2009年12月30日水曜日

スフリエヒルズ山の噴煙が定期航空便に影響

カリブ海・英領モントセラト島にある火山スフリエヒルズ山は以前から活発な活動を続けていましたが、29日、定期航空路の飛行に影響を与える事態をおこしています:
モントセラト島とスフリエヒルズ山の位置は以下の地図で確認できます:
以下は、NASA の Aqua 衛星搭載の MODIS(中分解能撮像分光放射計)が捉えた噴煙の様子です。右上の「Resolutions:」と書かれているところで、3種類の解像度を選択することができます:

「体感」 噴火予知

フィリピンでは、マヨン山の火山活動が活発化し、周辺住民の避難生活が続いています。そんな中、この火山の噴火を傷の痛みで予知できるという高齢の女性の存在を、フィリピンの新聞が伝えています:
以下は、記事の要約です:
「ローラ・マヨン」として知られるベロニカ・ペレスさん、76歳。1993年、森の中で根菜類を集めているときに、高温の熱風に全身が包まれるのを感じた。溶岩によって四肢や背中に大やけどを負ったのである。さいわい、すぐに病院で治療を受けることができたので、一命はとりとめた。

この出来事が彼女の人生を変えた。彼女の背中には、ドーム状に盛り上がった傷が残った。これがほんのわずかでも痛むとき、マヨン山は噴火するのだという。それまでは「ローラ・ベル」(ベルはベロニカの略)と通称されていたが、「ローラ・マヨン」と呼ばれるようになった。この新しい名前は、彼女の能力がいかに多くの人たちの注目を集めたかを如実に物語っている。

「ここに避難してくる 1週間前、背中の古傷がひどく痛みました。私は家族に、マヨン山が噴火するかも知れないと告げました。」

彼女は、2004年、2006年、そして今年の噴火も背中の古傷の痛みによって予知し的中した、と語っている。

ローラ・マヨンの「予知」したことは、火山の専門家が記録したこととそれなりに一致している。

ローラ・マヨンは、自分の能力を使うことに消極的になっている。それは、冷笑やあざけりをこれまで何度も経験しているからである。「みんな、私のことを笑います。私が年をとって物忘れがひどくなっていると言うのです。」

「以前は、背中の古傷が痛むといつも人びとに伝えていました。でも今は、自分の子どもたちだけにしか話しません。それでも、家族以外の人たちにもある程度は伝わるようです。海外からも私をインタビューしに何人かがやって来たことがあります。日本からと、ベトナムからです。私の話は、アメリカにも伝わっていると聞いたことがあります。なぜだかはわかりませんが。」

隣人の一人は、彼女の「予知」を信じているが、彼女の能力を盲信しているわけではないと言っている。「俺は彼女のことをおおよそ 50% 信じている。火山の噴火は自然が決めること。自然は説明できない。火山学者たちを見てみろ。連中は精密な観測装置を持っているが、いつ噴火するのかを正確に言い当てることができないじゃないか。」

見かけは弱々しいが快活な女性であるローラ・マヨンは、「火山噴火について警告して人びとを助けたいという熱意は、人びとが彼女を信じてくれないために、しばしば誤解される」とこぼす。

彼女は、火山を恐れていない。なぜなら、救い主がいつも彼女を守ってくれていると信じているから。「身に危険が迫ったときには、ただひたすら“Salvador del Mundo, Salva me, Salva ran man ako, ikaw”(*)と唱えるのです。」

(*)スペイン語とタガログ語の混合? 少なくとも“Salvador del Mundo”は、スペイン語で「世界の救い主」の意。
いわゆる「体感」にもとづく地震や噴火の予知についての私の考えは、過去の「体の痛みで地震予知」という記事にも書きましたので繰り返しません。そちらをご覧いただければ幸いです。


過去の関連記事

世界の自然災害、2009年は少なめ

実感とは必ずしも一致しませんが、2009年におきた自然災害による被害は比較的少なめだったそうです:
「大きな災害が少なかったことや北大西洋のハリケーンシーズンが穏やかだったこと」が理由として考えられるとのことです。自然災害で亡くなった人数は約 1万人で、これまでの平均 7万 5千人を大きく下回っているそうです。最大の死者数を出したのは、9月にインドネシアで発生した M7.6 の地震で、約 1200人が亡くなったとのことです。

アシカの群が姿を消す ― サンフランシスコ

サンフランシスコ市のピア 39(39番埠頭)に居着いていたアシカ(sea lions)の大群が、急に姿を消してしまいました:
39番埠頭に最初のアシカが現れたのは、1989年のロマ・プリータ大地震の直後でした。その後、徐々に数を増やし、今年 10月下旬には 1700頭余りに達していました。アシカの出現当初は、埠頭の使用の妨げになり、また悪臭が周辺のレストランや土産物店の営業に悪影響を及ぼすということで、追い払うことが試みられましたが、うまくいきませんでした。その後は、アシカとの共存を目指すさまざまな方策がとられ、ピア 39のアシカの群はサンフランシスコ市にとって大きな観光資源となっていました。来年 1月にはアシカの群の出現 20周年を記念するイベントが催されることになっていましたが、先行きが怪しくなっています。

原因としては、温暖化や海流の変化によるエサ不足ではないかとの説が出されています。しかし、大地震の直後に出現した動物の群が姿を消すということは、地震との関連がどうしても頭をよぎります。サンフランシスコ市は、サンアンドレアス断層かその支脈の活動による大地震にいつ襲われてもおかしくないと言われています。

冥王星までの中間点を通過

冥王星探査機・ニュー・ホライズンズが、12月 29日に地球と冥王星の中間点を通過しました。この日以降、地球よりも冥王星の方が、ニュー・ホライズンズに近くなりました:
ニュー・ホライズンズは 2006年 1月に、太陽系最外縁の「惑星」である冥王星を目指して打ち上げられましたが、同じ年の 8月に開かれた国際天文学連合(IAU)の総会で、冥王星は「準惑星」(dwarf planet)に格下げされてしまいました。「格下げ」と後ろ向きに考えるよりは、新たに設けられた準惑星というグループの代表格になったと理解すれば良いのかも知れません。「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉もあることですので。

以下の写真は、ニュー・ホライズンズが木星の重力を利用して加速するために木星系に近づいた時に撮影されたもので、木星の衛星が 2つ写っています。右上がイオで活火山の噴火が捉えられています。左下がエウロパで、氷の表面の下に海洋があり、ひょっとしたら何らかの生命が存在しているのでは、と言われている天体です:
ニュー・ホライズンズが冥王星系に到達するのは 2015年になります。冥王星を通過した後は、カイパー・ベルトの調査に向かうことになっています。

以下は、ニュー・ホライズンズのプロジェクト・チームが発信しているツイッターのメッセージです:

2009年12月29日火曜日

リダウト山に再活発化の兆し

アラスカのリダウト山は、今年前半、噴火を繰り返しました(下記「過去の関連記事」参照)。噴煙が定期航空路に危険を及ぼし、泥流が麓の石油基地にせまるなど、大きな影響が出ました。その後は、山頂に溶岩ドームを形成し、噴火活動は沈静化していました。

しかし、再び活発化する兆しが現れました。日本時間の 12月 28日午前から山頂付近で微小な地震がおきるようになり、アラスカ火山観測所(AVO)は、航空機に対する警戒レベルをイエローに引き上げています。山頂部の微小な地震は、新たな噴火活動の前兆である可能性があり、また、山頂の溶岩ドームの不安定化も懸念されるとのことです。

以下は報道記事の例です:

過去の関連記事

2009年12月28日月曜日

スマトラ島沖大地震と超強磁場中性子星の巨大フレア

テレビや新聞等で報道されているように、2004年 12月 26日に発生したスマトラ島沖大地震(M9.1 ~ 9.3)とそれに伴うインド洋大津波の発生から 5年が経過し、各国で犠牲者を悼む催しが行われました。この災害では、日本人も数十人が犠牲になっています。

この大災害直後の 12月 27日から 28日にかけて、地球が天文学的な大嵐に襲われたことを記憶している方は少ないと思います。超強磁場中性子星(マグネターSGR 1806-20 の巨大フレアが送り出した、観測史上最大強度の宇宙ガンマ線やエックス線が地球に到達したのです。SGR 1806-20 は、地球から「いて座」の方向に 5万光年離れたところにあり、銀河系中心を挟んで太陽系の反対側に位置する天体です。飛来したガンマ線の強度があまりにも強かったため、軌道上の観測装置のほとんどは飽和するか故障する事態になりました。また、地球の大気上層部も電離し、地球の磁場が大きく変動しました:
当時のことをふり返って、もしスマトラ島沖大地震と観測史上最強の宇宙ガンマ線飛来の前後関係が逆だったらと考えると、実にイヤな気分になります。疑似科学やトンデモ説をもてあそぶ人たちに、格好の材料を与えることになったであろうと思うからです。そして、太陽面でフレアが発生したり、地球の磁気圏が乱れたりするたびに、そのような人たちが「地震が起こるゾ」と大騒ぎする様子が目に浮かびます。当時も、時差の関係などを持ちだして、大地震と宇宙ガンマ線の前後関係を何とか逆転させ、無理矢理、宇宙ガンマ線を大地震の原因に仕立て上げようとする人たちがいたものです。

2009年12月27日日曜日

沖縄地方の今年の地震

沖縄気象台が 12月 22日付で以下の文書を公開しています。今年の沖縄地方の気象と地震の傾向をまとめたものです:
地震については、「沖縄地方とその周辺で観測された地震は、9,852 回(前年 5791回)であった(12月 19日現在)。また、沖縄気象台管内で震度 1以上を観測した地震は、77 回(前年 59回)で、震度 3以上を観測した地震は、6回(前年 5回)であった」とのことです。

マヨン山の地震回数が減少

フィリピンのマヨン山周辺では、金曜日から土曜日にかけて、火山性の地震が減少しています:
避難所暮らしを強いられている周辺住民は、このまま火山活動が沈静化に向かってくれれば、との思いが強いようですが、専門家の見解は逆です。地震回数の減少は、より大規模な爆発的噴火の前兆であり、火山活動は長引くとの見方が大勢です。


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2009年12月25日金曜日

大量のイワシ漂着 ― 千葉県

今月 22日頃から、千葉県の海岸に大量のイワシが打ち上げられています:
原因については、諸説あるようです:
  • 漁船が取れすぎたイワシを捨てた
  • 浅瀬に集まり過ぎて行き場がなくなったイワシが、波で打ち上げられた
  • イルカなどに追われ、逃げ場を失った
  • 海流や海水温の変化

加速しながら移動する磁北極

地磁気の北極が、カナダ北部から速度を上げながらシベリア方面に移動していることは以前から判明していましたが、さらに新しい研究が発表されたようです:
この記事によると、磁北極は「1年に約 64キロというスピードでロシアへ向かって移動」しているとのことです。次のような記述もあります:
磁北は 1831年に発見されてからしばらくは、ほとんど移動していなかった。しかし 1904年に、年間約 15キロの安定した速度で北東方向へ移動し始めた。1989年にはさらにスピードが上がり、2007年には年間 55~60キロの速さでシベリアに向かって移動中であることが確認された。

「南海地震は予知できる」

1946年に発生した昭和南海地震の前兆を集めた本『南海地震は予知できる』(中村不二夫、高知新聞企業)を、朝日新聞が紹介しています:
「地震の前は海全体がくさかった」そうです。

人の記憶は本人の自覚なしに変容するものです。半世紀以上前の記憶を最近になって収集しても、信憑性には疑問符がつくのではないでしょうか。とは言うものの、私はこの本を購入するつもりです。

土星のヘキサゴン、タイタンの輝く湖

“スプリング・ハズ・カム”(春が来た)は、日本人が英語の「現在完了」を学ぶときに最初に出くわす文章ではないでしょうか。現在、土星やその衛星の北半球は、まさに“スプリング・ハズ・カム”状態です。これまで十数年にわたって日の当たらなかった北極圏に太陽光が届くようになり、新たな観測が可能になっています。

以下は、土星を周回中の探査機カッシーニから送られてきた画像をつなぎ合わせた動画です:
土星の北極圏を可視光線で撮影したものですが、六角形(ヘキサゴン)をした大気の流れが写っています。地球にもあるジェット気流が蛇行しているものと考えられていますが、なぜ六角形になるのかは分かっていません。

2006年末に撮影され、翌 2007年に公開された画像にも六角形が写っています。このときは土星の北半球が冬で、北極圏に太陽光が届かないため、可視光線ではなく赤外線で撮影しています。そのため、上記の画像に比べると解像度が劣っています:
土星系最大の衛星タイタンの北半球にも春が訪れています。これまで日の当たらなかった北極圏にある、液体の炭化水素(メタンやエタンなど)をたたえた湖が太陽光を反射して輝いています:
写真は今年 7月に撮影されたものですが、この輝きが雷などの発光現象や火山の噴煙などでないことを確認する作業を経て、このほど公開されました。Kraken Mare(クラーケンの海)と名付けられた湖の南岸部分が、太陽光を反射して輝いているものと考えられています。Kraken Mare は面積約 40万 km² で、地球最大の湖であるカスピ海(37万 km²)や、日本の国土面積を上まわっています。


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2009年12月24日木曜日

NORAD のサイトでサンタを追跡

NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)が恒例の特設サイト “Santa Tracker” を設けています。日本語版も用意されています:
グーグル・マップ上でサンタクロースの現在位置を確認できるほか、NORAD がサンタを追跡する理由も説明されています。

伊豆半島の群発地震と地域限定法則

このブログの 12月 11日付記事「地域限定で地震活動に一定の法則」で、伊豆半島東方沖の地震には以下のような法則があるということを紹介しました:
伊豆半島東方沖: 地震の回数や活動の日数などが、伊豆半島にある「ひずみ計」で観測される地殻変動の値にほぼ比例する
上記記事を書いたときには、まだ伊豆半島の群発地震は始まっていませんでした。その後、群発地震が激化したころ、テレビの報道番組に静岡大学の小山真人教授(名前を示すテロップを見たのが一瞬だったので勘違いかも知れません)が出演して、概略次のように述べていました:
今回の地震では、事前に観測されていたひずみ計などの地殻変動の変化があまり大きくない。したがって、今回の地震はそれほど長く続かずに終息するだろう。火山噴火にいたる可能性も高くない。
まさに、上記の地域限定法則が使われているようです。現在までのところ、小山教授が語ったとおりに推移していることは、皆さんご存知のとおりです。

大地震発生懸念高まる ?

