2011年10月31日月曜日

It's the End of the World, Baby!


11月の声を聞くと、そろそろ来年用の天文年鑑や理科年表の発売が気になり出すのですが、新しいカレンダーも書店などに並び始めます。以下は、カンパリ社の2012年用カレンダーの写真を紹介しています。写真の横のボタンをクリックすると次の写真を見ることができます:
一連の写真のタイトルは〝It's the End of the World, Baby!〟(この世の終わりだぜ、ベイビー!)。マヤの暦などに由来する 2012年終末説を意識して構成されています。モデルは、ハリウッド女優でもあるミラ・ジョボビッチ

津波や濁流、黒煙を上げるがれきの山などを想起させる写真もあり、日本人の中には不快に感じる人がいるかも知れません。

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2011年10月30日日曜日

大地震の多い月、日、曜日、えと


過去 400年間の大地震を調べた結果、大地震の発生が多いのは 12月、26日、土曜日、とら年が多いのだそうです:

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エル・イエロ島沖の噴火続く ― カナリア諸島 (続報-2)


エル・イエロ島沖の海底噴火は継続中ですが、ここ数日は活動が弱まっているようです。地震活動も増減をくり返しながら続いています。

スペイン海洋研究所(IEO)の調査によって、噴火地点の様子が明らかになりました:
調査結果によると、噴火は深さ 300m の海底でおこり、火山円錐丘(volcanic cone)が海底から 100m の高さにまで成長。火口の直径は 120m、円錐丘の基底部(円錐の底面)の直径は 700m。

以下は、調査結果に基づいて海底の様子を立体的に表現した図です。上は 1998年、下が今回の調査結果です。海底の渓谷で噴火が起こり、流れ出した溶岩が谷を埋めている様子がよくわかります:
スペインでは新島誕生の期待がふくらみ、新島の名前の候補が取りざたされたりしているようです。しかし、今回の調査結果によれば、火山円錐丘の頂上が海面に顔を出すにはさらに 200m ほど成長する必要があることになります。専門家の多くは、海底下に供給されているマグマの量が少なく、新島誕生には至らないだろうとみています。


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2011年10月29日土曜日

オリオンの心臓


以下は、有名なオリオン座の大星雲(M42)の写真です。心臓(ハート形)の部分を見つめていると、私にはさまざまな髑髏や人の顔が見えてきます。猿人の髑髏、現代人の髑髏、眼窩が大きく後頭部が肥大した未来人かエーリアンのような髑髏などなど。ロールシャッハ・テストのようなもので、何が見えるかは人によって違うのでしょうが:
上の写真を最初に見たときには、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したものかと思いました。しかし、実際には日本の高橋製作所が販売している口径 106mm の屈折望遠鏡で撮影したものとわかり、驚くとともに少し誇らしい気分になりました(写真の下の表に〝Telescopio fotografico: Takahashi FSQ 106 a f/5〟と書かれています)。

星雲(Nebula)は、撮影機材の解像力やフィルターの種類によって大きく表情を変えます。以下の写真は同じ M42 星雲ですが、まったく違う表情を見せています。もちろん、星雲の中に見える髑髏や人の顔も違っています:

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幽霊星雲 vdB 141


以下は、ケフェウス座にある幽霊星雲の写真です。写真の右側にあるリンクで、任意の解像度のファイルを選択してください。画面の左側3分の1に注目してください。ベールのような雲から2体の幽霊(妖精?)が生まれ出ているように見えます。右側の1体は、頭に牛のような角が生えています:
この幽霊星雲は、地球から1200光年離れたところにあり、さしわたしは2光年を超えています。

以下は、もう少し広い範囲を写した写真です。幽霊星雲の左上に、翼を広げたコウモリも舞っています:

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2011年10月28日金曜日

吾妻山で火山性微動と傾斜変動 ― 山形県・福島県


山形・福島県境にある吾妻山地図)で、10月4日、6日、11日に続いて、21日と27日にも火山性微動が観測されました。また、今回の火山性微動では、それに先行して火口方向が高くなる傾斜変動も観測されています:
3月11日の東北地方太平洋沖地震は 869年の貞観地震の再来といわれていますが、貞観地震では 2年後の 871年に鳥海山が噴火したとの記録が残っています。当時の東北地方は辺境の地でしたから、鳥海山の他にも、朝廷の記録に残らなかった噴火や火山活動があったと思われます。

今回の大地震でも、今後数年のうちに東北地方の火山がいくつか噴火するかも知れません。これまでに「怪しい」動きを見せているのは、上記の吾妻山と、秋田・岩手両県にまたがる秋田駒ヶ岳です。また、これらの火山よりも震源域に近い火山としては、栗駒山鳴子蔵王山などがあります。


