2009年7月30日木曜日

クラカタウ山の近影

クラカタウ山のストロンボリ式噴火を写した印象的な写真に出会ったので紹介します。クラカタウ山は、インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡にある火山島です。撮影されたのは今年の 6月上旬です:
クラカタウ山といっても、精確にはアナク・クラカタウ(クラカタウの子供)と呼ばれる火山です。もともとのクラカタウ山は、1883年の大噴火によって山体のほとんどが消滅してしまいました。アナク・クラカタウ山は、その後に形成された火山です。

1883年の大噴火は、人類が経験した史上最大級の噴火とされています。山体のほとんどが吹き飛ばされ崩壊したため、高さ 20メートルに達する津波が発生、死者 36000人を出しています。爆発的噴火によって発生した気圧波が地球を 7周りしたことが当時の気圧計の記録に残っており、爆発音は南アフリカでも聞こえたと伝えられています。また、噴煙が成層圏にまで達して拡散し地球全体を覆ったため気候が寒冷化し、噴火後 5年間にわたってビショップ環(*)が観測されたり、日没時には太陽が異常に赤く見えたりしたとのことです。

なお、クラカタウ(Krakatau)は、しばしば「クラカトア」(Krakatoa)とも表記されますが、スミソニアン研究所(Smithsonian Institution)の資料によると、後者は誤りであるとのことです。

上記の写真では、クラカタウ山の上空に北斗七星が見えています。この北斗七星の「ひしゃく」の先端部にある 2つの星を結んだ線を延長すると、北極星に行き当たることは小学校で習うことだと思います。この写真でそれをおこなうと、北極星は水平線すれすれか水平線よりも下にあり、クラカタウ山の背後に隠れていることがわかります。クラカタウ山のある場所は南緯 6° で、ほとんど赤道直下と言ってよい場所です。赤道付近では北極星は水平線すれすれに見えます。

上記の写真を含む一連のクラカタウ山の写真は以下のページにあるサムネールをクリックすると見ることができます:
クラカタウ山の位置は以下の地図で確認できます。非常に多くの火山が記載されていますが、地図の左側やや下の部分に “Krakatau” の文字があります:
(*)ビショップ環: 光冠の一種で、激しい火山爆発で細かい火山灰が空高く成層圏にまで噴き上げられた時などに見える。1883年インドネシアのクラカタウ火山の爆発の時、ハワイの宣教師ビショップ S.E.Bishopが、この現象の学問的な記録を残しているので、その名前をとってビショップ環という。環の外側は赤褐色、内側は青色で、その半径は太陽から角度で 20度以上に達する。(平凡社世界大百科事典)  太陽や月の周辺に現れる「暈」(かさ)に比べると、視半径が非常に大きいのが特徴です。大気圏内核実験の後にも観測されたことがあるそうです。