以下は、伊豆の群発地震がまだ収まっていない時期(12月 19日)に『夕刊フジ』が掲載した記事です。サラリーマン向けのいわゆるタブロイド紙ですので、センセーショナリズムに傾いているきらいがありますが、興味を持つ方もおられると思います:
多くの専門家が否定する中で、琉球大学名誉教授の木村政昭氏が次のように警告しています:
これまで発生した大地震では、地震発生前に震源地の周辺部にある活動層の動きが活発化し、大小の地震が頻発する現象がたびたび起きている。今回の群発地震がこうした現象の一種であるならリスクが高まったとみるべきです。

東海地方以外にも今後 10年以内に M6.5- 7 以上の大地震が発生する懸念がある地域は茨城県水戸沖、千葉県北東部、東京の 3つだ。

中でも水戸沖は、中心のプレート周辺の活断層の活動が激しくなっている。今後 4年以内に大地震が発生する危険性が高い。
木村氏の指摘する「千葉県北東部」とは少しずれていますが、今朝は千葉県東方沖を震源とする最大震度 3の地震が 2回おきています:

太陽と月とサンアンドレアス断層

イギリスの学術雑誌『ネイチャー』の 12月 24日号に掲載される論文の紹介記事が、主立ったニュースサイトに掲載されています。カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが執筆したもので、論文の内容は ―― サンアンドレアス断層の地下 25km 付近で発生しているマグニチュード 1クラスの微小地震が、太陽や月による潮汐に非常に敏感に反応していることから、これらの微小地震は地下に閉じこめられた高圧の水が岩石間に存在することによって発生していることが判明した ―― というものです。以下は、紹介記事の例です:
地下 25km 付近の圧力は 600メガ・パスカル。それに対して、太陽や月による潮汐が引きおこす応力は 100パスカル(1000分の 1気圧)程度で、600メガ・パスカルの 600万分の 1。それでも、微小な地震を引きおこしうるのは、超高圧の水が存在しているからだ、という結論です。

この種の研究成果が発表されると、トンデモ説を事とする人たちが研究内容をよく理解することなしに、勝手な拡大解釈をおこないますので注意が必要です。太陽や月による潮汐が大きな地震のきっかけになるか否かについては、今回の研究チームのメンバーは直接の関係があるとは考えておらず、次のように述べています:
Though tides raised in the Earth by the sun and moon are not known to trigger earthquakes directly, they can trigger swarms of deep tremors, ……

(太陽と月によって引きおこされる潮汐が直接地震のきっかけになることは知られていないが、地下深いところで発生する多数の震動のきっかけにはなりうる、 ……)
さらに、次のようにも述べています:
These tremors represent slip along the fault 25 kilometers (15 miles) underground, and this slip should push the fault zone above in a similar pattern, …… But it seems like it must be very subtle, because we actually don't see a tidal signal in regular earthquakes.

(これらの(微小な)震動は、地下 25km で断層に沿った滑りが発生していることを示しており、この滑りは上部の断層帯を同様のパターンで押している、…… しかし、それは非常に微弱だと考えられる。なぜなら、通常の地震には潮汐の影響が実際のところ見られないからである。)

2009年12月23日水曜日

桜島の活動予測

桜島が、観測開始以来最多の年間爆発回数を記録したことを受けて、京都大学防災研究所火山活動研究センターと鹿児島地方気象台が記者会見を行いましたが、その内容を各紙が各様に伝えています:
同じ情報源に基づいていても、記事のタイトルから受ける印象はかなり違います。3つの記事をまとめると ―― 「桜島北側の姶良カルデラ海底にあるマグマだまりが膨張し、一部が桜島の南岳直下に移動」しているので、「約1年前に比べて桜島に供給されるマグマが約10倍に増え」ているが、「小規模な噴火を繰り返すことで、火口直下にマグマがたまりにくい状況になって」おり、「大規模な爆発の可能性は低い」。しかし、「最終的には溶岩流出に至る」見通しである ―― というところでしょうか。

2009年12月17日木曜日

伊豆沖の地震

伊豆沖で地震が続いていますが、無感地震を含めると 100回を超えているそうです:
「火山活動が原因とみられるが、群発地震ではない」とのことです。20年前には、伊東市沖で手石海丘が噴火しています。当時は、観光客が激減して大変だったそうです。

カムチャツカ半島の火山が噴火

カムチャツカ半島にあるベズイミャンヌイ火山が、今日午前から噴火を始めました。日本-北米間などの定期航空路を飛行する航空機に影響を与える可能性があるとのことです:
ベズイミャンヌイ火山の位置は、以下のグーグル・マップで緑色の矢印で示されています:

過去の関連記事

2009年12月16日水曜日

リュウグウノツカイ漂着 ― 富山県

15日、富山県黒部市の黒部川河口付近で、体長約 4m の深海魚・リュウグウノツカイが打ち上げられているのが発見されました:
「平成13年にも黒部市の浜で見つかっています」、「見つかること自体が珍しく、非常に貴重な魚。14日からの荒天で打ち上げられたのではないか」とのことです。

黒部川の流れ込む富山湾では、下記「過去の関連記事」にもあるように、11月 22日にクジラの大群が遊泳しているのが見つかっています。


過去の関連記事

2009年12月15日火曜日

マヨン山から溶岩流出

フィリピンのマヨン山で、大規模な噴火の可能性が高まっています。マヨン山は、今年の 7月から活発化し始め、噴煙を上げるなどしたため、11月半ばには山麓の住民が避難を始めていました。その後、しばらくは沈静化の兆候を見せていたのですが、今月初めから再び活発化、ここに来て顕著な溶岩の流出が始まりました。以下は、Phivolcs (Philippine Institute of Volcanology and Seismology ― 火山と地震について日本の気象庁に相当する役割をもつ機関)のサイトに掲載されたマヨン火山情報です:
上記情報によると、溶岩は火口から 3km の地点まで到達、過去 24時間の火山性地震は 83回、二酸化硫黄ガスの放出は、1日あたり 535トンから、昨日朝の測定で 757トンに増加しているとのことです。

マヨン山の位置は以下のグーグル・マップで確認してください:
マヨン山の東にはフィリピン海溝があり、フィリピン海プレートが沈み込んでいます。上記グーグル・マップの航空写真で、フィリピン海溝からマヨン山の方向に亀裂が伸びていることに注目してください。

以下は、アルジャジーラの記事です。山頂から溶岩が流れ下っているマヨン山の夜景(夕方ではなく早朝に撮影した可能性が高い)の写真が載っています。日本の富士山が噴火したとしたら、駿河湾から眺めた光景はこれに近いものになるのかも知れません:

過去の関連記事

2009年12月13日日曜日

堺市が独自の地震被害予測

堺市が独自の地震被害予測を公表しています:
大阪府の被害想定と比べると、「震度5弱~7の上町断層帯の地震では、ほぼ同程度だった」そうですが、その他の地震では、堺市の被害想定が大幅に上回ったとのことです。その他の地震とは、生駒断層帯(震度 7)、中央構造線断層帯(震度 7)、東南海・南海地震(震度 6強)です。

10日未明に桜島で人工地震 (続報-2)

南日本新聞がダイナマイト発破の様子を撮影した動画を掲載しています:
ダイナマイト発破というと、アクション映画などでの派手な爆発シーンを思い浮かべる方も多いかと思いますが、実は地味なものです。炎も上がらず、音も試験管内の(水素と酸素の)爆鳴気のようです。


過去の関連記事

イノシシ大暴れ ― 和歌山県

12日(土)夜から 13日(日)明け方にかけて、和歌山市中心部の駅前や住宅街で体長約 1m のイノシシが暴走、負傷者が 3人出ています:
「こんな所にイノシシが出没するのは珍しい」(和歌山西警察署)、「これまで付近でイノシシが目撃されたことなどなかったのに……」(負傷者の隣人)。

2009年12月12日土曜日

クリスマス・カード

ハッブル宇宙望遠鏡のサイトが、クリスマス・カードのデザインを無償で公開しています。Space Telescope Science Institute(STScI、宇宙望遠鏡科学研究所)がおこなう、アウトリーチ活動の一環です:
見るだけでも十分に楽しめます。私の好みは、これと、これと、これです。

Image credit: NASA and STScI

新年へのカウントダウン

Google(英語版)のページで、検索ワードを入力せず“I'm Feeling Lucky”ボタンを押すと、大きな書体で数字が表示されます(この記事を書いている時点で 7桁)。どこにも説明が見あたらないのですが、計算してみると 2010年 1月 1日の午前 0時にゼロになりそうです。お試しあれ。

2009年12月11日金曜日

地域限定で地震活動に一定の法則

NHK の報道です(短時間でリンク切れになります):
どんな法則かというと:
伊豆半島東方沖: 地震の回数や活動の日数などが、伊豆半島にある「ひずみ計」で観測される地殻変動の値にほぼ比例する

茨城県沖: マグニチュード7前後の大地震が起きる前に、前震がある

大分県中部: 地震が起きる場所によって規模や活動の期間などが異なる
といったものです。政府の地震調査委員会では、これらの法則を使って地震の規模や時期を予測し、その情報を発表するための方法を検討していくそうです。

2009年12月10日木曜日

日本一小さい火山

「日本一低い」ではなく、「日本一小さい」火山の紹介記事です:
昔、何度か行ったことがあります。なつかしい。頂上まで簡単に登れ、火口の中に下りることができます。火口といってもそれほど深いものではなく、くぼ地と言った方がよいかも知れません。いまは使わなくなった「死火山」という言葉がぴったりで、火山ガスの噴出などの活動はまったくありません。1回の噴火で山体が形成され、その後はまったく噴火していないとのことです。火口の縁は、常緑樹やシダ植物が茂っており、「シダの洞窟」(ハワイ・カウアイ島)のような雰囲気がありました。

笠山のふもとには風穴がいくつもあり、一年中ほぼ一定の温度の風が吹き出しています。汗ばむ季節には、この風がとても爽快です。辺りには、観光客向けに地元で取れたサザエを壺焼きにするいい匂いが漂っていました。

笠山のふもとでもう一つ忘れてはならないのが、明神池です。海跡湖で、国指定の天然記念物になっています。

以下に関連資料のリンクを掲げます:
  • 笠山(ウィキペディア)(「世界最小の火山」と書かれていますが、これは事実ではないと思います。火山の定義にもよりますが、世界にはもっと小さい火山がいくつもあります。)
  • 萩 笠山
  • 笠山(グーグル・マップ)

ノルウェー上空の奇怪な現象

とりあえず、記事のみ紹介します。ロケットの排気が原因か? 詳細は後ほど:

10日未明に桜島で人工地震 (続報)

予定どおり、今日未明に人工地震による調査がおこなわれました:
「北東部を重点的に調査したのは、(中略) この区域が鹿児島湾海底のマグマだまりから火口の下へマグマが移動する経路である可能性が高いとみられるため」とのことです。


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2009年12月7日月曜日

マラウイで連続地震

東アフリカのマラウイで日曜日の夜から、中規模の地震が連続して発生しています:
震源はマラウイの北部で、ウラニウム鉱山の分布する地域です。これまでに少なくとも 12回の地震が発生。最大規模は M5.8 で、震源の深さはほとんどが 10km 前後。これまでに 6人の負傷者が報告されており、その内 2人は重傷とのことです。

マラウイという国の場所を、地図上で即座に指し示せる人は少ないと思います。以下のグーグル・マップで位置を確認してください:
地震がおきている場所は、大地溝帯の南端部にあたります。USGS(米国地質調査所)の資料でも、今回の地震の発震メカニズムが正断層タイプであることが示されており、地溝が開くことにともなう張力が主体となった地震であることがわかります:
南アフリカ共和国・ヨハネスバーグ西方にある生産量世界第 4位の金鉱山では、連続地震のため、坑内作業員 2人が行方不明となっています。こちらの地震の最大規模は M3.4 です:

10日未明に桜島で人工地震

以下は『南日本新聞』の記事です。10日(木曜日)の未明に、桜島で人工地震による探査がおこなわれます:
人工地震の目的は桜島のマグマの移動経路を精査するため。人工地震を起こすためのダイナマイトの爆発があるのは 15か所。深さは 10m。震動は人には感じられない見込みとのことです。

これまでの調査で桜島のマグマ溜まりは、島の北方約 10km の海底の地下にあると推定されています。つまり、姶良カルデラのほぼ中心部にマグマ溜まりがあり、そこから外輪山の南の一角にある桜島にマグマが供給されているということのようです。

Hi-net の連続波形などにも震動がキャッチされるだろうと思いますので、注目したいと思います。

地震前兆関係の掲示板には、人工地震を自然のものだと言いはったり、人工地震が噴火のきっかけになるのではと心配したりする人たちが出現するかもしれません。


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2009年12月6日日曜日

日本各地で防災訓練や災害対策

師走の 12月に入っても、日本各地でさまざまな名目の防災訓練がおこなわれています。また、各地の自治体では、大災害に備え地元企業と協定を結ぶなどの対策が進められています。

毎年、9月 1日の「防災の日」や、その日を挟む「防災週間」、あるいは「秋の全国火災予防運動」(今年は、11月 9日~11月 15日)には、日本各地でさまざまな防災訓練がおこなわれます。それはいつものことなのですが、今年は、年の瀬が迫る 12月に入っても、自治体や企業などが大災害を想定した訓練や、協定締結をおこなったとの報道が目立ちます。去年もこうでしたっけ?

