2009年11月30日月曜日

チリのラドン・ガス研究

以下は、チリの英字紙『サンティアゴ・タイムズ』の記事です。チリの大学(Universidad Tecnica Federico Santa Maria)とスペインの大学(Universidad de Extremadura)が共同して、ラドン・ガスと地震活動の関係を研究していることを伝えています:
チリは、観測史上最大級の M9.5 を記録したチリ地震(1960年)や、すさまじい火山雷の写真が印象的だったチャイテン山の大噴火(2008年)などを筆頭に、日本と並んで地震・火山災害が多い国です。

記事をまとめると次のとおりです:
ラドン・ガスは、地中から一定のパターンで放出される。しかし、地震に先行して起こるプレート間の動きにともなって、放出が変化することがある。このような変化を検出することによって、地震や火山活動を事前に警告することができる。

ラドン・ガスの放出は、地震計で察知可能な範囲よりさらに深いところの動きも反映するので、より長い予告期間をとることができる。イタリアとインドネシアでおこなわれたこれまでの研究では、大地震の数週間前に大気中のラドン濃度が非常に高くなることが明らかになっている。

チリでは、水中のラドン濃度を測定する方法も開発されている。これによって、火山を取り巻く熱水に同様の技術が応用できると期待されている。
日本でも、ラドン・ガスによる地震予知が熱心に研究された時期がありましたが、急速に廃れてしまいました。原因は、ランド・ガスの濃度が、気象条件など地震以外の要因に大きく左右されること、同じような地震であってもラドン・ガスの濃度に変化がある場合とない場合があり再現性に欠けること、などです。そのため、実用的な地震予知には使えないという見方が大勢となりました。

今年 4月におきたイタリア・ラクイラ地震は、ラドン・ガスによって予知されていたという報道がありました。しかしその後、専門家が否定的な見解を示し、さらに予知情報が広まるのを抑えようとした地元当局の姿勢の是非も議論となって、「ラドン・ゲート事件」(ニクソン前米国大統領を失脚に追い込んだウォーターゲート事件のもじり)と呼ばれるに到りました。

上記の記事で目新しいのは、火山噴火の予知にもラドン・ガスを使おうとしている点です。

なお、記事の末尾の 2段落では、ラドン・ガスの健康への影響について言及しています:
同じ大学(Universidad Tecnica Federico Santa Maria)の環境工学科では、ラドンと肺ガンの関係を調べている。ラドンは、タバコに次いで肺ガン原因の第 2位と考えられている。閉ざされた空間に集積した高濃度のラドンは、深刻な健康問題を引きおこす。
従来の日本建築は木造で通気性が良いため、ラドンのリスクはほとんど問題にならず、日本ではラドン・ガスの危険性が注目を集めることはあまりありませんでした。しかし、密閉度の高い最近の建築物では、予想外に高い濃度のラドン・ガスが検出されることがまれにあるそうです。また、マンションなどのコンクリートからも極微量ながらラドン・ガスが放出されているそうです。こまめに換気をせよということだと思います。


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