2008年12月4日木曜日

最大瞬間風速からの地震予知

先週(11月24日~27日)、茨城県つくば市で日本地震学会2008年秋季大会が開かれました。その大会プログラムを見ていると、
  • 「最大瞬間風速からの地震予知(3) ―2008年 岩手宮城内陸地震の予知― 猿渡隆夫」
という発表が目にとまりました。ネットで検索してみると、今回の発表内容そのものは見つかりませんでしたが、同じ発表者が過去に行った発表内容が見つかりました:
要旨から抜粋すると次のような内容です:
  • 数ヶ月から数年ぶりの最大瞬間風速が記録された場所付近が震源地の可能性が高い。
  • 強風日から1週間から2ヶ月後、約1ヶ月前後で発生する地震が多い。
  • 地震の大きさは、最大瞬間風速約20m/s以上の強風地域の大きさと相関する。
  • 最大瞬間風速20m/sについては、地殻、海岸地域、平野部と山間部では異なるので、補正が必要。
  • 震源地近傍の最大瞬間風速の風向が、逆断層では圧力軸に、正断層では引張軸に、横ずれ断層では圧力軸あるいは引張軸に一致する傾向がある。
  • これらの傾向は、(大地震だけではなく)普通の地震にも敷衍できる。
  • 最大瞬間風速にもとづく地震予知の問題点は、地震発生の予測が1週間から2ヶ月と幅があること。また、大きい地震が発生するのか、より規模の小さい地震に分かれて発生するのかが不明であること。
発表者は、大学や研究機関ではなく企業に勤める在野の研究者のようです。(2)の文書では、名前の下に「武田薬品環境安全室」と書かれています。参照文献リストに『ポケット図解 最新地震がよ~くわかる本』(島村英紀、秀和システム)が載っていて、専門の研究者ではないことをうかがわせています。

今回の発表(3)を見ていないのではっきりしたことは言えませんが、(1)と(2)の内容から判断する限りでは、統計的検定が不十分で疑似相関の可能性を排除できないと私は思います。地震と強風の間に因果関係がない場合でも、特定の地震についてその発生の2か月前まで遡れば、強風の吹いた日はかなり見つかるのではないでしょうか。