2010年9月23日木曜日

SETI 50周年

SETI (地球外知的生命体探査、Search for Extra-Terrestrial Intelligence) が開始されてから今年で 50年になります。いくつかのメディアが SETI の半世紀をふり返り、今後を展望する記事を掲載しています:

今から 50年前、1960年の春、τ Ceti (クジラ座タウ星)と ε Eridani (エリダヌス座イプシロン星)に電波望遠鏡を向けて、地球外文明の出す人工的な電波を受信しようと試みるプロジェクトがアメリカの天文学者フランク・ドレイク博士によって始められました。このプロジェクトはオズマ計画(Project Ozma)と名付けられ、SETI の始まりとされています。この 2つの恒星が選ばれたのは、地球から比較的近い 10.5光年の距離にあり、太陽と同じタイプの恒星で地球と似た惑星が周囲をまわっている可能性があると考えられたからです。

SETI 開始から 50年が経過しましたが、これまでのところ地球外文明から発せられた電波信号は見つかっていません。銀河系宇宙に存在する恒星の数はあまりにも多く、これまでに詳しく調べられた恒星はごく一部にすぎません。

過去 50年の歴史の中には 「これは!」 と思わせる電波が受信されたことが少なくとも 3度ありました。

1つ目は「CTA102」事件。1960年代の初め、ソビエト連邦の天文学者が、CTA102 と呼ばれる遠い天体が強力な電波を出しており、その電波が約 100日の周期で規則正しく変化していると発表しました。発表をおこなった天文学者たちは、自分たちの発見した電波源は、進歩した科学と強大な力をもった地球外文明であると考えていました。しかしその後、CTA102 は当時は知られていなかったクェーサーと呼ばれる天体であることが明らかになりました。

2つ目は「LGM1」事件。LGM1 は 1967年にイギリスの科学者が発見した電波源です。LGM はリトル・グリーン・メンの略で、宇宙人が緑色のこびとのような姿をしているという当時の通念から名付けられました。この電波源は、CTA102 よりはるかに近いところにあり、驚異的な精度で点滅を繰り返す強い電波信号を送り出していました。その点滅の周期は有効数字 10桁以上の精度で一定でした。イギリスの科学者たちは、地球に向けて送られているメッセージ、あるいは恒星間飛行をする宇宙船のためのビーコンではないかと考えたようです。しかし、これも当時は知られていなかったパルサーと呼ばれる天体であることが後に判明しました。

3つ目は「Wow! シグナル」事件。1977年にアメリカの科学者が観測した電波信号です。狭い周波数帯に集中した強い信号で、銀河系宇宙の中心方向にある「いて座」から送られてきました。現在まで正体が判明していません。地球外文明からの信号であった可能性もわずかながら残っているようです。詳しくは以下の Wikipedia の解説をお読みください:

上記の 3つの事件はそれぞれ、ソビエト連邦、イギリス、アメリカの科学者が関わっていました。SETI は単一のプロジェクトではなく、このようにさまざまな国の科学者によって「細く長く」続けられています。一国の政府の意向や財政状況によって活動が左右されなかったことが、全体として長続きした理由の一つではないかと思います。この種の研究は、何世代、何世紀にもわたって地道に継続する必要があります。そのためには今後とも世界各国に分散して「細く長く」続ける体制をとることが望まれます。

アメリカでは 1984年に設立された民間の非営利法人 SETI Institute (SETI 研究所)が、さまざまな財団、基金、企業、個人などからの出資や寄付金によって運営され、SETI 推進の中心となっています。傘下には SETI リサーチ・センター、宇宙における生命を研究するためのカール・セーガン・センター、教育およびパブリック・アウトリーチ・センターがあります。民間の団体であり、資金面でも政府にほとんど依存していないため、政権の交代などによって活動の方針が左右されることがありません。

日本では兵庫県立西はりま天文台が中心的役割を果たしています:

西はりま天文台は兵庫県南部地震(阪神大震災)の前兆と考えられる電波を受信していたことでも有名です:

高度に発達した地球外文明は電波を通信手段として使わないのではないか、 という悲観論もあります。そのため電波以外の方法、たとえば地球に向けられているレーザー光線や、ダイソン球から漏れてくる赤外線を探すということも試みられています。また、恒星のスペクトルの中に、自然には存在しない物質(たとえばフロンなど)の痕跡を探すことも提案されています(注)

また、高度に発達した地球外文明社会の主体は生身の生物ではなく人工知能になっている可能性も考慮すべきだとの意見も出されています:

願わくば、私が生きているうちに地球外文明からの信号が確認されたとのニュースを見聞きできますように。


(注) 現在も健在であるフランク・ドレイク博士が提案しているものです。地球人類が自分たちの存在を他の恒星系の文明に知らせるもっとも安上がりで容易な方法は、環境問題で回収されたフロンを 100トンほど、ロケットで太陽に打ち込むことだそうです。他の恒星系の観測者が太陽を分光器で観測すれば、自然には存在しないフロンの明瞭な線がスペクトル上に現れるので、太陽系に知的生命が存在することに気づいてもらえるとの想定です。そして、地球人類が容易に実行できるのであれば、よその恒星系の文明も (フロンに限らず何らかの人工物質で) やっているかも知れないから、探してみようという提案です。