以下に、12月に入ってからの報道を抜粋してみました:
▼青森県: 断水に備え防災訓練/八戸圏域 (東奥日報)

▼宮城県: 壁壊し人救出!! 石巻地区消防本部 旧ホテル利用、初の実践訓練 (三陸河北新報)

▼宮城県: 情報共有、合同訓練も 塩釜の自主防災組織、連絡協設立 (河北新報)

▼宮城県: 東松島 大曲地区が独自マニュアル 全世帯に配布 (三陸河北新報)

▼福島県: 大地震想定し国際救助隊が訓練/郡山 (福島放送) このブログの記事「中国国際救援隊が国連から資格認証取得」と「日本の国際緊急援助隊が国連の能力評価試験に挑戦」が関係していると思われます。

▼埼玉県: 災害時の救援活動にパチンコ店駐車場を 狭山署、5000台分協定 (毎日新聞)

▼神奈川県: 元町で震災訓練、商店街と地域住民が防災対策で協力/横浜 (神奈川新聞)

▼静岡県: 新幹線、万が一に備え 復旧訓練で手順確認 (静岡新聞) 「今夏発生した駿河湾の地震の際は、多少の線路のゆがみなどがあったが、速やかに復旧できた。今後も訓練に励み …

▼静岡県: 東海地震:発生備え県がパンフ (毎日新聞)

▼三重県: 訓練:大地震に備えて、2800人が避難や消火――伊賀・柘植 /三重 (毎日新聞)

▼京都府: 京都市消防局:重機操作のスペシャリスト「機甲分団」が発足 (毎日新聞) 「災害時に重機を使って障害物を取り除くなどして被災者の救助活動をする」

▼大阪府: JR、震災に備え大阪で新幹線の運行管理 (産経新聞) 1999年からほぼ毎年 1回、1日だけ東京から大阪の第 2総合指令所(場所は公表していない)に運行管理の権限を移して訓練しているとのことで、特別なことではなさそうです。ただ、「普段は別の業務に携わっている兼務指令員ら」が運行を管理するので、この日に乗車するのはちょっと不安?

▼和歌山県: 本番さながら救出訓練 紀伊田辺駅で列車脱線想定 (紀伊民報) 「地震で崩落した土砂に列車(2両編成、乗客18人)が乗り上げ、1両目車両が脱線し、多数のけが人が出ていると想定

▼香川県: 特急列車の脱線事故想定/JR四国が総合訓練 (四国新聞)

▼徳島県: タンク火災想定、19機関250人訓練 四電阿南発電所 (徳島新聞) 「県南部でマグニチュード7の内陸型地震が発生、発電所の備蓄タンクや停泊中のタンカーから油が流出し、火災が発生したとの想定で

▼徳島県: 巡視船の甲板でヘリ離着陸訓練 徳島海保など (徳島新聞) 「南海・東南海地震で津波が発生、多数の負傷者や漂流者が出ているとの想定で

▼高知県: 県庁や県警本部職員ら地震訓練 (朝日新聞)

▼愛媛県: 災害の備え確認 四国中央市防災訓練 (愛媛新聞) 「南海トラフ震源の地震により市内で震度6弱を観測、家屋の倒壊や火災が発生したなどの想定で …」

▼広島県: マックスバリュと災害時協定 呉市 (中国新聞)

▼福岡県: 訓練用地震速報で福岡市営地下鉄が全線一時停止 (産経新聞)

▼佐賀県: 緊急速報「地震だ」 真剣に訓練 (朝日新聞)

▼熊本県: 阿蘇防災訓練に400人 (朝日新聞) 「阿蘇中岳第一火口が突然大噴火し、多数の負傷者が出たという想定で …」(写真あり)

2009年12月5日土曜日

孕(はらみ)のジャン

寺田寅彦博士の『怪異考』をインターネットの電子図書館『青空文庫』で読むことができます:
『怪異考』で最初に取り上げられている怪異は、博士の出身地・高知で言い伝えられている「孕(はらみ)のジャン」という現象です。「孕」は地名で、「ジャン」は擬音語です。

どんな現象かというと:
孕の海にジャンと唱うる稀有のものありけり、たれしの人もいまだその形を見たるものなく、その物は夜半にジャーンと鳴り響きて海上を過ぎ行くなりけり
と言い伝えられているものです。

孕という地名について博士は、「高知の海岸に並行する山脈が浦戸湾(うらどわん)に中断されたその両側の突端の地とその海峡とを込めた名前である」 と書いています。以下のグーグル・マップで確認できます。土佐湾から高知市に向かって入り込む小さな湾(=浦戸湾)が、東西に延びる小山脈を断ち切っています。この部分の海と両岸を孕と呼ぶようです:
博士の生きた時代には、すでにこの現象は起こらなくなっていました。幼少時代の博士に「孕のジャン」の話を語って聞かせた老人たちも、実際にこの現象を体験したわけではなく、さらに前の世代の人から伝え聞いたということのようです。博士は、この現象を「水面にさざ波が立つ」、「魚が釣れなくなる」という言い伝えや、自分の地震体験から、地鳴りであるとの仮説を提示しています:
今問題の孕(はらみ)の地形を見ると、この海峡は、五万分の一の地形図を見れば、何人も疑う余地のないほど明瞭な地殻の割れ目である。すなわち東西に走る連山が南北に走る断層線で中断されたものである。 (中略) もっともこの断層の生成、これに伴なう沈下や滑動の起こった時代は、おそらく非常に古い地質時代に属するもので、その時の歪が現在まで残っていようとは信ぜられない。しかしそのような著しい地殻の古きずが現在の歪に対して時々過敏になりうるであろうと想像するのは単に無稽な空想とは言われないであろう。

それで問題の怪異の一つの可能な説明としては、これは、ある時代、おそらくは宝永地震後、安政地震のころへかけて、この地方の地殻に特殊な歪を生じたために、表層岩石の内部に小規模の地すべりを起こし、従って地鳴りの現象を生じていたのが、近年に至ってその歪が調整されてもはや変動を起こさなくなったのではないかという事である。
高知市を含む四国の南岸は、将来おきるであろう南海トラフ沿いの巨大地震・南海地震で大きな損害を被ることが懸念されています。博士は、この「孕のジャン」という現象が、今後おこるであろう巨大地震の前に復活する可能性を示唆しています:
この作業仮説の正否を吟味しうるためには、われわれは後日を待つほかはない。もし他日この同じ地方に再び頻繁に地鳴りを生ずるような事が起これば、その時にはじめてこの想像が確かめられる事になる。しかしそれまでにどれほどの歳月がたつであろうかという事については全く見当がつかない。ただ漠然と、上記三つの大地震の年代差から考えて、今後数十年ないし百年の間に起こりはしないかと考えられる強震が実際起こるとすれば、その前後に何事かありはしないかという暗示を次の代の人々に残すだけの事である。
博士が、「土佐における大地変」 あるいは上の引用文で 「上記三つの大地震」 としてあげている 3つの大地震について、『理科年表』(丸善株式会社)から抜粋します:
▼684年(天武天皇 7年) M≅8¼
土佐その他南海・東海・西海地方: 山崩れ、河湧き、家屋社寺の倒潰、人畜の死傷多く、津波来襲して土佐の船多数沈没。土佐で田苑 50 余万頃(約 12km²)沈下して海となった。南海トラフ沿いの巨大地震と思われる。

▼1605年(慶長 9年) M7.9 + M7.9
東海・南海・西海諸道: 『慶長地震』: (略) 土佐甲ノ浦で死 350余、崎浜で死 50余、室戸岬付近で死 400余など、ほぼ同時に二つの地震が起こったとする考えと、東海沖の一つの地震とする考えがある。 [『怪異考』原文では「慶長九年(一六〇四)」となっています。慶長 9年は西暦 1604年とほとんど一致しますが、この地震が発生した慶長 9年 12月 16日は、西暦ではすでに 1605年になっていたということのようです。]

▼1707年(宝永 4年) M8.6
五畿・七道: 『宝永地震』: わが国最大級の地震の一つ。 (略) 津波の被害は土佐が最大。室戸・串本・御前崎で 1~2m 隆起し、高知市の東部の地約 20km² が最大 2m 沈下した。遠州灘および紀伊半島沖で二つの巨大地震が同時に起こったとも考えられる。
博士は、最後に 「この『怪異考』は機会があらば、あとを続けたいという希望をもっている。昭和二年十月四日」 と書いています。しかし残念なことに、この 「孕のジャン」 と 「『頽馬(たいば)』『提馬風(たいばふう)』また濃尾(のうび)地方で『ギバ』と称するもの」 という 2つの現象について書いたきり、後続が執筆されることはなかったようです。


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2009年12月4日金曜日

『東京マグニチュード8.0』

こういう番組が、深夜枠で放送されていたとは知りませんでした。

総集編の放送は、フジテレビで来週 12月 11日(金)深夜 3時 35分 からです:
番組の公式サイトは以下です:

2009年12月2日水曜日

静岡地震被害見学記

今年 8月 11日(火)早朝に発生した駿河湾の地震を記憶しておられると思います。気象庁の発表では Mj6.5、米国地質調査所 USGS の資料では M6.4 でした。

この地震以前にも、ほぼ同じ場所を震源とする被害地震が何度も発生しています。直近では、「静岡地震」(M6.4、1935年 7月 11日)と「1965年静岡地震」(M6.1、1965年 4月 20日)があります(詳細は、このブログの過去の記事「駿河湾の地震についてあれこれ (その 6)」の「過去の被害地震」という節を参照してください)。

前者の「静岡地震」について、実地に見聞した寺田寅彦(てらだとらひこ)博士が書き留めた『静岡地震被害見学記』を、インターネットの電子図書館・『青空文庫』で読むことができます。博士は、これを「静岡大震災見学の非科学的随筆記録」と称しています:
当時の地名が今も残っているのではないでしょうか。だとすると、地元にお住まいの方たちの中には、この『見学記』の記述で、「あぁ、あそこが…」と思い当たることがあるかも知れません。

それほど長い文章ではありません。時間のある方は是非お読みください。全文を読む時間のない方向けというわけではありませんが、以下は、私なりにポイントを抜粋したものです:

▼この静岡地震では、兵庫県南部地震(阪神大震災)と同じように、被害が狭い帯状の地域に集中する現象があったようです:
山裾の小川に沿った村落の狭い帯状の地帯だけがひどく損害を受けているのは、特別な地形地質のために生じた地震波の干渉にでもよるのか、ともかくも何か物理的にはっきりした意味のある現象であろうと思われたが、それは別問題として、丁度正にそういう処に村落と街道が出来ていたという事にも何か人間対自然の関係を支配する未知の方則に支配された必然な理由があるであろうと思われた。故日下部(くさかべ)博士が昔ある学会で文明と地震との関係を論じたあの奇抜な所説を想い出させられた。
▼昭和 10年(1935年)当時のマスコミも、今と大して変わらなかったようです:
新聞では例によって話が大きく伝えられたようである。新聞編輯者は事実の客観的真相を忠実に伝えるというよりも読者のために「感じを出す」ことの方により多く熱心である。それで自然損害の一番ひどい局部だけを捜し歩いて、その写真を大きく紙面一杯に並べ立てるから、読者の受ける印象ではあたかも静岡全市並びに附近一帯が全部丸潰れになったような風に漠然と感ぜられるのである。このように、読者を欺すという悪意は少しもなくて、しかも結果において読者を欺すのが新聞のテクニックなのである。
現在の TV 報道でも、大きく破壊された建物の映像ばかりを繰り返し放映するので、視聴者の中には被災地全体がそのようなひどい状況だという実態とかけ離れたイメージが形成されがちです。

▼自分や同僚科学者への戒めもあります:
高松という処の村はずれにある或る神社で、社前の鳥居の一本の石柱は他所(よそ)のと同じく東の方へ倒れているのに他の一本は全く別の向きに倒れているので、どうも可笑(おか)しいと思って話し合っていると、居合わせた小学生が、それもやはり東に倒れていたのを、通行の邪魔になるから取片付けたのだと云って教えてくれた。

関東地震のあとで鎌倉の被害を見て歩いたとき、光明寺の境内にある或る碑石が後向きに立っているのを変だと思って故田丸先生と「研究」していたら、居合わせた土地の老人が、それは一度倒れたのを人夫が引起して樹(た)てるとき間違えて後向きにたてたのだと教えてくれた。うっかり「地震による碑石の廻転について」といったような論文の材料にでもして故事付(こじつ)けの数式をこね廻しでもすると、あとでとんだ恥をかくところであった。実験室ばかりで仕事をしている学者達はめったに引っかかる危険のないようなこうした種類の係蹄(わな)が時々「天然」の研究者の行手に待伏せしているのである。
「天災は忘れた頃にやってくる」は博士の言葉といわれていますが、この『見学記』の中にも以下のような文を見ることができます:
こうした非常時の用心を何事もない平時にしておくのは一体利口か馬鹿か、それはどうとも云わば云われるであろうが、用心しておけばその効果の現われる日がいつかは来るという事実だけは間違いないようである。
▼随筆家としても高名な博士の感性や視点で、私が共感したものを 2つ:
茶畑というものも独特な「感覚」のあるものである。あの蒲鉾(かまぼこ)なりに並んだ茶の樹の丸く膨らんだ頭を手で撫(な)でて通りたいような誘惑を感じる。

