アメリカのオービタル・サイエンシズ社が貨物宇宙船シグナスを載せたアンタレス・ロケットの打ち上げに失敗したことは、日本のテレビでも報道されていますが、その爆発炎上事故からわずか9時間後にロシアが打ち上げた貨物宇宙船プログレス M-25M/57P が国際宇宙ステーション(ISS)に無事到着しドッキングに成功したことは、ほとんど伝えられていません:
- Russians launch Progress supply ship to space station (ロシアがプログレス補給船を宇宙ステーションに向けて打ち上げ、写真あり)
プログレス貨物宇宙船にはISSへの補給物資約2.6トンが搭載されています。その中には、ISSの軌道変更用の燃料880kg、水420kg、酸素48kg も含まれています。
ロシアが2011年8月に2.9トンの補給物資を積んだプログレス宇宙船の打ち上げに失敗し、ロケットが地表に激突したときにも、日本のメディアはほとんど報道しませんでした。
NASAは、爆発炎上事故後に撮影された打ち上げ場(バージニア州ワロップス島、地図)の写真を公開しています。あれほどの爆発と火災があったにもかかわらず、発射設備は焦げてはいるものの大きな変形はなく原形を留めているように見えます。ロケットは、発射場所からわずかに海側にずれた地点に落下したようです:
NASAは、失われた貨物宇宙船には機密に該当する物資は積まれていなかったとしています。しかし、中継映像には爆発後に〝command encryption hardware〟(指令暗号化装置)を確保せよという音声が入っており、メディアから質問が出たようです。NASAは、どの宇宙船にも搭載されている標準的な装置だ、と回答しています。
YouTubeには今回の爆発炎上を撮影した動画がいくつもアップされていますが、以下は最も再生回数が多く、なおかつ劇的な映像です。中継映像とは違う方向(おそらく報道記者用の場所)から撮影されたもので、爆発後にキノコ雲の中から降り注ぐ無数の細かい火の粉が写っています。周囲の混乱ぶりも音声から分かります。カメラの連写シャッター音に混じって "Oh my God!"、"Holy shit!" という叫び声や、女性の泣き声などが記録されています:
オービタル・サイエンシズ社のアンタレス・ロケットは、1段目にロシア製のエンジン2機が使われているとのことです。ロシアは財政難でロケットの打ち上げ回数が減ったため、余剰のロケット・エンジンを倉庫に保管していました。それを、オービタル・サイエンシズ社が安く買い取り、改修してアンタレス・ロケットに利用しているといわれています。
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