まず下記の地図を見てください。土星の衛星タイタンの地図で、今年 1月に更新されたものです。現在も土星を周回中の探査機カッシーニが撮影した映像をもとに作られています:
タイタンには地球の 1.6倍もの表面気圧を持つ厚い大気があるため、地表の模様は今ひとつ鮮明ではありません。そのタイタンの赤道上に「SENKYO」という地名があるのに気づかれると思います。日本語的な響きがします。でも、「センキョ」って何でしょうか。まさか「選挙」じゃないでしょう。ATOK の変換候補で他に出てくるのは「船渠」や「占拠」ですが、どれも地名にふさわしいとは思えません。
で、調べてみると「センキョ」ではなく「センキョー」と読むのが正しいようです。そして漢字では「仙境」あるいは「仙郷」。パラダイスとかユートピアに相当する言葉を世界各国の言語から集めて、命名しているようです。同じ範疇に属する「シャングリラ」や「ザナドゥ」という名前も、同じく赤道地帯の地名として採用されています。
以下にタイタンの地名リストがあります。「Senkyo」以外に「Hotei」(布袋)と「Shikoku」(四国)が日本語から採用されています:
「Hotei Arcus」の「Arcus」は弧状の地形、「Shikoku Facula」の「Facula」は白い斑点を意味しています。
日本語から選ばれた言葉に一貫性がない感じがします。「仙郷」なんていう言葉は今時の日本人はあまり口にしないでしょう。「日本の神様の名前」のトップバッターがなぜ「布袋」なのか、島の名前を挙げるにしてもなぜいきなり「四国」なのか、理解に苦しみます。地名の選定に日本人が参加していないか、参加していたとしてもあまり日本の文化や言葉に詳しくない日系人で、言われるがままに日本語を選んだのではないか、という印象です。
Image: Cassini's View of Titan; Credit: NASA