この幼い子供達のうちには我家が潰れ、また焼かれ、親兄弟に死傷のあったようなのも居るであろうが、そういう子等がずっと大きくなって後に当時を想い出すとき、この閑寂で清涼な神社の境内のテントの下で蓄音機の童謡に聴惚(ききほ)れたあの若干時間の印象が相当鮮明に記憶に浮上がってくる事であろうと思われた。
なお、寺田寅彦博士は、この地震があった年の大晦日に亡くなっています。


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つくばの大地は夏沈む

GPS の基準点が季節によって上下していたために、それを基準にした各地の高度も季節変動しているように見えていたとのことです:
基準点の高度が、夏に下がり冬に上がる動きをしていたため、各地の高度は逆に夏は上がり冬は下がるように観測されていたとの説明です。原因は、基準点周辺でおこなわれる田植えのための地下水のくみ上げだそうです。

2009年12月1日火曜日

イルカの群出現と地震

今日の産経新聞の記事です:
こういう記事の掲載があると、過去をふり返って宏観異常と地震の関係を考えるきっかけになるので、ありがたいと思います。

で、このイルカの群が出現したあと、対応するような地震はあったのでしょうか。被害地震に限っていえば、「ノー」です。

しいて上げるならば、約半年後の 2000年 6月 26日夕刻から始まった三宅島を中心とする伊豆諸島の群発地震があります。2000年内の有感地震は 14200回超。7月 1日に神津島近海 M6.4、7月 9日に同じく M6.1、7月 15日に新島近海で M6.3、7月 30日に三宅島近海で M6.4、8月 18日に神津島近海で M6.0 が発生しています。

7月 8日には、三宅島の雄山(おやま)が噴火を始め、火山ガスの流出などにより、9月 2日には全島民の避難が指示されました。その後、長期間にわたって避難が続いたことは、記憶されている方も多いと思います。

上記のイルカの出現と、この群発地震を結びつけることには相当の無理があります。タイムラグ(先行時間)が長すぎること、伊豆諸島周辺には他にもイルカやクジラの群がいただろうに、なぜ 1群だけなのか、他の前兆はあったのか、などなど。もちろん、群発地震として認識されるかなり前から、海底で密かに異変が進行していたという可能性はありますが。

伊豆諸島の群発地震については、『日本の地震地図』(岡田義光、東京書籍)を参照しました。


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上町断層帯

毎日新聞が、「大阪に大地震を起こすかもしれない上町断層帯」について、わかりやすい解説を載せています:
淡路島から伊勢湾までの中央構造線を底辺とし、敦賀湾を頂点とする 「近畿三角地帯」 には活断層が密集していますが、上町断層帯はその南西部に位置し、日本の活断層の中では地震の発生確率が相対的に高いグループに分類されています。

上町断層と上町台地についてのより詳しい説明は以下にあります:

「夜空のスマイリー・フェイス」から 1年

憶えておいででしょうか。ちょうど 1年前、つまり 2008年 12月 1日の夜空に「スマイリー・フェイス」が現れたことを。以下は、その現象に関するこのブログの記事です:
記事の中でリンクを張っている写真の中には、すでにリンク切れとなっているものもありますので、以下を参照してください:
このスマイリー・フェイスは、向かって左側の目が金星(宵の明星)、右側の目が木星、そして口が三日月で構成されています。

天球上で、金星や木星などの惑星はほぼ黄道上を、月は白道上を移動していきます。そして黄道と白道はおおよそ一致している(白道は、黄道の周辺 8 度の範囲におさまる)ため、いろいろな惑星が月と接近してさまざまなパターンを見せてくれます。このスマイリー・フェイスもそのようなパターンの一例に過ぎません。

黄道と白道の関係については、以下の説明がわかりやすいと思います:
このブログの一昨日の記事「『月が赤いです』という投稿」で、月の見かけ上の位置について T氏の誤りを指摘しましたが、このスマイリー・フェイスについても T氏はスゴイことを書いていました:
(前略)
分かりません、原因不明の天体現象です??、↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081202-00000573-san-soci
金星と木星は確かに接近するのは天文学でもちゃんと記載されていますが、これに月が加わって笑顔の形になるというのは過去にもあまり例が無いでしょう。恐らく、私個人的には天文のほうでは無くて見ている側・つまりうちらの地球のほうの自転回転力の変化か?地磁気の変化・つまり磁気フィールドの異常によってこの様な珍しい現象が現われた・と思っています。地球温暖化も影響している可能性は否定できないでしょう。この様な軌道で見える現象というのは天文学でも無く恐らく初めての現象で有ると思います。
(後略)

『ドライブ旅行・運転、他』ブログの 2008年 12月 2日付記事「夕方になって」より引用

引用中のリンク先記事はすでに削除されています。当該記事は、産経新聞が 12月 2日 14時47分付で配信した「次はいつ? 夜空ににっこりマーク」と題するものです。手元にその写しがありますが、著作権の制約上、ここに転載するのは控えます。
上記を読んでいただければ、天体の運行についての T氏の理解がどの程度のものか、おわかりいただけると思います。リンクをたどって続きの部分も読んでいただけると、さらにスゴイ展開を目にすることができます。

先日の赤い月に関連した私の指摘に対して、T氏は的確に答えることができずにいます。そして、あろうことか私を陥れるためのフェイクであったなどという荒唐無稽な言いわけを持ち出し、私に対する事実無根の侮辱や対人論証に終始しています。このスマイリー・フェイスの時も、どなたかを嵌めようとしていたのでしょうか (grin)。

遺跡と天体の写真

昨日の記事「2010年はイースター島で皆既日食」で、モアイ像と皆既状態の太陽や南十字の写真を撮れたら…、ということを書きましたが、なぜそう思うのか。以下の写真で感じていただけるかもしれません:
悠久の時の流れと無限の宇宙の広がりが、ひしひしと迫ってきます。この感覚が、私にはかけがいのないものなのです。

First Anniversary

このブログを始めてから、今日で 1年になります。その間に書いた記事が 430本。われながら、よく続いたと思います。恐る恐る書いた最初の記事は、次のようなものでした:
この 1年、予想以上に多くの方々がこのブログを訪れてくださいました。たいへん感謝しております。

このブログが扱うのは、主として宇宙や地球の現象、つまり高等学校の地学がカバーする分野です。多くの書店で、地学関係の書籍は売れないということで片隅に追いやられるか、ほとんど取り扱われない状態になっています。

昨日買い求めた本には次のような記述があります(著者は京都大学教授で火山学者です):
日本は先進国の中では随一の地震国・火山国です。それにもかかわらず高校で「地学」の教科を履修した学生は一割以下しかいません。そのため大学生の大半は、自然災害に関する知識が中学生レベルというのが現状です。

近い将来に南海地震、首都直下型地震、富士山噴火などを控えている日本にとって、あまりにも無防備で危険きわまりない、と言わざるを得ません。

『京大・鎌田流 知的生産な生き方』(鎌田浩毅、東洋経済新報社)から引用
そのような状況で、このブログに興味を示してくださる方々が事前の想定以上に多かったことは、大いに私の励みとなっています。

今後とも、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

腹が立ったら

以下のようなホームページはいかがでしょうか(笑):
ワイアー・フレームのロボット(?)を、マウス・ポインターで思いっきりひっぱたけます。マウス・ポインターの動きが速いほど、ロボットに加わるダメージが大きくなります。足を狙うと転ばせることもできますが、うまくかわされて、小馬鹿にされることもあります。

2009年11月30日月曜日

2010年はイースター島で皆既日食

11月下旬になると、書店に翌年用の『天文年鑑』や、少し遅れて『理科年表』が並びます。それを見ると、毎年「あ~、今年もうすぐ終わりだ」と、気ぜわしい気分になってきます。

で、2010年版の『天文年鑑』(誠文堂新光社)を買ってきました。『天文年鑑』を買って、毎年最初に調べるのは、自分や家族の誕生日が何曜日で、なにか珍しい、あるいは、イメージ的に幸運につながりそうな天文現象(たとえば金星の最大光輝とか金星と木星の会合など)が予報されてないか、という点です。2010年の私の誕生日には、地味な現象しか起こりません。残念。

ところで、今年の 7月 22日に、日本の一部で皆既日食が見られたことは、記憶に新しいところです。その最中に覚醒剤を吸引していたタレント夫婦がいたわけですが。2010年版『天文年鑑』によると、来年は 7月 12日に南太平洋で皆既日食が見られます。皆既帯はほとんど海の上を通過しますが、皆既帯の中心線がイースター島の近くを通り、同島では 5分弱の間、皆既状態が継続します。皆既状態の間は空が暗くなり、惑星や季節外れの星座が見られるはずです。『天文年鑑』の予報によると、東から南の空にかけて土星、火星、金星、水星が並び、南東の空、仰角約 45度付近には「南十字」が見えるようです。

黒い太陽と広がるコロナや、南十字を背景にしたモアイ像の写真が撮れるかもしれません。ぜひイースター島に行きたいと思うのですが、あまりに遠い。小さな島のことゆえ、宿泊施設はすでに予約で一杯でしょう。それに、7月上旬は、多分休めないはず。

なお、来年 1月 15日には、アフリカからアジアにかけて、金環日食が見られますが、日本では部分日食になります。

チリのラドン・ガス研究

以下は、チリの英字紙『サンティアゴ・タイムズ』の記事です。チリの大学(Universidad Tecnica Federico Santa Maria)とスペインの大学(Universidad de Extremadura)が共同して、ラドン・ガスと地震活動の関係を研究していることを伝えています:
チリは、観測史上最大級の M9.5 を記録したチリ地震(1960年)や、すさまじい火山雷の写真が印象的だったチャイテン山の大噴火(2008年)などを筆頭に、日本と並んで地震・火山災害が多い国です。

記事をまとめると次のとおりです:
ラドン・ガスは、地中から一定のパターンで放出される。しかし、地震に先行して起こるプレート間の動きにともなって、放出が変化することがある。このような変化を検出することによって、地震や火山活動を事前に警告することができる。

ラドン・ガスの放出は、地震計で察知可能な範囲よりさらに深いところの動きも反映するので、より長い予告期間をとることができる。イタリアとインドネシアでおこなわれたこれまでの研究では、大地震の数週間前に大気中のラドン濃度が非常に高くなることが明らかになっている。

チリでは、水中のラドン濃度を測定する方法も開発されている。これによって、火山を取り巻く熱水に同様の技術が応用できると期待されている。
日本でも、ラドン・ガスによる地震予知が熱心に研究された時期がありましたが、急速に廃れてしまいました。原因は、ランド・ガスの濃度が、気象条件など地震以外の要因に大きく左右されること、同じような地震であってもラドン・ガスの濃度に変化がある場合とない場合があり再現性に欠けること、などです。そのため、実用的な地震予知には使えないという見方が大勢となりました。

今年 4月におきたイタリア・ラクイラ地震は、ラドン・ガスによって予知されていたという報道がありました。しかしその後、専門家が否定的な見解を示し、さらに予知情報が広まるのを抑えようとした地元当局の姿勢の是非も議論となって、「ラドン・ゲート事件」(ニクソン前米国大統領を失脚に追い込んだウォーターゲート事件のもじり)と呼ばれるに到りました。

上記の記事で目新しいのは、火山噴火の予知にもラドン・ガスを使おうとしている点です。

なお、記事の末尾の 2段落では、ラドン・ガスの健康への影響について言及しています:
同じ大学(Universidad Tecnica Federico Santa Maria)の環境工学科では、ラドンと肺ガンの関係を調べている。ラドンは、タバコに次いで肺ガン原因の第 2位と考えられている。閉ざされた空間に集積した高濃度のラドンは、深刻な健康問題を引きおこす。
従来の日本建築は木造で通気性が良いため、ラドンのリスクはほとんど問題にならず、日本ではラドン・ガスの危険性が注目を集めることはあまりありませんでした。しかし、密閉度の高い最近の建築物では、予想外に高い濃度のラドン・ガスが検出されることがまれにあるそうです。また、マンションなどのコンクリートからも極微量ながらラドン・ガスが放出されているそうです。こまめに換気をせよということだと思います。


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2009年11月29日日曜日

モーニング・グローリーを TV 番組で見て

驚きました。これをシンクロニシティと言うのでしょうか。昨夜 9時からの TBS 「世界ふしぎ発見」でモーニング・グローリーが取り上げられるということで待ちかまえていたのですが、その 1時間前の 8時から NHK の「ワンダー×ワンダー」でも、やはりモーニング・グローリーをテーマに据えていました。NHK の方はまったくノー・マークだったのですが、たまたま夕食どきだったため、見逃さずに済みました。

番組の性格が違うので比較するのは酷な面もありますが、映像的には NHK の方が見事でした。TBS の方は、逆光気味の映像が多く、また、モーニング・グローリーの全体像がはっきりと捉えられていなかったように思います。取材期間、予算、持ち込んだ撮影機材、撮影スタッフの技量などの差が現れているのかも知れません。モーニング・グローリーが発生する仕組みの説明も NHK の方がより詳しく、またわかりやすかったと思います。内陸の砂漠地帯までモーニング・グローリーを追跡して、その消滅する過程まで撮影していたのは秀逸でした。受信料を払いたくなる番組だったと思います。

