2010年4月30日金曜日

小惑星 2005 YU55 が地球近傍を通過


4月 19日に、小惑星 2005 YU55 が地球から 約 230万キロメートルのところを通過していきました。このとき、NASA のジェット推進研究所では、プエルト・リコにあるアレシボ電波天文台の電波望遠鏡を使って 2005 YU55 の形状と軌道を詳しく観測しました:

レーダー画像の解像度は 1画素あたり 7.5 メートルです。この画像から、2005 YU55 は球状で、直径約 400 メートルあることがわかりました。

2005 YU55 は地球にとって潜在的脅威となる天体に分類されています。今回の接近期間中に得られた高精度のレーダー観測データによって、これまで 2005 YU55 の軌道につきまとっていた不確定さの 約50% を払拭することができました。その結果、少なくとも今後 100年間は 2005 YU55 が地球に衝突する可能性が全くないことが判明しました。


【追記】 この小惑星は 2011年11月にも地球に接近します。2011年9月14日付「小惑星 2005 YU55 が再び地球接近」と 2011年10月27日付「航空母艦サイズの小惑星 2005 YU55 が地球接近」を参照してください。


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2010年4月29日木曜日

カトラ山で地震 ― アイスランド

Image Credit: Icelandic Meteorological Office

上は、アイスランド気象局が発表している震源分布図です。この図のいちばん南に見えている黄色の○印の地震は、マグニチュード 1.5、深さ 5.8km。発生時刻は日本時間 29日午前 0時 28分頃。震央は、北緯 63.669°、西経 19.147°で、カトラ山(地図)に符合します。

エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)の火山噴火以降、ずっと注目していましたが、カトラ山の位置で小規模とはいえ地震のマークがついたのは初めてではないかと思います。今後この位置で地震が増え、震源の深さが浅くなってくると一大事です。

カトラ山は、エイヤフィヤトラヨークトルで噴火があると連鎖して噴火することが多く、規模も大きくなるため警戒されています。詳しくは以下の記事をご覧ください:

【追記】アイスランド気象局とアイスランド大学地球科学研究所が合同で出している最新の状況報告書(日本時間 4月 29日午前8時付、PDF形式)では、エイヤフィヤトラヨークトル周辺での地震を記載した後に、以下のように書かれています:
Additionally, within the caldera of the Katla volcano, an Ml 1.7 earthquake occurred at 15:28 GMT at ~6 km depth.

さらに、Ml 1.7 の地震が、カトラ火山のカルデラ内で、グリニッジ標準時 15:28 に深さ約 6km で発生した。

“Ml”は、「ローカル・マグニチュード」=「リヒターのマグニチュー ド」を意味しています。詳しくは「マグニチュード」(ウィキペディア)を参照してください。


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深海魚の大量漂着

昨年末から今年にかけて深海魚の大量漂着が続きましたが、それについて『富山新聞』のサイトに記事が掲載されています:

大量漂着の原因について専門家の見解を載せていますが、よくわからないというのが結論のようです。

4月 1日付の『朝日新聞』紙面にも同じテーマでもっと長い記事が掲載されていたのですが、現時点でネット上には見つかりません。代わりといっては変ですが、記事を全文転載しているブログがあります。「尼岡邦夫 稲村修 深海魚」をキーワードにしてグーグルで検索するとすぐに見つかります。

『朝日新聞』の記事でも、さまざまな専門家の推定を載せていますが、結論は『富山新聞』と同じでよくわからないということのようです。

紙面には「リュウグウノツカイ発見場所」の地図が添えられています。それによると、特に発見が集中しているのは、若狭湾周辺と富山湾周辺です。


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泥火山の活動で地震予知

カスピ海西岸のアゼルバイジャン共和国では、泥火山の活動をモニターすることによって地震を予知しようとする試みがおこなわれています:

これは、同国の地質学研究所がおこなっている研究で、泥火山の活動が強まることが地震の前兆であるとのことです。研究所の地質学者は次のように語っています:
「私たちの研究所がおこなった調査によって、弱い地震(マグニチュード 2~3)の前には泥火山の活動が活発になり始めることが判明した。ガスがにじみ出し、化学物質を含んだ水の量が増加する。これらの事象は、どこかで地震の予備段階が進行していることを示している。」

「泥火山をモニターすることによって、泥火山とこれからおきる地震との精確な関係が明らかになるだろう。そうなれば、部分的ながら地震の予知が可能になるだろう。」

記事によれば、アゼルバイジャンには世界の泥火山の 40~45% が存在しているとのことです。

本格的な泥火山モニターが始まってからの期間が短いので、まだ弱い地震に対応する事例しかないようですが、強い地震の前にも泥火山の活動に何らかの変化がおきるであろうことは十分に予想されます。


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畑に現れたキリスト像 ― ハンガリー

グーグル・マップの航空写真で、ハンガリー東部の刈り取りの終わった畑の中にキリストの姿が写っており、話題になっています。クロップマークだと思われます。周辺には蛇行する河川の痕跡のようなものも浮き出ています。


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なぞの地滑り ― 台湾

4月25日(日曜日)の午後、台湾の首都・台北(タイペイ)市の北東約 25km にある基隆(キールン)市(地図)近郊で大規模な地滑りが発生しました:

地滑りは自動車専用道を約 300m にわたって埋め尽くし、少なくとも 2台の自動車、2人が生き埋めになったとのことです。

掲載されている写真を見ると、崖や山腹が急斜面をすべり落ちたというよりは、地盤がほぼ水平に移動したようにも見えます。現地では特に雨が降ったわけでもなく、また地震があったわけでもないので、原因不明の謎の地滑りと記事は伝えています。

専門家は、丘を切り通して造成した斜面の勾配に問題があったのでは、と指摘しています。

なお、翌 26日(月曜日)の午前11時少し前に、台湾の東方海域で M6.5 の地震(USGS資料震源地図)が発生しています。


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2010年4月28日水曜日

アイスランドで再び空港閉鎖

アイスランド・エイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)の火山から噴出した噴煙の影響で、アイスランドの空港が再び閉鎖されています。アイスランドの全国内線、およびアイスランド発着の国際線の運行が休止されているとのことです。このブログ記事を書いている時点では、空港が再開されたとの報道は入っていません:

以下の記事は、沿岸警備隊が 26日に上空から観測したエイヤフィヤトラヨークトル氷河の噴火状況を伝えています。火口の直径が 200m にまで拡大し、高さも 150m に達している(おそらく氷河の表面から測った高さ)、また噴煙の色は淡く東に向かって広がり、高さは 3000m から 5000m に達している、噴火に伴う鳴動が明瞭に聞こえる、とのことです:

アイスランド気象局が 27日 22:40(日本時間 28日 7:40)に発表した情報によると、噴煙の高さ、マグマの流出レベル、周辺の地震は過去 4日間と変わっていない、溶岩は引き続き北に向かって流れている、火口から 45km 西の地域まで経度の降灰が見られる、噴火が終息する兆候は見られない、とのことです:

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2010年4月27日火曜日

ホーキング博士、エーリアンを語る

現代最高の理論物理学者の一人といわれ、車椅子の科学者としても知られているスティーヴン・ホーキング博士が、「エーリアンは存在するかもしれないが、破滅的な結果をもたらす恐れがあるので、コンタクトは避けるべきだ」と警告したそうです。多くの科学者や SF 作家が、これまで幾度となく議論を繰り返してきたテーマですが、ホーキング博士に言われるとそうかなと思ってしまいます:

どうもホーキング博士の頭の中には、映画 『インディペンデンス・デイ』 に登場するエーリアン ― イナゴの群のように、惑星の資源を消費し尽くしては別の新しい惑星に移っていくことを繰り返す ― があるようです。博士は次のように語っています:
We only have to look at ourselves to see how intelligent life might develop into something we wouldn’t want to meet. I imagine they might exist in massive ships, having used up all the resources from their home planet. Such advanced aliens would perhaps become nomads, looking to conquer and colonise whatever planets they can reach.

私自身は、この広大な宇宙には人類以外の知的種族が必ず存在する思っています (人類がはたして知的であるかについては議論がありますけれど) 。しかし、彼らが地球にやって来ているかとなると話は別で、その可能性は限りなく低いと考えています。ホーキング博士は彼らとのコンタクトは避けるべきだと語っていますが、私は、恒星間飛行を達成している種族であれば、高度に理性的で倫理観も発達しているので、地球人類に対して害を及ぼすことはないと思いたいです。

エーリアンとのファースト・コンタクトを描いた SF 小説として古典的な名作が 2つあります。宇宙空間で偶然エーリアンの宇宙船に遭遇した人類。千載一遇のチャンスを生かして、相手の文明について可能な限り情報を得たい、しかし、地球の位置などを相手に知られると人類の存亡に関わる危険がある …… そのような状況で人類側の対応が両極端に分かれています:


▼「宇宙翔(あまか)けるもの」 イワン・エフレーモフ(ソ連)
地球から数百光年離れた宇宙空間で、人類の宇宙船が異星の宇宙船と遭遇。相手は、姿形こそ人類と似通っているものの、酸素ではなくてフッ素を呼吸するエーリアン。彼らの空気は人類にとって猛毒。人類の空気は彼らにとって猛毒。しかし、互いに相手の意図を疑ったり武器を用意したりすることはなく、さまざまな相違と悪条件を克服して、友好関係を樹立。双方の乗組員の中には、恋愛に近い感情すら芽生えて …… という善意に満ちた楽天的かつ理想主義的な展開です。

▼「最初の接触」マレイ・ラインスター(アメリカ)
地球から 4000光年離れたカニ星雲を調査していた地球の宇宙船。探知機が 8000マイル彼方に正体不明の物体を捕捉。船内に警報が鳴り響く。物体は急速に接近してくるとともに、探知機のビームのようなものをこちらに向けて発射している。「探知機まで そなえた船に乗ってるやつは誰なんだ? 人間ではないぞ、これは!」 船長は通話機のボタンを押して怒鳴った。「直ちに行動せよ! 全員武装! 全区、非 常警戒態勢につけ!」

このあとの展開は、これから読 む方もおられると思うので割愛します。

〈 引用部分は、福島正実・伊藤典夫編 「世界の SF(短編集) 現代篇」早川書房から 〉

上記 2つの小説は、人類側の行動が対照的だということでよく比較されます。

もう一つ私が気に入っているファースト・コンタクトものは「天翔(あまか)ける十字軍」(ポール・アンダースン)です。14世紀のイギリスにエーリアンが新たな植民地を求めて飛来。高度な科学技術と圧倒的な武器をもつエーリアンだが、刀や弓を使った接近戦にはめっぽう弱くて …… というお話です。

話が少しそれてしまいましたが、エーリアンの存在について考えるとき、必ず登場するのが「フェルミのパラドックス」です:

また、「動物園仮説」というものもあります:

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巨大アナゴ水揚げ ― 兵庫県香美町

4月26日朝、全長 1.5m の巨大なアナゴが兵庫県香美町(地図)の香住漁港で水揚げされました:

通常のアナゴのほぼ 5倍の大きさだそうです。

兵庫県香美町の沖合では、このブログの 1月 27日付記事「リュウグウノツカイ 2匹 ― 兵庫県」で紹介したように、深海魚・リュウグウノツカイ 2匹が定置網にかかっています。

なお、兵庫県香美町は日本海に面しています。瀬戸内海に面していると誤解する方もいるようなので念のため。


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2010年4月26日月曜日

オルドイニョ・レンガイ山で地震増加

アフリカ大陸東部・タンザニアにあるオルドイニョ・レンガイ山地図)の周辺で地震が増加しているとのことです:

オルドイニョ・レンガイ山は、低温で非常に特殊な成分の「溶岩」(カーボナタイト)を流出することで有名で、3年前に小規模な噴火をしています。

3年前の噴火については、「西多摩の鶯」さんの掲示板「宏観休憩室 地震前兆研究村」に長文を投稿していますので、参照してください:

なお、オルドイニョ・レンガイ山は TBS TV の番組「世界ふしぎ発見」の第 1000回目を記念する放送で取り上げられました:

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ブーブクエイク (オッパイ地震)

イランの首都テヘランでは、地震に対する警戒感が急速に高まっています。アフマディネジャド大統領は、地震による人命の損失を最小限にとどめるため(別の政治的意図がある可能性もありますが)、テヘランの総人口 1200万人のうち少なくとも 500万人を今後数年のうちに周辺地域に移転させる計画を実施しようとしています。大統領にこの計画を決断させたのは、最高位の聖職者 Ayatollah Aziz Khoshvaqt 師の警告 ―― 無秩序に膨張を続けるこの国の首都は、まさに烈震に見舞われようとしている。数百万人が死滅するだろう ―― でした:

上記 『ワシントンポスト』 紙の記事によれば、Khoshvaqt 師がこのように警告する理由は、悪徳がテヘランにはびこっており、神が罪びとたちを罰しようとしているから、というシンプルなものです。同師は 「自らの罪を悔い改めよ。天罰が下されようとしている。街を去れ」 と礼拝者への説教で語っています。アフマディネジャド大統領は、最近の演説で、同師から(テヘランでの)地震は不可避であると告げられたことを認めています。

このような流れの中で、別の聖職者 Hojatoleslam Kazem Sedighi 師が説教の中で次のように述べました:
Women who do not dress modestly . . . lead young men astray, corrupt their chastity and spread adultery in society, which increases earthquakes.

控えめな服装をしない(イスラム伝統のスカーフや長い丈のコートを着用しない)女性が若い男性を正道から踏み外させ、自らの貞節を貶め、社会に不貞を蔓延させる。それによって、地震が増加する。

この発言が西欧諸国の女性の反発を呼びました。女性の露出度の高い服装によっておきるとされる地震を「ブーブクエイク」(boobquake; boob は女性のバストを意味するので、直訳すればオッパイ地震)と命名し、本当にイスラム教聖職者のいうとおりに地震が増えるか試そうじゃないか、という成り行きになりました。以下は、その運動の「震源地」と見なされている女性(パーデュー大学の大学院生)のブログ記事です:

アメリカの首都ワシントンでは、26日(月曜日)の正午にデュポン・サークルという場所に露出度の高い服装をした女性が集結して気勢を上げ、実際に地震の数が増えるか科学的に確かめてやろうじゃないかということになっています。全米各地で同じような集まりが予定されています。これまでのところ、47000人以上が参加の意向を示しているとのことです。もちろん、イランの聖職者に対する本気の抗議というよりは、ジョーク・嫌味・揶揄といったニュアンスの方が強いのですが、実際のところどれほどの盛り上がりになるのか、明日のニュースを注目したいと思います。


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Falcon HTV-2 は失敗

4月 22日にカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた Falcon HTV-2 (Hypersonic Test Vehicle 極超音速試験飛翔体)は、テレメトリー(遠隔計測)系の故障で失敗に終わったと DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency 国防総省国防高等研究事業局)が発表しました:

Falcon HTV-2 は、ロケットで打ち上げられた後、マッハ 20 以上の極超音速で大気圏内を滑空し、地球上のどの地点にも 1時間以内に到達できる無人の飛翔体です。機体の形状や、飛行の様子などは、以下の図を参照してください:

この Falcon HTV-2 の打ち上げを受けて、アメリカの有力紙 『ニューヨーク・タイムズ』 が解説記事を載せ、さらに 『産経新聞』 も以下のような記事を掲載しています:

DARPA の Falcon HTV-2 と空軍の X-37B の打ち上げが、たまたま同じ日におこなわれた(もともとは X-37B は 19日に打ち上げられる予定でした)ためか、にわか「軍事評論家」の中には両者を混同してトンデモ説を吹聴している向きもあるようです。

現在、X-37B と Falcon HTV-2 は空軍と DARPA という別々の組織が開発を進めている独立したプロジェクトですが、将来は PGS(Prompt Global Strike) という戦略概念のもとで統合運用されることがあるかも知れません。


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仙台湾で M6.1 !? (続報)

昨夜、「仙台湾で M6.1 !?」 という記事を書いたところ、今朝になってその場所に近い宮城県沖で M5.2、最大震度 3の地震(気象庁資料)が発生、さらに昼前には台湾で M6.5(USGS 資料)の地震が発生しました。もちろん偶然ですけれど(笑)。


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2010年4月25日日曜日

仙台湾で M6.1 !?

