以下は〝Astro Bob 〟のブログに掲載された太陽・太陽圏観測衛星〝SOHO〟の画像です。撮影は日本時間9月26日午前2時5分です:
この画像にもエレーニン彗星(エレニン彗星)はまったく写っていません。左上の円がエレーニン彗星の予報位置です。画面中央の白丸は太陽の位置と大きさを示しています。〝Mercury〟、〝Beta Vir〟、〝Eta Vir〟は、それぞれ水星、おとめ座ベータ星、おとめ座イータ(エータ)星を意味しています。
9月27日午前4時頃、エレーニン彗星は太陽と「合」になります。合とは、地球から見て、天体が太陽と同じ方向に見えるときのこと。厳密には、天体と太陽の地心視黄経が等しくなるときのことです(参照: 黄道座標)。黄経が等しくなるだけで、黄緯に差があってもかまいません。ある天体が合のとき、地球の公転面を真上から見下ろした図では、地球と太陽を結ぶ直線の上にその天体があります。しかし、地球の公転面を真横から見た図では、必ずしも直線上にあるとは限りません。平面ではなく立体で考える必要があります。合だからといって、その天体と地球・太陽が一直線に並んでいるわけではないのです。
9月27日のエレーニン彗星の合はどうでしょうか。このとき、同彗星は地球の公転面から約300万km上(北側)にあります。平面的に考えると直線上に見えても、立体的に考えるとかなりずれているのです。
エレーニン彗星が地球に大災厄をもたらすと大騒ぎをした「残念な人たち」は、9月27日に同彗星と地球・太陽が「一直線に並ぶ」から大地震が起きる云々と、未練がましく喧伝しています。しかし、彼らの言うことがことごとく〝ハズレ〟であったことを考えれば、信憑性はゼロです。各国の天文学者やNASAが何度も、エレーニン彗星の質量は小さく、潮汐力などで地球に影響をおよぼすことはない、と言明しているとおりです。かりに9月27日前後に大地震が起きたとしても、それはエレーニン彗星のせいではありません。
なお、太陽光の前方散乱(太陽光が彗星の塵に背後からあたって散乱し、地球に到達する)によって、エレーニン彗星が合の前後に見えるようになるのではないかと期待して、観測体制を敷いている観測者もいるとのことです。エレーニン彗星の現状を知る手がかりが得られれば良いのですが。
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