両放送局とも、現地での取材は 9月下旬から 10月上旬にかけてと推察されます。また、取材の中心はカーペンタリア湾に面するバークタウン(地図)という人口 200人ほどの集落だったので、両局の取材クルーが現地で出会っていたのではないでしょうか。

NHK の番組を見逃した方は、以下の番組資料をご覧ください。「予告動画」には、見事なモーニング・グローリーの姿がおさめられています:
なお、再放送は:
総合テレビ 2009年12月10日 木曜日 午前1時10分~1時54分(水曜日深夜) ※中国地方は除く
だそうです。

ところで、このブログでモーニング・グローリーをとりあげたのは、8月 29日。両放送局とも現地での取材は 9月下旬頃から。ひょっとして、このブログの記事が企画のきっかけになった? … 考えすぎですね。


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「月が赤いです」という投稿

件(くだん)の『異常現象に気付いたらお知らせください。』という掲示板に、以下のような投稿がありました:
No.107206 大阪淀川から月が赤いです 投稿者:淀川ママ 投稿日:2009/11/28(Sat) 01:17

今現在の角度は45度位ですが、こんな角度の色は見たことがないです。(以下略)
「淀川ママ」という投稿者は、28日午前 1時 17分の投稿で、「今現在の角度は45度位ですが」と書いています。しかし、28日の大阪での月没時刻は 午前 2時 9分ですので、午前 1時前後の月の仰角が 45度もあるとは考えられません。実際の高度は、かなり低かったと言わざるをえません。(月没時刻は、『天文年鑑 2009年版』(誠文堂新光社)による。)

「淀川ママ」という人が、うその報告をしたとは思いません。天体の高度(仰角)は錯覚しやすいも のです。腕をいっぱいに伸ばしたときの握り拳や指の幅を基準にして、地平線からその拳何個分、あるいは指何本分の高さというような報告であれば客観性が増すと思います。拳や指の幅を基準にした仰角の測定法は、以下のページの一番下に図入りで解説されています:
上記の「月が赤いです」といういささか不得要領な投稿を受けて、「多摩人」という人物(以下 T氏)が、自身が運営する掲示板ともブログともつかない『地震の掲示板ブログ』というところで、次のような議論を展開しています:
大阪の淀川から「月が赤い報告」、島根県東部のM3.6、芸予地震の前と同じ様な現象が出ています。瀬戸内海でしょうか?・気になります(汗)。
(中略)
午前1時に近い位置で月がかなり赤い状態ならば、すでに真上付近に上がっている事になり、非常に兵庫県南部地震の前と同じ被害地震の可能性がどこかで有るかもしれませんので、要注意でしょうか。芸予に限らず、他の地域の可能性も考慮に入れておく必要が有るでしょう。
(以下略)

前兆かもしれません?!」(投稿日:2009年11月28日(土)09時11分26秒)より引用
これを書いた T氏は、月の見かけの運動が理解できていないのではないでしょうか。「午前1時に近い位置で月がかなり赤い状態ならば、すでに真上付近に上がっている事になり」と言っていますが、時刻だけで月の位置が決まるものではありません。同じ時刻であっても、月齢などによって月の位置は大きく変わります。

また、T氏は、報告者が「45度位です」と述べているにもかかわらず、「すでに真上付近に上がっている」と書いています。同氏にとっては、仰角 45度は真上なのでしょうか。だとしたら、こちらがびっくり仰天です。

2009年11月28日土曜日

福島県が全国霊柩自動車協会と協定

「備えよ常に」のスローガンどおり、事前に準備をしておくのは良いことですが、このニュースはちょっと暗い気分になります:

モーニング・グローリーが TV 番組で… 今夜です

放送は TBS 系列で、今夜 9時からです。お見逃しなく。

朝日新聞の番組欄から:
世界・ふしぎ発見!
泣いた!感動!地球の奇跡
モーニンググローリーって何?
全長 1000キロ 神秘の雲

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盗用疑惑

「UHF」という投稿者名の人物が、このブログの記載内容を、他の掲示板に出所を明示せずに転載するなどの行為を繰り返しています。気づいていないとでも思っているのでしょうか。

たとえば以下は、『異常現象に気付いたらお知らせください。』という掲示板(通称 KS 掲示板)に昨夜投稿されたものです:
No.107208 シッキムで謎の発光体の目撃続く 投稿者:UHF 投稿日:2009/11/28(Sat) 01:35

http://voiceofsikkim.com/2009/11/25/strange-objects-been-sighted-in-sikkim-skies-since-past-few-weeks/

インド・シッキム州で、過去数週間にわたって正体不明の発光体の目撃が続いています

目撃者によれば、発光体は大きな音と後方にたなびく煙をともなっていたとのこと

シッキムは北は中国、東はブータン、西はネパールに境を接するヒマラヤ山中の州

シッキムの位置するヒマラヤ山脈東部は、インド洋大津波引きおこしたスマトラ沖大地震や、四川大地震に引き続いて大地震がおこる可能性の高い場所にあげられています
明らかに、私のブログ記事「シッキムで発光体の目撃続く」(11月 28日 0:04 付)の文章をつぎはぎしています。

私自身、他のサイトの記事を引用することがありますので(もちろん著作権法の許容範囲内で)、拙文の著作権についてあまり厳格なことを言う気はありません。むしろ、引用や転載をして頂けるのはありがたいことだと考えています。しかし、法律以前の投稿マナーの観点から、文章の改変や引用・転載をする際には、その出所を明示してほしいものです。

なお、私は上記の掲示板に投稿したことは一切ありません。以前から、当該掲示板の管理者の首尾一貫しない削除や、自分の考えと相容れない内容の投稿に対する、上から目線の「お説教」じみた非難・指弾に辟易していますので。

シッキムで発光体の目撃続く

インド・シッキム州で、過去数週間にわたって正体不明の発光体の目撃が続いています:
上記は、『ボイス・オブ・シッキム』(シッキムの声)というニュースサイトに掲載されているものです。目撃者によれば、発光体は大きな音と後方にたなびく煙をともなっていたとのことです。住民からの問い合わせに対して、警察は軍の定期的な訓練、天体物理学者は彗星の破片が大気圏に突入したものと答えていますが、住民にとってあまり説得力はないようです。(エーリアンの乗り物としての) UFO 説、神あるいは女神の引きおこした超自然現象説、世界の終末説などが飛び交っています。

以下のグーグル・マップでもわかるように、シッキムは北は中国、東はブータン、西はネパールに境を接するヒマラヤ山中の州です:
シッキムの位置するヒマラヤ山脈東部は、インド洋大津波引きおこしたスマトラ沖大地震や、四川大地震に引き続いて大地震がおこる可能性の高い場所にあげられています。ひょっとしたら地震の前兆としての発光現象かも、とも思うのですが、可能性は低そうです。

ちなみに、シッキムは私の愛してやまないダージリン紅茶の産地であり、世界遺産に指定され、一度は乗ってみたいと思っているダージリン・ヒマラヤ鉄道が走っている場所でもあります。

2009年11月27日金曜日

渡り鳥の「放射」

以下は、イギリスの『Daily Mail』紙のサイトに載っている記事です。ハクガン(snow goose)と呼ばれる渡り鳥が、繁殖地である北極圏のツンドラ地帯から、越冬地であるメキシコ湾沿岸まで渡る途中で、アメリカ・ミズーリ州の Squaw Creek 国定鳥獣保護区に大量集結した様子を、写真入りで伝えています:
上から 2枚目の写真をご覧ください。たくさんのハクガンが写っていますが、鳥の分布や一羽一羽の翼の向きなどに注目すると、全体として、画面下部の水平線の中央部あたりを中心にして「放射」しているように見えます。また、背後の雲にも同様の「放射」が見られます。

このように見えるのは、基本的には遠近法の効果によるものです。さらに、撮影に使用されたレンズが広角系であるため、いっそう遠近感や「放射」が強調されています。

広角系(焦点距離が短い)のレンズは遠近感を強調し、望遠系(焦点距離が長い)のレンズは遠近感を圧縮します。一般のデジタル・カメラについているレンズは広角系であるため、地平線から広がる雲を撮影すると、実際よりも遠近感が強く表れ、「放射」が誇張されます。地震前兆をあつかう掲示板などに投稿されている「放射状雲」の写真を見るときには、このような効果があることを考慮に入れる必要があります。

ちなみに、上記の写真が撮影された鳥獣保護区は、以前は私有の猟場だったのだそうです。アメリカはスケールが大きいです。ハクガンは、一時は個体数が減少していたのですが、現在は年率 5%超で増加し続けており、他の種を圧迫する恐れがでているとのことです。

こちらは、中国で撮影された渡り鳥の大群です。掲載されている写真はすべて、望遠系のレンズで撮影されたように思われます:

2009年11月26日木曜日

太陽津波

ほぼ真円に近い形で太陽面を広がっていく“太陽津波”(solar tsunami)。波高 10万 km 以上、時速 90万 km 以上、エネルギー量は TNT火薬換算で 2400メガトンと、桁違いです:

台風 22号 (ニーダ) は日本に向かうか?

季節外れの台風 22号は、『デジタル台風』のサイトによると、 「24日 21時から 25日 21時までの 24時間に 80hPaも中心気圧が低下(台風としては発達)しました。これは歴代 7位タイの記録で、台風 198310号の 24時間で -90hPaという記録以来、ほぼ 25年ぶりの歴史的な急発達」 とのことです。現在の中心気圧は、最低だった 905 hPa から少し上昇して 910hPa となっています(気象庁の 26日 15時実況)。

5日後までの中心位置の予報円をみると、ほとんど同心円となっており、今後どの方向に進むかわからない状態となっています。TV番組の気象予報士の話では、今後、北上して日本列島に近づく可能性は低く、東か西に向かうだろうとのことです。この季節の日本列島は、西から東に向かう強風域になっているので、台風が近づいて来られないのだそうです。

台風 22号の現在位置は 東経 140度、北緯 15度です。過去の台風(1951年 ~ 2009年)の中で、11月中にこの位置付近を通過したもの 47件の進路を、『デジタル台風』のサイトで描いてみました(50件を指定して検索したのですが、条件に合致したものが 47件でした):
たしかに、北上して日本列島に近づくものは少ないようです。47件のうち、日本列島に上陸したのは、1990年の 台風 28号だけです。以下は同台風の進路、中心気圧の変化などの情報です:

桜島、徐々に活発化へ

鹿児島地方気象台が、桜島の活動見通しを発表しています:
桜島の現状は、東側の 2集落が溶岩で埋まった 1946年の「昭和の大噴火」の活動推移に類似しているとのことです。

過去の関連記事

世界でいちばん勇敢なネズミ

ヒョウのおりの中に突然現れたネズミが、ヒョウの餌を横取り。ヒョウが近づいて鼻先で押しのけようとしても、動じる気配がまったくなく、ヒョウの餌を食べ続けます。ネズミが勇敢すぎるのか、ヒョウがおっとりしすぎているのか:
餌があれば無益な殺生はしないよというヒョウのポリシーなのでしょうか。

2009年11月25日水曜日

アコーディオンの表現力と「超絶技巧」

何はともあれ、以下のページの動画をご覧ください:
少年がアコーディオンでビバルディの「四季」を演奏しているのですが、アコーディオンの表現力を再認識するとともに、この少年の「超絶技巧」に舌を巻きました。ただ、アコーディオンの蛇腹部分がほとんど伸縮していないにも関わらず長時間音が出続けている等、不審な点もあります。CD か何かの再生音に合わせて手指を動かしているだけかも、という一抹の疑念が残ります。

海底地震と「ポセイドンの車」と UFO

《 ご注意: この記事では、アーサー・C・クラークの小説『メデューサとの出会い』の内容に言及します。これから同小説を読む方は、先にこの記事を読むことによって、興味がそがれる恐れがあります。 》

このブログの 11月 18日付記事「木星の衛星エウロパに魚が生息?」の中で、『メデューサとの出会い』というアーサー・C・クラークの小説のことに触れました。この小説は、核融合炉を熱源とする熱気球につり下げられた宇宙船に搭乗する主人公が、木星の大気圏内で体験・目撃する驚異の現象や生物との遭遇を描いています。

主人公が目撃したさまざまな現象の中に、移動する複数の光の帯があります。光の帯は、くっきりとした輪郭を持ち、それぞれ 100km ほどの間隔と平行を保って、サーチライトの光が雲の下を走っているように移動していきます。この未知の現象についての主人公からの問い合わせに対して、衛星ガニメデにある基地から、以下のような調査結果が送られてきます:
「(略) きみが目撃したのは、生物発光だ――地球の熱帯の海で見られる微生物の発光現象にきわめて近いものと考えていい。もちろん、ここでは海ではなく大気中でおこるわけだが、理屈は同じだ」

(略)

「(略) これとそっくりのものがインド洋とペルシャ湾で目撃されている――ただし数千分の一というミニチュアだけれども。これを聞いてくれ。英領インド会社所属パトナ号、ペルシャ湾、1880年 5月午後 11時 30分――“光り輝く巨大な車輪が回転しつつあり、そのスポークは船体をなぎはらうかのごとく通過。スポークは全長 200 ないし 300 ヤード……車輪はそれぞれ 16本のスポークを有し……” もう一つは、オーマン湾での記録だ。日づけは、1906年 5月 23日――“まばゆい光輝はみるまにわれわれに接近すると、さながら戦艦のサーチライト・ビームを思わせる、明瞭な輪郭を持った光の柱をやつぎばやに西にくりだしはじめた……われわれの左側に、どこからともなく巨大な炎の車が現れた。そのスポークは、目のとどくかぎりのかなたまでのびていた。車の回転していた時間は、2分ないし 3分であろう”  (略)」