以下は、インド系のニュースサイトに掲載された記事です:

インドネシア・オビ島(地図)近海で 4月 24日に発生した地震(USGS 資料)のことを伝える記事なのですが、添付されている地図はどういうわけか日本の東北地方のもので、仙台湾(福島県沖)付近に震央のマークが付いています。

おそらく、先月 14日午後 5時過ぎに発生した最大震度 5弱の地震(日本気象協会資料)のための地図を誤って使ってしまったのでしょうが、それにしては地図に記入されている時刻(10:00:02 UTC = 19:00:02 JST)が合致しません。

X-37B 打ち上げ

このブログの 4月7日付記事 「X-37B の初飛行近づく」 の続報です。当初の予定は 4月19日でしたが、3日遅れて 22日にフロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げられ、予定の軌道に乗った模様です。以下は、Air Force Space Command(空軍宇宙司令部)と、実際に打ち上げを担当した 45th Space Wing(第45宇宙大隊)のサイトに掲載された記事です:

X-37B の構造図が以下にあります。右下に赤色でスペースシャトルと X-37B の大きさが比較できる図が添えられています。X-37B はスペースシャトルのメイン・エンジン部分程度の大きさしかありません。ペイロード部には太陽電池パネルも収納されており、あまり大きな積荷は収容できません。専門家によれば、小型の衛星 1~2個程度だろうとのことです:

今回の打ち上げはあくまでもテスト目的であって、何らかの兵器を実戦配備するという段階ではありません。X-37B の機体は、これまで数回、飛行機につり下げられて上昇し、切り離されたのち自動操縦で滑空・着陸をおこなうというテストをしたことがあるだけです。今回の打ち上げは、X-37B の機体が宇宙空間で予定どおりの機能を発揮できるかを試す最初の機会で、空軍高官も 〈 The top priority is to test the "vehicle itself" 〉(最優先の課題は機体そのものをテストすることだ) と述べています。

X-37B もしくはその改良型が実際に配備されるとしても、それは早くても数年先と見られています。しかし、アメリカに対抗しうる国々やアメリカの脅威を感じている国々は敏感に反応しています。特にロシアの前空軍司令官は激怒し対抗手段の開発を明言しています:

アメリカ空軍は X-37B をどういう目的に使おうとしているのでしょうか。報道記事から空軍高官や専門家の発言をいくつか引用します:
The attraction of a reusable plane is that a satellite "could be launched into a different inclination and altitude on subsequent launches," Payton said. A reusable plane also would be valuable in military "surge mode where you've got to deploy a lot of things rapidly," Payton said. Or, new technologies could be tested for up to 270 days and then be brought back to Earth for inspection.

U.S. Space Plane Starts Orbital Test - Defense News)

"Regardless of its original intent, the most obvious and formidable [potential use] is in service as a space fighter - a remotely piloted craft capable of disabling multiple satellites in orbit on a single mission and staying on orbit for months to engage newly orbited platforms," comparative military studies professor Everett Dolman, if the School of Advanced Air and Space Studies at the Maxwell-Gunter Air Force Base in Montgomery, Ala., has told SPACE.com. That capability "would be a tremendous tactical advantage."

Payton has said he envisions the X-37B has functioning much like the SR-71 Blackbird spy aircraft, being on alert in times of need to fly a mission that could support military operations. The time between flights, during a rush period of many space launches, could be as little as 10 to 15 days, Payton said.

Air Force says X37-B space plane is not a weapon - The Christian Science Monitor)

まとめると、空軍が X-37B に期待しているのは、短時間で打ち上げ準備が可能(帰還から再打ち上げまで 10~15日程度)で、自由な軌道傾角と高度に投入でき、長期間宇宙に留まれる運搬手段ということのようです。

今回打ち上げた X-37B がいつ帰還するのかは不明ですが、次の打ち上げは早くても来年になるとのことです。


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2010年4月23日金曜日

アイスランドの火山上空にオーロラ出現

アイスランドの火山噴火はここ数日小康状態となり、噴煙も火山灰が少なく水蒸気が多いことを示す白色になっていました。しかし、再び火山灰の多い黒い噴煙を上げるようになってきたとのことです。

以下の記事には、噴煙を噴き上げる火山の上空に現れた緑色のオーロラの写真が掲載されています:

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アイスランドの噴火と自国民支援

アイスランドの火山噴火でヨーロッパを中心とした航空網が麻痺状態に陥り、各国の空港で足止めされた多数の旅行客が不安と不自由な生活を余儀なくされました。私自身も、程度の差はあるもののフランスの空港で似たような経験をしたことがあるので、事態の推移に注目していました。グループ旅行ならいざ知らず、たった一人で旅行しているときにこのような状況に置かれた場合の不安感は、非常に大きなものです。そんなときに自国の在外公館が親身な支援をしてくれれば、どんなに心強いことでしょう。

今回の航空網麻痺では、各国が足止めされた自国民に対してさまざまな支援をおこなったり、計画したりしました。報道を見る限り、もっとも大がかりな支援をおこなおうとしたのはイギリスでした。その他の国々も、物的・金銭的な支援を実施(あるいは計画)しています:

ひるがえって、日本はどうだったでしょうか。以下は、今回の事態に関して外務省がウェブ・サイトに掲載した 3件の情報です。私の知る限り、他には見あたりません:

早い話が、注意喚起と情報提供のみ。困ったことがあったら現地の日本国大使館・総領事館に相談せよ、情報提供をおこなっていますから …… との仰せ。そうは言われても、いつ出発便のアナウンスがあるかわからないので、あまり長い時間出発ゲート付近から離れているわけにもいかず、なれない国では大使館・総領事館に公衆電話をかけることすら困難を感じることがあるものです。

思い出されるのは、初めて海外出張をする前に受けたオリエンテーションで聞いた印象的なアドバイス ―― 海外でクーデターや暴動などに遭遇し、本当に身の危険を感じたときは、距離が同じであれば日本大使館ではなくアメリカ大使館に逃げ込んだ方がよい ―― です。特にアメリカ系の企業に勤めている場合は、日本人であっても社員証を見せれば追い出されることはなく、アメリカ市民に準じる保護が受けられる可能性が高いとの説明でした。一方、日本の在外公館は危機に対する備えが十分ではなく、職員の対応も官僚的で、自国民を保護するというよりも、なんとかお茶を濁して早めにお引き取りいただきたいというのが本音で頼りにならないとのことです。

今回の航空網麻痺で、日本の在外公館の職員が空港まで出向いて相談にのるといった支援はできなかったのでしょうか。全部の空港でおこなうのは無理だとしても、日本人滞留者の特に多い空港に限定するなどすれば可能だったのではないでしょうか。

2010年4月22日木曜日

地震後の海底で金が噴出?

4月7日、インドネシア・スマトラ島沖で M7.8 の大地震(USGS資料震源地図)が発生しましたが、その震源直近に位置する Banyak 島(地図)の住民が海底の異変をうったえており、政府が調査チームを派遣しています:
  1. Undersea Anomalies in Aceh to be Studied
  2. 'Gold Stones' Appear After Aceh Tremor

以下は[1]の記事からの抜粋です:
Banyak 島の住民によれば、大地震で海底が劇的に隆起し、海底に裂け目ができて、泥と岩石を噴出している。

アチェ州の知事によれば、島民は不安をうったえており、安全な場所への避難を考えている。

島民の Mufliadi は、「海底の異変は、Pailana という小島の周りの Gosong Turak という海域で、ナマコを捕るために海底を浚っていた漁師が火曜日(4月13日?)に初めて気づいた」と語っている。その海域は魚が豊富で、地元の漁師にとって第一の漁場であったが、まったく魚がいなくなってしまった。地震の前には、Gosong Turak 海域の水深は 20~30m あったが、地震の後は 5m になってしまった。住民は、海底火山ができつつあるのではないかと心配している。

以下は[2]の記事からの抜粋です:
4月 7日、大地震の後に Banyak 島の海底で泥の流出が発生した。黄色っぽい石が海底から放出された。地元住民は、金が含まれているのではないかと考えている。

多くの漁師が水深 5m まで潜水して噴出地点に近づき、金を探している。

Banyak 地区の首長は 「数日前に実際にこの目で見たが、漁師たちは不適切な潜水用具を使って金を探している」 と語っている。彼によれば、地元当局は噴出地点は危険なので近づかないように警告しているが、漁師たちは無視しているとのこと。

地元住民たちは、初めのうちはこの噴出によって周辺の島々が海面下に沈んでしまうのではないかと心配していた。住民たちは、噴出がおきている場所を Gosong Wulawan (直訳すると Gold Rocks ― 黄金の岩石)と名付けている。

