2011年9月30日金曜日

カナリア諸島で地震続発(続報-3)


カナリア諸島(カナリー諸島)西端のエル・イエロ島(地図)で7月中旬から始まった群発地震は、これまでに8500回を超えています。ほとんどが無感地震でしたが、9月最後の週あたりから規模の大きな地震が増え、それにともなって有感地震も増えてきたため、住民の中には親戚・知人を頼って避難する人たちがでています。同島の火山噴火警戒レベルは、「続報-2」で書いたように9月23日から〝イエロー〟(下から2番目)に上がっています:

以下は、地震回数の推移を示すグラフです。規模の大きな地震(といってもM2以上)を示す赤い棒が9月末になって急に増えていることがわかります:

注目すべきは、震源の分布が明らかに変化していることです。以下の図は、9月28日までのデータにもとづいて作成された震源の分布図です。上が震源の平面分布(震央の分布)、下が垂直分布(断面図)です:

赤い丸が最新2日間の震源で、他はそれ以前の震源です。これまでは、エル・イエロ島の北側で、過去の大地滑りの痕跡であるU字型の湾を中心として発生していた地震が、島の南側に移り、震源の深さが増していることがわかります。

この変化が何を意味しているのかは、わかりません。新しい震源が深さ14kmから18kmのあたりの上部マントルに集中していることから、カナリー(カナリア)・ホットスポットのマグマ供給源であるマントル・プリュームの動きと関連があるのかも知れません(カナリア諸島周辺の地殻とマントルの境界がどのくらいの深さにあるのかにもよります)。

例によって、フィアモンガー(fear-monger)とかドゥームセイヤー(doomsayer)と呼ばれるトンデモ屋さんたちが、エル・イエロ島で今にも巨大噴火が起きそうだと騒ぎ始めていますが、どうでしょうか。エレーニン彗星(エレニン彗星)でやらかした大失敗の失地回復はなるでしょうか(笑)。

上記の断面図でもわかるように、地震のほとんどは地下十数キロメートルの深さでおきています。震源が上昇して地下数キロメートルの浅いところで地震が多発するようになれば、噴火が切迫していると言えるのでしょうが、いまのところ、そのような状況ではないようです。以下の記事では、エル・イエロ島の地震活動を監視している National Geographic Institute の責任者が、噴火の可能性について〝slim chance〟(ほんのわずかな可能性)と語っています。また、別の記事では、近い将来に噴火が起きる可能性は「10%以下」とも述べています。ただし、二酸化炭素ガスの放出量は継続して増加傾向にあり、新しいマグマの補給は続いているようです:

報道では、観光客や地元住民が避難し始めたと伝えられています。これまでに伝えられたところでは、全島民約1000人のうち、避難したのは数十人とのことです(記事によって数字が大きく異なっています)。避難した住民をインタビューした動画などを見ていると、避難した理由は火山噴火を恐れてというよりも、地震によって誘発される大規模地滑りを恐れてのことであることがわかります。

以下は、ドイツのシュピーゲル紙のサイト(Spiegel Online)に掲載された写真ですが、島の北側にある過去の大規模地滑りの跡地の様子がわかります。この地域を中心に今回の群発地震はおきているのですが、急峻な崖の麓に集落があり、住民が地滑りを警戒するのもうなずけます。過去にはここで、地震をきっかけとした大規模な地滑りが発生し、300km³におよぶ大地が海中に滑り落ちて高さ100mを超えるメガ津波が発生、アメリカ大陸の沿岸部を襲ったと考えられています:

カナリア諸島の島々は、大西洋中央海嶺から広がる海洋底が東に向かって移動していく際に、ホットスポットの上を通過して次々に生まれたと考えられています。カナリア諸島よりも南にあるヴェルデ岬諸島も同じようにして形成されたとのことです(大西洋の海底図)。

以下はシュピーゲル紙のサイトに掲載されたエル・イエロ島の溶岩の写真です。同じようにホットスポット上に形成されたハワイ諸島で見られるような、パホエホエ(パホイホイ)溶岩です:

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2011年9月29日木曜日

肉眼でも見える巨大黒点群出現 (続報)


巨大黒点群で発生したフレアの影響で、イギリスの上空にもオーロラが現れました。ノーサンバーランド州、オクスフォードシャー州、バッキンガムシャー州などで観測が報告されています:

ノーサンバーランド州はスコットランドとの境界に位置するイングランド最北の州ですが、オクスフォードシャー州とバッキンガムシャー州は首都ロンドンに近い州です。イギリスの州については、以下の地図を参照してください:

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2011年9月28日水曜日

大型衛星落下「注意報」 (続報-10)


9月27日(火)、NASAが UARS の大気圏突入についての最終公式発表をおこないました:

上記発表によると、UARSが大気圏に突入したのは日本時間9月24日午後1時00分。場所は南緯14.1度、西経170.2度で、これはアメリカ領サモア付近の上空にあたります(地図)。これまではカリフォルニア州西方の太平洋上空とされていたので、そのかなり手前で大気圏に突入したことになります。

上記の発表に添付されている地図は、大気圏突入前30分間の UARS の航跡を示しています。これを見ると、UARS はアフリカ大陸上空を南下したあと、オーストラリアと南極大陸の間を通過し、ニュージーランドの西岸沿いに北上したところで大気圏に突入したことがわかります。

燃え残った UARS の破片は、大気圏突入地点から北東に、300マイル(約500km)から800マイル(約1300km)の範囲に落下したと見られるとのことです。

以下は、上記NASAの公式発表を伝えるニュース記事ですが、一つ気になる点があります。それは、大気圏突入の時刻が〝12:01 a.m. EDT (0401 GMT)〟(日本時間午後1時01分)となっていることです。NASAの公式発表と1分ずれています。このずれがどうして生じたのか、よくわかりません:

なお、世界各地から大気圏突入の映像や目撃情報、落下物の発見などが伝えられていますが、NASAはそれらのほとんどすべてが誤認や誤報だと見なしているようです。

落下情報の中には捏造や作り話の類もありました。たとえば、カナダ西部の都市カルガリーの南にあるオコトクス(地図)周辺に UARS の燃え残りが落下したという情報があり、このブログでも紹介しました(続報-9参照)。しかしこれは、カルガリー在住の映画制作者が流したデマであることが判明しています。オーソン・ウェルズの「宇宙戦争」を模して、架空の農場からの「実況」をツイッターで流したため、真に受ける人も多かったようです。この映画制作者は〝People will take whatever you give them〟と豪語しているとのことです:

