2010年6月13日日曜日

「はやぶさ」の地球帰還

今夜、満身創痍の小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰ってきます。7年間・60億キロの難行苦行を乗り越えてついに故郷に帰ってきます。帰ってくるといっても、「はやぶさ」本体は大気圏内で燃え尽き、小惑星で採取した塵が入っている(かも知れない)カプセルだけが地表に届くという、なんだか悲しい帰還です。

満身創痍になりながら、けなげに使命を遂行する「はやぶさ」に感情移入してしまう人が多いのも頷けます。私もそうです。漫画家の里中満智子さんが描いた応援イラストで「はやぶさ」がつぶやくセリフ ―― 「ぼく がんばったよ」「もうすぐ かえるからね」 ―― には思わず目頭が熱くなってしまいます。

「はやぶさ」のカプセルは、過去最速級の秒速 12 キロ(マッハ 35)というスピードで大気圏に突入します。その点にアメリカも関心を寄せ(注)、日本を支援するという名目で現地に装備や人員を派遣してデータを収集します:

私は、カプセルの回収に失敗するのではないかと危惧しています。予定を 3年も超える 7年間も宇宙の厳しい環境に曝されてきた「はやぶさ」には、さまざまな不具合が潜在しているはずです。そのため、耐熱シールドの問題でカプセルが燃え尽きる、燃え尽きないまでも内部まで高熱に曝される、パラシュートの展開に失敗、地上に落下したカプセルが捜索用ビーコンを発信せず、結局カプセルを回収できない等々、悪い事態がつぎつぎに頭をよぎります。これまでさまざまな障害をなんとかしのいできた「はやぶさ」が、最後の最後で運に見放されることも十分にありうると思います。

もしすべてがうまく行ってカプセルが回収されたら、相模原市にある JAXA の施設に運ばれ、内部に入っているかも知れない小惑星の物質の分析がおこなわれます。私の住んでいるところに近いので、少し不安です。マイケル・クライトンの小説「アンドロメダ病原体」のようなことがおきないとも限らないので。


(注) アメリカの DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency 国防総省国防高等研究事業局)が 4月 22日に打ち上げた Falcon HTV-2 (Hypersonic Test Vehicle 極超音速試験飛翔体)は失敗に終わりましたが、その最高速度はマッハ 20 前後です。


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