現時点で、海底から放出されている「黄色っぽい石」が何であるのか、についての報道はありません。調査チームの結果報告が待たれます。

バヌアツで火山噴火激化

南太平洋の島国・バヌアツ共和国で火山噴火が激しさを増しています。噴火しているのは、同国北部のサンタ・マリア島(Gaua 島)にある Gaua 火山(地図)です:

この火山については、このブログの昨年10月20日付記事 「バヌアツの火山が活発化」 にも記載しましたが、最近になって活動が激化し、山頂にある火口湖(カルデラ湖?)の水位が上昇。高温の泥流が居住地域に向かって流れ下る可能性が出てきたため、同島住民約 3000人の避難が準備されています:

NASA の “Earth Observatory” のサイトには、Gaua 山の噴煙を撮影した衛星写真が掲載されています:

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2010年4月21日水曜日

オーストラリア南西部で被害地震

4月20日朝、オーストラリア南西部(地図)で非常に浅い地震が発生し、負傷者や建物の被害が出ました:

ジオサイエンス・オーストラリアの発表では、M5.0、深さ 0km、米国地質調査所(USGS)の発表では M5.2、深さ 10km となっています。

今回の地震がおきた西オーストラリア州では、過去半世紀で最大規模の地震だそうです。これまでの最大は M4.2 でした。


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シヴェルチ山で噴煙 ― ロシア・カムチャツカ半島

4月19日、カムチャツカ半島のシヴェルチ山(地図)が噴煙を 7500m の高さまで噴き上げたとのことです:

記事によると、同山周辺では 24時間で 42回の地震が記録され、岩石崩落も観測されています。また周囲の地表温度が氷点下 20度であるのに対して、火山活動が活発な場所では 52.2度まで上昇しているとのことです。

カムチャツカ半島の空域は、日本と北米を結ぶ航空路に当たっており、今後シヴェルチ山の活動がさらに活発になれば、同航空路を利用する航空機に影響が出る可能性があります。


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2010年4月20日火曜日

噴煙・火山灰・火山雷 ― アイスランド

4月16日付「アイスランドの噴火激化 (続報)」で紹介した『ボストン・グローブ』紙の「ザ・ビッグ・ピクチャー」が、エイヤフィヤトラヨークトル氷河でおきている噴火について、2回目の特集をしています:

1番19番32番35番の写真には、火山雷が写っています。

11番の写真で、噴煙の手前に小さく見えている白いカモメのようなものは、実は小型の飛行機です。立ちのぼる噴煙の大きさがわかります。

13番は、ジュネーブ湖に沈む夕日です。4月17日に、スイスにあるユネスコの施設から撮影されました。火山灰の影響で空がかすんでいます。

16番の写真は、雪下ろしならぬ「火山灰下ろし」をする人たちです。


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アイスランドの噴火と予言

ガーナのニュースサイトに掲載されている以下の記事によると、ナイジェリアの旧都ラゴス在住の予言者 TB Joshua 氏が、アイスランドの火山から噴出した火山灰による航空ネットワークの麻痺を予言していたそうです:

同氏の予言を記事から引用します:
2010年1月17日付けの予言
I'm seeing in the sky something that will cause discussion amongst scientists and nations. But this thing will have negative effects. (私には空に「何か」が見えている。それは科学者の間や国々で議論を巻き起こすだろう。しかし、その「何か」はネガティブな効果をもたらすだろう。)

2010年1月31日付けの予言
This other natural disaster -- can we call it snow? And the thing will be falling like a whitish thing and it will stop the whole system. This will come from the hill. It's a strange thing. (この自然災害を雪と呼んでよいのだろうか。それは、白っぽいもののように降り、すべてのシステムを停止させるだろう。それは、丘からやってくるだろう。それは奇妙なものだ。)

世界のいずれかの地域で、大雪による交通麻痺が起こっても、「的中した」と宣言できるような内容です。予言とは、いつもそのように曖昧で多義的な解釈が可能なものです。

もう一つ記事を紹介します。エドガー・ケイシーが、今回のアイスランドの噴火を予言していたという内容です。ただし、この記事を載せているサイトは、一般のニュースサイトではないようなので、信憑性には「?」が付きます:

記事によると、エドガー・ケイシーは次のような予言を残しているそうです:
The so called endtime and earth changes will start with the great shaking of South America and the eruption of a volcano in Iceland. If there are greater activities in (the volcanoes) on Iceland, Vesuvius or Pelee, then the southern coast of California and the areas between Salt Lake and the southern portions of Nevada, we may expect, within the three months following same, inundation by the earthquakes.

いわゆるこの世の終末と大地の変化は、南アメリカの大地震とアイスランドにある火山の噴火で始まる。もし、より大きな火山活動が、アイスランド、Vesuvius(ヴェスヴィオス山?)、あるいは Pelee(ピーリー山?)で起きるならば、続いて、カリフォルニア州南部の海岸と、ソルト・レークとネバダ州南部の間の地域が 3ヶ月のうちに地震によって水没するだろう。(“following same”をうまく訳せません。)

But these are to be more in the Southern than the Northern Hemisphere. Americas westcoast will be destroyed. The widespread destruction in Los Angeles and San Francisco as well in many portions of the westcoast will occur. Earth changes will occur in the central portion of the United States as well.

しかし、北半球よりも南半球でより多くのことが起こるだろう。アメリカの西海岸は破壊されるだろう。西海岸の多くの地域と同じく、ロサンゼルスとサンフランシスコの広範囲に破壊がおよぶだろう。アメリカ合衆国の中央部でも大地の変化が起きるだろう。

「この世の終末と大地の変化は、南アメリカの大地震とアイスランドにある火山の噴火で始まる」 というくだりは、2月27日にチリで起きた M8.8 の大地震と今回のアイスランドの大噴火に符合します。

本当にエドガー・ケイシーが上記のような予言を残しているのか、現時点で私は確認できていません。


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2010年4月19日月曜日

温暖化でアイスランドの火山が活発化

『サイエンティフィック・アメリカン』誌のサイトに次のような記事が掲載されています:

記事は、アイスランド大学の火山学者 Freysteinn Sigmundsson 氏らの説を紹介しています。どのような説か簡単にいうと ―― 地球温暖化によってアイスランドのアイスキャップ(氷冠、万年雪、氷河など)が溶けると、地下に加わる圧力が減少する。圧力が減少すると、同じ温度であっても地下の岩石は液状のマグマに変化しやすくなる。このようにしてマグマが増加すると、火山噴火の規模が大きくなったり、噴火の頻度が高まったりする。気候変動によって今後数十年でアイスキャップの融解・縮小が進むと、アイスランドでは火山噴火が増加する ―― というものです。

実際に、氷河期が終わった 1万年前には、巨大なアイスキャップが縮小し陸地が隆起したため、アイスランドでは火山活動が急増したとのことです。

Sigmundsson 氏らが 2008年に発表した論文には ―― Vatnajokull と呼ばれるアイスランド最大のアイスキャップは 1890年以降約 10% 減少し、周辺の土地は 1年あたり 25mm 隆起、地下の圧力に大きな変化が生じた。その結果、地下では過去 100年間に 1.4 km³ のマグマが生成されたと推定される ―― と書かれています。

ただし、現在ヨーロッパの航空路線を麻痺状態に陥れているエイヤフィヤトラヨークトル氷河下の大噴火については、地球温暖化によるアイスキャップの縮小が原因であることを示す兆候はない、とも Sigmundsson 氏らは語っています。エイヤフィヤトラヨークトル氷河がアイスキャップとして比較的小さく軽量であるため、その縮小が今回の噴火の主要な引き金となったとは考えられないとのことです。

イギリス・リーズ大学の地球物理学者 Carolina Pagli 氏は、同じ理由(地球温暖化によるアイスキャップの減少)によって今後火山噴火や地震が増えるリスクがある地域として、南極大陸のエレバス山、アラスカ州のアリューシャン列島、南アメリカのパタゴニア地方を挙げています。


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「アイスランドの復讐」

Enjoy!