(略)

「(略) これが完全に解き明かされたのは、20世紀後半なんだ。光る車輪はどうやら海底地震の結果として生じるらしい。しかも浅い海に限られている。衝撃波が反射し、規格化された波形ができるところだ。縞になることもあるし、回転する車輪になることもある――“ポセイドンの車”という名で呼ばれている。海底で爆発をおこし、その結果を人工衛星から写真撮影して、はじめてこの理論が証明された。(略)」

『メデューサとの出会い』(アーサー・C・クラーク、ハヤカワ文庫 SF1730、早川書房)から引用
この“ポセイドンの車”(Wheels of Poseidon)は、実在の現象なのか、クラークの創作なのか。ずいぶん昔に初めてこの小説を読んだときには、わかりませんでした。しかし、インターネットでの検索が使えるようになって、この現象が実際に存在するものであることがわかりました。ただし、情報はきわめて限られており、類似の記述があちこちで見られるため、出所は一つではないかと思われます。上の引用でクラークがあげている目撃事例は、残念ながら確認することはできませんでした:
小説の中で主人公が目撃した光の帯は、この“ポセイドンの車”のスポークだったようです。地球の海中でおきる“車”と比べて、木星の大気中の“車”はあまりにも巨大なため、その一部しか見えない主人公からはスポークどうしが平行に見えたということです。

インド洋では、アメリカ海軍の艦船が海中の発光現象について多くの目撃報告をおこなっています。この中には、“ポセイドンの車”もあったようです。以下は、アメリカの海軍研究所が 1981 年に出した調査報告書の複写です:
  • Analysis of Fleet Reports of Bioluminescence in the Indian Ocean (インド洋における生物発光についての艦隊報告の分析、pdf形式、URL は http://www.dtic.mil/cgi-bin/GetTRDoc?AD=ADA109133&Location=U2&doc=GetTRDoc.pdf)
海中の発光現象は UFO と結びつけられることもありました。以下は、アルゼンチンのサイトで見つけた資料です。スペイン語で書かれていますが、図が多いのでおおよその内容は推しはかれます。空中から海中に、あるいは逆に、海中から空中に移動する UFO については、生物発光では説明できないと述べています:
“ポセイドンの車”と直接の関係はありませんが、以下のような記事もあります:

2009年11月23日月曜日

内陸直下型地震と断層

内陸直下型大地震の予測では、予測の有力な手がかりは地表に現れた地震断層です。しかし、地下の震源断層のずれが地表に断層となって現れないことがあり、危険な活断層の半数近くを見逃す(見逃している)恐れがある、と京都大学防災研究所の研究チームが指摘しています:
過去の内陸直下型地震78件を分析したところ、「地下で地震を発生させた震源断層と地表に現れた地震断層の長さがほぼ同じで、地震断層が地震の規模を反映していたのは、M7以上の9件の大地震でも4件しかなかった。M6~7未満では、69件のうち1件だった」とのことです。

富山湾にクジラの大群

22日(日)午後、富山湾で 100頭を上回るとみられるクジラの大群が見つかったとのことです:
大群を発見した第9管区海上保安本部の担当者は「これだけの群れが湾内で見つかるのは珍しい」と話しています。


過去の関連記事

2009年11月22日日曜日

火星の奇妙な地形

『ボストン・グローブ』紙の「The Big Picture」が、火星の周回軌道上にある Mars Reconnaissance Orbiter (MRO)搭載の HiRISE(High Resolution Imaging Science Experiment)高解像度カメラが撮影した火星表面の写真を特集しています:
冒頭の写真は、入れ墨をした人の皮膚を接写したように見えますが、実は、肌色をした火星の砂丘の上に、無数のダスト・デビル(塵旋風、小規模の竜巻)が通過した形跡が残ったものです。

4番の写真は、火星の南極冠で撮影されたものです。何らかの液体がくぼ地に溜まっているように見えます。でも、実際はそうではないとのことです。

6番の写真は、このブログでも以前紹介したことがあります。北極冠で撮影された、雪崩あるいは崖崩れ発生の瞬間です。崩落している部分は、幅 180m、長さ 190m と見積もられています。

9番の写真は、ビクトリア・クレーターの縁に残された火星探査車オポチュニティの轍(わだち)です。HiRISE の解像度の高さが如実に現れています。

17番の写真は、南極地域の直径 330m のクレーター。荒れた乾燥肌か、爬虫類の鱗のような地表が印象的です。

21番の写真では、左上に木のようなもの生え、地表にその影がうつっています。木のように見えるのは、ダスト・デビルです。


過去の関連記事

インフルエンザ・パンデミック

『ボストン・グローブ』紙の「The Big Picture」が、インフルエンザに関連する写真を世界中から集めています:
世界が注目しているウクライナで撮影されたものは、6番13番36番です。

写真として私が気に入っているのは、11番です。中国・四川省で撮影されたものです。周りから何本もの腕で押さえ込まれて、注射をされている少女。その絶叫ぶりが何とも…。また、画面左端に写っている別の少女(注射をされている子の姉?)の表情も。

2009年11月21日土曜日

ココノホシギンザメ捕獲 ― 北海道・函館市

19日(木)に、北海道・函館市の沖合で、ギンザメ科の深海魚ココノホシギンザメが捕獲されています:
北海道大学・臼尻水産実験所でも「ここ 15年は臼尻で見掛けたことはなく非常に珍しい」と話しているとのことです。

ココノホシギンザメの姿形は以下のページで見られます:
北海道南部では、下の「過去の関連記事」にあるように、9月には登別温泉で湯柱噴出、10月には白老町でサケガシラ捕獲がありました。

また、火山噴火予知連絡会が 10月 5日付で発表した「第 114回火山噴火予知連絡会 全国の火山活動の評価」(pdf形式)では、北海道南部の火山の中で、支笏湖畔の樽前山について以下のような記述があります:
  • A火口及びB噴気孔群では高温の状態が続いています。また、山頂溶岩ドーム付近の局所的な膨張を示す地殻変動が、2006年以降継続しています。
  • 地震活動や噴煙活動は低調な状態ですが、今後の活動の推移に注意が必要です。

過去の関連記事

リュウグウノツカイ捕獲 ― 島根県

20日(金)、島根県松江市美保関町の境水道で、体長 4.3m のリュウグウノツカイが捕獲されています:
7月下旬に続き今年 2度目で、鳥取県水産試験場では「珍しい魚が年に 2度も」と驚いているとのことです(7月は、境水道を挟んで対岸の鳥取県境港市潮見町で釣り上げられたものです)。


過去の関連記事

2009年11月20日金曜日

高層建築で火災に遭遇したとき

高層建築で火災が発生、逃げ遅れて部屋に閉じこめられたとき、充満する煙や有毒ガスから身を守るには:
一目瞭然の図があるので、詳しくは書きません。「新鮮」な空気が確保できると説明書きが添えられています。

日本の国際緊急援助隊が国連の能力評価試験に挑戦

このブログの 11月 15日付の記事「中国国際救援隊が国連から資格認証取得」の末尾で、「日本のチームがこのような資格認証を受けたという報道を私は見た記憶がないのですが、日本も何らかの認証を受けているのでしょうか」と書いたばかりですが、まだ受けていなかったようです:
こんなところでも中国の後塵を拝してしまって…。「ハンガリー、米、独など11か国の援助隊が既に認定されている」とのことです。本番の試験は来年 3月ですが、不合格だったら国際的に非常にみっともないことになります。災害救助技術に関しては、日本は世界でもトップ・レベルにあると自負してきたのですから。

経済破綻危機がささやかれる日本

主要国の株価が軒並み上昇しているのに、なぜ日本だけが低迷を続けるのか、TV 東京の経済番組でも、さまざまな要因の中に「民主党政権誕生による不透明感」を挙げていましたが……、以下は中国系ニュースサイトの記事です:
「民主党が圧勝し、日本の経済成長を阻害する方針・政策が面白いように連発され、日本を含む世界の株式投資家がドン引きして日本を見捨てた」、「2009年、世界の主要国のなかで、株価がマイナスなのは、経済破綻危機がささやかれる日本と、もうひとつは、本当に経済が破綻してしまったアイスランド。この2カ国だけ」だそうです。

日本の経済破綻に備えて、アイスランドがどうなったのか、勉強してみようと思っています。

大声で泣き叫ばない日本人

14日に発生した韓国・釜山市の室内射撃場の火災では、日本人観光客を含む 16人が死傷しましたが、それに関連して『朝鮮日報』紙が以下のコラム記事を載せています:
習慣や文化の違いなのでしょうが、日本人の目から見ると、葬儀に際して大声で慟哭するのは奇異に感じます。祖父母から聞いた話で、満州(中国東北部)の話か朝鮮の話かはっきりしないのですが、雇われて葬儀に参列し、大声で泣き叫んで報酬を得る「泣き女」と呼ばれる職業があったとのこと。今もそういうことがおこなわれているのかは、知りませんが。

葬儀のときの号泣もそうですが、反日デモのときの参加者の激高ぶりも、私にはかなり衝撃的です。感情を、われわれ日本人から見るとかなりオーバーなレベルで表に出すという点で、いつもイタリア人を連想してしまいます。イタリアも半島、朝鮮も半島、という点で何か共通の因子があるのかもしれません。

イタリア半島がとりついている大陸側にはフランス、朝鮮半島に対しては中国。私のステレオタイプな見方では、フランス人と中国人にも共通点があるような…。ともに理屈っぽくて、大声で議論し合う、というか、ののしり罵倒し合う。

ところで、室内射撃場の火災の件では、現地警察の記者会見が何度かおこなわれています。その映像を見ていて、日本の警察とは違うなと思った点が一つあります。それは、会見に現れる警察側の人数。日本では、通常 3~4人が報道関係者たちの前に着席して、そのうちの一人が主にしゃべるという形式です。残りは、返答に窮したときの助け船要員ということなのでしょう。そして、それらの警察官の中に、その警察署の最高幹部が入っていることは、まずありません。それに対して、今回の釜山の件では、報道関係者たちの前に現れたのは一人。それも、肩章に 4つの星があることから、少なくともその警察署の最高幹部の一人であろうと推察されます(間違っていたらごめんなさい)。最高幹部が一人で捜査の進捗を説明し、記者の質問にもテキパキ答えるというのは、見ていて痛快です。日本の警察のエライさんには、まねできないのではないでしょうか。

モーニング・グローリーが TV 番組で…

このブログで紹介したことがある「モーニング・グローリー」と呼ばれる雄大なロール状の雲が、TV 番組で取り上げられます。11月 28日(土)午後 9時からの『日立世界ふしぎ発見!』です:
番組のホームページから一部引用します:
それはまるで台風のように
凄まじい風を巻き起こしながらやってくる雲
モーニング・グローリー!
一直線に伸びたパイプ状の巨大な雲が
長さ 1000km 時速 60km で迫ってくるといいます

しかし気象学的にも非常に珍しい
奇跡の自然現象モーニング・グローリー
その発生に必要な気温 湿度 風
全ての条件が揃う瞬間は一体いつ訪れるのか…!?
ぜひお見逃しなく!

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2009年11月19日木曜日

グーグル検索と「地震」

「地震」というキーワードでグーグル検索をおこなうと、日本独自の機能が働くようになっているそうです:
上記記事から「地震」の部分を引用します:
公開済み機能のうち日本独自のものとして、「地震」というキーワードに対して地震速報を表示する機能なども取り上げた。地震発生後の1時間に入力されるキーワードを調べると、「20%かそれ以上を“地震”というキーワードが占める。ユーザーが求める情報をすぐに見られるようにするために速報を検索できるようにした」。

今年の獅子座流星群

11月 18日(水)早朝にピークを迎えた今年の獅子座流星群ですが、流星の出現数は全体的に見て「普通」のレベルだったようです。アメリカ・ユタ州を中心とした地域では、大火球が出現したことが報じられています:
こちらの記事には、上記の大火球が残したと思われる長大な「流星痕」の写真があります:
典型的な流星痕の写真が以下にあります。獅子座流星群が大量出現した 2001年に撮影されたものです。流星痕は、初めは流星の軌跡に沿って出現しますが、時間の経過とともに上空の風に流され、変形していきます。この写真の流星痕でも、高度によって風の速度や方向が違っていることがよくわかります:
以下は、20世紀最大の出現といわれた 1966年の獅子座流星群の写真です。獅子座にある輻射点(放射点)から放射状に無数の流星が飛んでいることがわかります。流星のもととなる微小天体は、並行して地球大気圏に突入してくるのですが、遠近法の効果でこのように一点から広がって飛び散るように見えます。鉄道のレールを見たとき、本来は平行な 2本のレールが、遠方では一点に収束し、自分に近づくにつれて開いているように見えるのと同じです。地震前兆関係の掲示板やブログでは、しばしば「放射状雲」なるものの報告を目にしますが、そのほとんどは遠近法の原理で説明がつくものです。
輻射点から自分の方に向かってくる流星があったとしたら、どのように見えるでしょうか。この場合、普通の流星のように線状に流れるのではなく、輻射点近くの一点がパッと光り、さっと消えるだけです。そのため、静止流星と呼ばれます。私は、学生時代の流星観測会で 1度見たことがあります。パッと光った後、さっと消えなかった場合は、…… わかりますよね。

静止流星については、以下のページの中ほどに説明があります:

余談: 『地震の掲示板ブログ』というところの「現在の情報」(2009年11月18日(水)12時34分39秒)というタイトルの記事で、以下の新聞記事に掲載されている獅子座流星群の写真に対して「まあ~、沢山w」とコメントしています。誤解する方があるかもしれませんが、たくさん写っているのは実は流星ではなく、恒星です。固定カメラで撮影したために、日周運動によって移動し、線状に写っています。流星は、画面上部に 1本ひっかき傷のように写っているのが目立つ程度です:

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反重力ヘリコプター !?

