色矮星は非常に温度が低いので、観測できないのではありませんか?(だからエレーニン彗星が褐色矮星の衛星であることがわからないのではないですか?): いいえ、そんなことはありません。これまでに見つかっている褐色矮星のうちで、もっとも温度が低いものは絶対温度でおおよそ370度(ホットコーヒーの温度程度)、もっとも温度が高いのは2200度前後で、ほとんどの褐色矮星の温度は500度から1000度の範囲です(絶対温度≒摂氏温度 + 273)。褐色矮星は低温であるため、自分から可視光線をだすことはあまりありませんが、光を反射します。木星は褐色矮星と同じような組成を持っています。木星の雲の最上部は絶対温度で128度と低温ですが、ちゃんと光を反射しています。褐色矮星が太陽系の内部に入ってきたとしたら、目が痛くなるほどはっきりと見えることでしょう。

地球が彗星の尾の中を通過したら、私たちに悪い影響があるでしょうか?: エレーニン彗星の尾はかなり小さいものですが、仮に地球がその中を通り過ぎても影響はありません。尾の密度は真空に近く、1立方cmに原子が100個程度の希薄さです。人類は、もっと巨大で密度の高い彗星の尾の中を通り過ぎたことがあります(1910年のハレー彗星や1861年の大彗星)が、いかなる影響も受けませんでした。

(続く)