アイスランドの国家経済が破綻し、同国の人たちはヨーロッパ本土の人たちから冷たい視線や非難を浴びせられています。

特に、アイスランドの銀行に預金していたイギリスやオランダの人たちは、預金が返還されないことになり、不満や怒りが鬱積しています。「ash(灰)じゃなく、cash(現金)を送れ」は、そのような人たちの感情を代弁しています。

一方、アイスランドの人たちは「Kiss my ash!」とやり返しています。記事では ―― 「ふざけるな」という意味の「Kiss my ass」を「ash(灰)」ともじっている ―― と書いていますが、「火山灰でも喰らいやがれ」という風に解釈しても意味がとおりそうです。

ちなみに、「ass」は「尻」の意。「Kiss my ass」は直訳すると「(オレの)尻にキスしろ」です。これに関連して、「ゴマすり」や「おべっか使い」を意味する「brown nose」という言葉があります。手元の辞書によれば「人の尻にキスしてでも、こびへつらうという意味。尻にキスをすると、鼻にウンチがついて茶色くなるというイメージ」と解説されています。


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2010年4月18日日曜日

大地震の連続発生は異常か?

サモア、スマトラ、ハイチ、チリ、そして 5日前の中国青海省。さらに加えて、アイスランドの噴火でヨーロッパの航空路線が麻痺状態。近ごろ、大地震や大規模な火山噴火などが続くなぁと感じている人は多いようです。

今朝 TBS TV で放送された、関口宏がメイン・キャスターをつとめる「サンデーモーニング」でも、この話題を取り上げていました。それはいいのですが、某レギュラー・コメンテーターが訳知り顔で、太陽活動の低下と地震増加を結びつけるトンデモ説すれすれの講釈を垂れたのには唖然とさせられました。こういう頭の人が、ふだんは偉そうに政治や経済について論評しているのですから、何をか言わんやです。

海外のニュースサイトでも、大地震が異常に多いのではないかとの疑問を扱った記事を掲載しています:

USGS(アメリカ地質調査所)も問い合わせが多いためか、以下のような記事を自身のウェブ・サイトに掲載しています。上記の報道記事も、結論はこの USGS のものと同じです:

USGS のサイトに掲載されている USGS オリジナルの情報はパブリック・ドメインであると明記されていますので、著作権の心配をせずに全文を以下に “適当”訳します:
4月13日に中国でおきた悲劇的な M6.9 の地震、それに加えてハイチ、チリ、メキシコなどでおきた一連の破壊的な地震を見て、多くの人たちが地震活動が異常なのではないかとの疑念を抱いています。

科学者たちは、2010年が異常に高い地震活動の兆候を示しているとは考えていません。1900年以降の統計によると、世界ではマグニチュード 7 以上の地震(地震学者は “major”すなわち大地震と定義しています )が毎年平均 16回発生しています。発生回数は年によってかなり変動します。1986年や 1989年のようにわずか 6回しか発生しなかった年もあれば、1943年のように 32回も発生した年があります。

2010年は、最初の 4ヶ月で 6回の大地震が発生していますが、これは十分に正常の範囲内です。さらにつけ加えるならば、2009年4月15日から 2010年4月14日までの 1年間では、18回の大地震が発生していますが、この数字も予期される変動の範囲内に十分に収まっています。

「地震の発生回数が正常の範囲内に収まっているからといっても、それが人口の多い地域での大規模な破壊と人命の損失がおきたという事実を減殺するわけではありません」と USGS で地震災害についての副調整官を務める Michael Blanpied 博士は語っています。

今後どのようなことがおきるのでしょうか? 大地震がおきた地域の周辺では余震が続くでしょう。余震の規模がこれまでおきた地震より大きい可能性は低いですが、これまでの地震によって損傷を受けている建造物では、さらに損傷が広がる可能性があるので注意が必要です。ここ数ヶ月におきた地震によって、現在続いている余震のほかに、将来の大地震の可能性が高まったということはありません。しかし、その可能性が減少したわけでもありません。大きな地震は、過去と同じようにおき続けます。

最近おきている地震は異常ではないとはいうものの、人口の多い地域 ― 特に、建物が強い揺れに耐えられるように設計されていない地域 ― で地震が発生すれば大災害になる可能性があるということを、これらの大地震が明確に注意喚起していることを忘れてはなりません。私たちはどんな備えをすればよいのでしょうか? 科学者たちは、特定の地震についていつ発生するかを予知することができません。しかし、家庭や地域社会で、住居・仕事場・学校・企業が地震に対して安全になるように対策を講じれば、自らの安全性を高め、損失を減らすことができます。USGS では、地震に対してどのような備えをするべきかについての情報を Earthquake Hazards Program (地震災害計画)のウェブ・サイトで提供しています。

English version credit: U.S. Geological Survey)

結論は、地震は増えているわけではない、ということです。地味な内容ですが、センセーショナリズムやトンデモ説の対極にあり、感覚ではなく数字に真実を語らせる科学とはこういうものだろうと思います。

大地震が増えているように感じるのは、今年は人口の多い地域やその近くで大地震がおきて甚大な被害があり、盛んに報道されている事が大きな理由であろうと思います。

2010年4月16日金曜日

霧島山(新燃岳)の警戒レベルを引き下げ

浅間山に引き続いて、4月16日、霧島山(新燃岳)の噴火警戒レベルも 「2」(火口周辺規制)から 「1」(平常)に引き下げられました:

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捕鯨戦争 (その 2)

4月 12日朝、調査捕鯨船団の母船「日新丸」が南極海から東京に帰ってきました。舷側にはシー・シェパードが発射した赤いカラーボールの痕跡が生々しく残っていました:

各種の報道をまとめると ―― 捕獲枠は年間 865~1035頭あるが、実際に捕獲した鯨の頭数は、シー・シェパードによる妨害行為の影響で、07年度は 551頭、08年度は 680頭、そして妨害が激化した今季は、5年前に今の調査が始まって以来最も少ない 507頭にとどまった。調査は 09年12月から 10年3月にかけて 97日間実施。このうち妨害のため 31日間にわたり捕獲ができず、計画海域の約 3分 1を調査できなかった。

今季の調査捕鯨では、日本の捕鯨船とシー・シェパードのアディ・ギル号が衝突し、後者が沈没するという事件がありました。アディ・ギル号は、シー・シェパードが今季から妨害活動に投入した高速船ですが、もともとはモーターボートによる世界一周最速航海記録を樹立するために建造された船で、「アースレース」という船名でした。この高速船を購入する費用をシー・シェパードに提供したのが、アメリカ在住の富豪、アディ・ギル氏でした。


アディ・ギル氏とは

アディ・ギル氏については、名前以外聞いたことがない方がほとんどではないでしょうか。以下は、オーストラリアの 『Courier Mail』 紙のサイトに掲載されている記事です。アディ・ギル氏の写真とインタビュー内容が掲載されています:

同氏の人となりや信条を知るには好適な記事だと思いますので、以下に抜粋・意訳します:
イスラエル生まれ。イスラエル空軍に 4年勤務した。体格が小さく軍務をこなすには体力が十分ではなかったため、パイロットにはなれなかった。

両親は(ナチス・ドイツ支配下の)ヨーロッパを 1936年に脱出。ギル氏は 1983年にイスラエルからアメリカに移住。アメリカに到着したときの所持金はわずか 200ドル(約 2万円)。ニューヨークで自動車整備工として働いたが、ニューヨークの気候になじめなかったため、ロサンゼルスに移動。99セントのパスタで 4食分をまかない、後は水だけという赤貧の生活を経験した。

大型スクリーンを使ったビデオ投影を専門とする会社に就職し、仕事を学ぶ。1992年に “American Hi Definition” という自分の会社を設立。(この会社の名前を出したときに、記者に対してスペルを間違わないように求め、「私は物事が正確でないと気が済まないのだ」と語った。)

その後は、ハリウッドのサクセス・ストーリーを地でいく展開。最初の大仕事は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『トゥルーライズ』の中で使われた大型スクリーンを提供したこと。“American Hi Definition”社は、現在、アカデミー賞、グラミー賞を含むほとんどの授賞式に大型スクリーンを提供している。

1997年には、もう一つ別の会社を設立。TV番組製作システムを備えた大型トラックを提供。屋外で番組の収録・制作ができ、ジェイ・レノ・ショーでも使われた。

「私は、自分が持つ経済的な強みを自分のため以外に使いたかった。人間というのは利己的なものだ。金を手にしたとき、人は『何ができるだろう? 新しい時計か靴を変えるかも知れない』と考えるものだ。」

ギル氏は手首を出して、使い古したステンレス製の腕時計を見せてくれた。「見てくれ。これはバル・ミツバー(ユダヤ教の成人式)のときにもらったものだ。私は 12歳半だった。まだちゃんと動く。私の祖母がくれたものだ。ロレックスを買える身分なのに、なんでそんな腕時計をしているんだと、よく人に訊かれる。そんなときは、私にはロレックスは必要ない、と答える。」