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2011年9月27日火曜日

肉眼でも見える巨大黒点群出現


〝Sunspot 1302〟と名付けられた巨大な黒点群が太陽面に出現しています。肉眼でも見える大きさです (注意: 太陽を直接見るのは危険です。失明の恐れがあります。十分な減光率のフィルターなどを使う必要があります):

この巨大黒点群で発生する強力な太陽フレアの影響が地球に到達し、ニュージーランドなど、ふだんオーロラが現れない地域でもオーロラが観測されています:

上記のオーロラが撮影されたのは、ニュージーランドのカンタベリーです。昨年秋に大地震に襲われたところです。南緯43度から44度付近に位置しています。北半球では、北海道の北部に相当する緯度です。

このオーロラの原因となった太陽フレアは、〝Sunspot 1302〟がまだ地球の方を向いていないときに発生したものです。今後数日間は、この黒点群が地球の方を向いていますので、太陽フレアが発生すれば地球にも大きな影響を与える可能性があります。北海道でもオーロラが見えるかも知れません。


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2011年9月26日月曜日

エレーニン彗星出現せず (続報)


以下は〝Astro Bob 〟のブログに掲載された太陽・太陽圏観測衛星〝SOHO〟の画像です。撮影は日本時間9月26日午前2時5分です:

この画像にもエレーニン彗星(エレニン彗星)はまったく写っていません。左上の円がエレーニン彗星の予報位置です。画面中央の白丸は太陽の位置と大きさを示しています。〝Mercury〟、〝Beta Vir〟、〝Eta Vir〟は、それぞれ水星、おとめ座ベータ星、おとめ座イータ(エータ)星を意味しています。

9月27日午前4時頃、エレーニン彗星は太陽と「合」になります。合とは、地球から見て、天体が太陽と同じ方向に見えるときのこと。厳密には、天体と太陽の地心視黄経が等しくなるときのことです(参照: 黄道座標)。黄経が等しくなるだけで、黄緯に差があってもかまいません。ある天体が合のとき、地球の公転面を真上から見下ろした図では、地球と太陽を結ぶ直線の上にその天体があります。しかし、地球の公転面を真横から見た図では、必ずしも直線上にあるとは限りません。平面ではなく立体で考える必要があります。合だからといって、その天体と地球・太陽が一直線に並んでいるわけではないのです。

9月27日のエレーニン彗星の合はどうでしょうか。このとき、同彗星は地球の公転面から約300万km上(北側)にあります。平面的に考えると直線上に見えても、立体的に考えるとかなりずれているのです。

エレーニン彗星が地球に大災厄をもたらすと大騒ぎをした「残念な人たち」は、9月27日に同彗星と地球・太陽が「一直線に並ぶ」から大地震が起きる云々と、未練がましく喧伝しています。しかし、彼らの言うことがことごとく〝ハズレ〟であったことを考えれば、信憑性はゼロです。各国の天文学者やNASAが何度も、エレーニン彗星の質量は小さく、潮汐力などで地球に影響をおよぼすことはない、と言明しているとおりです。かりに9月27日前後に大地震が起きたとしても、それはエレーニン彗星のせいではありません。

なお、太陽光の前方散乱(太陽光が彗星の塵に背後からあたって散乱し、地球に到達する)によって、エレーニン彗星が合の前後に見えるようになるのではないかと期待して、観測体制を敷いている観測者もいるとのことです。エレーニン彗星の現状を知る手がかりが得られれば良いのですが。


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太陽黒点が少ない時期に巨大地震頻発


「黒点数が少ない時期には、(中略) 太陽風が強まる現象が毎月平均3~4回あるが、その現象時に、M6以上の地震の70%が発生していた」、太陽と地震の活動をつなげる要素は不明だが、太陽の活動が地球内部に影響を及ぼす可能性を示す成果として注目される、とのこと:

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2011年9月25日日曜日

NASAの人工衛星が自動車を直撃!


以下の動画ですが、UARS とは違う人工衛星のようです。すぐにMIB(メン・イン・ブラック、黒ずくめの男たち)がやってきて、衛星を回収していきました。目撃者には「誰にも話すな」と指示しています。軍事衛星でしょうか:

2011年9月24日土曜日

大型衛星落下「注意報」 (続報-9)


NASAの発表はまだありませんが、UARS の燃え残りが、カナダ西部の都市カルガリーの南にあるオコトクス(地図)周辺に落下したとの情報があります。ツイッター上で複数の報告があったとのことです:

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カナリア諸島で地震続発(続報-2)


スペイン領カナリア諸島のエル・イエロ島(エル・ヒエロ島、地図)で7月中旬から続いている群発地震は、発生回数が増えるともに規模が大きくなってきました。地元政府は9月23日に噴火警戒レベルをこれまでの〝グリーン〟から一段階上げて〝イエロー〟にしたとのことです:

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大型衛星落下「注意報」 (続報-8)


(以下、時刻はすべて日本時間です。)

NASAが9月24日午前11時50分に発表した情報によると、UARS の大気圏突入は24日の午後0時45分から1時45分の間とのこと。この1時間の間に UARS は太平洋、カナダ、大西洋、アフリカ、インド洋の上空を飛行します。

24日午前11時30分現在の UARS の軌道は、近地点 135km、遠地点 140kmです。


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エレーニン彗星出現せず


9月23日は秋分の日でしたが、エレーニン彗星(エレニン彗星)にとっても節目の日でした。この日、NASAの太陽・太陽圏観測衛星〝SOHO〟が搭載しているカメラの視野に、近日点通過後のエレーニン彗星が初めて入ってくると予想されていたからです。

以下は、〝Astro Bob〟のブログに掲載された SOHO の画像です。エレーニン彗星は画面左側の円内にあるはずなのですが、それらしい姿はまったく見えません:

上記画像の中で、中央の白丸は太陽の位置と大きさを示しています。〝Mercury〟、〝Beta Vir〟、〝Eta Vir〟は、それぞれ水星、おとめ座ベータ星、おとめ座イータ(エータ)星を意味しています。

なお、SOHOの画像に写っていなかったからといって、エレーニン彗星が完全に消滅したと考えるのは間違いです。彗星の核の分解が進んだため、SOHOのカメラでは捉えられないほど暗く微かになったと考えるべきです。


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大型衛星落下「注意報」 (続報-7)