メイン・ローター(回転翼)が止まっているのに、自由自在に空中を飛び回るロシア製軍用ヘリコプターの動画です:
音声からもわかるように、実際には回転翼は回っています。回転翼の回転と、動画の一コマ一コマを撮影するタイミングを無線で同期しているために、映像では止まって見えています。なんでこのような映像を撮影するのかというと、回転中のメイン・ローターの各ブレード(この機種では 5枚)の変形を調べるためなのだそうです。

川が突然、断層の中に消えた

現場は、南米コロンビア北東部、サン・アンドレスという町から約 800m 離れたところです:
川と断層の位置関係(直交、並行など)はわかりません。「突然」と書かれているのですが、具体的にはどの程度の時間(数分、数時間、数日?)がかかったのか、また、きっかけとなる地震などがあったのかも不明です。サン・アンドレスの位置と周辺の地形は、以下のグーグル・マップで確認できます:
このニュースで思い出したのは、以前、天平時代の大地震とその前兆かもしれない現象をリストアップしていたときに目にした以下の記事です。コロンビアの件とは様相が異なりますが … :
天平 15年 6月 26日 山背(やましろ)国司が次のように言上した。今月 24日の酉の刻から戌の刻(午後6時頃から8時頃)の間、宇治川の水が枯れてしまって、通行する人は歩いて渡りました。

『続日本紀(中) 全現代語訳』(宇治谷 孟、講談社学術文庫)
前月の 5月に雨乞いをした旨の記録があるので、干ばつが原因とも考えられます。しかし、2時間だけ水がなくなり、その後は元のように水が流れたというのは、いささか不思議です。この前後 1~2年、さまざまな天変地異が記録されており、天平 17年 4月 27日(西暦 745年 6月 5日)に、伊吹山地の南東麓、関ヶ原古戦場の北東 4キロ付近で M7.9 の内陸大地震が発生しています。『理科年表』の「日本付近のおもな被害地震年代表」には、「美濃: 櫓館・正倉・仏寺・堂塔・民家が多く倒潰し、摂津では余震が 20日間止まなかった」との記載があります。

2009年11月18日水曜日

木星の衛星エウロパに魚が生息?

以前から、木星の衛星エウロパには、その氷で覆われた表面の下に、広大で深い海があることが推定されていました。その海に「従来モデルで想定されていた値の100倍の酸素が含まれているという画期的な研究結果が発表され大きな論争を呼んでいる」とのことです:
SF 作家たちは早い時期から木星系に地球外生命の存在を託してきました。太陽系内で地球以外に生命が存在するとしたらそれはどこかとの問に、アイザック・アシモフは 1960年代に出されたエッセイ集の中で「もちろん木星だとも」と答え、アーサー・C・クラークも『メデューサとの出会い』という作品の中で、木星の大気中を浮遊する巨大な生命体を描いています。木星の衛星エウロパについては、クラークが早くから注目していて、『2001年宇宙の旅』の続編・『2010年宇宙の旅』には、エウロパに着陸した中国の宇宙船が、エウロパの藻類(?)のような生物に遭遇・全滅する場面が描かれています。

『2010年宇宙の旅』で何よりも印象に残っているのは、その最終章近くで、宇宙船ディスカバリー号の船内コンピューター HAL9000 が人類に繰り返し伝えた、モノリスに象徴される超越的な存在からのメッセージです:
これらの世界はすべて、あなたたちのものだ。
ただしエウロパは除く。決して着陸してはならない。
現在、NASA は ESA(欧州宇宙機関)と共同で、エウロパを周回する探査機の計画を進めているようです。エウロパに着陸し、氷の表面を掘り進んで、その下の海洋を調査するのは遠い先の話になりそうです。探査機を完全に滅菌して、調査対象の天体が地球の微生物によって汚染されるのを防ぐのは、容易なことではありません。上記の記事には、以下のような記述があります:
探査機ガリレオは非常に興味深い調査結果をもたらした。特に、エウロパの表面下に塩分を含んだ海が広がっていることがわかり、生命が存在する可能性を見出した。万が一ガリレオがエウロパに墜落すると環境汚染の恐れがあったため、2003年、NASAはガリレオを意図的に木星に衝突させた。
この場合の環境汚染とは、地球の微生物をエウロパに持ち込むことですが、ガリレオがエネルギー源として搭載していた原子力電池のプルトニウムが飛散することも懸念されたのかもしれません。

固定カメラによる星野写真

三脚に固定したカメラで撮影した星空の写真集です。各写真はクリックすると拡大します。私は、上から 7枚目の廃棄されたトラックが写っている写真の雰囲気が好きです。なんだか、UFO が着陸してきそうな ……。

2009年11月17日火曜日

獅子座流星群と宗教

日本時間の今夜半から明日早朝にかけて、獅子座流星群が出現のピークを迎えます:
今年の出現数については平凡という予測と、かなり期待できるという予測があります。『天文年鑑』(誠文堂新光社)に掲載されている予報では、18日午前 0時と 7時に出現のピークがあり、出現規模は「B」(ピーク時に安定して 1時間あたり 10~30の出現をみせる)とされています。昨日が新月だったので、月の明かりに妨げられることがなく、観測条件としては最良です。しかし、関東地方は雨か曇りの予報で、観測は難しそうです。

この流星群は、2001年に北米で 1~2秒に 1個の割合で流星が飛ぶというすばらしい天体ショーを見せています。さらに遡ると、1833年に 1時間あたり推計 10万(毎秒 30)の流星や火球が飛び交うという「流星雨」あるいは「流星嵐」をおこしたという記録が残っています。

この 1833年におきた獅子座流星群の大出現は、キリスト教の一派である「Seventh-day Adventist Church」(セブンスデー・アドベンチスト教会、アドベンチスト派、キリスト再臨派)が生まれる契機となったことを、以下の記事は紹介しています:
以下に記事の一部を意訳します(完全な逐語訳ではありません):
数万個の星が空から落ちてくる光景を目撃したとしたら、あなたは何を考えるだろうか。おそらく、この世の終わりが来たと考えるに違いない。多くの人びとがそう考えた。

1833年 11月 12日から 13日にかけての夜に現れた獅子座流星雨は非常に壮観であったため、アドベンチスト派教会の設立につながった。同教会は、今日では世界中に約 1700万人の信者をかかえ、特にアメリカ内陸部では大きな存在感をもっている。

1833年の獅子座流星群は、当時の多くの人びとと同じように「流れ星は気象現象だ」と考えていた科学者たちが、それは天文現象なのではないかと考え始める契機となった。

(1833年の)流星雨を観察した人びとは、当日午前 3時の空は白昼と同様に明るくなったと書き残している。

獅子座流星群に関する NASA の歴史資料によると、「流星の大嵐が地球に押し寄せてきた…」と 19世紀の天文学著述家 Agnes Clerke は書いている。「空は、あらゆる方向に流星の輝く軌跡が刻みつけられ、壮大な火球によって照らし出されていた。」Clerke は、この夜は 9時間で 総計 24万個の流星が出現したと推定している。

他の人びとも、この神聖な出来事について書き残している。1888年のアドベンチスト派の書物『ホーム・サークルのための聖書講読』には、「天のすべてが動き、聖書の黙示録に書かれている恐ろしい光景を想起させた」と書かれている。この本では、この世が終末を迎えキリストが再臨する前に、「星が天から落ちる」と預言する新約聖書のいくつかの節に言及している。

1833年当時、多くのキリスト教徒は、キリストの再臨の予兆に注意を払っていた、とアドベンチスト派の施設の一つである Loma Linda 大学宗教学部の学部長 Jon Paulien 氏は語る。

聖書は、大地震、太陽が暗くなる日、そして月が赤くなるときも(キリスト再臨の予兆として)預言している。これらの現象は、すべて 1833年に先立つ数十年の間にすでに起こっていた。

「あとはもう一つの予兆、すなわち天から星が落ちてくることだけが残っており、それがおきたときには(キリストの再臨の)確証となる、と人びとは言っていた」と Paulien 氏は語る。「当時としては妥当な想定でした。科学が普及していない時代にあっては、このような現象に対して、より宗教的な解釈を施しがちになるものです。」

1833年の獅子座流星群を契機に、キリスト教徒の中には、キリストの再臨に対する準備を始めるものが出た。しかし、1840年代になっても、預言されたようにはキリストの再臨が起こらなかったため、一部の人たちは、(1833年の)流星雨やその他の予兆は、キリストの再臨について人びとがより高い理解を探し求めるようにし向ける神の意思によるものである、と結論づけた、アドベンチスト派教会を 1863年に設立したのは、1833年の流星雨をこの世の終わりの予兆と見なした人たちだった ―― と Paulien 氏は語る。
アドベンチスト派については以下の資料を参照してください:

2009年11月16日月曜日

スーパー・インフルエンザ

11月 8日付「ウクライナのインフルエンザ流行」の続報です。ウクライナでは、その後も感染者や死者の増加が続いています。ユーシェンコ大統領は、軍の移動病院を各地に展開するように命じたとのことです。今のところ、WHO(世界保健機関)は、H1N1 型のインフルエンザが原因との見方を変えていないようです。

人びとの不安と情報不足があるところでは常にそうですが、巷ではさまざまな噂が流れています。“super flu”(スーパー・インフルエンザ)という言葉も使われています:
上記記事の一部を以下に意訳します:
このウィルスは、世界中で流行している H1N1 株が突然変異によって非常に毒性が強まったものか、あるいは、ウクライナで現在蔓延している 3つの異なるインフルエンザ・ウィルスの株が混ざり合ったもののように見える。ある観察者は、この新しい「スーパー・インフルエンザ」は、インフルエンザというよりは「ウィルス性出血性肺炎」と名付けた方が良いのではないか、と考えている(ウィルス性出血性肺炎では、肺の組織が破壊され、肺の中で多量の出血がおき、患者は自分の血液によって呼吸が阻害され「溺れ」死ぬ)。しかし、このような見方は、われわれが関知しているいかなる公式の情報源によっても確認されていない。

ユーシェンコ大統領は、「わが国は 2種類の季節性インフルエンザと H1N1 型インフルエンザに同時に襲われている」と発表し、さらに、これら 3つのウィルスが混ざり合って、致死率の高いウクライナ・スーパー・インフルエンザとなった可能性があるとほのめかした。

(イギリスの)『デイリー・メール』紙が伝えるところによると、同大統領は次のように述べたとのことである。「他の国々で流行っている類似の伝染病とちがって、ウクライナでは 3つの深刻なウィルス感染が同時に広がっている。2種類の季節性インフルエンザと、カリフォルニア型インフルエンザである。ウィルス学者たちは、混合感染によってさらに攻撃的な新種のウィルスが突然変異の結果として生まれる恐れがある、と判断している。」
陰謀説大好きな人たちに「餌」を与えることになるといけませんので、今回はこの辺で留めておきます。

緊急地震速報機

「電源をON状態にするとFM放送を消音状態で受信します。緊急地震速報のチャイム音を感知すると自動で起動し、最大85dBの音量でスピーカーからラジオの緊急地震速報を流します」という「緊急地震速報機」(アイリスオーヤマ製)のレビュー記事です:
全体的に好意的な評価ですが、「水平な場所にタテ・ヨコどちらでも設置可能だが、壁にかけるようにもなっていてほしい」とのコメントがあります。

以下は、アイリスオーヤマのサイトにある製品紹介のページです。地元の FM 局に受信周波数を合わせておくだけなので、電気代(月額約 9円)以外、「契約料、月額使用料、管理費などのランニングコストは一切かかりません」とのことです:

2009年11月15日日曜日

中国国際救援隊が国連から資格認証取得

国連にこのような資格認証制度があるとは、まったく知りませんでした:
調べてみると国連の組織は複雑怪奇、似たようなことをおこなう組織がいくつもあり、どこかの国と同じように官僚機構がどんどん自己増殖しているように思えます。それはさておき、この認証制度を仕切っているのは OCHA(国連人道問題調整事務所)の下に設けられた INSARAG(国際捜索救助諮問機関)です。

この INSARAG の設置された経緯について、「国際緊急援助における UNOCHA の援助調整と日本の取り組み」(沖田陽介、JICA四国支部業務チーム/元JICA国際緊急援助隊事務局オペレーションチーム; pdf形式)という文書から引用させていただきます:
1988年にアルメニアを襲った大地震、通称スピタク地震が国際緊急援助における援助調整が叫ばれる発端であった。この地震災害に対し、日本を含めた世界各国は救助チームを派遣した。同国に派遣された救助チームは相当の数に上り、すでに救助活動のニーズはなくなり、アルメニアが求めていないにもかかわらず、続々と各国からの救助チームが押しかけるという事態が発生した。その結果、災害援助活動の展開全体が滞ることとなり、この反省を受けて 1991年に国際捜索救助チームの援助活動調整を行う INSARAG(International Search and Rescue Advisory Group:国際捜索救助諮問機関)が、UNOCHA(当時UNDRO:Office of the United Nations Disaster Relief Coordinator)を事務局として発足した。

INSARAGの目的は、国際 USAR(Urban Search and Rescue:都市域における捜索救助)チーム間の情報交換等の連携を図り、国際的に広く受け入れられる捜索救助の方法とシステムの開発を通じて救助活動の効率を高めることである。