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セネカ・ガン発生か ― 米国ノース・カロライナ州


10月20日午後3時ごろ、米国ノース・カロライナ州(地図)南東部の大西洋に面した地域で、原因不明の轟音と震動の報告が相次ぎました。セネカ・ガンという現象ではないか、と以下の記事は指摘しています:
少し前にも同様の現象があったらしく、記事には〝Once again〟と書かれています。

9月28日の朝には、サウス・カロライナ州チャールストン(地図)一帯で同様の現象が報告され、セネカ・ガンではないかと取りざたされています:
いずれの場合も、地震計に地震は記録されていません。後者の記事では、衝撃波を発生させるような空軍機が現場付近を飛行していた事実はないと空軍が回答していること、現場付近の海上を航行していた船舶から沿岸警備隊への報告はなかったこと、が書かれています。

セネカ・ガンについては、米国地質調査所(USGS)のサイトに以下のような解説があります(Earthquake Booms, Seneca Guns, and Other Sounds):
The name originated in a short story that James Fennimore Cooper wrote during the 1800’s. The name refers to booms that have been heard on the shores of Lake Seneca and Lake Cayuga in New York State. The name has been applied to similar noises along the coasts of North Carolina, South Carolina, and Virginia. Similar booms are called Barisol guns in coastal India. These phenomena have also occurred in three widely separated places around the world. That’s about all we know about the Seneca guns.

セネカ・ガンという名称は、ジェームズ・F・クーパーが 1800年代に著した短編小説に由来する。この名称は、ニューヨーク州にあるセネカ湖とカユーガ湖(地図)の沿岸で聞こえる轟音を指している。この名称は、ノース・カロライナ州、サウス・カロライナ州、バージニア州の(大西洋)沿岸で聞こえる同様の音を指すのにも使われている。これと同様の音は、インドの沿岸部ではバリソル・ガン(Barisol gun)と呼ばれる。これらの現象は地球上の遠く離れた 3つの場所でおこっている。これが、セネカ・ガンについてわれわれが知っているすべてである。
ウィキペディアの〝Seneca Lake (New York)〟の項には、〝Guns of the Seneca〟というサブ・タイトルのもとに次のような記述があります:
Seneca Lake is also the site of a strange and currently unexplained phenomenon known as Mistpouffers. In this area, they are called the Seneca Guns, Lake Drums, or Lake Guns. These are mysterious cannon-like booms and shakes that are heard and felt in the surrounding area. The term Lake Guns originated in the short story "Lake Gun" by James Fenimore Cooper in 1851. Many believe that they are caused by giant air bubbles from deep in the lake bursting on the surface, which is not believed to be true. Others equate it with Indian folklore. The most likely explanation is due to sonic booms from military aircraft, though this does not explain the sounds heard during Cooper's time.

セネカ湖は、〝Mistpouffer〟として知られる奇妙な原因不明の現象がおこる場所でもある。この地域では、セネカ・ガン、レーク・ドラム、レーク・ガンなどとも呼ばれる。この不可解な大砲のような轟音と震動は、湖の周辺で聞こえ、感じられる。レーク・ガンという用語は、ジェームズ・F・クーパーが 1851年に著した短編〝レーク・ガン〟に由来する。湖の深みからわき上がってきた巨大な空気の泡が水面ではじけるときに、このような音と震動が発生すると多くの人は考えているが、信憑性はない。他の人たちは、この現象をアメリカ先住民(インディアン)の伝承と結びつけている。最もありそうな説明は空軍機から発生する衝撃波であるが、クーパーの時代に聞こえていた轟音を説明することはできない。

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トルコ地震でアルメニアの原発から放射能漏れ? (続報)


10月26日付「トルコ地震でアルメニアの原発から放射能漏れ?」の続報です。

アルメニアとトルコの間で非難の応酬がおきています。アルメニアとトルコは過去の歴史に対する認識を巡って対立があること、アルメニアの原発が旧ソ連型で「世界一危険」とされていること、かつてアルメニアで起きた大地震の際に原発スタッフが逃げ出したため原子炉過熱の危険があったことなど、さまざまな背景があるようです:
非難の応酬がある中、アルメニアの原発は28日に運転を再開しようとしています。トルコの地震による被害はまったくなかったとアルメニア側のメディアは報道していますが、運転は停止したようです:
トルコ側は、アルメニアの原発に対する対抗策として放射線測定を強化するほか、アルメニアを含む各国の老朽化した原発に対する法的手段を講じる意向です:
法的手段とは、具体的には IAEA(国際原子力機関)に数十件の苦情申し立てをおこなうことのようです。苦情の対象は、アルメニアを含む世界各国の老朽化した原発(稼働開始から40年を超えているもの)だそうです。発表したトルコのエネルギー相は、具体的な国名をあげることは避けたとのことですが、日本では日本原子力発電の敦賀発電所 1号機や関西電力の御浜発電所 1号機が 40年を超えています。


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2011年10月27日木曜日

航空母艦サイズの小惑星 2005 YU55 が地球接近


このブログでも何度か取り上げたことのある小惑星〝2005 YU55〟が、また地球に接近します。『天文年鑑』(誠文堂新光社)によれば、最接近は日本時間では 11月9日で、そのときの地球との距離は 0.0022 天文単位(約 33万km)、明るさは 11等級で、天球上を 1日に 77°という超高速で移動すると予報されています。

〝2005 YU55〟は直径約 400m で、「航空母艦サイズ」と表現されています。このような大きさの小惑星が、今回のように地球の至近距離を通過するのは 1976年以来で、次に同様のチャンスが巡ってくるのは 2028年とあって、NASA もレーダー観測などの準備態勢を整えています。高額の費用を費やして探査機を打ち上げなくても、小惑星の方からこちらにやって来てくれるのですから、まさに「鴨が葱を背負ってくる」ようなものです:
上記記事の一部を以下にテキトー訳します:
小惑星 2005 YU55 の軌道は非常によくわかっています。最接近のとき、この小惑星は地球に 32万4600km まで近づきますが、これは地球から月までの距離の 0.85 倍です。この小惑星からの重力は、地球の潮汐やテクトニック・プレートを含むいかなるものに対しても検出できるほどの影響をおよぼしません。2005 YU55 は地球(と金星と火星)に定期的に接近する軌道にのっていますが、2011年の地球との遭遇は、この宇宙の岩塊にとって過去少なくとも 200年間で最も地球に近づくものとなります。
以下のページには、〝2005 YU55〟の軌道要素とともに、地球・金星・火星に接近する日時の予報が今後 50年間分掲載されています(ページ左下の [show close-approach data] をクリックしてください):
エレーニン彗星(エレニン彗星)の一件で懲りたかと思いきや、またぞろトンデモ屋さんたちがうごめき始めています。曰く、「地球に衝突する」、「重力の影響で地震や津波がおこる」、「実はエーリアンの宇宙船だ」、「謎の電波が発信されている」、「NASA は情報を隠している」等々。くれぐれも、このような愚劣な人たちの言動に惑わされることがありませんように。


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トルコの大地震とヴァン湖の怪獣


トルコ東部で 10月23日(日)に M7.2 の大地震が発生しましたが、この大地震の震源地(地図)近くには、琵琶湖の 5倍ほどの面積を持つヴァン湖(バン湖)という湖があります。この湖には未知の動物が生息しているという説があります:
ヴァン湖は塩水湖でエサとなる魚類が少なく、大形の動物が生息するのは困難だというのが一般的な見方です。

今回の大地震で震源に近いヴァン湖もかなり揺れたと思われますが、怪獣が浮上してきたというニュースは今のところありません。


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2011年10月26日水曜日

トルコ地震でアルメニアの原発から放射能漏れ?


イランの放送局〝ラジオ・イラン〟のウェブサイトが掲載している記事です:
10月23日にトルコ東部で発生した M7.2 の地震で、隣国アルメニアのメツァモール原子力発電所(地図)に被害が発生、「メツァモール原発からの放射能漏れの量は、それほど多くはないが、緊急速報によれば、この原発の周辺地域で検出された放射能の量は、基準値を超えている」と伝えています。

アルメニアの原発に被害があったと伝えているのは、管見の限りでは上記のイラン発の記事だけです。アルメニア発の報道はすべて、原発に被害はなかったとしています:
震源からメツァモール原発までの距離は約 160km (おおよそ東京都心から静岡県焼津市までの距離に相当)です。


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X線観測衛星が落ちてくる (続報-2)


X線観測衛星 ROSAT の大気圏突入の時刻と場所について、ようやく DLR (ドイツ航空宇宙センター)が最終(?)発表をおこないました:
上記発表によると、ROSAT が大気圏に突入したのは日本時間で 10月23日(日)午前10時50分、場所はベンガル湾上空とのこと。

他の情報源によると、大気圏突入の場所はインド洋とベンガル湾の境界付近、セイロン島とスマトラ島の間、セイロン島から南東に約 900km の海上です(地図)。ROSAT の進行方向は北東なので、燃え残りの破片があったとすればアンダマン海やミャンマー南部に向かって落下していったと考えられます。

先月落下した NASA の衛星 UARS にしても、今回のドイツの ROSAT にしても、大気圏突入の時刻と場所を最終的に確認するまでに数日を要しています。しかも、その時刻や場所に曖昧さがつきまとっています。この点について、『New Scientist』の記事は次のように書いています:
GPS が普及しているこのご時世にもかかわらず、(大気圏突入の)精確な位置が発表されないことに対して、メディアには驚きと当惑が広がっている。しかし、STRATCOM(US Strategic Command、米国戦略軍)は、地球上のどこで弾道ミサイルが発射されてもその熱を探知することができる赤外線探知衛星(複数)を保有しているので、ROSAT がどこに落下したかを精確に知っている可能性が高い。

大気圏に突入した衛星が発する高熱は、それらの赤外線探知衛星によって容易に探知されるはずである。しかし、STRATCOM が知っていることをすぐに明らかにしたことはない(9月に NASA の UARS が落下した場所が明らかにされたのは 4日ないし 5日後のことであった)。そのような発表をおこなうことは、保有している探知技術についての手がかりを敵方に与えることになるからである。したがって、ドイツの航空宇宙当局も、STRATCOM がデータを公表する準備がすっかり整うまで待たなければならないであろう。

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一瞬で形を変える雲


まず、以下の動画を画面中央部に注目してご覧ください。9秒目から現象が始まります:
画面に映っている空のうち、下半分の灰色の部分は成長した積乱雲です。問題の現象はこの積乱雲の頂上付近で発生しています。

専門家の説明は次のとおりです ―― 積乱雲の頂上付近には氷の針状結晶が形成されている。積乱雲中の電場によって、これらの針状結晶の方向がそろい、特定の方向に太陽光を反射(屈折、回折)する。雲間放電や落雷が起きると積乱雲中の電場が急激に変化し、それに応じて針状結晶の整列方向も急激に変化する。その結果、太陽光の向かう方向も変化するので、地上から見ると雲の明るい部分の形が一瞬で変化しているように見える。

この現象は、〝crown flash (頂上部の閃光)〟とか〝leaping sundog (跳躍する幻日)〟と呼ばれるようで、以下のページにもいくつか動画が掲載されています:

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2011年10月25日火曜日

白山 ― 気象庁が監視強化


石川県と岐阜県にまたがる白山(地図)の監視体制や防災体制の強化に気象庁が乗り出しているという『中日新聞』の記事です:
「噴火の可能性を指摘する声が高まったのは、白山で群発地震が発生した 2005年から」で、火山の専門家によると「白山は 300年間静かだった後、100年から 150年間、活発化する周期を持つ。最後の噴火とされる 1659年から 352年たっており、いつ噴火してもおかしくない状況とはいえる」とのこと。

気象庁が 3月31日現在で発表した「管内月間火山概況(平成23年月)」(PDF形式)には以下のような記述があります:
2011 年3月11 日に発生した「東北地方太平洋沖地震」以降、白山付近を震源とする地震が一時的に増加しましたが、火山性微動の発生等、直接噴火活動に関連するような変化は認められておらず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。
その後の月間火山概況はすべて「火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません」となっています。


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エレーニン彗星の残骸を撮影 (続報)


その後も、世界各地のアマチュアやセミ・プロ級の天体観測者たちが、エレーニン彗星(エレニン彗星)の残骸である「塵の雲」の撮影に挑戦し成功しています。非常に淡い天体なので撮影が難しく、撮影技術の高さを誇示する格好のターゲットとなっているようです。エレーニン彗星の日の出前の高度が高くなってきたこと、新月が近づき月明かりに妨害されることが少なくなってきたことなど、撮影条件が良くなってきたことも後押ししていると思われます:

先日紹介した以下のブログ記事にも、新しい写真が追加されています。各写真はクリックすると拡大します。下から 2番目の写真は、この彗星の発見者であるレオニード・エレニン氏が撮影したものです:

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2011年10月24日月曜日

小樽港にイルカ


10月23日、小樽港(地図)で種名不明のイルカ 2頭が泳いでいるのが目撃されました。おたる水族館では、「港に来るのは非常に珍しい。餌を探して迷い込んだのでは」、「本州沿岸に生息するイルカでは」と推測しています:

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2011年10月22日土曜日

エレーニン彗星の残骸を撮影


崩壊したエレーニン彗星(エレニン彗星)の残滓と考えられる塵の雲を、イタリアのチームが撮影しました:

撮影は、日本時間10月21日午後6時から8時にかけて。イタリアのチームが、米国・ニューメキシコ州の天文台にある望遠鏡をインターネット経由で遠隔操作して撮影しました。

上記記事中の写真をクリックすると、4秒間の動画が始まります。2枚の写真を交互に切り替えて、塵の雲と思われる非常に淡い「染み」が周囲の恒星に対して移動していることを見せてくれます。

以下は静止画です:

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X線観測衛星が落ちてくる (続報)


 DLR(ドイツ航空宇宙センター)が本日午前5時42分に発表したところによると、X線観測衛星 ROSAT の大気圏突入は、23日(日曜)午前3時から午後9時の間とのことです (時刻はいずれも日本時間)。

【追記】 文部科学省のフェースブックに、ROSAT が上記時間帯に日本上空を通過する際の軌道図が掲載されています:

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2011年10月21日金曜日

各地でサクラが〝狂い咲き〟 (続報)


10月10日付「各地でサクラが〝狂い咲き〟」の続報です。その後も、季節外れにサクラが咲いたとの報道が続いています。北海道を除くほとんどの地域でサクラが狂い咲きいしているようです。

狂い咲きの理由としては、アメリカシロヒトリなどの虫害や台風などによって葉を失ったあと、急激な気温の降下と上昇があったため、とするものがほとんどです。たとえば、徳島市でサクラが開花したことを伝える『朝日新聞』の記事には、次のような説明があります:
県立博物館にも今秋、例年になく住民から桜の開花情報が寄せられている。植物担当の茨木靖学芸員によると、桜は春の開花に備えて夏には芽をつけるが、葉から開花を抑える成長抑制ホルモンが分泌され、休眠状態を保っているという。ところが、今年は7月に1回、9月に2回、計3回の台風が県内を襲った。茨木さんは「桜の葉は今年は少ない。台風の強風で、開花を抑制する役割の葉が多く散ったことが、おもな原因ではないか」と話す。

サクラだけでなく、タンポポの開花、カマキリの活動、セミの鳴き声が聞こえたなどの報道もあります:

▼新潟県燕市
▼千葉県成田市
▼東京都中央区
▼神奈川県秦野市
▼山梨県山梨市
▼山梨県昭和町
▼静岡県静岡市
▼長野県松本市
▼三重県伊勢市
▼滋賀県草津市
▼滋賀県大津市
▼京都府京都市
▼奈良県山陵町
▼和歌山県南部(田辺市など)
▼徳島県徳島市
▼愛媛県今治市
▼鳥取県大山町
▼広島県広島市
▼宮崎県宮崎市
▼鹿児島県南さつま市

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カトラ山上の氷河陥没と突発洪水 ― アイスランド


カトラ山(地図)はその山体のほとんどをミルダルスヨークトル氷河に覆われています。その氷河の表面に複数の陥没地形や亀裂が形成されている様子をヘリコプターから撮影した動画です:

撮影されたのは今年の夏です。氷河の表面が黒いのは、昨年噴火し、ヨーロッパの航空路を大混乱に陥れたエイヤフィヤトラヨークトルの火山灰が積もっているためと思われます。エイヤフィヤトラヨークトルは、カトラ山の西隣にあります。ヘリコプターの影が氷河に映るシーンがありますが、これによって陥没地形や亀裂の大きさがわかります。

動画の後半(3分15秒以降)は、ミルダルスヨークトル氷河の周辺で発生した突発的洪水の状況を捉えています。橋が流され、道路が寸断されていることがわかります。洪水が流れた跡の地形は、火星表面に見つかっている「流水」の痕跡とされる地形を思い起こさせます。


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2011年10月20日木曜日

神仏漂着


2度も津波に流された観音像の話です。岩手県釜石市の漁村に祭られていた観音像は、1933年の昭和三陸地震津波で流失しましたが、4キロ離れた漁村に漂着し、戦後に元の場所に安置されたのだそうです。3月11日の東日本大震災の大津波で再び流失しましたが、発見され民家に保管されているとのことです:

岩手県陸前高田市の諏訪神社に祭られていた神札が津波で流され、茨城県鹿嶋市の海岸に漂着。鹿島神宮と長野県の総本社・諏訪大社の協力で陸前高田市の諏訪神社にもどされることになったという話です。陸前高田市の諏訪神社は、津波で建物などが流され、宮司も亡くなったとのことです:

昔から仏像が漂着したという話は多く、寺院などの縁起となっています。たとえば、京都の六角堂や因幡堂です。前者には淡路島に流れ着いたという如意輪観音、後者には勅使・橘行平(たちばなのゆきひら)が海中から引き上げたという薬師如来が祭られています:

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X線観測衛星が落ちてくる


Credit: Chris Peat, Heavens-Above GmbH
9月24日に NASA の大型人工衛星〝UARS〟(Upper Atmosphere Research Satellite: 上層大気研究衛星)が太平洋に落下したばかりですが、今度はドイツの X線観測衛星〝ROSAT〟(ROentgen SATellite)が大気圏に突入します。UARS は重さ 6トンで大きさはスクールバスにたとえられましたが、ROSAT は重さ 2.6トンで大きさはミニバンにたとえられています。

右上の図は、20日午前11時の ROSAT の位置です。たまたま、南西から北東に向かって日本列島を縦断しはじめるところでした。最新の位置は、以下のページで見ることができます:

ROSAT が大気圏に突入する時刻は、協定世界時で 10月23日 6時40分を中心に、前後 30時間のあいだと現時点では推定されています。日本時間になおすと、10月22日(土)午前 9時40分から 24日(月)午後 9時40分の間で、中心時刻は 23日(日)の午後 3時40分になります。

ROSAT を構成する部品のうち、約 30個、総計 1.5トンが大気圏突入時の高温にも燃え尽きず、地表に到達すると考えられています。そのうちの最大は、口径 32インチ(約 80cm)の反射鏡で、重さは 400kg あるとのことです。

UARS の破片が人にあたる確率は 3200分の1とされていましたが、今度の ROSAT は 2000分の1と見積もられています。

私は今まで知らなかったのですが、40年ほど前、日本の船に宇宙から落下してきた破片が当たり、 5人の乗組員が負傷する事件がおきていました。以下は、米国・連邦議会の技術評価局(Office of Technology Assessment、OTA)の報告書ですが、その 3ページ(表紙から数えた枚数では 11枚目)に、その事件の記述があります:

以下にその部分を引用します:
2) a Japanese ship was hit in 1969 by pieces of space debris that were assumed to be of Soviet origin, injuring five sailors;
(1969年、ソビエト連邦のものと推定されるスペースデブリの複数の破片が日本の船舶に衝突し、5人の乗組員が負傷した;)

確率が低いとはいうものの、時には「盲亀の浮木」のようなことが起きるということです。くわばら、くわばら。


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エル・イエロ島沖の噴火続く ― カナリア諸島 (続報)


エル・イエロ島(地図)沖の噴火の鮮明な写真です。写真をクリックすると次の写真を見られます:

5枚目の写真で、海面に浮かんでいる黒いかたまりについてはネット上で議論がありましたが、気泡をたくさん含んだ溶岩の小片という考えが大勢でした。


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2011年10月19日水曜日

レーニア山周辺で地震連続 ― 米国・ワシントン州


米国北西部ワシントン州にあるレーニア山(地図、標高 4392 m)周辺で地震が連続しています。レーニア山は、イチロー選手の所属するマリナーズの本拠地・シアトルの南南東約 100km にある火山です:

10月14日にレーニア山の西側で起きた M3.4 が最大で、同じ日にレーニア山直下で M2.9 も発生しています。レーニア山周辺では、これまでにも今回のような地震がたびたび発生しており、専門家は、注目はしているものの、噴火に結びつくような地震活動ではないとしています。

以下は PNSN(The Pacific Northwest Seismic Network)のサイトに掲載されている震央分布図と、震源の深さの変化を示したグラフです(毎日更新):

レーニア山が最後に噴火したのは 1894年の11月から12月にかけてですが、1800年代には 不確かなものも含めると 7~8回の噴火があったのではないか、と考えられています。


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2011年10月18日火曜日

コメットさん宅に隕石が落下 ― フランス


今年の夏、パリ郊外のドラヴェイユ(Draveil、地図)にある住宅に隕石が落下していたことが明らかになりました:

隕石が落下したのは、Madmoiselle Comette (マドモアゼル・コメット、“Comette” の発音は英語の “comet” と同じだそうです) と彼女のパートナーである Monsieur Mosset (ムッシュー・モセット) が暮らす住宅。いつ隕石が落下したのかははっきりしないが、8月中らしいとのこと。なぜはっきりしないのかというと、8月中、2人は長いバカンスで留守にしていたため。9月になって雷雨があったとき、雨漏りが発生。屋根職人が瓦を交換中に、屋根にあいた穴と表面が黒く内部が灰色の「石」を発見。ムッシュー・モセットは隕石ではないかと考え、9月22日にセーヌ川沿いに鉱物・化石・隕石の店をもつ隕石蒐集家の Alain Carion 氏に見せたところ、隕石であることが確認されたのだそうです。

発見された隕石は重さ 88 グラムで、典型的なコンドライト。約 45億年前に小惑星の地殻で形成され、その後の小惑星同士の衝突などで飛び散って地球に向かう軌道に乗ったのだろうと考えられています。

その後の捜索で、同一の隕石から分離したとみられる 2 キログラムと 5.3 キログラムの破片が近隣から発見されたとのことです。こちらの破片が直撃していれば、コメットさんの住まいは雨漏り程度ではすまなかったかも知れません。

これまでに、パリを中心とした半径 50マイル(約 80km)の範囲内に隕石が落下したとの記録はないそうです。

以下は、隕石蒐集家 Alain Carion 氏の鉱物・化石・隕石の店のウェブサイトです。虫入り琥珀の写真集は圧巻です。この虫たちの中には恐竜の血を吸ったものがいて、恐竜の DNA が保存されているかも … :

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エル・イエロ島沖の噴火続く ― カナリア諸島


10月10日にエル・イエロ島(地図)の南の海底で始まった火山活動は、穏やかになったものの継続中です。以下の動画に見られるように、変色した海水を押しのけるようにして海面が泡立つようになっています。これは、海中で火山が成長し、噴火口が海面に近づいているためだと考えられます:

専門家は、海底のマグマの量が不足しているので火山が海面まで成長することはない、とみています。しかし、スペインでは新島誕生への期待がたかまり、新島の領有権はどうなるかという記事が掲載されたり、新島の名前を募集するサイトが現れたりしています。

前者の疑問に対しては、火山活動がおきているのはスペインの領海内なので、新島はスペインに帰属する、が答えです。(カナリア諸島とアフリカ大陸の間の海域に関しては、石油資源が見つかっていることもあって、対岸のモロッコとの間に係争があるそうです。)

公海に新島が誕生した場合には、最初に発見・上陸して領有を宣言した国の領土になるのが通例のようですが、月や南極大陸のように、どこの国の主権にも属さない、とする考えもあるようです。

ジョークのパターンに、船が難破して無人島に流れ着いたとき、○○人ならどうするか、というものがあります。たとえば:
海図にない島に故障した船が漂着した。ドイツ人は故障をどう直すか研究を始め、フランス人とイタリア人は島に女性が潜んでいないか、うきうきしながら探しに行った。日本人は漂着後にどうすべきか本社に問い合わせる通信手段を探し始めた。だが、中国人はこの島の領有権を主張し始めた。(産経ニュース 「この島は中国のものだ!」 より引用)

中国人が領土に執着するというジョークのパターンは、最近、よく見かけるようになりました。公海の海底に成長中の火山があり、島にまで成長する見込みがある場合、中国の「調査船」がすぐそばで待機する、ということも将来あるかも知れません。

新島の名前の候補には、〝La descubierta (The discovery)〟や〝Atlántida (Atlantis)〟などがあがっています。


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2011年10月17日月曜日

エレーニン彗星と妖星ゴラス


本日未明、エレーニン彗星(エレニン彗星)が地球に最も近づきました。しかし、何もおこりませんでした。当然のことですが。

この彗星の接近で地球上に大災害が起こるというデマを撒き散らし大騒ぎをしたフィアモンガー(fear-monger)やドゥームセイヤー(doomsayer)など、いわゆるトンデモ屋さんたちは、一部を除いて鳴りをひそめているようです。こういう人たちと、その人たちの言うことを真に受けてか、おもしろ半分にか、ネット上でデマの拡大再生産に加担した人たちに、反省の弁や謝罪の言葉はないのでしょうか。

天体の接近によって生じる地球上の大災害を描いた日本映画があります。1962年の東宝映画『妖星ゴラス』(あらすじ)です。地球に近づいてくる天体との衝突を避けるために、その天体の軌道を変えたり、アメリカ映画『ディープインパクト』や『アルマゲドン』のように爆破したりするのではなく、南極大陸に巨大なロケット群を建設して噴射し、地球の軌道を変えて接近してくる天体を回避するという珍しい発想の映画です。

エレーニン彗星の背後には大重力の黒色矮星が隠れているとか、エレーニン彗星自身が黒色矮星であると言うトンデモ屋さんがいましたが、この映画の「主役」であるゴラスも黒色矮星という設定です。黒色矮星は、理論的に想定されている天体ですが、実際に存在が確認されているわけではありません。映画では、ゴラスの質量は地球の質量の 6000倍とされていますから、換算すると木星の質量の約 19倍。これは、褐色矮星の範疇に入ります。

以下は、『妖星ゴラス』の予告編です:

上の予告編より、以下のショートカット・クリップの方が映画の内容がよくわかります:

冒頭は、計画を変更して急遽ゴラスの調査に向かった日本の土星探検隊のロケットが、ゴラスの重力に抗しきれずに吸い込まれてしまうシーンです。6分45秒から、ゴラスの接近による地球上の災害シーンが始まります。月がゴラスに吸い込まれてしまうシーンは、7分09秒以降です。ゴラスが地球に最接近するときの様子は、9分35秒からです。

月が吸い込まれるのになんで地球は無事なのかとか、吸い込まれる前に潮汐力によってばらばらになってしまうはずだ、あるいは、あんなにたくさんのロケットを南極で噴射したら大量の大気が宇宙空間に逃げてしまうなどなど、いろいろと突っ込みどころがありますが、広い心で(笑)見てやってください。

9分58秒あたりから短いですが、ロケット噴射中の地球の遠景が映ります。このシーンを見て思い出すのが、以下の写真です:

NASA の土星探査機カッシーニが撮影したもので、土星の衛星エンケラドスの南極付近から吹き出している水や氷のジェットをとらえています。映画『妖星ゴラス』では、最初の犠牲者は土星探検隊でした。また、地球の軌道を変えるためのロケット噴射をおこなったのは南極大陸でした。半世紀前に作られた映画と21世紀の現実との間の、不思議な符合点です。

映画『妖星ゴラス』は次のようなメッセージで終わります:
ただ今から、国連科学委員会のメッセージをお送りします。

皆さん、われわれは勝ちました。妖星ゴラスはすでに太陽系から離れようとしております。われわれは、全人類の平和への願いと協力によって勝ち得たこの勝利を、永遠のものにしようではありませんか。

われわれはトンデモ屋さんたちに勝ちました。トンデモ屋さんたちのおもちゃにされたエレーニン彗星は、すでに地球から離れようとしています。


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2011年10月16日日曜日

「超光速」ニュートリノの謎が解けた!?