NASAが9月24日午前8時30分(日本時間)に発表したところによると ―― UARS が大気圏に突入するのは、9月24日正午から午後4時(日本時間)の間 ―― とのことです。この4時間の間に UARS が上空を通過するのは、カナダ、アフリカ、オーストラリア、および太平洋、大西洋、インド洋で、落下物が人に危害をおよぼす可能性は非常に小さくなりました。

24日午前8時(日本時間)の時点で、UARSの高度は近地点145km、遠地点150kmにまで低下しています。UARS の軌道は9月15日に230km・255km、22日午前2時30分の時点で 190km・205km、23日の午前10時30分の時点で 175km・185kmでした(いずれも日本時間)。


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大型衛星落下「注意報」 (続報-6)


日本時間の9月23日午後11時45分にNASAが発表した情報によると、UARSの大気圏突入はこれまでの予測より遅れて、〝late Friday, Sept. 23, or early Saturday, Sept. 24, Eastern Daylight Time〟になる見込みだとのことです。曖昧な表現なので、〝late Friday〟を金曜日の午後9時以降、〝 early Saturday〟を土曜日の午前3時ごろまでとして日本時間に換算すると、UARSの大気圏突入は24日(土曜日)の午前10時ごろから午後4時ごろの間ということになります。

UARSの大気圏突入がこれまでの予測より遅くなった理由を、NASAは次のように説明しています:
もはや、太陽活動がUARSの降下率の主要な要因ではなくなった。UARSの姿勢や形状が明らかに変化し、それがUARSの降下を遅らせている。

NASAはこれまで「UARSの燃え残りが北米に落下することはない」と発表してきました。しかしここにきて、「UARSの降下率が変化したため、アメリカに落下する確率も無視できない」と見解を変えています。


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2011年9月23日金曜日

大型衛星落下「注意報」 (続報-5)


以下は〝Space.com〟の記事ですが、NASA以外のサテライト・ウォッチャーや研究者の落下予測が掲載されています。NASAの発表と矛盾はありませんが、NASAの発表よりも落下時刻や場所が絞り込まれています:

トロント在住で世界的な人工衛星追跡グループのリーダーである Ted Molczan氏は、UARSの大気圏突入を日本時間で9月24日(土)の午前3時から午前7時の間と予測しています。その時間帯に UARS が通過する地域を示したのが以下の地図です:

UARS の軌道計算には USSTRATCOM(United States Strategic Command、アメリカ戦略軍)が公表している軌道要素が使われています。地図には都市の照明が描かれているので、人口密集地とそうでない地域がはっきりわかります。大気圏突入が予想されている時間帯に、UARS はヨーロッパや日本・中国など東アジアの人口密集地上空を通過しています。

Molczan氏によれば、大気圏突入の可能性がもっとも高いのは、フィリピン東方・ニューギニア北方の太平洋(フィリピン海)で、パラオ近海の上空となっています。

ベルリン在住の Harro Zimmer氏は、大気圏突入の場所を南緯 0.2°、東経 140.1°と予測しています。これは Molczan氏の予測場所よりはやや南にずれていますが、やはりニューギニアの北方海域です。

上にリンクを張った地図に従うならば、日本に UARS の燃え残りが落下する可能性があるのは、9月24日(土)の午前3時から午前7時までのうちの早い時間帯に限られることになります。

ここで注意しなければならないのは、人工衛星の大気圏突入は大気上層の不規則な変動に大きく左右されるという点です。上記の予測も、大きくずれる可能性があるがあることをご承知おきください。


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大型衛星落下「注意報」 (続報-4)


NASAが日本時間の今日午前11時すぎに発表した情報によると、UARS の大気圏突入は〝sometime during the afternoon or early evening of Sept. 23, Eastern Daylight Time〟(夏時間実施中の米国東部標準時で9月23日に昼から夕方までの間)となっています。〝early evening〟をどう解釈するかにもよりますが、いちおう日没前後として日本時間になおすと、UARSの大気圏突入は 9月24日午前1時から午前7時前後の間ということになります。

UARS の軌道は9月15日に近地点230km・遠地点255kmであったものが、日本時間の22日午前2時30分の時点では 190km・205kmに、23日の午前10時30分の時点では 175km・185kmにまで低下しているとのことです。

繰り返しになりますが、UARS の現在位置は以下のページで確認できます:

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2011年9月22日木曜日

米国でも床のタイルが割れる現象 ― カリフォルニア州


9月19日付「大きな音とともに床のタイルが割れる ― 沖縄県那覇市」で紹介した事件と類似した現象が、アメリカ・カリフォルニア州サンタクルーズ(地図)で発生しました:

上掲記事によると、現場はサンタクルーズ郡中央刑務所のフロント・ロビー。9月21日の昼ごろ、床に敷き詰められたタイルが盛り上がり剥がれ始めたため、消防が呼ばれたり、囚人たちの監視が強化されるなどの騒ぎになりました。初めはガス管や水道管の漏れが疑われましたがその形跡はなく、原因は目下のところ不明。刑務所の建物が沈下しているのではないか、との推測がでています。

サンタクルーズ郡には、有名なサン・アンドレアス断層(地図)が通っています。


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大型衛星落下「注意報」 (続報-3)


以下は、フランスの天体写真家が撮影した UARS の動画です。映像中の UARS はぼやけていますが、全体の形や太陽電池パネルの存在などがわかります。ゆっくりと回転し、ときおり太陽光を強く反射して輝きます:

この映像は、フランス北部で9月15日に撮影されたものです。使用機材は、口径14インチ(約36cm)のシュミット・カセグレン式望遠鏡(焦点距離8500mm)。撮影時の UARS の高度は250km、望遠鏡からの距離は316km。映像中の動きは実際の2倍の速さになっています。

UARS が回転しているのは、数年前に宇宙ゴミ(スペース・デブリ)と衝突したためだそうです。


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大型衛星落下「注意報」 (続報-2)


日本時間の今朝、NASAが発表した更新情報によると、UARS の大気圏突入は米国東部標準時の9月23日午後(日本時間9月24日午前1時から午後1時)になる見込みとのことです:

上記更新情報には、この時間帯に UARS は北米上空を通過しない、つまり米国への落下はない、また、現時点では大気圏突入の時刻と場所は確定できないが、今後24時間から48時間以内にさらに詳細な予報が可能になる、と書かれています。

UARS の軌道は9月15日に近地点230km・遠地点255kmであったものが、日本時間の9月22日午前2時30分の時点では、190km・205kmにまで低下しているとのことです。