そんなギル氏にも、自ら認める弱みがある。高級外車に夢中になっているのだ。「私はフェラーリを所有している。自分で整備するために中古で買ったものだ。でも、私が運転している時間の 98% は、ミニ・バンを使っている。」

「ポルシェ・カレラ GT を 60万ドル(約 6000万円)で買おうとしているときだった。非常に美しい外観の車だった。しかし、その車を買うことを考えれば考えるほど、それが利己的な行いに思えてきた。私には本当にその車が必要なのだろうか。もしその金を自分が心底から敬服できる人物、たとえばシー・シェパードのポール・ワトソン氏のような人物、に贈ったとしたらどうなるだろうか、と考えた。」

「取引は簡単だった。私は彼に 100万ドル(約 1億円)を寄贈すると申し入れ、彼は船を購入して、それに私の名前をつける。」

ギル氏は、アディ・ギル号が衝突に巻き込まれたというテキスト・メッセージを受けとったとき、それほど心配しなかった。「私は、その衝突がどれほど深刻なものかわかっていなかった。衝突の第一義的な責任が誰にあるのかも知らなかった。しかし、さまざまなアングルから撮影されたビデオを見て、私には状況が飲み込めた。日本人の攻撃性を最も端的に示しているのは、それが当て逃げだったことだ。(車を運転していて)誰かをはねてしまったとき ― それがシカでもカンガルーでも同じだ ― 人は車を止め現場にとどまるものだ。」

「もし事故現場から逃げたとしたら、そのこと自体が(運転者の)意図を物語っている。(日本側の)船長は、他の船に衝突しておきながら、停止せず前進を続けた。彼を刑務所に送るには、その事実だけで十分だ。」

「もし私の知能指数が 60 であったら、私は日本人がクジラを殺しているのは研究のためだと信じるかも知れない。“RESEARCH”(研究)という文字を舷側に大きく書いたとしても、そんなことを誰が信じるというのか。」

「アフリカのケニアでは、象牙を目的とした密猟者を射殺してもかまわないことになっている。密猟者は、象を殺してはならないと告げられているにもかかわらず、象を殺し続けている。密猟者は、象を殺すことをやめないならば、お前たちを射殺するとも警告されている。そして、そのとおりに(密猟者の射殺が)実行されている。(クジラの密漁をやめさせるための)次のステップは、現場に赴いて日本人を撃ち殺すことなのだろか。それが捕鯨をやめさせるために必要な手段の到達点なのだろうか」とギル氏は問いかける。

「もし、ここで私がナイフを取り出して金銭を要求したとしたら、銃を持った警官がかけつけてくるだろう。銃は、実力で法律を守らせる手段だ。」

「もう一隻のアディ・ギル号を建造するには 500万ドル(約 5億円)が必要だろう。もし私が 6隻からなる艦隊を持っていたら、捕鯨は一切できなくなるだろう。」

ロサンゼルス・タイムズ』の記事によると、ギル氏は、捕鯨を阻止するために、「アディ・ギル 2世号」ともいうべき、より大きく、より速い船の建造を目指しているそうです。一方、シー・シェパードの幹部は、法律上および税制上の理由から、既存の高速船を購入することも選択肢として残っていると語っています。(こちらの記事にも、今月の初めごろまでは、アディ・ギル氏の写真が掲載されていたのですが、いつの間にか写真だけ削除されています。)

なお、“American Hi Definition”社のサイトにも、アディ・ギル氏の紹介と写真が掲載されています。


(続く)


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アイスランドの噴火激化 (続報)

『ボストン・グローブ』紙の「ザ・ビッグ・ピクチャー」が、アイスランドの噴火の様子を捉えた写真を特集しています:

2番の写真は、噴火によって氷河の一部が溶け、奔流となって海(川?)に流れ込んでいる様子です。

9番の写真は、噴火の夜景です。私の好きな一枚です。先月 27日に撮影されました。雲が地平線から放射しているように見えますが、これは遠近法の原理によるものです。広角レンズをつかって撮影したために、「放射」がいっそう強調されています。

18番の写真は、NASA の Terra 衛星が 4月 15日に送信してきたものです。画面左上から、イギリス北部とスカンジナビア半島南部の間にある北海に向かって、火山灰が流れ込んでいます。イギリス上空やスカンジナビア半島上空には、多数の波状雲が写っていますが、これは大気重力波によるものだと考えられます。


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2010年4月15日木曜日

アイスランドの噴火激化

アイスランド南部の火山噴火が激化し、大量の噴煙が上がっています。ヨーロッパでは、火山灰の影響で空港の閉鎖が相次ぎ、航空網が大混乱に陥っています。日本航空や全日空のヨーロッパ便にも、遅延・欠航や、途中から成田に引き返すなどの影響が出ています:

以下は BBC(英国放送協会)の記事です。冒頭の画像は、気象衛星の観測データによって、火山灰の広がり具合を示したものです。すでに、イギリス、ノルウェー、スウェーデンなどの上空に濃い火山灰が流れ込んでいます。画像の右下の「NEXT」ボタンをクリックすると、今後の予想を見ることができます。火山灰はまもなくロシアにまで到達する見込みです:

以下も BBC の記事ですが、激しい噴火の様子を撮影した動画が掲載されています:

以下には、最新の噴火状況を撮影した静止画のスライド・ショーがあります:

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浅間山の警戒レベル引下げ

気象庁は浅間山の噴火警戒レベルを、4月15日付で 「2」(火口周辺規制)から 「1」(平常)に引き下げました:

このほか、最近警戒レベルが引き下げられた著名な火山には、ハワイ島のマウナ・ロア山、アラスカ州のリダウト山があります:

マウナ・ロア山は 3月30日付で 「advisory」 から 「normal」 に、リダウト山は 4月12日付で同じく 「normal」 に引き下げられました。

火山については、噴火がニュースとして華々しく報道されることが多いのに対して、火山活動の沈静化や終息はあまり大々的には報道されません。そのせいか、世界中でどんどん火山が噴火しているような印象を受けがちですが、実態としては活発化する火山があれば沈静化する火山もありで、世界中で火山活動が特に増えているというわけではありません。


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2010年4月14日水曜日

アイスランドの噴火で 800人が避難

アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)で起きていた割れ目噴火は、終息に向かっているとみられていました。しかし、氷河の下で割れ目が拡大し噴火が激化したためか、周辺の河川で急激な増水が観測され、住民 800人に対して避難命令が出されました:

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ワールドカップ期間中に大地震?

今年 6月 11日から 1ヶ月間にわたって南アフリカ共和国で開催される 2010 FIFAワールドカップ。その最中に大地震が起きるという記事が、イギリスのタブロイド紙『デイリー・スター』に 4月 11日付で掲載されています:

イギリスのタブロイド紙は、自作・他作を問わず“トンデモ”系の話を躊躇することなく掲載するので、信用することはできませんが、上記記事には次のようなことが書かれています:
  • Chris Hartnady 博士が最も地震が起こる可能性が高いと指摘した都市は、ケープタウン(地図)とダーバン(地図)。
  • 「東アフリカ地溝帯が南方へゆっくりと拡大しており、アフリカ南部の広い範囲がその影響下にある。したがって、この地域(南アフリカ共和国)で大地震災害が起きるのは避けられない。」と博士は語っている。
  • ケープタウンは 1890年に大地震に襲われた。Jan Biesjes Kraal 農場が震央だったが、そこはその後、アスコット競馬場になった。地震によって農場はほとんど壊滅状態となった。目撃者によれば、1インチ幅の地割れが、ほぼ 1マイルにわたって伸びていたとのことである。

ワールドカップの試合は、南アフリカ共和国内のヨハネスブルグ、ケープタウン、ダーバンなど 9都市 10会場でおこなわれることになっています。

南アフリカで大地震が起こりうるという指摘はよいとして、なぜワールドカップの開催期間中に発生するのかという点については、記事は全く触れていません。センセーショナリズムを事とする記事ではありがちなことです。

で、私のみるところ、上記の記事はオンライン科学雑誌『サイエンス・イン・アフリカ』に掲載された以下の記事を下敷きにして書かれたと思われます:

