- Woman: People can sense quakes coming (人は地震を事前に感じ取ることができると語る女性)
タホー湖(ネバダ州リノの南南西、ネバダ州とカリフォルニア州の境界にある湖)近くに住む女性Cal Orey氏は、自分のことを"earthquake intuitive"(地震を心や本能で直接感じ取ることができる、地震を直観的に知覚できる)だと言う。彼女は、頭痛、不安、ビジョン、音、夢などが、地震がやってくることを知らせてくれると語る。記事には地震発生場所として3つの地名 ―― リノ(Reno)、Mogul、Wells ―― が出てきます。混乱する方もおられると思うので、少し解説します。3つともネバダ州内の地名です。リノは群発地震が発生している町の名前です。その群発地震のほとんどの震源が集中している場所がMogulと呼ばれる地域で、リノの中心部から10kmほどの場所です。リノもMogulも、タホー湖の北北東約30kmにあります。ネバダ州で発生している群発地震を語るときに、「リノの群発地震」とも「Mogulの群発地震」とも言います。一方、Wellsは、リノやMogulから東北東に約460km離れており、一連の群発地震とはあまり関係がない場所です。
「科学者たちは私たちのことを、信用できないし地震予知ができているわけでもない、と言い続けています」、「でも、私たちにはできるんです(But yes, we can)。私たちは何度も地震を予知しているんです」とOrey氏は語る。
Orey氏は、自分の地震予知について議論するためのウェッブ・サイトを持っている。彼女によると、約140人の"earthquake-sensitive"(地震に対する感受性を持つ)な人たちがそこに集って、議論を重ねているとのことである。
Orey氏の語るところによると、彼女は、今年(2008年)Mogul地域で発生した地震(複数、群発地震)を予知し、また、昨年(2007年)6月にはカリフォルニア州北部の沖合で発生したM5.0の地震を正確に予知し、地質学者のJim Berkland氏から50ドルの賭金を獲得した。
Berkland氏は、サンタ・クララ郡の地質学者で、1989年10月にサンフランシスコ湾岸地域で大地震がおこることを予知、Loma Prieta地震(M6.9)が予知どおりに発生している。
Orey氏はBerkland氏の伝記を執筆し、彼との交流を通じて自分に地震を予知できることを覚ったと語る。彼女は、『Cats Magazine 』、『Dog World』、『Women's World』などの雑誌に動物の地震予知能力についての記事を書き、それがきっかけとなってBerkland氏との交流が始まった、そして、そのことがBerkland氏の伝記を書く契機となった、と語る。
動物の地震予知能力について問うと、彼女は「動物は地震を直感するのです。地震を予知するのではありません。彼らは直感するのです」と記者の認識を訂正した。
彼女は地震前の動物の奇妙な行動に気づいていた。昨年(2007年)、彼女の住むタホー湖南部でクマを目撃し、サン・ノゼで(昨年)10月におきたM5.4の地震を予知した。タホー湖周辺地区でクマについて何か異常なことがあったのだろうか? 「Bijou Pinesのこんなに近くでクマを見かけることはありません」、「コヨーテやアライグマならともかく、クマを見ることは決してありません」と彼女は語る。このときのクマは震源から150マイル(約240km)も離れた場所に出現した。しかし、彼女は「動物は数百マイル離れたところでも地震の影響を受けるのです」と語る。
彼女は、動物が地震を察知することについて記事を執筆した後、自分自身も地震を予知する能力があることに気づいたという。彼女は、多くの人びとが同じ能力を持っていると考えている。「私たちは人類は忙しすぎるのです。それで私たち人類はその能力に関与しないことを選択したのです。私は、その能力を研ぎ澄ますことを選択しました」。
「頭痛はしばしば地震の指標となります」と彼女は言う。「それは、洞(鼻孔に通じる頭蓋骨の空洞部)が痛む副鼻腔炎のような独特な頭痛で、地震が起こるまではどんなことをしても治まりません」。
もうひとつの指標は頭の中に聞こえる音である。彼女はこれを"ear tone"(耳鳴りのことか?)と呼んでいる。
彼女は、Wells地域でM6.0の地震があった日に電子メールをガゼット・ジャーナル紙宛に送ってきた。「私は地震を予知します、今回の地震もなんとか予知していました」というのが最初のメールのタイトルだった。そして次のメールは「私は、リノ地域が揺れたM6.0の地震を予知していました」というタイトルだった。
Wells地域の地震に対応する単一の予知が、後にはMogul地域の群発地震の予知に拡張されている。「この一連の地震はWells地域で発生したまれな地震に引き続いておきたものです」とWells地域の地震とMogul近郊の地震は関連があると信じているOrey氏は言う。
Orey氏は、Mogul近郊でM2.9の地震が発生した後の5月14日に記者のインタビューを受けた。その席で、彼女はその日のうちにもう1回地震が起こるだろうと予知した。確かにM3.4の地震がおきたが、発生したのは翌朝の6時44分だった。Orey氏によれば、これも彼女の予知した範囲内とのことである。
記事の最後の方の段落では、このOreyという女性が地震の発生場所(Wells→Mogul)や発生時期(今日中→翌朝)を都合良く拡大解釈している点について、あからさまには書いていませんが、記者が懐疑的になっている雰囲気が伝わってきます。このような予知の拡大解釈は、日本でも、「自分は地震予知ができる」と言いはる、あるいはそう思いこんでいる人によく見られる現象です。
日本の地震予知関係の掲示板でも、いわゆる「体感」、耳鳴り、頭痛などで地震が予知できると思っている人(「宏観異常者」)の投稿をしばしば目にします。しかし、はっきり言って偶然以上の確率で地震が予知できている人はいないようです。マグニチュード3や4クラスの地震を引っ張り出してきて、自分の予知の結果だと言われても説得力はまったくありません。また、このような「宏観異常者」の常として、「当たりを数えて、外れを忘れる」という故カール・セーガン博士(疑似科学批判を積極的におこなった著名な宇宙科学者)の言葉も良く当てはまるようです。
記事中に登場するJim Berklandという「地質学者」は、これまで何回か大地震の予知を公表して騒ぎを起こしたことで有名な人物です。色々言われていますが、率直なところ私は良い印象を持っていません。
以下は参考資料です:
- Jim Berkland (ウィキペディア)
- THE MAN WHO PREDICTS EARTHQUAKES (Orey氏が執筆したBerkland氏の伝記についての説明)
- Jim Berkland Study (Berkland氏の地震予知を統計的に分析した結果、偶然以上の的中はないと結論しています)