前回の記事でも書きましたが、UARS の現在位置は以下のページで確認できます:

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2011年9月21日水曜日

カトラ山がジオパークに認定 ― アイスランド


ユネスコ傘下の世界ジオパーク・ネットワーク事務局(Global Geoparks Network Bureau)は、9月16日から18日にかけてノルウェーで開かれた会合で、7カ国の9カ所を新たに世界ジオパークに認定しました。その中には、日本の室戸ジオパークと並んでアイスランドのカトラ・ジオパークが入っています:

世界ジオパーク認定を記念して、カトラ山が「祝砲」を放つことがなければ良いのですが(笑)。

今回認定されたのは以下の9カ所です:
  • Hong Kong Geopark (中国)
  • Tianzhushan Geopark (中国)
  • Bauges Geopark (フランス)
  • Katla Geopark (アイスランド)
  • Burren and Cliffs of Moher Geopark (アイルランド)
  • Apuan Alps Geopark (イタリア)
  • Muroto Geopark (日本)
  • Sierra Norte di Sevilla, Andalusia (スペイン)
  • Villuercas Ibores Jara Geopark (スペイン)

これまでに認定された世界ジオパークの分布は、ヨーロッパと東アジアに極端に偏っています。今回認定された9カ所もヨーロッパと東アジアだけです。北米・南米やアフリカは、世界ジオパークの空白域といってもよい状態です。


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2011年9月20日火曜日

溶岩ドームの成長続くクリーブランド山


アリューシャン列島の無人島にあるクリーブランド山(地図地図)では、山頂火口で溶岩ドームの成長が続いています。大規模な噴煙を上げたり溶岩を流出させたりする活動はおきていないようですが、噴火警戒レベルは〝オレンジ〟が継続しています。このままドームの成長が続けば、いずれはドームの崩壊にともなって大規模な火砕流などが発生すると見られています。

クリーブランド山は無人島にありリアルタイムの観測機器が設置されていないため、火山活動の監視は航空機や人工衛星に頼らざるをえません。しかし、同山周辺は厚く雲が垂れ込める日が多いので、上空からの観測も可視光線ではなくレーダーが活躍しています。このほど Alaska Volcano Observatory (アラスカ火山観測所)が、人工衛星からのレーダー観測による動画を公開しました:

8月から9月上旬にかけての溶岩ドームの成長が、みごとに捉えられています。


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2011年9月19日月曜日

イルカの群れが迷い込む ― 京都府・伊根湾


9月15日、京都府北部の伊根湾(地図)にバンドウイルカと見られるイルカの群れが迷い込みました。伊根町職員によれば、冬季を中心に1~2頭が迷い込むことはあるが、「こんなに多く入り込むのは見たことがない」とのこと:

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大きな音とともに床のタイルが割れる ― 沖縄県那覇市


9月13日午後、沖縄市松山(地図)のテナントビルで、大きな音とともに1階入口近くの床タイル約20枚が割れる現象がありました:

水道管の破裂やガス漏れといった異常は確認されず、また沖縄気象台では「この時間帯に極端に高い気温は観測されていない」としているため、熱でタイルが膨張して破裂したとも考えにくいようです。また、写真から判断して、現場は強い日射が当たるような場所ではなさそうです。

運搬中の重いものを落として床を破損してしまった人(複数?)がそのまま立ち去ったという可能性はないのでしょうか。現場は繁華街なので誰も見ていなかったとは考えにくいかも知れませんが。


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今年も異常湧水 ― 静岡県富士宮市


このブログはグーグルの〝Blogger〟というサービスを使っているのですが、その機能の一つに「統計」があります。自分のブログに関するさまざまな統計を見ることができるのですが、その中に、個別の記事に対するアクセス数トップ10のグラフがあります。これを見ていると、ときおり、古い記事が急激にアクセス数を増やしてトップ10入りすることがあります。数日前から、2010年10月22日付の「異常湧水 ― 静岡県富士宮市」がトップ10に入っているのですが、原因は以下 ―― 今年も静岡県富士宮市で異常湧水が発生したことでした:

富士宮市の淀師地区(地図)などの少なくとも20か所以上で、住宅の庭や道路から水が湧き出し、淀師地区周辺では、道路や住宅の庭が浸水しているところもあるとのこと。

昨年の場合は「台風9号による豪雨で市内の9月の雨量が大きく増えた」こと、今年の場合は「台風12号で富士山に降った大雨が時間をかけて富士宮市まで流れてきた結果、地下水が上昇した」ことが原因と推定されています。

富士宮市では、「異常湧水警戒本部の設置基準水位(湧玉観測水位119m)に達していませんが、対策が後手にまわらないよう」に、異常湧水警戒本部を設置しています:

富士山の側火山は山頂を中心にして北西-南東方向に並んでいます。これは、フィリピン海プレートの沈み込みによって富士山にかかる水平最大圧縮力の方向と一致しています。水平最大圧縮の方向には亀裂が入りやすく、そこが板状の火道となって地表に達すると側火山が形成されるためです。地図を見るとわかるのですが、富士宮市は山頂からみて南西の方向、つまり水平最大圧縮の方向と直交する水平最小圧縮の方向にあります。このことが、湧水のおきやすさと関係があるかはわかりませんが。


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2011年9月16日金曜日

大型衛星落下「注意報」 (続報)


このブログの9月11日付記事「大型衛星落下『注意報』」の続報です。NASAが9月15日付で発表したところによると、大型衛星 UARS の大気圏突入がこれまでの予想より早まり、9月24日±1日の間になりそうだ、とのことです:

大気圏突入が早まった理由については以下の記事に説明があります:

上記の記事によると ―― 今週はじめから太陽活動が非常に活発になり、大気上層部が暖められて膨張した結果、ふだんより高いところまで大気が広がっている。そのため、大気の抵抗によるブレーキが衛星にかかりやすい状態となっている ―― というのが、予想が早まったことに対するNASAの説明です。

衛星の軌道は、先週は近地点250km・遠地点280kmであったものが、15日の時点では230km・255kmまで下がっているとのこと。

UARSの現在位置は以下のページの地図で確認できます。ただし、大気圏突入が迫ると衛星が大気の影響で不規則な動きをすることがあり、図示された位置からずれることもありえます:

衛星が大気圏に突入する場所次第ですが、日本でも見事な火球が見られ、ところによっては(笑)部品の落下があるかも知れません。バス1台分の大きさと表現される大型の衛星ですので、日本の小惑星探査機「はやぶさ」の大気圏突入よりも壮大な火の玉になるのではないでしょうか。


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スーパームーンがやって来る?