この記事は、元ケープタウン大学の准教授で、Umvoto Africa (地球科学分野のコンサルタント会社)のテクニカル・ディレクターである Chris Hartnady 博士の考えを紹介するもので、アフリカでの地震対策を呼びかける内容です。以下は記事からの抜粋です:
「アフリカに住む人びとは、災害に備えるためにもっと地震に注意を払うべきである。そのためには学校での教育から始めるのが最も良い」。Umvoto Africa のテクニカル・ディレクターである Chris Hartnady 博士は、Milnerton 地震の 200周年にあたってこう語った。

この地震の震央は、ケープタウンの中心部から北東に 20km のところで、Jan Biesjes Kraal に非常に近かったと考えられる。この 1809年(『デイリー・スター』の記事では 1890年になっていました)に起きた地震のマグニチュードは 6.2 と推定されている。発生したのは 1809年 12月 4日の夕方であった。

アフリカ大陸南部で発生する大地震の確率と被害を定量的に推し量るのは困難である。アフリカ大陸の歴史記録は限られており、1900年以降、マグニチュード 7以上の地震は 3~4件しか記録に残っていない。一方、地球全体でみれば、過去 30年間に限っても、同様の規模の地震が数百件記録されているのである。

(記録に残っている大地震は少ないが)この地域で大きな地震災害が発生するのは避けられない。アフリカ南部の広い範囲が、東アフリカ地溝帯の南方へのゆっくりとした拡大の影響下にあるので、この地域(南アフリカ共和国)で大地震災害が起きるのは避けられない。地震は、「もしも」ではなく「いつ」の問題である。

地震監視の科学を充実させるだけでは不十分である。災害リスクを軽減するには、人びとに対して自然に発生する地質学的災害への注意を喚起し、迅速で効果的な緊急対応を通じて人びとが地震に対応する能力を高めることが必要である。

大地震災害の頻度が低いということは、住民がそのような事態に関する歴史的な経験や伝承・神話の類を持っていないことを意味する。われわれは、地震に対する関心の欠如を是正し、長期的観点から災害に備える手段を講じなければならない。

人びとに地震が起こりうるということをわかってもらうには、頻繁に起こっている無感地震をみてもらうことが有効である。そのためには、学校にも地震観測装置を設ける必要がある。そうすれば、地域社会の人たちもそれを利用することができ、ひいては、より広い分野の数学や科学の教育レベル向上にも役立つことになる。

そっくりの文章がいくつも出てきます。どうやら、前者『デイリー・スター』の記事は後者『サイエンス・イン・アフリカ』の記事から都合の良いところだけを抜き出して、ワールドカップ云々の話を作り上げたもののようです。このようなことは、トンデモ系の話にしばしばみられます。

2010年4月13日火曜日

多数のヘビが出現 ― 広東省広州市

中国・広東省広州市(地図)近郊の村に約 400匹のヘビの群が現れ、地震の前触れではとの不安が広がっています:

広東省では月曜日に調査チームを編成し、住民がヘビを捕獲するのを支援しているとのことです。広東省の地震専門家は、ヘビの移動と地震とは関係がないと語っています。

一方、ヘビの専門家は、この種のヘビは、広東省など中国南部ではなく浙江省などの中国東部でみられるもので、危険である(毒を持っている?)と述べています。村では、24時間対応の治療所を設けていますが、これまでのところ被害は出ていないとのことです。

暖かくなる時期ですので、冬眠からさめたヘビが現れてもおかしくはないと思いますが、数が多く、またこの地域ではふだん見かけない種類だとなると、警戒すべきかも知れません。


【2010年4月14日追記】
このヘビ出現の件は、人為的な原因によるものでした。以下の記事にあるように、毒ヘビ 500匹を放したとして、兄弟 2人が公共の安全を脅かした容疑で逮捕されました。2人は、村の有力者との間でトラブルがあり、その復讐としてヘビを放したとのことです。ヘビは、市場で食用・薬用として売られていた “short-tail pit viper” と呼ばれるマムシの一種。有毒ですが、村人への被害はなかったということです。どのようなトラブルであったかは、明らかにされていません。
【追記終わり】

ロサンゼルスで大地震のうわさ

アメリカ・ロサンゼルスで、電子メールやツイッターを通じて、近々同地で大地震があるとのうわさが広まっているそうです:

電子メールは、おおむね次のような文言で始まっているとのことです:
私の知り合いの奥さんは、“seismology dept. in L.A”(ロサンゼルス市の地震課)で働いている。今日、全員が呼び集められ、大地震が 24時間以内に起きるので、子どもを学校から連れ帰り、水を備蓄するように言われたそうだ。

ロサンゼルス市には “seismology dept.” という部署はないのだそうです。

さらに、ツイッターの世界では、“quake quack” (quake は「地震」、quack は「ほら吹き」、「山師」、「アヒルの鳴き声」などの意)として有名な Luke Thomas という人物が発信源とみられる地震のうわさが流布しているとのことです。この人物については、このブログでも昨年の今ごろ「アヒル地震予知?」という記事で取り上げました。ほとんど毎日のように地震が来る来ると言い続けている人物です。

Luke Thomas のホームページは以下です:

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アイスランドの噴火 弱まる

3月 20日に、アイスランド南部のエイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)で始まった割れ目噴火は、勢いが弱まっています:

噴火地点周辺では地盤が沈降し始め、溶岩の流れる速さも目立って遅くなっているとのことです。4月 12日には噴火地点付近を震源とする M3.2 の地震がありましたが、噴火の勢いの低下傾向は変わりませんでした。噴火の警戒レベルは “emergency” から “high” に引き下げられました。

噴火が終わりに近づいていることを示す兆候がいくつか現れているものの、噴火がこのまま終わると断言することには、専門家にもまだ躊躇いがあるようです。


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2万 4千ワットのカー・ステレオ

超高出力のカー・ステレオ:

本当にスピーカーからの音圧だけで、こんなに髪の毛が揺れるものでしょうか。

2010年4月12日月曜日

スペイン南部で 深発地震

日本時間の今朝 7時 8分頃、スペイン南部の都市・グラナダの近郊で M6 超の深発地震が発生しました:
  1. Spain hit by 6.2 magnitude earthquake
  2. Spain Struck by Magnitude 6.2 Earthquake; No Damage Reported

被害は出ていないようです。EMSC(European-Mediterranean Seismological Centre 欧州・地中海地震学センター)は M6.2、USGS(U.S. Geological Survey 米国地質調査所)は M6.3 と発表しています。震央はグラナダの南東 16 km (USGS は 25 km)、震源の深さは 624 km (USGS は 616.7 km)です。

上記 1 の報道記事によると、3月 1日にスペイン人の地質学者 Luis Eugénio Suarez 氏が、近日中にグラナダ地域でチリ地震に近い規模の地震が起こると発表していたということです。規模や深さを考えると、今回の地震がそれに該当するとは考えにくいですが、今後の推移に注目したいと思います。

グラナダでは 126年前に M6.6 の地震が起き、死者 750~900人、負傷者数千人の被害が出ているとのことです。スペインとポルトガルを含むイベリア半島南部では、昨年来、やや強めの地震が何回か起きています。

沼津市と富士市で停電

4月 9日の夜、静岡県沼津市と富士市で、全世帯の約 2割が停電しました:

東京電力によると「地中の高圧送電線に異常があったため」で、原因は調査中とのことです。地中の送電系統に異常が生じたとのことですので、最近日本各地で多発していると報じられているカラスの巣の材料が電線に触れてショートしたとは、考えられません。

ちなみに私の住まい(神奈川県内某市)は、11日夕方に 1~2分間停電しました。ここに住み始めて何年にもなりますが、記憶する限りでは停電は初めてです。カラスの巣が原因ではないかと思っていますが、今のところ、報道や東京電力の発表はないようです。

彗星が太陽に突入

4月 10日、クロイツ群に属するとみられる無名の彗星が太陽に突入しました:

突入の様子を捉えたのは、NASA と ESA(欧州宇宙機関)が共同で打ち上げた太陽・太陽圏観測衛星 SOHO です。彗星の太陽突入は、今年 1月と 3月にも発生しており、今回で 3回目です。


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小惑星 2010 GA6 が地球近傍を通過

4月 9日午前 11時06分(日本時間)、小惑星 2010 GA6 が地球から 434000 km (月の軌道の少し外側)まで接近しました:

この小惑星は、米国アリゾナ州ツーソンにあるカタリナ掃天天文台(Catalina Sky Survey)によって発見されました。発見当初のデータによる計算では、月の軌道の内側まで入ってくると予想されていましたが、その後の観測データによって、月の軌道の少し外側を通過すると修正されていました。この小惑星の直径は 約 22m と推定されています。


