2010年9月2日木曜日

「ちきゅう」が沖縄トラフを掘削へ

海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が沖縄トラフの海底にある熱水噴出孔周辺の掘削を行うそうです:

海洋研究開発機構のウェブサイトには研究の概要が以下のように述べられています:
沖縄トラフ熱水域における熱水噴出孔周辺を掘削し、柱状地質試料を採取する事により、熱水活動域の海底下で活動している微生物群集の数および種類、さらにその生態系の実態を世界に先駆けて解明することを目指します。

ここで得られる知見は、現在の地球に残された地下圏における生態系の役割を明らかにするとともに、熱水中に高濃度に含まれるメタンの海底下での生成・供給メカニズム、あるいは海底下熱水鉱床の生成と海底下微生物群集の拡がりの関わりの解明に大きく寄与するものと期待されます。

詳しい、そして少しくだけた解説が以下にあります。末尾に、掘削した孔(人工熱水孔)に設置する「カンダタシステム(現場培養器)」の図があります:

「カンダタ」が何を意味するのか ―― おそらく、芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』の主人公の名前からきているのだろうと思います。図を見ると、メキシコ湾の原油流出事故のイメージと重なって少し嫌な予感がします。

上記新聞記事では「掘削のための航海は九月一日から十月三日までの三十三日間」となっていますが、海洋研究開発機構のウェブサイトによれば、現在「ちきゅう」は母港に停泊中で、出航は 9月 5日となっています。

沖縄トラフ琉球海溝(南西諸島海溝)は混同しやすいですが、まったく別物です。記事にも「琉球諸島の西に広がる沖縄トラフ」、「那覇市の約百五十キロ北西」と書かれているように、沖縄トラフは琉球諸島よりもアジア大陸に近い側、つまり東シナ海側、それに対して琉球海溝は太平洋(フィリピン海)側にあります。両者は、位置も違えばプレートテクトニクス上の性質も真逆と言ってよいほど違います。以下の地図と断面図を見比べると、そのことがよくわかると思います:

琉球海溝を北にたどると南海トラフにつながります。一方、沖縄トラフの北端は九州の西で中央構造線につながると考えられています。


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