以下は、アメリカの気象情報サイト〝AccuWeather.com〟のブログに9月13日付で掲載された記事です:

スーパームーンとは、太陽-地球-月あるいは太陽-月-地球が直線上に並ぶ事象(前者は満月、後者は新月)と、月がその軌道上の近地点(地球に最も近くなる点)を通過する事象が同時に起こることを指す言葉です。占星術の分野で 1979年に使われ始めました。

スーパームーンのときとその前後には地震や火山噴火が増えるという考えもありますが、そのことを示す説得力のある証拠を提示できた人はいません。

上掲の記事では、このスーパームーンが9月27日におこるとしています。手元の『天文年鑑』(誠文堂新光社)によれば、新月は9月27日20時9分、月が近地点を通過するのは翌28日10時3分(ともに日本時間)で、14時間近くずれています。アメリカ時間では、どちらも同じ27日になるのでかまわないということなのでしょう。

半年前の3月20日にあったスーパームーンは、満月と近地点通過が1時間弱しかずれておらず、そのときの地球から月までの距離も18年ぶりという近さだったため、〝エクストリーム・スーパームーン〟と呼ばれました。このときの満月は、ふだんから月を注意深く観察している人にはずいぶん大きく見えたはずなのですが、日本では残念ながら東日本大震災やら放射能汚染やらで月を見るどころではありませんでした。

ドゥームセイヤー(doomsayer)とかフィアモンガー(fear-monger)と呼ばれるお騒がせな人たちは、エレーニン彗星(エ レニン彗星)の一件が「期待はずれ」に終わりつつあるため、フラストレーションを感じていると思います(笑)。そういう人たちがこのスーパー ムーンに便乗して、また〝空騒ぎ〟をするかも知れません。ご用心ください。


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関西の産官学が地震前兆収集システム


この「地震前兆現象情報収集サーバーシステム」をスタートさせたという「関西サイエンス・フォーラム」。何年も前から同じことをくり返しマスコミに発表しています。私が保存している新聞記事に限っても、2004年3月までさかのぼれます。私の記憶が確かであれば、阪神大震災の数年後からこのような計画を云々していたように思います。本当にやる気があるのか、疑問を感じてしまいます。詳しいことはこのブログの2010年1月6日付「『関西サイエンス・フォーラム』の地震予知」を参照してください:

今回は少なくとも携帯電話版の「地震前兆現象投稿」機能は稼働しているようですが、PC版は現時点で応答がありません:

地震前兆を集める一般向け掲示板のほとんどは、客観的な宏観異常の情報ではなく、頭痛や耳鳴りなど、いわゆる体感情報やオカルト的な投稿が多数を占め、さらには不安神経症を疑わせるような書き込みも見られるなど、あたかも「宏観異常者」の巣窟のようになっています。まさに「悪貨は良貨を駆逐する」状態です。関西サイエンス・フォーラムのシステムは、「あらかじめ登録した専門家や市民らに(中略)写真や動画、文書などの報告を寄せてもらう」方式をとるとのことなので、「市民」の選別が的確になされるならば期待できるかも知れません。


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2011年9月14日水曜日

小惑星 2005 YU55 が再び地球接近


昨年4月に地球から約230万kmのところを通過していった小惑星〝2005 YU55〟が、11月9日(日本時間)に再び地球に接近します。今度の接近距離は昨年より大幅に縮んで約32万km(昨年の距離の約14%)です。

以下の資料は3月10日付(日本時間では3月11日)でNASAのウェブサイトに掲載されましたが、直後におきた東日本大震災のために紹介しそびれていたものです:

〝2005 YU55〟はC型小惑星で直径は約400m。自転周期は約20時間です。地球に接近する小惑星の中では比較的大型です。

上記のNASA資料によれば、〝2005 YU55〟が地球に最も近づくのは日本時間11月9日午前8時28分です。接近時の明るさは11等級と見積もられています。接近距離は約32万5000kmで、地球から月までの距離の84%に相当します。地球と月の間に割り込んでくるように思えますが、接近時の地球・月・小惑星の位置関係を黄道面から見た図(上記NASA資料の2番目の図)を参照すると必ずしもそうではなく、〝2005 YU55〟は黄道面からかなり「上」に離れたところを通過していくことがわかります。

〝2005 YU55〟は地球に接近したあと、同日午後4時13分には月にも約24万kmまで近づきます。

ちなみに、エレーニン彗星(エレニン彗星)は、近日点通過を生き延びられたとすれば、10月16日に地球から約3500万kmのところを通過すると予報されています。

なお、上記NASA資料の1番目の図は、クリックするとアニメーションとして見ることができます。

Image credit: NASA/Cornell/Arecibo

上の写真は、昨年4月に〝2005 YU55〟が接近した際におこなわれたレーダー観測の成果です。解像度は7.5mです。今回の接近では、前回よりも大幅に近いところを小惑星が通過していくので、4mの解像度でレーダー画像が得られ、さらに可視光線や近赤外線による観測も併用することによって、表面の粗さや鉱物組成に関するデータも得られると期待されています。

昨年の接近時の記事にも書きましたが、〝2005 YU55〟は今後少なくとも100年間は地球に衝突する可能性がないことが確認されています。上記NASAの資料は、次のような記述で締めくくられています:
Although classified as a potentially hazardous object, 2005 YU55 poses no threat of an Earth collision over at least the next 100 years. However, this will be the closest approach to date by an object this large that we know about in advance and an event of this type will not happen again until 2028 when asteroid (153814) 2001 WN5 will pass to within 0.6 lunar distances.

