- オリオン座のベテルギウス、謎の縮小
- Red giant star Betelgeuse mysteriously shrinking (赤色巨星ベテルギウスが謎の収縮)
- Betelgeuse about to blow? (ベテルギウスは爆発寸前か ?)
- Is Betelgeuse About to Go Supernova? (ベテルギウスは超新星になる直前か ?)
超新星について『世界大百科事典』(平凡社)から引用します:
supernova 星が急に太陽光度の 100億倍もの明るさで輝きだし、その後 1 ~ 2年かかって暗くなっていく現象のこと。もっとも明るいときには銀河全体の明るさに匹敵し、新星の明るさの 100万倍にもなるので、超新星と呼ばれる。これは、星がその進化の最後に起こす大爆発で、その際に放出されるエネルギーは 1051 エルグと推定されている。この莫大なエネルギー放出のために、まわりの星間空間は、強い衝撃や加熱など大きな影響を受ける。そして宇宙線の加速や新たな星の誕生へと結びつく。 (中略) また、爆発の後に中性子星が残されることもある。ベテルギウスのような巨星はその進化の末期になると、中心核でのエネルギー生産が止まり重力によって加速度的に収縮(重力崩壊)します。この爆縮的崩壊の反動として衝撃波が発生し、巨星の外層部は急激な核融合反応を起こし超新星爆発となります。
私たちの銀河系では、超新星は 185年以来、少なくとも 8回出現したことが中国、日本、朝鮮、アラビア、ヨーロッパの記録に残されている。そのなかでも有名なのが、1006年、54年(かに星雲で藤原定家の《明月記》に記述がある)、1572年(チコ・ブラーエの観測)、1604年(ケプラーの観測)の 4つである。チコやケプラーの超新星は、天空は不変であるとする当時の宇宙観に大きな衝撃を与えた。20世紀に入ってから、私たちの銀河系以外の銀河でも超新星が観測されるようになった。現在では、毎年十数個の超新星が発見されており、その平均的な出現率は、一つの銀河につき約 50年に 1個の割合と推定されている。
上記『世界大百科事典』の記述にある有名な 4つの超新星(1006年、1054年、1572年、1604年)のうち、1006年のものは人類が記録に残した中で最も明るい超新星とされています。このときは、深夜でもこの超新星の明かりで本が読めたと言われています。1054年の超新星の残骸は現在でも「かに星雲」としてアマチュアの望遠鏡でも観測可能です。星雲のリストとして有名なメシエ・カタログでは最初に記載されており、「M1」(メシエ・カタログの 1番目の意、ちなみに有名なアンドロメダ大星雲は M31)とも呼ばれます。この星雲の中では、超新星爆発を起こした星がパルサーとして現在も回転を続けています。1572年と 1604年の超新星はそれぞれ「ティコの新星」、「ケプラーの新星」と呼ばれ、天球は不変であるというアリストテレス以来の宇宙観や、キリスト教の天動説ドグマを揺さぶり、その後のガリレオ・ガリレイの「それでも地球は動く」という言葉につながっていきます。
地球から 上記 4つの超新星までの距離は、それぞれ 7175光年、7000光年、20000光年以内、7500光年とされています。一方、ベテルギウスまでの距離は資料によって 450光年、640光年、700光年などばらつきがありますが、いずれにせよ 10分の 1以下です。したがって、ベテルギウスが超新星爆発を起こすと、人類がこれまで経験したことがない明るさに達する可能性があります。
恐竜の絶滅の原因は、太陽系の近くで超新星爆発が起き、大量の放射線が地球を照射したためだという説があります。その真偽はともかく、地球に比較的近いベテルギウスが超新星爆発を起こせば、オゾン層の破壊など多少の影響が出ると考えられます。
ベテルギウスまでの距離が数百光年ということは、われわれが現在見ているベテルギウスは数百年前の姿だということです。ことによると、ベテルギウスはすでに超新星爆発を起こしていて、われわれが実際にそれを知るのは数百年後ということかも知れません。