満身創痍になりながら、けなげに使命を遂行する「はやぶさ」に感情移入してしまう人が多いのも頷けます。私もそうです。漫画家の里中満智子さんが描いた応援イラストで「はやぶさ」がつぶやくセリフ ―― 「ぼく がんばったよ」「もうすぐ かえるからね」 ―― には思わず目頭が熱くなってしまいます。
「はやぶさ」のカプセルは、過去最速級の秒速 12 キロ(マッハ 35)というスピードで大気圏に突入します。その点にアメリカも関心を寄せ(注)、日本を支援するという名目で現地に装備や人員を派遣してデータを収集します:
- NASA Helps in Upcoming Asteroid Mission Homecoming (大気圏突入の想像図あり)
- NASA Astronomers to Observe Hayabusa Homecoming
私は、カプセルの回収に失敗するのではないかと危惧しています。予定を 3年も超える 7年間も宇宙の厳しい環境に曝されてきた「はやぶさ」には、さまざまな不具合が潜在しているはずです。そのため、耐熱シールドの問題でカプセルが燃え尽きる、燃え尽きないまでも内部まで高熱に曝される、パラシュートの展開に失敗、地上に落下したカプセルが捜索用ビーコンを発信せず、結局カプセルを回収できない等々、悪い事態がつぎつぎに頭をよぎります。これまでさまざまな障害をなんとかしのいできた「はやぶさ」が、最後の最後で運に見放されることも十分にありうると思います。
もしすべてがうまく行ってカプセルが回収されたら、相模原市にある JAXA の施設に運ばれ、内部に入っているかも知れない小惑星の物質の分析がおこなわれます。私の住んでいるところに近いので、少し不安です。マイケル・クライトンの小説「アンドロメダ病原体」のようなことがおきないとも限らないので。
(注) アメリカの DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency 国防総省国防高等研究事業局)が 4月 22日に打ち上げた Falcon HTV-2 (Hypersonic Test Vehicle 極超音速試験飛翔体)は失敗に終わりましたが、その最高速度はマッハ 20 前後です。
過去の関連記事
- 「はヤぶさ」に知能? (10年4月1日)
- X-37B の初飛行近づく (10年4月7日)
- X-37B 打ち上げ (10年4月25日)
- Falcon HTV-2 は失敗 (10年4月26日)
- 「はやぶさ」が地球を撮影 (10年5月18日)