カーペンタリア湾では毎年春(北半球では秋)になるとこの雲が出現するそうです。この雲を目当てに航空機からのクラウド・サーフィンを楽しもうという観光客も毎年訪れるそうです。「モーニング・グローリー」はこのカーペンタリア湾に現れる雲をさす固有名詞のようで、ほかの地域に現れた場合は、roll cloud(円筒状の雲) とか tubular cloud(管状の雲)と呼ばれるようです。
以下は、モーニング・グローリーを撮影した動画です。2分05秒目以降には、なぜこの雲が発生するのかを示したアニメーションがあります。カーペンタリア湾の東にある大きなヨーク岬半島(オーストラリア大陸に生えた角)の上空で二つの気流がぶつかり、水平な回転軸をもつ長大な筒状の大気の渦が発生することによってこの雲が現れると説明しています:
以下は、モーニング・グローリーの写真集です:
以下は、モーニング・グローリーの衛星写真です:
同じ種類の雲は、きわめてまれですが日本にも現れます。2007年 6月 18日にオホーツク海上空に現れた「しま模様を作る太いひも状の雲」が、パトロール中の海上保安庁の航空機によって撮影されています。6月 19日付の毎日新聞に掲載された説明は以下のとおりです(記事に掲載された写真を保存していますが、著作権の制約でここに載せることができません):
札幌管区気象台によると、比較的低い高度で空を覆うように発生する「層積雲」に気流が流れ込むと、このような形の雲になることがある。ひも状の部分は雲がロール状に渦巻いており「層積雲は一般的だが、ロールがはっきりと確認できる写真は珍しい」という。このような珍しい形状の雲が出現すると、日本では「地震雲」にされてしまいます。以下はその例です:
★ 2007年06月19日火曜日、12時半更新結局、該当するような巨大地震は発生しませんでした。この種の「地震予知」サイトでは、「予知」が的中した場合には大々的に成果を強調するのですが、該当する地震が発生しなかった場合に、その反省や検証をおこなっているところはまれです。これでは、何十年「研究」を続けても、進歩はありません。
(前略) オホーツク海で超巨大な畝状雲が発生したようだ。筆者らがこれまで観察してきた規模のものとはケタが違う。気象庁が成因を分析しているらしいが、地震雲さえ理解できない蒙昧な彼らに理解できるはずがない。
これは電磁波によって発生する地震雲である。例えば、鉄粉を撒いた紙の下に磁石のNとSを近づけると、この雲とそっくりの畝模様ができる。つまり、地殻内部で巨大な電荷が分離し、磁界が発生し、巨大な磁界鉄粉模様が生まれたと思えばよい。これほどの規模だと、おそらくスマトラクラスのスーパー震源で、筆者が昨年から繰り返し指摘しているように、千島第三巨大地震の震源が浮上したことによると考えている。
おそらく推定M9.5以上の歴史上最大級の震源ではなかろうか。これほどの規模だと、これから猛烈な宏観現象が繰り返し出現するので、目を離せない。先月から始まった過去に例をみない電磁波異常伝播は、この震源と断定してよいと思う。やっとでできたな! というところだ。(後略)
(引用:「東海アマ地震予知情報」 http://web.archive.org/web/20070630065653/http://www1.odn.ne.jp/cam22440/yoti01.htm)
上の文章は、この種の「地震予知」サイトにしばしば見られる断定癖・誇張癖を典型的に示しています。また、自己の経験がきわめて限られているにも関わらず、その限られた経験にない現象はすなわち異常であるとして、地震の前兆と思いこんでしまうという短絡思考の見本でもあります。もっと広く世界を見渡す必要があると思います。
地震の前兆として放出されると考えられている電磁波と雲の相互作用については、上記引用のように小学校の授業でおこなう程度の磁石と砂鉄・鉄粉による実験をイメージする人が多いようです。しかし、その実験とのアナロジーで説明できるほど、雲の成因は単純ではありません。また、電磁波と電気・磁気は別物で、その及ぼす作用も異なっていますが、「地震予知」サイトでは混同している記述をしばしば見かけます。上の引用もその一例と言えます。
上の文章を掲載したサイトを典型とする多くの「地震予知」サイトと、それらの支持者(多くは科学知識や科学的手法に疎い)の存在が、宏観異常による地震予知がいつまでたっても色眼鏡で見られ、際物・色物としてあつかわれる原因となっているのではないでしょうか。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency