2011年11月14日月曜日

放射性物質・有毒物質満載のまま大気圏突入へ ― フォボス探査機


11月9日に打ち上げられ、火星の衛星フォボスの表面物質を地球に持ち帰る予定だったロシアの探査機〝フォボス-グルント〟(Phobos-Grunt)は、火星への惑星間飛行軌道にのるためのロケット・エンジンが点火せず、地球低軌道を周回し続けています。ロシアは修復・再起動を試みていますが、通信が回復しないまま時間が経過しています。まもなく探査機に搭載されているバッテリーが尽きるため、修復も絶望となります:
フォボス-グルントには、推進剤の非対称ジメチルヒドラジンと酸化剤の四酸化二窒素が合計で約10トン、未使用のまま満タン状態で残っています(探査機本体の重さは約3トン)。前者には皮膚や粘膜に対する腐食性や発がん性があり、後者にも高い毒性と腐食性があります。大気圏突入の際の高熱でほとんどは蒸発してしまうと考えられていますが、それらのタンクが地表に落下してきた場合は、近づいたり素手で触ったりするのは危険です。

フォボス-グルントには、科学調査に使うための少量の放射性物質コバルト-57も搭載されています。

ロシアのメディアは、「史上最も有毒な衛星の落下」と伝えているとのこと。

フォボス-グルントは低い軌道を周回しているため大気の抵抗を受けやすく、このままロケットの点火ができない状態が続くと、11月末か12月初めに大気圏に突入すると考えられています。NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)は11月26日に大気圏に突入すると報告しています。

9月にはアメリカの UARS(6トン)、10月にはドイツの ROSAT(2.6トン)が大気圏突入していますので、フォボスーグルント(13トン)が11月中に大気圏突入すれば、大型衛星の落下が3ヵ月連続することになります。これまでの2回は、いずれも海に落下して被害はありませんでしたが、3度目の正直ということがあるかも知れません。

フォボス-グルントが落下する可能性があるのは、北緯51.4度から南緯51.4度の範囲です。日本も全域がこの範囲に入っています。

フォボス-グルントの現在位置は、以下のページの図で確認できます:

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