〝2005 YU55〟は潜在的危険性のある天体に分類されているが、少なくとも今後100年間は地球に衝突の脅威をもたらすことはない。しかし、われわれが事前に把握している範囲では、今度の接近は、このような大きさの天体によるものとしてはこれまでで最大の接近である。このような接近は、2028年に小惑星〝(153814) 2001 WN5〟が地球から月までの距離の0.6倍以内を通過するまでおこることはない。

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2011年9月12日月曜日

エレーニン彗星が近日点通過


9月11日、エレーニン彗星(エレニン彗星)が近日点を通過しました。近日点とは、軌道上で太陽にいちばん近づくところで、そこを通過する際には、太陽の重力、光、熱、太陽風などの影響を最も強く受けることになります。すでに核が分解してばらばらになっているエレーニン彗星が、この近日点通過という試練を生き抜くことができるか、注目が集まっています。

もうしばらくすると、NASAのSOHO探査機(Solar and Heliospheric Observatory、太陽・太陽圏観測衛星)のカメラの視野にエレーニン彗星が入ってくるので、結果が明らかになることでしょう。SOHOのカメラにも捉えられないほど、崩壊が進んでいることも十分に考えられます。

一部のブログには、エレーニン彗星が「消滅」したとか「消失」したとの記述が見られますが、適切ではありません。核が「分解」したことは確かですが、その時点で彗星全体が消えてなくなったわけではないのですから。英語圏のニュース記事では〝disintegrate〟(分解する、崩壊する)とか〝diffuse〟(拡散する)という言葉を使っています。

9月7日、アメリカ国立電波天文台(National Radio Astronomy Observatory)は、ウェストバージニア州にある世界最大の可動式電波望遠鏡(グリーンバンク望遠鏡)を使ってエレーニン彗星の観測をおこないました。その結果、水酸化物イオンの存在を示す信号がノイズレベル以下であることが判明しました。これはエレーニン彗星に水(あるいは氷)がわずかしか残っていないことを意味しており、彗星の核の崩壊が裏付けられたとのことです:

オーストラリアの天体写真家 Michael Mattiazzo氏の〝Southern Comets Homepage〟から、エレーニン彗星の変化を示す写真をいくつか紹介します:

エレーニン彗星の核が分解し始めたのは8月20日ごろです。8月19日の写真では核がはっきりと明るく輝いてたのに、22日の写真ではぼんやりとしています。27日の写真では核が明瞭ではなくなり、最新の9月11日の写真では彗星全体が暗く見えづらくなっています。

以前の記事にも書きましたが、デマや疑似科学的主張を撒き散らして不安をあおる Doomsayer とか Fearmonger と呼ばれる類いの人たちは、エレーニン彗星の予想外の「ふがいなさ」にほとほと困り果てているようです。画像加工ソフトを使って彗星の写真に極端なソラリゼーションを施したり、コントラストや色調を操作したりして、「エレーニン彗星の核は普通の彗星とは違う形をしている(だからエーリアンの宇宙船団だ)」とか、「エレーニン彗星は正四面体のシールドに守られている」などと言い出しています。エレーニン彗星をダシにした〝ビジネス・チャンス〟を何とか延命させようと必死になっているようです(笑)。

蛇足ですが …… 『エレーニン彗星のバラード』。このメロディ、人工甘味料の甘みがいつまでも口の中に残るように、耳の中に残ります(笑):

() Elenin彗星について最初の記事を書くときに、「エレーニン」と「エレニン」のどちらを使うべきか迷いました。ネット上の大勢に従って「エレーニン」としましたが、欧米人の発音を聞いていると第1音節、つまり語頭の〝E〟にアクセントがあるようです。したがって、原音に近い表記を選ぶとすれば「エレニン」あるいは「エーレニン」の方がふさわしかったと思っています。


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2011年9月11日日曜日

大型衛星落下「注意報」


1991年にスペースシャトルに搭載して打ち上げられたNASAの大型人工衛星〝UARS〟(Upper Atmosphere Research Satellite: 上層大気研究衛星)が、9月下旬から10月上旬の間に大気圏に再突入する見込みとなりました。同衛星のいくつかの部品は、大気圏内で燃え尽きずに地表まで到達すると推定されています。UARS は、2005年に運用が停止され廃棄衛星用の低い軌道に移されていました:

NASAの発表資料です:

上記プレゼンテーション・パッケージの2ページ目には、シャトルの貨物室に積み込まれたUARSと作業員が写っている写真があります。人と比べることによってUARSの大きさがよくわかります。3ページ目にはUARSの高度変化を示したグラフがあります。グラフ中の〝Apogee〟は遠地点(最高点)、〝Perigee〟は近地点(最低点)を意味しています。2005年の運用停止にともなって、廃棄用の低軌道に移行した様子がわかります。9ページ目と10ページ目のグラフは、燃え尽きなかった部品が、UARSが大気圏再突入した地点からどのくらい離れた場所に落下するかを示しています。

Image Credit: Chris Peat, Heavens-Above GmbH
以下のウェブ・ページは、UARS 衛星が現在どこを飛行しているかを図示してくれます。ブラウザーのリロード・ボタンをクリックするか、キーボードで[Ctrl]+“R”を押すと最新の情報に更新されます:

上掲の報道記事によれば、「世界のだれかに当たる確率は3200分の1で、『自分に当たる確率』にすると、21兆分の1」とのこと。この確率が高いのか低いのか。少なくとも、「自分にあたる確率」がジャンボ宝くじの1等に当選する確率より6桁も低いことは確かです。


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2011年9月10日土曜日

深さ 10km ちょうどの地震 (その4)


事例1から事例4までは世界各地でおきた地震について述べており、米国地質調査所(USGS)の地震データを参照していると考えられます。USGSのウェブ・サイトには次のような Q&A が掲載されています:

以下は、上記の質問に対する回答をテキトー訳したものです:
10kmは〝固定深度〟(fixed depth)です。データが乏しく、信頼できる震源の深さを計算できないことがあります。そのような場合、震源の深さとして10kmという数値を使います。

世界中の多くの地域で、信頼できる震源の深さは平均して10kmかそれに近い値になる傾向があります。たとえば、そのような地域で得られた信頼できる震源の深さのヒストグラム(度数分布図)を作ると、10km前後にピークができると期待できます。ですから、震源の深度がわからない場合に10kmとするのは、妥当な推定ということになります。

かつては、33kmという値を使っていたこともあります。地震についての理解が進展したことによって、10kmのほうが適切であるということがわかりました。プレートの沈み込みがおきているような地域では、10kmよりも深いところで多くの地震が発生していることがわかっています。そのような地域では、10kmよりも大きい数値が適切であろうと考えられます。

〝固定深度〟を使わざるをえない理由でもっとも多いのは、最寄りの地震観測ステーションからあまりにも遠すぎる場所で地震がおきたから、というものです。信頼できる震源の深さを求めるためには、震央から最寄りの観測ステーションまでの距離が、震源の深さより小さくなければならない、というのが有用な経験則です。

現在では、最新の計算手法や理論の進歩によって、最寄りの観測ステーションから遠く離れた震央の場合でも信頼できる震源の深さを求めることができるようになっており、上に述べた経験則が常に有効であるというわけではありません。しかし、この経験則は次のような結論をはっきりと示しています ―― 〝固定深度〟の使用は浅い地震ほど多くなる。

続く


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深さ 10km ちょうどの地震 (その3)


これまでに紹介してきた事例は「10.0km」を単に不思議に思うか、もう少し進んで何らかの人為的要因を疑うかという程度ですが、以下の事例6や事例7は「陰謀説」に完全にのめり込んでいます。

【事例6】『地震の掲示板ブログ』 2011年 5月25日(水)08時46分17秒の投稿

2011年5月25日に福島県で発生した地震をきっかけに「陰謀説」を開陳しています:
このイルミナティ、まだ動いており、今朝も午前5時36分に福島県で有りました。ずっと、(深さ10キロ)と震源の深さが「固定」されており・それは自然界では有り得ない地震ですw。 
(中略) 
人工地震も続行中の様で2.4、2.7、2.8、2.1、いずれも深さ10キロと深さが固定されており、こういう地震は活断層とは言わず・群発でも無いです。

恐らく、福島原発に関係している地震の様で、影の勢力は福島を壊したい・と考えていますが、失敗しているのでしょう。 
(中略) 
うちらはずっと自然界の対応の地震をやっていますので、その地震が自然界か人工的なもので有るからはすぐに分かります。ずっと震源の深さが10キロと固定された自然界の地震というのは「有り得ない」と思っておいて良いです。深さが違ってバラバラの深さで発生するのが群発・自然界の本物の地震です。

【事例7】『地震の掲示板ブログ』 2011年 7月 5日(火)19時56分26秒の投稿

2011年7月5日に発生した和歌山県北部を震源とする2つの地震をきっかけに「陰謀説」を展開しています:
余震・震度4が有りました。
深さ10キロ、前のM5.4も深さ10キロ、おやおや・・おかしいぞ~w 
(中略-1) 
ユダヤの工作部隊・また、動き出しているのかな。目的、この活断層で大きな破壊を人工的に起こすと北に位置している都市は・・それが答えです。

本来、知っている方は知っていると思いますが、自然界の地震ですと、余震は深さが変わりますが、午後7時18分のM5.4、先ほどの地震も深さが10キロと同じで有って、こういう地震は自然界ではまず・少ないか・有り得ない・のです。ひょっとすると、中央構造線活断層系が動いているのではないかも。 
(中略-2) 
「やっぱり」・! この位置は、2005年に、あの船が紀伊水道の構造調査のため、海底に穴を掘って調査していた場所の陸です。中央構造線活断層系か、南海トラフを人工的に動かそうとしている地震かもしれません。

(中略-3)

人工地震データが揃ってきました・・皆・(震源の深さが10キロ)w 10キロから移動しない余震というのは自然に起きる地震では有り得ないのです。


続く


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オオオニバスの異変 ― 愛媛、岡山


愛媛県今治市の公園のオオオニバスが、今年に限って明るいうちから開花し話題になっています。通常は夜8時頃から早朝にかけて花を咲かせるのだそうです。「専門家らは『なぜ、今年だけ早い時間に咲くのかさっぱり分からない』と首をひねっている」とのこと:

瀬戸内海を挟んで対岸の岡山県岡山市の植物園では、オオオニバスが自生する現象が起きています。「温室で栽培しているオオオニバスは、今年は生育不良」であるにもかかわらず、自生種たちは〝温室育ち〟を尻目に、株を増やし大きくなっているとのこと。野外で自生すること自体が珍しいのだそうです:

オオオニバスたちは焦っているようです(笑)。来るべき何かを察知して、子孫を残そうと生き急いでいるのでしょうか。

以下は、半田山植物園のブログ記事です:

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2011年9月9日金曜日

ドイツで地震、オランダで揺れ


現地時間9月8日午後9時2分ごろ(日本時間9日午前4時2分ごろ)、オランダとの国境に近いドイツ北西部のクサンテン(Xanten、地図)付近を震央とする地震がありました。規模はマグニチュード4.6(下記の記事では4.5)、震源の深さは3km。震源が浅かったためか、規模の割には大きな揺れがあったようです。地震に慣れていないオランダ人にとっては「かなりのショック」だったとのこと:

以下は GFZ German Research Centre for Geosciences の資料です:

上記資料にあるメカニズム解を見ると、正断層的な成分と横ずれ断層的な成分が混ざった地震のようです。


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香川県で73年ぶりの地震


9月8日19時58分ごろ、香川県で最大震度3の地震がありました。マグニチュードは3.7、震源の深さは約10km。震央は観音寺市大野原町付近(地図)。香川県内を震源とする震度3以上の地震が観測されたのは73年ぶりだそうです:

防災科学技術研究所の発表したメカニズム解を見ると、〝ビーチボール〟(震源球)の縫い目が中央で交わり、円をきれいに4等分しています。典型的な横ずれ断層です。震央の位置を考慮すると、中央構造線断層帯に属する断層が、中央構造線と平行に水平にずれた(右横ずれ断層)と考えられます。

Image Credit: 独立行政法人 防災科学技術研究所


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犬は地震予知ができるのか?


日本初のペット産業国際見本市で、「地震予知のデモンストレーション~あなたの犬は地震予知できるか?~」というセミナーがあったそうです。講師は麻布大学の太田光明教授(獣医学部 動物応用科学科 介在動物学研究室):

「電磁波に反応する犬の割合は30頭につき1頭くらい」で、訴えるように吠える、穴を掘る、逃げようとする、などの行動が見られるが、「なかには地震の数時間前になると決まっておもらしする犬」もいるのだそうです。

「雷も電磁波を発生させるものなので、雷が鳴る前から非常におびえているような犬なら(地震予知の)可能性はあるかもしれません」とのこと。これで思い出すのは実家で飼っていた犬。子犬の時に父が保健所からもらい受けてきた雑種なのですが、雷雲が近づいてくると不安げにうろうろと歩き回り始め、大きな雷鳴がすると狂ったように吠えたり走り回ったり。ひょっとすると地震予知の素養があったのかも知れません。大きな音が大嫌いで、風で玄関の扉がバタン!と閉まったときや、ワンタッチで開く傘が目の前でバサッと広がったときに、腰が抜けてお漏らしをしたこともあるので、単に雷鳴におびえていただけかも知れませんが。

太田教授の研究については、以下のような記事もあります。阪神淡路大震災の直前に異常行動を起こしたペット300頭近くの血液サンプルを採取して地震予知に関係すると考えられる遺伝子配列「地震感知遺伝子」を探しているのだそうです:

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一斗缶で地震予知? ― 『じしんカン』


「ヘルツホルム共鳴」という現象を利用して、地震の前兆として発生する低周波音に気づきやすくする、というもののようです:

「ヘルツホルム共鳴」については、やさしい解説が見当たりません。数式がでてきますが、以下のページなどを参照してください:

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2011年9月8日木曜日

北斗七星のそばに明るい超新星


8月24日、オクスフォード大学のチームが、おおぐま座にある M101 星雲の中に超新星を発見しました。この超新星は、9月7日から8日(日本時間では8日から9日)にかけて最も明るくなり、双眼鏡や小口径の天体望遠鏡でも見えるようになると予想されています:

発見された超新星〝SN 2011fe〟(暫定名は〝PTF 11kly〟)は、Ia型。このタイプの超新星はピーク時の明るさ(絶対等級)が理論的に明らかになっているため、それを地球から見たときの見かけ上の明るさと比較することによって、超新星爆発が起きた銀河までの距離が計算できます。一方、この銀河のスペクトルが示す赤方偏移からは、この銀河が地球から遠ざかっていく後退速度が判明します。銀河までの距離とその後退速度がわかれば、宇宙の膨張速度を示すハッブル定数を求めることができます。

M101星雲までの距離は、資料によって大きな差があります。理科年表には1900万光年との記載がありますが、Wikipediaでは2700万光年、AstroArtsのメシエ天体ガイドでは2300万光年となっています。今回出現した超新星の観測によって、精確な距離が求められると良いのですが。

M101星雲は北斗七星の柄(熊の尾)の先端近くにあります(星図星図)。空があまり暗くない場所では、M101(光度 9.6等級)が微かすぎて見えず、超新星だけが見えることもあると思います。


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2011年9月7日水曜日

カトラ山のカルデラ内で地震増加 ― アイスランド


アイスランド南部・ミルダルスヨークトル氷河の下にあるカトラ山で、先週後半あたりから地震が増加しています。これまでの最大はM3.2:

今回の群発地震がこれまでと違うのは、(1)カルデラ周辺ではなくカルデラ内部に集中して発生していること、(2)すべてが10km未満の浅いところで発生していること、(3) 震源が複数の直線上に並んでいる、という点です。これらは、カルデラ内部の浅いところに、マグマが薄い岩脈状になって貫入してきていることを示している、との指摘があります。

アイスランド当局もカトラ山の監視を強めていますが、これらの地震はただちにカトラ山の噴火に結びつくものではない、とのことです。


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2011年9月1日木曜日

愛知県のプレート境界付近でスロースリップ


以下は、8月31日に開かれた東海地震の判定会のまとめです。8月1日の駿河湾 M6.2、同12日の遠州灘 M5.2のいずれも、東海地震の想定震源域もしくはその周辺で発生した地震だったが、その後、現在まで、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていないとのこと:

8月12日に遠州灘で発生したM5.2の地震について、気象庁は「(プレート境界型で)想定東海地震と同じメカニズムで発生した可能性が高い」、防災科学技術研究所は「プレート境界型地震ではない」、「懸念される東海地震と同じではない」との見解を発表していました。しかし、今回の判定会で気象庁は、「(プレート境界ではなく)プレート境界に近いフィリピン海プレート内部で起きた可能性が高い」に修正したとのことです (このブログの8月13日付「12日の遠州灘 M5.2 ― 東海地震と同じメカニズム」と8月23日付「12日の遠州灘 M5.2 ― 東海地震と同型ではない」を参照してください):

なお、上掲の判定会会長会見の文書には次のようなことも書かれています:
  • 御前崎の長期的な沈降傾向は継続している。東海地 震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状況の特段の変化を示すようなデータは得られていない。
  • 8月1日と12日の地震では、東海地域のひずみ計の一部で地震発生に伴うステップ状の変化が観測されたが、その後、特異な変化はみられない。
  • 愛知県から長野県南部のプレート境界付近で、7月23日から8月1日にかけてと、8月21日から22日にかけて深部低周波地震が観測された。
  • 深部低周波地震活動と同期して、愛知県のプレート境界付近に生じた「短期的ゆっくりすべり」に起因するとみられる地殻変動が、7月26日から8月1日にかけてと8月20日から22日にかけて観測された。

私は、12日の遠州灘 M5.2 について、「この地震の余震活動は低調で、8月17日以降は観測されていません」と書かれているのが気になっています。余震活動が低調であるということにはさまざまな理由が考えられると思いますが、そのような場所が将来の大地震の震源になる場合もあります。たとえば、2011年7月10日に三陸沖で発生したM7.3の地震は、3月11日の東北地方太平洋沖地震の余震域内の、余震活動が低調な場所を震源としていました:

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震災前日に激しい海鳴り・キジの鳴き声 ― 宮城県気仙沼市


気仙沼市波路上地区(地図)では、経験的に海鳴りの後にキジが鳴くのは地震の予兆とされていたのだそうです:

参考までに、遠州灘では海鳴りは気象の前兆として人々の生活に深く溶け込んでいるそうです:

エレーニン彗星が「空中分解」(補足)


昨日の「エレーニン彗星が『空中分解』」という記事の補足です。

往生際の悪い doomsayer や fearmonger の面々の中には、核が分裂するということ自体がエレーニン(エレニン)彗星が特別な天体であることの証であるだの、分裂した破片が地球に降り注ぐからさらに危険性が高まっただのと主張する向きもあるようです。さらには、エレーニン彗星が危険だったからこそ、NASAがロケットを極秘裏に打ち上げて彗星を破壊したのだ、といったまったく根拠のない話も出る始末です。

彗星が分裂したり消滅したりすることは珍しくありません。周期彗星は一定の周期で太陽に近づきますが、そのたびに物質を宇宙空間に飛散させて核がやせ細っていきます。そして、最終的には消滅してしまうか、核の岩石質の部分だけが残って小惑星のような天体になり、尾を引かなくなります。時には、1回太陽に近づいただけで消滅してしまう彗星もあります:

彗星の核の性質については以下に説明があります:

ほかの天体と接近遭遇したり衝突したりして核が分裂・飛散したのならいざ知らず、今回のエレーニン彗星のように核が自壊した場合には、分裂後の個々の核は基本的に同じ軌道を描きます。したがって、破片が地球に降り注ぐようなことはないと考えられます。

彗星の核が分裂している様子をとらえた写真を集めてみました:

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