2月27日付「2014年、彗星衝突か? (その1)」からの続きです。
データベースでは距離の単位として天文単位(AU、地球と太陽との平均距離を1とする単位)が使われているため、わかりにくいと思います。キロメートルと、地球から月までの距離を1とした場合の比率(LD)に換算すると次のようになります:
km | LD | |
---|---|---|
Nominal Distance | 105104.370 | 0.273417367 |
Minimum Distance | 0 | 0 |
Maximum Distance | 1187893.97 | 3.09017448 |
現時点で最も可能性の高いコースを通った場合の接近距離は約11万km(地球と月の距離の約27%)、最も遠いところを通過した場合は約119万km(地球と月との距離の約3倍)です。地球に置き換えて想像すると、前者の場合、彗星が月の軌道の内側まで入ってくることになります。後者の場合でも、月の軌道のすぐ外側を彗星が通過することになります。言うまでもありませんが、最も火星に近づくコースを通った場合の距離は 0km です。
彗星が最も近づくとき、火星の地表からはどのような光景が見えるのでしょうか。火星の軌道付近はまだ太陽から遠いので彗星の尾はそれほど伸びていないと思われますが、ひょっとしたら彗星の尾が地平線から反対側の地平線まで全天を覆うように伸びるといった雄大な眺めになるかも知れません。火星の表面から見た場合、最接近時の彗星はマイナス4等級の明るさになるという計算結果も出されています。また、火星が彗星の尾の中を通過して、流星が雨のように降る「流星雨」や隕石の落下も起きるかも知れません。
火星を周回中の探査機マーズ・リコネッサンス・オービターやマーズ・エクスプレス、火星表面で活動中の探査車オポチュニティやキュリオシティにとっては、至近距離から彗星を観測する絶好の機会となります。きっとすばらしい画像が送られてくることでしょう。
最接近時の彗星の速度は秒速約56km(時速約20万1600km)という猛烈なスピードです。可能性は低いですが、万が一、彗星が火星に衝突した場合には、オポチュニティやキュリオシティはたとえ衝突地点にいなくても大きな影響を受ける可能性があります。
(続く)