組織体制としてはアフリカ・欧州グループ、アメリカグループ、アジア・太平洋グループの3つの地域グループに分かれ、各グループの代表とUNOCHAが参加する運営委員会、定期的地域会合、リーダー会合、必要に応じて地域ごとまたは地域横断的に開催されるワーキンググループなどが設置され、また訓練や研修も実施される。
そして、今回中国の救援隊が取得したという「重型救援隊」(Heavy Rescue Team)については、上記の文書に次のような記述があります:
軽中重分類とは米国が提案しているもので、各国チームをその人員、装備、能力等によって軽(Light)・中(Medium)・重(Heavy)に分類し、能力を十分に有しているチームとそうでない任意の団体とを区別し、受け入れ側の被災国の負担を可能な限り少なくするという動きである。各救助チームがさらに上のレベルを目指すことを促すのだという意見がある反面で、NGO などの小規模のチームが国際捜索救助活動の現場から排斥される恐れも併せ持つ動きでもあり、これまで日本も導入については慎重な発言をしてきた。
引用した文書は、2006年発行の『国際協力研究』に載っているものです。その時点では、軽・中・重という分類は米国が「提案」している段階だったようです。その後、日本のチームがこのような資格認証を受けたという報道を私は見た記憶がないのですが、日本も何らかの認証を受けているのでしょうか。

2009年11月14日土曜日

月面に大量の氷

セントール・ロケットと LCROSS による月面衝突の結果、月の南極付近に存在する「永久影」の地下には、大量の氷が眠っていることが判明しました:
以下は、NASA の発表文です:
以下のページには、衝突によってできたクレーターや、舞い上がった粉塵の写真、観測データのグラフなどがあります。写真やグラフは、クリックすると拡大します:
先月下旬には、以下のような残念な報道もありました:

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ロシア極東の領土拡大

ロシアの領土が、極東地域で 4.5km² ほど拡大したとのことです:
13日に、ロシア科学アカデミー極東支部傘下の海洋地質学・地球物理学研究所の所長 Boris Levin 氏がテレビ番組で語ったところによると、4.5km² の内訳は:
  1. 2007年 8月 2日に樺太南部ネヴェリスク付近で発生したマグニチュード 6.8 の地震による海底の隆起で 3km²
  2. 今年 6月に始まった千島列島内 Matua 島(日本名:松輪島)にあるサリチェフ峰(日本名:芙蓉山、松輪富士)の大噴火で流出した溶岩流で島が成長したことによる 1.5km²
とのことです。

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2009年11月13日金曜日

小惑星「2009 VA」が地球を掠めた

11月 6日に、「2009 VA」と命名された小惑星が、地球表面から 14000km のところを通過していきました。気象衛星「ひまわり」や通信衛星などの静止衛星の軌道よりも内側に入ってきたことになります。以下は、NASA の Near-Earth Object Program Office(地球近傍天体プログラム室)の発表資料です:
上記記事を翻訳してみました(厳密な逐語訳ではありません)。地球に接近あるいは衝突する可能性のある天体が発見された場合の、情報の流れがわかります。映画や小説では、軍や大統領が介入して、情報を隠蔽するという筋書きがしばしば見られますが、少なくとも今回のようなサイズの天体では、そのようなことがあり得ないことがわかります:
新たに発見され「2009 VA」と命名された直径約 7m の小惑星が、アメリカ東部標準時 11月 6日 16:30 頃に、地球表面から地球の半径の約 2倍分(14000km)のところを通過していった。これは、カタログに掲載された小惑星としては、地球に衝突してしまったものを除いて、歴代第 3位の接近記録である。歴代 1位は、直径 1m の小惑星「2008 TS26」で、2008年 10月 9日に地表から 6150km のところを通過した。2位は、直径 7m の小惑星「2004 FU162」で、2004年 3月 31日に地表から 6535km のところを通過した。今回接近した「2009 VA」と同じようなサイズの小惑星は、平均して 1年に 2回程度、今回の距離ぐらいのところを通過し、5年に 1回程度は地球に衝突する。

小惑星「2009 VA」は、Catalina Sky Survey(カタリナ掃天観測所、アリゾナ州)によって最接近の約 15時間前に発見され、マサチューセッツ州ケンブリッジにある(国際天文学連合の)Minor Planet Center(小規模惑星センター)によって、地球の非常に近くを通過する天体であると確認された。NASA の JPL(ジェット推進研究所)にある Near-Earth Object Program Office(地球近傍天体プログラム室)でもこの天体の軌道が計算され、地球に衝突する軌道ではないことが確認された。

わずか 13か月前には、今回のものより幾分小さめの天体「2008 TC3」が似たような状況で発見された。「2008 TC3」が地球への衝突コースに乗っていることが判明したのは、実際に衝突が起きるわずか 11時間前のことだった。
なお、小惑星「2008 TC3」は、アフリカのスーダン上空で大気圏に突入、バラバラに分解し、一部が地表に落下しました。自然の天体が大気圏突入前に発見されたのは、このときが最初とのことです。

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マヨン山周辺で避難開始

フィリピンのマヨン火山では、今年の夏頃から、蒸気や火山灰の噴出、周辺での地震、山頂での溶岩ドーム形成などがしきりに報道されてきました。ここに来て大規模な噴火の可能性が高まってきたようです:
記事によると、火口から 6km の範囲内にある 2村の住民 3550人の避難が木曜日に完了、現在の警戒レベル 2が 3に引き上げられた時点で、さらに避難範囲を拡げて 26000家族の避難がおこなわれるとのことです。

マヨン山は、最近では 2001年と 2006年に大規模な噴火をおこしています。同火山の位置は以下の地図で確認できます:
マヨン山の東にはフィリピン海溝があり、東から西に向かってフィリピン海プレートが沈み込んでいます。一方、フィリピンの西側には、マニラ海溝を初めとする細切れの海溝がいくつかあり、そこから南シナ海の海底(ユーラシア・プレートの一部)が、逆に西から東に向かってフィリピンの下に沈み込んでいます。この両方向からの沈み込みのよって、フィリピンの中央部には南北に走るマニラ中央断層という左横ずれ断層が形成されています。マヨン山は、このマニラ中央断層とフィリピン海溝の間に挟まれた火山です。

マヨン山は、日本の富士山よりも形の整った成層火山です。写真などの資料は以下のページにあります:

マグマはたまり続けている ― 桜島

以下は『読売新聞』の記事です:
記事の前半は頻発する爆発的噴火による被害についての話題ですが、後半は桜島の現状について伝えています。それによると、「桜島の地下には毎月約100万トンのマグマが流入していると見られ、爆発によって流出しているのは毎月50万トン程度に過ぎず、マグマはたまり続けている」と、京都大学・防災研究所の石原和弘教授が指摘しているとのことです。

巨大地震でも死者なし ― 名古屋城下

名古屋大学災害対策室の市民向け講座で、同大学の溝口常俊教授(歴史地理学)がおこなった講演の内容が、『読売新聞』に紹介されています:
鸚鵡籠中記』という尾張藩御畳奉行の日記を分析した結果、「全国で 3万人以上の死者が出た宝永地震(注)では、名古屋城下に限れば死者はなく、地震に強い町だったと言えそうだ」とのことです。だからといって、次の大地震でも大丈夫だという保証はありませんが。
(注)1707年、M8.6
この講座も、大学がおこなうアウトリーチ活動の一例です。

なお、『鸚鵡籠中記』を紹介した『元禄御畳奉行の日記』の一部を以下で読むことができます:

電磁バリアを張った自動車

自動車の周りに電磁バリアを張れば、衝突しても自動車本体には損害がない(笑)。作った人は、究極の自動車泥棒除けのつもりだそうです:
自動車の屋根にテスラ・コイルを置き、それに取り付けた竿を回転させて撮影しています。動画が、以下のページにあります:

2009年11月12日木曜日

大気圧の変動が地滑りのきっかけに

大気圧の変動が、地震、地滑り、火山噴火、氷河の移動などのきっかけになりうるとの研究成果が発表された、と『USA トゥデイ』紙の記事が伝えています:
以下は記事の抄訳です:
どのようなタイプの気象がきっかけとなるのか?

研究の中心人物で米国地質調査所(USGS)に所属する William Schulz 氏は次のように語る。それは地震が起きやすい地域の周辺を通る気象システムのスピードに依存する。急速に移動する低気圧―嵐―は、ある種の地滑りや地震を引きおこす。低気圧が通過しているときには、地面に加わる力が減少し、土壌に含まれる空気や水の分子が上に向かって移動する。この移動によって、ふだんは土壌や岩石を支えている摩擦が減少し、地滑りや地震を起こす潜在的な要因となる。

一方、異常に高い気圧が長期間続く場合、穏やかで静かな天候になるが、これも地滑りや地震のきっかけとなりうる。高い気圧は大地の不安定化をもたらすからだ。

Schulz 氏とその同僚たちは、コロラド州南西部で起きている大規模できわめてゆっくりと移動する地滑りを、9ヶ月間にわたって分析し、「大気潮汐」(atmospheric tides)が地滑りにどのように影響するのかを調べた。この大気潮汐とは、太陽が大気を暖めることによって生じる 1日サイクルの大気圧の上下である。

この研究は、地震と気象の間の関係について提出されたピア・レビュー済みの研究報告としては 2番目のものである。『ネイチャー』誌の 6月号では、台湾の ChiChung Liu 氏の研究チームによって、アジアにおける地震の幾ばくかは台風に伴う気圧低下によって起きている可能性があると報告されている。

この研究について、コロラド州ボールダーにある国立大気研究センター(NCAR)の研究主幹である Maura Hagen 氏は次のように語っている――これは非常に興味深い論文で注目すべき結論だ。この研究は「大気の変動と地滑りの移動の間に強い相関がある」ことを示している。さらにこの研究報告は、大気から地表面にいたる全地球システムが一体であり、相互接続されたシステムであると指摘するすばらしい業績である。
上記記事のもとになった研究報告は、『ネイチャー・ジオサイエンス』誌に最近掲載されたもので、以下にそれを伝える『ネイチャー』誌のニュース記事があります。記事の全体を読むのは有料で登録が必要です。無料では、残念ながらほんの一部分しか読めません:
『USA トゥデイ』紙は、「大気圧の変動が、地震、地滑り、火山噴火、さらには氷河の移動までも、のきっかけになりうる」と書き、地滑りと、それ以外の地震、火山噴火、氷河の移動を同列に扱っています。しかし、発表された研究そのものは地滑りについてのものです。この点について、『ネイチャー』の記事(有料版)では次のようになっています:
Schulz and his team go one step further. They suspect that atmospheric tides could be involved in other phenomena that involve sliding surfaces, including earthquakes, volcanic eruptions and glacier movement.

シュルツ氏とその研究チームは、(地滑りだけではなく)もう一歩先を考えている。彼らは、大気潮汐が摺動面(滑り面)をもつ他の現象、すなわち地震、火山噴火、および氷河の移動、にも関与しているのではないかと思って(suspect)いる。
つまり、地滑り以外の現象については、大気潮汐の影響があるのか否か、まだ実際には調べられていないのです。その点で、『USA トゥデイ』紙の記事は、やや勇み足であり、ミスリーディングであると思います。

研究対象となった地滑りは、“Slumgullion landslide”(スランガリアン地滑り)あるいは“Slumgullion Earthflow”(スランガリアン土流)と呼ばれる現象で、コロラド州南西部にあるサン・フアン山脈で発生しているものです。約 700年前に始まった地滑りで、全長 4km。現在もゆっくりと、1時間あたり平均 0.5mm のスピードで土砂が移動しているのだそうです。日本で大雨の時などに発生する土砂崩れとは、地理的にも時間的にもスケールが違っているようです。
「スランガリアン」とは、シチュー料理の名前だそうです。地滑りの土砂の黄色っぽい色やゴチャゴチャな状態が、その料理の見かけに似ていることから、初期の植民者によってそう呼ばれるようになったとのことです。どんな料理なんでしょうか。

2009年11月11日水曜日

科学と国防

一昨日の記事「カール・セーガン・デー」の末尾で、セーガン博士の著書『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(新潮社)から私の好きな逸話を一つ紹介しました。実はその記事を書いたとき、もう一つ紹介したい逸話が頭の中にあったのですが、出典がわからないので控えていました。

私の記憶では、セーガン博士のいずれかの著書に載っていたはずなのですが、どうも記憶違いだったようです。『破局のシンメトリー』(ポール・プロイス、早川書房)が出所です。以下に引用します:
フェルミ国立加速器研究所の 1974年 5月の開研式典(デディケイション)のとき、招かれてここを訪れた某上院議員が、「この高価な施設はアメリカの国防にどれほど役に立つのか?」という皮肉な質問をしたところ、ウィルスン所長(初代研究所長 ロバート・R・ウィルスン博士)は即座に「何も。そのかわりこれは、アメリカを守る価値のある国とするために役に立つ」と答えたという。
民主党政権は科学技術分野の予算を削減しようとしているようです。科学技術については、短期間での成果の多寡や効用の有無といった近視眼的な評価基準で予算を削ると、後で必ず、減らした額以上のしっぺ返しを国や国民が受けることになると、私は思います。評価に際しては、どうか長期的な視点や世界的な視野(中国やインド、その他の国々との生存競争など)を忘れないで頂きたいものです。

けなげ

写真がすべてを語っているので、特にコメントはしません。私は、こういう動物のけなげな姿を見ると、涙ぐんでしまいます:

雪だるまの自殺

イギリス『テレグラフ』紙の書評記事です。本文はともかく、掲載されている書籍の表紙の絵がおもしろかったので。雪だるまが手にしているのは、ヘアドライヤーです: