2018年4月30日月曜日

「大気との摩擦」「大気圏再突入」「ポイント・ネモ」


中国の宇宙ステーション・天宮1号が落下してから1ヶ月が経とうとしています。この時の報道を振り返ると、大手メディアの記事でも、天宮1号の機体は「大気との摩擦で燃え尽きる」と書いているものが依然としてかなり多く見受けられました。テレビ番組のコメンテーターの中にもそのように解説する人がいたとのことです。

これは、中国側の発表に引きずられてそのように書いたり発言したりしたのかも知れません。『朝日新聞』は中国国営の新華社通信の配信記事を引用して「新華社は機体について大気との摩擦で『燃え尽きる』としている」と書く一方で、別の段落では「再突入すると、空力加熱などによって数十分で壊れるとみられる」とも書いています。

流星や人工衛星が落下するときに高温になり光を発するのは、断熱圧縮による空力加熱という現象が起きているためで、大気との摩擦が原因ではありません。以下は JAXA(宇宙航空研究開発機構)による解説です:

もう一つ気になったのは「大気圏突入」という言葉です。『読売新聞』は「欧州宇宙機関(ESA)は、中国の宇宙実験施設『天宮1号』が(中略)地球の大気圏に再突入すると発表した」と書き、『朝日新聞』は「中国『天宮1号』大気圏再突入へ」というタイトルを掲げていました。私も無自覚に使っていましたが、よく考えると変です。「再突入」と言うからには2度目の突入ということになりますが、1度目の突入はいつだったのでしょうか。

英語では人工衛星や宇宙船の落下や地球帰還を「re-entry」または「reentry」と言います。日本語にすれば「再入」です。いちど大気圏外に出たものが再び大気圏に入ってくるという意味合いです。この英単語の「re」を意識したために、単純に「大気圏突入」とすれば良いものを「大気圏再突入」としてしまったのかも知れません。

天宮1号が落下したのは「ポイント・ネモ」とよばれる場所の近くでした。そこは、過去に大気圏に突入した数百もの宇宙船や人工衛星の残骸が眠っている「宇宙船の墓場」です。制御不能であったにもかかわらず、天宮1号がそこの近くに落下したのはなんとも不思議なことです:

記事では、「ネモ」の意味はラテン語で「誰もいない」という意味だとしていますが、ジュール・ベルヌの小説では「誰でもない」という意味だったと記憶しています。


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韓国南東部・浦項地震は地熱発電所が誘発? 日本では、えびの高原硫黄山の近くで・・・


17年11月24日付「震源は地熱発電所から500m ― 韓国・浦項地震」の続報です。

昨年11月15日に韓国で発生した浦項地震(USGS資料)は、韓国で近代的な地震観測が始まって以降では第2位の規模、被害の大きさでは第1位の地震となりました。その地震の原因が、震源近くでおこなわれていた地熱発電所による地下への水注入であるとする2件の論文が、アメリカの科学誌『Science』に掲載されました。韓国の研究チームとスイス、ドイツ、英国の研究チームによるものです。

浦項地震が地熱発電による誘発である可能性について、韓国チームは「かなり可能性がある(probably)」から「ほぼ確実(almost certain)」の間、スイス他のチームは「誘発地震とみられる(plausible)」としています。一方、韓国政府の調査団は「可能性は否定できない」が「追加的な証拠が求められる」という立場だそうです:

日本では宮崎県のえびの高原硫黄山(地図)が活発な火山活動を続けていますが、そこから北西に約5kmの地点で数年前から地熱発電の調査がおこなわれています。今年2月6日には調査井からの自噴が始まっています:

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スホウチクが開花 ― 静岡県浜松市


静岡県浜松市にある「はままつフラワーパーク」(地図)で、植樹以来約45年ぶりにスホウチク(蘇芳竹)が花を咲かせています。スホウチクは、「桿の色が黄色く、緑色の縦縞があるのが特徴」です。「六十年周期のモウソウチク、百二十年周期のマダケに比べると、開花周期は短い」(はままつフラワーパーク):

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竹とササの花が咲く ― 神奈川県横浜市 (続報)


昨年6月6日付「竹とササの花が咲く ― 神奈川県横浜市」の続報です。

神奈川県横浜市の三渓園(地図)では、昨年、約90年ぶりにタイミンチクオロシマチク(オロシマササ)が開花しましたが、今年も花をつけています。昨年は5~6月に開花しましたが、今年は2月上旬から咲き始めているとのことです。「竹のライフサイクルは数十~百年程度。成熟すると一斉に開花し、残った穂が翌年以降も花を付けると考えられる」(横浜市立大・教授):

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2018年4月27日金曜日

薩摩硫黄島の噴火警戒レベルを引き下げ


4月27日、薩摩硫黄島(地図)の噴火警戒レベルが「1(活火山であることに留意)」に引き下げられました。3月16日に火山性微動が発生し、同19日に火山性地震の増加に伴って「2(火口周辺規制)」に引き上げられていたものです:

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2018年4月26日木曜日

県道1号線付近で噴火 ― えびの高原硫黄山


4月26日18時15分ごろから26分ごろまで、えびの高原硫黄山(地図)の西側で小規模な噴火が発生しました:

噴火した場所は、20日16時30分ごろから新たに噴気が上がり始めた県道1号線付近です:

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2018年4月25日水曜日

小惑星 2018 HW1 が月と地球に接近


4月23日に発見された小惑星〝2018 HW1〟が、4月21日から22日にかけて月と地球に接近していたことが判明しました。

この小惑星はアポロ群に分類され、直径は比較的大きく 16~35m と推定されています。直径の小さい小惑星ほど発見が遅れ、地球接近(最悪の場合は衝突)の直前、あるいは接近・通過後になる傾向があります。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2018 HW116~35  (月)4月21日 23:15
(地球)4月22日 07:53
1.75
0.89
(1LD=地球から月までの平均距離) 

この小惑星が最接近した時の地球との相対速度は遅く、秒速4.6km(時速約1万6000km)と計算されています。

このブログでは、原則として地球から2LD以内に近づく小惑星を記事にしています。2LDよりも離れたところを通過する小惑星まで含めると、毎日数個は地球に接近しています。直径が1kmを上まわる大きな小惑星は、概ね30LDよりも遠いところを通りすぎて行きます。白亜紀末に恐竜を絶滅に追いやったとされる小惑星(あるいは彗星)の直径は少なくとも10kmはあったと推定されています。


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2018年4月24日火曜日

魚雷と地震


『神奈川新聞』の記事です。2枚目の写真 ― 1930年の北伊豆地震(M7.3、最大震度6)で胴体に地震動の擦痕が残った魚雷(国指定天然記念物)。縦揺れによる擦痕と横揺れによる擦痕の大きさと方向の違いに注目です:

祝50周年: プレートテクトニクスが我々にもたらしたもの (その3)


4月23日付「その2」からの続きです。

抜粋・テキトー訳を続けます:
誕生から半世紀後の今日、プレートテクトニクスは、表面から内核までを含む地球全体に関わるダイナミックな理論へと成長しつつあります。漂流する大陸は移動するプレートの目に見える表出として認識されています。その一方でプレートは、ゆっくりとしたマントル対流によって地球の内部から表面へ熱エネルギーを運ぶ巨大なエンジンの上部境界層を形成していると見なされるようになっています。コア-マントル境界では、このエンジンは、内核と放射性物質の崩壊に由来する熱をマントルに伝達する第2の巨大エンジンに繋がっています。

プレートは、地球表面で冷却されてマントル深部へと沈み込むことによってマントル対流を制御しています。一方、マントル対流は、逆転しつつある地球磁場を発生させるプロセスにおいて、溶融した鉄合金からなる外核の非常に速い対流を制御しています。地球の磁場は太陽風による浸食から大気を守るとともに、海洋底の岩石に磁気的なバーコードを埋め込んでプレートの動きを記録する役割も果たしています。

(続く)

朝日歌壇/俳壇と乃木坂46と地球科学 (その2)


その1」からの続きです。こんなところにも地球科学の話題が、というお話の2つめです。

アイドル・グループ 乃木坂46 のメンバーのうち、事前におこなわれたテストの成績が悪かった者が参加する早押しクイズの YouTube 動画です:
(1分3秒あたりから)
問題「地球の内部にある、高温でどろどろ(ピンポーン音で中断)」
司会者 「これはもう間違いようがないもんね」
回答者1 「マントル!(不正解を示すブー音、続いて別の回答者のピンポーン音)」
回答者2 「マグマ!」
司会者 「正解!」
テロップ 「地球の内部にある、高温でどろどろに溶けた液体状の物質を何という?」
司会者 「どろどろに溶けたものですからね」「液状の物質とは何か、マグマですね」
テロップ 「マントル=固体 マグマ=液体」

マントルが固体であることを示す証拠としては、地震波のS波(横波)がマントル内を伝わることがよくとりあげられますが、証拠はそれだけではありません。様々な分野で、マントルが固体であることを示す証拠やデータが蓄積されています。長くなるので、別の機会にまとめてみたいと思っています。


(完)


小惑星探査機 凹む


小惑星 Bennu からのサンプル持ち帰りを目指す NASA の小惑星探査機 OSIRIS-REx の機体に凹みが生じていることが判明しました。

2016年の打ち上げ直後に機体の状態を確認するために撮影した写真では見られなかった黒い点が、2017年3月2日に撮影した写真に出現。凹んだのは、小惑星で採取したサンプルを格納して地球に持ち帰るためのサンプル・リターン・カプセル(SRC)を保護するための耐熱シールドです。NASAでは、カメラのレンズに付着した汚れの可能性も含めて検討していたのですが、このほど、飛行中に何らかの小物体が衝突してできた凹みと結論づけました。サイズは2mmほどで、貫通はしておらず、SRCの機能に悪影響はないとのことです:

SRCは、2023年に地球近くまで戻ってきた OSIRIS-REx から切り離されて大気圏に突入、ユタ州の砂漠地帯にパラシュートで降下することになっています。

以下は、OSIRIS-REx が今年1月17日に撮影した地球と月の写真です。撮影時の地球との距離は 6360万kmで、OSIRIS-REx の速度は秒速 8.5km。画面左上には牡牛座のプレアデス星団(すばる)、右上には牡羊座で最も明るい星 Hamal(α Ari)も写っています:

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地球は準惑星に格下げだ!


4月21日、NASA が NEOWISE(Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer、地球接近天体広域赤外線探査衛星)の4年間にわたる観測成果を発表しました。全天を8回近くにわたって走査し、29375個の天体を観測・分類した結果、788個の地球接近天体と136個の彗星が確認されました。昨年の観測では、大きさと地球への接近距離の近さから、地球に危害をもたらす可能性のある小惑星(potentially hazardous asteroid、PHA)に該当する天体が10個発見されたとのことです:

上記のGIF動画を見て、地球だって準惑星に格下げされた冥王星と同じじゃないか、との意見が出ています:

冥王星が準惑星に格下げされた理由は、「その軌道近くから他の天体が排除されていない」から、というものでした:

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2018年4月23日月曜日

祝50周年: プレートテクトニクスが我々にもたらしたもの (その2)


4月18日付「その1」からの続きです。

抜粋・テキトー訳を続けます:
黄金の記念日

プレートテクトニクスという偉大な統一理論は、今では50歳になっています。記念日の厳密な日付は、いつ理論が生まれたかの判断に左右されますが、1967年12月にダン・マッケンジーとボブ・パーカーによる論文が科学誌『Natue』に掲載されたことによって事態が進展したという一般的な合意があります。

この論文は、ダンとボブが「世界テクトニクスの敷石理論(the paving stone theory of world tectonics)」と呼んでいたものに、18世紀の数学者レオンハルト・オイラーの定理がどのように適用できるかを示すものでした。「敷石理論」は、その数年前にカナダの偉大な地球物理学者ツゾー・ウィルソンによって確立されていたものでした。ダンとボブのアプローチは、地球物理学者とそのコンピュータに、山々だけでなく大陸全体とそれを支えるプレートを動かす力を与え、過去1億8000万年の間に起きた超大陸パンゲアの分裂を再現することを容易にしたのです。

オイラーの定理の有効性を実証するために、ダンとボブは北太平洋を例として取り上げました。そこでは、10年ほど前にアメリカ海軍による詳細な調査がおこなわれ、バイン(Fred Vine)とマシューズ(Drummond Matthews)による海洋底拡大仮説を支持する反論の余地のない証拠が見つかっていたからでした。

北アメリカに対する太平洋プレートの回転のオイラー極を計算で求めることによって、ダンとボブは、プレート境界で測定された相対運動が彼らの予測と完全に一致することを示したのでした。数ヶ月後、ジェイソン・モルガンによる第2の論文が『Journal of Geophysical Research』誌に掲載されました。この論文は同じ定理を使って、アフリカ、北アメリカ、太平洋、南極のプレートの回転極を計算するものでした。

球面上の回転運動に関するオイラーの定理については、以下の資料の「Ⅱ. 球面上の運動は回転である」を参照してください。たとえば、なぜ大西洋の拡大速度が北に行くほど減少するのかは、ユーラシア・プレートと北アメリカ・プレートのオイラー極がそれぞれどの辺にあるのかがわかると理解できます:

(続く)

地震前の奇妙な現象を集めた動画

偶然見つけた YouTube 動画です。4位と1位は初めて見聞きしました:
  1. 球状の雲?(メキシコ)
  2. 虹色の雲(中国)
  3. 光る夜空(ニュージーランド)
  4. TVの野球中継に入り込んだ奇妙な音(アナウンサーにも聞こえている、アメリカ)
  5. 空を飛ぶ光体(メキシコ)

沖合に大型クジラ ― 富山県魚津市


4月22日、富山県魚津市(地図)の沖合で大型のクジラが泳いでいるのが目撃・撮影されました。マッコウクジラの可能性が高いとみられています。記事によると、マッコウクジラが日本海側で目撃されたのは、1998年・山口県油谷町(現・長門市)、2004年・新潟県柏崎市の2例だけ。「相当珍しい。うっかり迷い込んだのかもしれない」(国立科学博物館・名誉研究員):

富山湾を挟んで魚津市の対岸にある石川県七尾市では、能登島周辺に約17年間にわたって定着していたイルカの群れが2ヶ月ほど前に姿を消し、富山県氷見市沖に移動しています:

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小惑星 2018 HV が地球と月に接近


4月23日未明、小惑星〝2018 HV〟が地球と月に接近しました。

この小惑星は4月21日に発見されたもので、アポロ群に分類され、直径は 5~11m と推定されています。直径の小さい小惑星ほど発見が遅れ、地球接近(最悪の場合は衝突)の直前、あるいは接近・通過後になる傾向があります。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2018 HV5~11 (地球)4月23日 02:07
 (月)4月23日 02:46
0.40
1.34
(1LD=地球から月までの平均距離) 

この小惑星が最接近した時の地球との相対速度は秒速16.0km(時速約5万8000km)と計算されています。

このブログでは、原則として地球から2LD以内に近づく小惑星を記事にしています。2LDよりも離れたところを通過する小惑星まで含めると、毎日数個は地球に接近しています。直径が1kmを上まわる大きな小惑星は、概ね30LDよりも遠いところを通りすぎて行きます。白亜紀末に恐竜を絶滅に追いやったとされる小惑星(あるいは彗星)の直径は少なくとも10kmはあったと推定されています。


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2018年4月22日日曜日

草津白根山で火山性地震増加、警戒レベル引き上げ


草津白根山(地図)では、4月21日夜から火山性地震が増加し、傾斜計にも変化が現れていることから、22日7時に噴火警戒レベルが「2、火口周辺規制」に引き上げられました:

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2018年4月20日金曜日

県道1号線付近から新たな噴気 ― えびの高原硫黄山


4月19日15時39分ごろに始まったえびの高原硫黄山(地図)の噴火活動ですが、20日16時30分ごろから硫黄山西側の県道1号線付近から新たな噴気が上がっているとのことです:

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定住イルカの群れが突如移動 ― 石川県七尾市、富山県氷見市


石川県七尾市の能登島(地図)周辺の海に17年ほど前から住み着いていたミナミハンドウイルカ(ミナミバンドウイルカ)の群れ(13頭)が、2ヶ月ほど前から姿を見せなくなり、富山県氷見市(地図)にある小さな入り江の中に移動しているとのことです:

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2018年4月19日木曜日

えびの高原硫黄山が噴火


えびの高原硫黄山(地図)が4月19日15時39分に噴火。火口周辺で噴石の飛散を確認。16時09分現在も連続噴火継続中。噴火警戒レベルを「2(火口周辺規制)」から「3(入山規制)」に引上げ:

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2018年4月18日水曜日

祝50周年: プレートテクトニクスが我々にもたらしたもの (その1)


プレートテクトニクスが誕生してから50年。今では政治家が比喩に用いるほど、その概念や考え方が各分野に浸透しています。

以下は海洋地球物理学者の Roy Livermore 氏のブログ記事(3月15日付)です。同氏は20年間にわたって英国の南極調査や南の海洋の地図作成や探査にたずさわり、‘’The Tectonic Plates are Moving!‘’(テクトニック・プレートは動いている!)という著書もあるそうです:

長い記事ですので、何回かに分けて抜粋・テキトー訳します:
プレートテクトニクスのように何百万年もの時間スケールで作用する現象は、私たちの現在の生活にはあまり関係がないと感じるかもしれません。しかし実際には、プレートテクトニクスが、私たちやその他の地球上の生命が存在している理由かも知れないのです。

トニー・ブレア首相が率いる新労働党政権の副首相であったジョン・プレスコット氏は、2004年にブレア首相の退陣の見通しについて「テクトニック・プレートが動いているようだ」と発言しました。それ以来、テクトニック・プレートのメタファー(隠喩)は、欧州連合(EU)離脱についての英国の国民投票や、ドナルド・トランプ氏の米国大統領への選出などに続く成り行きを含む、あらゆる主要な政治動向に対して使われてきました。しかしながら、ほとんど場合と同様、政治家は間違った思い込みをしています。実際には、‘’テクトニック・プレート‘’なるものは存在しないのです。テクトニックなのはプレートではなく、テクトニクス(地殻変動、地殻の動き)がプレート(板)に似ているのです。

(続く)

トカラの法則、バヌアツの法則


横浜地球物理学研究所」の上川瀬名氏のツイートから:




南の海から来た伊豆半島が世界ジオパークに認定


4月17日、伊豆半島が世界ジオパークの新規登録地域として伊豆半島が認定されました。前回(2015年)はイルカ漁などでが理由で認定が保留となっていました。伊豆半島は、フィリピン海プレートの動きにともなって南の海から北上し、本州に衝突した、あるいは、衝突している火山島です:

神戸大学海洋底探査センターの巽好幸教授が解説記事を書いています。「大陸は、おおよそ40億年前に始まったプレートの運動によって、火山列島同士が衝突して生まれた。今、伊豆衝突帯で起きている地質現象は、地球創成期に起きたダイナミックなドラマを再現していると言えよう」:

以下の書籍には、伊豆半島に先行して本州に衝突した丹沢山塊について、様々な証拠をあげて詳しく書かれています。「現在の伊豆半島とその北に位置する丹沢山地は、かつて海底の高まりとして南方に存在していた。それがプレートの運動によって、北へ北へと押し上げられて、現在の位置まで運ばれ、本州と衝突した」:

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2018年4月15日日曜日

大形の小惑星 2018 GE3 が地球と月に接近


4月15日午後、大形の小惑星〝2018 GE3〟が地球と月に接近します。

この小惑星は4月14日に発見されたもので、アポロ群に分類されています。直径はかなり大きく、50~110m  47~100m と推定されています。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2018 GE350~110
47~100
(地球)4月15日 15:45
 (月)4月15日 18:59
0.50
0.34
(1LD=地球から月までの平均距離) 

この小惑星が最接近した時の地球との相対速度は極めて速く秒速29.6km(時速約10万7000km)と計算されています。

4月13日には、別の小惑星〝2018 GD2〟(アポロ群)が地球と月に接近しました。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2018 GD23~8 (地球)4月13日 01:42
 (月)4月13日 09:38
0.78
0.86
(1LD=地球から月までの平均距離) 

この小惑星が最接近した時の地球との相対速度は秒速7.8km(時速約2万8000km)と計算されています。


このブログでは、原則として地球から2LD以内に近づく小惑星を記事にしています。2LDよりも離れたところを通過する小惑星まで含めると、毎日数個は地球に接近しています。直径が1kmを上まわる大きな小惑星は、概ね30LDよりも遠いところを通りすぎて行きます。白亜紀末に恐竜を絶滅に追いやったとされる小惑星(あるいは彗星)の直径は少なくとも10kmはあったと推定されています。


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ラブカ、イバラヒゲ水揚げ ― 神奈川県小田原市


小田原魚市場公式ブログ」から。捕獲された日時や場所ははっきり書かれていませんが、4月13日に深海魚のラブカイバラヒゲが入荷しています。 棲息する水深は前者が500~1000m、後者が300~2200m(Wikipedia)。「同じ岸に寄ってくるでも、『ラブカ』ばかりじゃ喜ぶのは水族館ばかり」、「方や、深海から浮かんでくるのは『イバラヒゲ』」:

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アトランティスという寓話


以下は3月3日付で米国版 Newsweek 誌に掲載された記事です:

いずれ同誌の日本語版に翻訳が掲載されると思っていたのですが、現時点でも見つかりません。そこで、以下に記事の主要部分を抜粋・テキトー訳してみました:
ノースウェスタン大学教授でプレートテクトニクスと地球科学が専門の Seth Stein 氏によると、真の古代文明としてのアトランティスを排除する強力な理由の一つは、それがまだ見つかっていないという事実である、ということだ。

「今日の海底地図作成技術は極めて高度なものです。科学者たちは海洋底を「見る」ために、音波のパルスを発射して海の深さを測定するソナー技術を使っています。この技術を使って(大西洋の)すべての海底の地図がすでに作られているのですが、アトランティスは見つかっていません」と Stein 氏はニューズウィーク誌に語った。(アトランティスが正確にはどこにあったのかについては多くの説がある。)

「私たちは大西洋について非常に精度の高い海底地図をすでに手にしているのですが、そこに大陸の痕跡は見当たりません」と Stein 氏は話す。「もし失われた大陸があったのであれば、とっくの昔に見つかっているはずなのです。」 他の(大西洋以外の)海洋についても同様である。

万が一、この高度な地図作成技術が(アトランティスの)沈んだ都市を見逃すことがあったとしても、沈んだ都市が存在すること自体が科学的に不可能なのだ。Stein 氏によれば、密度の低い物体は、それよりも密度の高い物体の中に沈んでいくことは絶対にできない。より具体的に言えば、大陸が海底に沈んでいくことは不可能なのである。

長い時間をかけた海水面の上昇や下降によって、島々が消滅したように見えることがある。しかし、島々は沈んだのではなく、単に一時的に海水に覆われたにすぎない。島々は浸食されることがある。天候や海洋などの自然の要因が土壌を削ることによって生じるプロセスだ。しかし、浸食作用では大陸が消え去ることを説明することはできない。

アトランティスの物語は、歴史的なフィクションというよりは寓話として始まったのかも知れない。アトランティスについて最初に言及したのは紀元前330年前後のプラトンまで遡るが、道徳的な教訓を垂れるために創作された可能性がある。アトランティスの人々は文明的には進歩していたが、強欲であったことが彼らを滅亡に導いたのだ、と Live Science(科学ニュースのウェブサイト)は書いている。

あればおもしろいかも知れないが、大西洋の海底には古代の大陸は存在していない。

アトランティスは存在していないし、過去にも決して存在していなかったということは、現在では多くの科学的な証拠にもとづいて保証されている。

以下は、Live Science に2月28日付で掲載された記事です。記事の末尾には「『アトランティスの失われた都市』は決して失われてはいない。それは、これまでも常にそうであったようにプラトンの著作の中に存在している」と書かれています:

以下は、『ナショナル ジオグラフィック』誌に掲載された記事です。「プラトンはおごれる者の寓話を見事に描いたが、あまりにも緻密な描写とアトランティスをめぐる熱狂のため、物語が持つ真の意味はかき消されてしまったようだ」:

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2018年4月13日金曜日

お付き合い断層 (続報)


このブログに昨年6月に書いた「お付き合い断層」(17年6月15日付)と題する記事へのアクセスが、昨日あたりから急に増え不思議に思っていたのですが、以下のTBS系の報道がきっかけだったようです。

「(熊本地震では)これだけ多くの(おつきあい)断層が、いっぺんに現れた。(中略)いろいろな場所に多く現れた。こんな例は初めてです」、「おつきあい断層のある場所で、必ずしも地震が発生しておらず、むしろ少ない傾向さえ見てとれます」、「(おつきあい断層の)ずれの真上でなければ、大した被害はなかったと思う。ただし未来永劫そうなのかは、調べないと分からない」:

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新たな有料地震予測


地電流、低周波音、地震のマグニチュードとその累積発生回数(グーテンベルグ・リヒター則の「b値」)を総合判定して予測するのだそうです:


火星とカンザス州


手に持っているのは火星探査車が撮影した画像。背後は、米国・カンザス州にあるペルム紀石膏の露頭(拡大画像)。よく似ています:

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2018年4月12日木曜日

「MEGA地震予測」や「地震解析ラボ」は島根県西部の地震を予測していたか


横浜地球物理学研究所」のブログ記事です。「MEGA地震予測」(村井俊治・東大名誉教授、JESEA)や「地震解析ラボ」は、4月9日1時37分ごろに発生した島根県西部の地震(M6.1、深さ10km、最大震度5強)を予測できていたのでしょうか:

「MEGA地震予測」は日本のほとんどの地域を「大地震」最警戒エリアとしてカバーしていたにもかかわらず、そこから漏れていた狭い領域で今回の地震は発生しました。これまでの経緯を見ていると、むしろ「MEGA地震予測」が警戒エリアにしていないところ、警戒を解いたところで強い地震がおきているようです。だとすると、次は若狭湾周辺か、北海道東部や北部でしょうか。


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火だるまの衛星 イオ


NASAの探査機・ジュノーは木星の極軌道を周回中ですが、以下は同機に搭載されている赤外線観測装置 JIRAM が捉えた木星の第一衛星イオの姿です。足の踏み場もないほど(笑)活火山が散らばっています。イオは、地球以外で最初に活火山が発見された天体です:



上掲の画像は、NASAが公開しているデータに基づいて Roman Tkachenko 氏が作成したものです。


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2018年4月11日水曜日

八甲田山で火山性地震急増 (続報)


より詳しい資料が出されました。地震波形、震源分布図、基線長変化図などが掲載されています。4月10日の発生数は「観測開始(2013年6月5日)以降最多」、11日13時00分ごろに発生した地震は周辺施設で有感であった(体に感じる揺れがあった)とのことです:

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地震後の空が真っ赤に ― チリ


前兆ではなく「後兆」でしょうか。チリで現地時間4月10日の日の出前(日本時間10日19時19分)に発生した M6.2(USGS資料)の直後、空が真っ赤に染まる現象が目撃・撮影されました。撮影しツイートしたのは気象災害ニュースの編集者。昨年4月24日に発生したM7.1(USGS資料ではM6.9)の直後(夜9時過ぎ)にも同様の現象が見られたとのこと。ツイートの末尾には「偶然?」と書かれています:

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八甲田山で火山性地震急増


4月10日~11日、八甲田山地図)で火山性地震が急増しました。震源は大岳山頂の南4km付近。11日には大岳山頂の北西5km付近でも火山性地震が発生しています:

上掲のグラフのうち「長期の活動状況」によると、1日あたりの地震発生回数としては、2013年の計数開始以降で最大となっています。


2018年4月10日火曜日

えびの高原硫黄山で湯だまりと熱水の流出を確認


えびの高原硫黄山(地図)で4月9日におこなわれた現地調査で、直径数メートルの湯だまりと、熱水の流出が確認されました。周辺では熱異常域も確認されました:

えびの高原硫黄山では、3月中旬から山体が隆起する傾斜変動が観測されています。火山性地震は多い状態が継続し、4月7日には振幅が急に増大しました。


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2018年4月9日月曜日

朝日歌壇/俳壇と乃木坂46と地球科学 (その1)


こんなところにも地球科学の話題が、というお話を2つ ・・・

『朝日新聞』には、「朝日歌壇 俳壇」が毎週掲載されます。読者からの短歌や俳句から複数の選者が選んで寸評を添えるものです。昨年8月14日の歌壇には以下のような歌や句が、他の多くの作品と並んで選ばれていました:
  • ハワイならやがて日本に近づくと夏の休みをねむる夫はも

  • 夏至来るや地軸のずれる音がする

前者には永田和宏氏の「スケールの大きな夫を持つと大変そう」、後者には、先ごろ亡くなった金子兜太氏の「長い一日、地軸のずれを感じる感覚良し」との評がつけられています。

夏至と地軸のずれがなぜ結びつくのか今ひとつ釈然としませんが(地軸の傾きのことを言っているのでしょうか)、ハワイが日本に近づく云々の方には納得。プレートテクトニクスの考えが当たり前のこととして和歌にも詠み込まれる時世になりました。

太平洋プレートの動きにつれてハワイ諸島が少しずつ日本列島に近づいてきていることは、様々な手段で観測され確認されています。そのうち、最も精密とされるのが VLBI(超長基線電波干渉法)です。「数千キロメートルも離れたアンテナの位置関係をわずか数ミリメートルの誤差で測ることができます」:

VLBIによる観測結果は、プレートが動いていることを示す「動かぬ証拠」と言えるでしょう。


(続く)


霧島山の噴火と大地震 (続報-2)


昨年10月12日付「霧島山の噴火と大地震」と同25日付「霧島山の噴火と大地震 (続報)」の続報です。

霧島山の新燃岳は、3月25日に爆発的噴火を起こし噴煙が2000m上空まで達し、火砕流も発生しました。26日の噴火を最後にしばらく静穏化していたのですが、再び激しい噴火を始め、4月5日未明に相次いだ爆発では噴煙が上空8000mにまで達しました。

新燃岳から約5km離れたえびの高原硫黄山でも、3月半ばから山体が隆起する地殻変動が観測され、4月7日には噴気による震動が激しくなりました。

霧島連山の新燃岳や御鉢の噴火は大地震に結びつくのでしょうか。以下は『西日本新聞』と『デイリー新潮』の記事です。前者には「明治以降、霧島連山の噴火後に起きた大地震」の表があります。「1923年には御鉢が噴火した52日後に関東大震災、2011年には新燃岳が噴火した51日後に東日本大震災が起きている」、「1891年に御鉢が噴火した約4カ月後、(中略)最大震度6を観測したM8・0の濃尾地震が発生。5年後の96年に御鉢が再び噴火すると、3カ月後に岩手県を中心にM8・2の明治三陸地震が起き(以下略)」:

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2018年4月3日火曜日

秋田駒ヶ岳で火山性微動


4月3日、秋田駒ヶ岳(地図)で火山性微動が発生しました。直後に低周波地震も発生しましたが、地殻変動は観測されていません。同山での火山性地震の発生は、2010年2月24日以来8年ぶりです。噴火警戒レベルは「1 活火山であることに留意」が維持されています:

秋田駒ヶ岳は、1970年から71年にかけて中規模のマグマ噴火を起こしています。


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2018年4月2日月曜日

天宮1号が落ちてくる (続報-21)


米国戦略軍(USSTRATCOM)は、中国の天宮1号が米国太平洋標準時4月1日午後5時16分ごろ(日本時間2日 10時16分 9時16分ごろ)に南太平洋上空で大気圏に突入したことを確認した、とのことです:

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天宮1号が落ちてくる (続報-20)


中国の宇宙ステーション「天宮1号」の平均軌道高度は、現時点で 150km を下回っています:

衛星の大きさや形状によっても違いがありますが、通常の人工衛星では、高度120kmあたりから空気抵抗の影響が顕著になり、高度80km前後から急速に破壊・分解が始まるといわれています。

米国 Aerospace Corporation は4月1日付で、落下時期を日本時間 4月2日 09:30 ±1時間42分(4月2日07:48~4月2日11:12)と予測しています:

天宮1号の位置は以下で確認できます:

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