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2010年4月11日日曜日

サケガシラ捕獲 ― 新潟県糸魚川市

4月 10日、新潟県糸魚川市の姫川港で体長 1.2m のサケガシラとみられる魚が捕獲されました:


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2010年4月9日金曜日

Kopp-Etchells 効果

砂嵐や火山の噴煙などの中で、砂塵や火山灰の微粒子どうしが激しく衝突を繰り返すと帯電します。この帯電のメカニズムは、まだ完全には解明されていないようです:

ヘリコプターが砂塵の中に着陸しようとすると、回転翼(ローター)の部分で砂塵の粒子が帯電し、放電による発光現象がおきます。これを 「Kopp-Etchells 効果」と呼ぶのだそうですが、その現象がおきている様子を撮影した動画が、上の記事の末尾にあります。このような現象があるという予備知識がないままこれを目撃したら、かなり驚くのではないでしょうか。

下の記事は、3ページにわたって「Kopp-Etchells 効果」の写真を掲載しています。アフガニスタンで撮影されました。“Kopp” と “Etchells” は、同地で戦死したアメリカとイギリスの若い兵士の名前だそうです:

ウェザー・ロックは絶対に間違わない

アメリカ・モンタナ州スティーブンスヴィル(地図)にある “Bitterroot Weather Station”(ビタールート測候所)の柵には、ウェザー・ロックという石がひもでつり下げられています。この石が気象を的確に知らせるのだそうです:

ウェザー・ロックの横には説明の看板があり、次のよう書かれています:
If the rock is wet, it's raining.
If the rock is swaying, it's windy.
If the rock is hot, it's sunny.
If the rock is cool, it's overcast.
If the rock is white, it's snowing.
If the rock is blue, it's cold.
If the rock is gone... tornado!

もし石が濡れていたら、雨が降っています。
もし石が揺れていたら、風が吹いています。
もし石が熱かったら、太陽が照っています。
もし石が冷たかったら、曇っています。
もし石が白かったら、雪が降っています。
もし石が青かったら、寒いです。
もし石がどこかへ行ってしまったら …… 竜巻だぁ!

記事では、この石は “user friendly”(利用者にとって簡単に使える、分かりやすい、利用しやすい) であり、住民の評判がすこぶる良いと紹介しています。

ピップエレキバンで地震予知

偶然見つけたブログ記事です:

地震の前に磁石の磁気が弱まるという話は、1855年に発生した安政の江戸地震の際に、「浅草茅町の眼鏡屋で、店頭に展示してあった磁石に付いていた釘が落下、その 2時間後に地震が起きた」という話がもとになっています。この時の「磁石」とは、天然に産出する磁石(磁鉄鉱)で、現在市販されているフェライト磁石などと比べると、たとえ磁気の強さが同じであっても、磁気を保つ力(保磁力)が桁違いに弱いものです。

私も磁気を利用した「地震予知器」を、何年も前から家中の 3か所に置いていますが、他の方々がやっているのとは方式が異なり、保磁力の観点から市販の磁石は使っていません。

以前は、冷蔵庫の側面などに、磁石がずり落ちない程度に紙を何枚か挟んでおくという方法も試しました。しかし、あてにならないことがわかり、あきらめました。温度や湿度の影響で紙が微妙に膨張して磁石がずれやすくなったり、側を人間が通るときにおこるわずかの風や、冷蔵庫のモーターやドアの開閉にともなう振動でも磁石がずれることがあったからです。

ちなみに、この紙を挟むという方法はアメリカの PSN (Public Seismic Network) のメンバーから教えられたものです。彼に言わせると、この方法は自分たちが最初に思いついたものだが、日本人がすぐにまねをしたとのことです。

現在、私が家に設置している「地震予知器」については、いずれ写真入りで紹介したいと思っています。

火山活動解説資料(平成22年3月分)

気象庁が 4月 8日に発表した「火山活動解説資料」に、現時点で「注意が必要」あるいは「今後の活動の推移に注意が必要」とされている火山、および何らかの注記がある火山は以下のとおりです:

北海道地方
  • 十勝岳[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 樽前山[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

東北地方
  • 秋田駒ヶ岳[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 吾妻山[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

関東・中部地方、伊豆・小笠原諸島
  • 草津白根山[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 浅間山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
  • 富士山[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 伊豆大島[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 三宅島[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
  • 硫黄島[火口周辺警報(火口周辺危険)]
  • 福徳岡ノ場[噴火警報(周辺海域警戒)]

九州地方
  • 霧島山(新燃岳 しんもえだけ)[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
  • 桜島[火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
  • 薩摩硫黄島[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
  • 口永良部島(くちのえらぶじま)[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
  • 諏訪之瀬島[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

上記のうち、富士山については「富士山の火山活動解説資料(平成22 年3月)」に以下のように書かれています:
山体直下を震源とする高周波地震の発生は 2008年後半頃から若干増えています。深さ 15km 付近を震源とする深部低周波地震は少ない状況でした。火山性微動は観測されませんでした。

国土地理院の GPS 観測によると、山体周辺の GPS による地殻変動観測で、2008年8月頃から地下深部の膨張を示すと考えられるわずかな伸びの変化が認められます。

上記の「富士山の火山活動解説資料」には、地下深部の膨張を示すと考えられる、地上の 2地点間の距離の変化のグラフ 2葉が添えられています。どちらも 2地点間の距離が伸びる傾向を示しているのですが、このうち「S 富士宮 1」と「御殿場」の間の斜距離のグラフでは、2009年 1月ごろから伸びの変化が急になっている様子が見てとれます。


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月と国際宇宙ステーション

下弦まぢかの月と国際宇宙ステーションの写真です。4月 5日、山崎直子宇宙飛行士が搭乗したスペースシャトル・ディスカバリーが打ち上げられる 15分前に撮影されました:

過去の関連記事

2010年4月7日水曜日

X-37B の初飛行近づく

4月 5日に、女性飛行士・山崎直子さんが搭乗したスペースシャトル・ディスカバリーが予定どおり打ち上げられました。これで、スペースシャトルの打ち上げは、あと 3回を残すのみとなりました。今年の秋までに、NASA が保有するスペースシャトルはすべて退役し、NASA は有人宇宙飛行の手段を失うことになります。

そのような状況下、アメリカ空軍が開発を進めていた無人スペース・プレーン X-37B が、4月 19日にフロリダ州のケープ・カナベラルからアトラス 5型ロケットで打ち上げられることになっています:

上記記事に掲載されている画像でわかるように、機体の形状はスペースシャトルに似ています。サイズは全長 9m ほどで、スペースシャトルよりはずっと小型です。アトラス 5型ロケットの先端部に取り付けられた特大のフェアリング内に収容されて打ち上げられ、軌道周回後は、自動操縦で滑空してカリフォルニア州南部のバンデンバーグ空軍基地に着陸することになっています。

今回の打ち上げでは、どのくらいの期間、軌道上にとどまり、いつバンデンバーグ空軍基地に帰還するのか公表されていません。スペースシャトルの場合、電源に使用している燃料電池の容量に制約があり、宇宙にとどまれるのは数週間ですが、X-37B は太陽電池を電源としており、さらに無人であるため最長 9ヶ月間の軌道飛行が可能とされています。

X-37B は、当初 NASA が開発をしていましたが、予算不足のため 2004年に計画を中止しました。その後、DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency 国防総省国防高等研究事業局)が開発を引き継ぎ、2007年に空軍にプロジェクトを移管して今日に至っています。

空軍は、X-37B (あるいはその改良型)を何機製造し、どういう目的に使う計画なのか明らかにしていません。そのため、さまざまな推測がなされています。機体のサイズの割には大きなロケット・エンジンが搭載されているため、宇宙空間で軌道を自由に変えて紛争地域の偵察を臨機応変におこなう、あるいは敵の人工衛星を調査・捕捉・無害化する、緊急事態に際して必要な装備を迅速に宇宙空間に配備する、さらには以下の図のようなペネトレーターを搭載して、敵の地下壕や地下施設を宇宙空間から攻撃するなど、さまざまに取りざたされています:

空軍で X-37B の開発を推進する主幹部門が、緊急即応能力の開発と配備に責任を持つ部局であることが、X-37B の目的を推測する際の鍵となっています。