先月、ニュートリノ(中性微子)が光よりも速く移動しているという実験結果が発表され、世界中に大きな衝撃を与えました。これが事実であれば、現代物理学の基盤をなしている相対性理論が揺らぐことになるからです:

どうやってニュートリノの速さを測ったかというと、スイスにある CERN(欧州原子核研究機構)から 730km 離れたイタリアのグラン・サッソ国立研究所に向けてニュートリノを発射し、その到着時間を計測。その結果、光が要する時間よりも 約 60ナノ秒(1 ナノ秒は 10億分の 1秒)早くニュートリノが到着したという結果だったのだそうです。

CERN からグラン・サッソまでは光速で約 2.4ミリ秒(ミリ秒は 1000分の 1秒)。実験チームは、GPS衛星からの電波を利用して 2地点間の距離を精密に測定し、両者の時計を厳密に同期させた上で、3年間、15000回の測定をくり返して、ニュートリノが光よりもわずかに速いスピードで飛行しているとの結論に至ったのだそうです。

この実験は、「光君」と「ニュートリノ君」をスタートラインに並べて「用意ドン」で走らせ、ゴールラインでどちらが先にテープを先に切るかを見届けたわけではありません。別々の「競技会」で光君とニュートリノ君が出した記録を比較して、ニュートリノ君の方が少しだけ速いと結論したのです。アメリカのカール・ルイスとジャマイカのウサイン・ボルトのどちらが速いのか、世代の違う 2人を並べて競争させるわけにはいきませんから、前者の過去の記録と後者の現代の記録で比較するようなものです。このような比較をおこなう場合、両者の記録を測定したときに使われたトラックの長さや、時計の正確さが非常に重要になります。

実験チームは、結果の重大性に鑑みて、CERN-グラン・サッソ間の距離の測定や、2地点間の時計の同期に何らかの誤差の要因が残っていかなど、検証を積み重ねました。実験チームの言葉を借りると、「初めは、とんでもない間違いをしていると思った」、「あらゆる否定を試みたが、最後までどうしても(60ナノ秒が)消せずに残った」のだそうです。

実験結果を何とか説明しようとする、つまり、実験方法に問題がありニュートリノが超光速で飛行したわけではないとする論文がすでにいくつも出ています:
  1. Faster-than-light neutrinos face time trial (超光速ニュートリノは時の試練に直面)
  2. The OPERA neutrino velocity result and the synchronisation of clocks (OPERA実験によるニュートリノ速度の測定結果と時計の同期)
  3. Times of Flight between a Source and a Detector observed from a GPS satelite (GPS 衛星から見たニュートリノ発生源と検出装置間の飛行時間)

(1) は科学誌『ネイチャー』の記事ですが、それが参照している (2) の論文は、重力の影響によって CERN とグラン・サッソの時計が厳密には同期していなかったのではないかと指摘しています ―― 地球の中心からの距離が違うため、CERN の方がグラン・サッソ研究所よりも重力がわずかに強い。重力が強いと相対性理論の効果によって時計の進み方が遅くなる。CERN の時計の方がグラン・サッソの時計よりもわずかに遅く進んでいたことが、測定結果に影響した。

(3) は、測定チームが時計の同期や距離の測定に利用した GPS 衛星(単数)が、CERN やグラン・サッソに対して相対的に動いていた点に着目。この相対的な動きの影響を計算すると 64ナノ秒になり、実験チームが発表している光とニュートリノの到着時間の差 60ナノ秒(厳密には 60.7±6.9(統計誤差)±7.4(系統誤差)ナノ秒)を説明できるとしています。

730km を飛行して 60ナノ秒の差がつくということは、ニュートリノが光より 0.0025% 速いということです。2002年に東京大学の小柴昌俊名誉教授がノーベル物理学賞を受賞するきっかけとなった超新星 SN 1987A の爆発では、約16万光年離れた大マゼラン星雲内の超新星から地球に、光とニュートリノがほぼ同時に届いています。もし、ニュートリノが光よりも 0.0025% 速いとすれば、ニュートリノは光よりも 4年早く地球に届くはずなのですが、そうではありませんでした。

超新星 SN 1987A のことを考えると、ニュートリノが超光速で飛ぶとは考えにくいように思います。しかし、この先どんなどんでん返しがあるかわかりません。この件からは、しばらく目が離せません。


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エレーニン彗星の最接近


エレーニン彗星(あるいはエレーニン彗星だった塵の群れ)が、地球に最も近づく時刻が迫ってきました。NASA/JPL の予報では、日本時間で 10月17日(月)午前4時51分ごろとなります。最接近時の距離は 0.234 天文単位、すなわち約 3500万km です。

エレーニン彗星は「しし座」から「かに座」に移ったところで、午前 2時ごろに東の地平線から昇ってきます。そばには火星が輝いているはずです()。

それにしても、この見栄えのしない小さな彗星が、なぜこれだけ話題になったのか、未だに不思議です。本来であれば、「エレーニン」という名前も一部の専門家やアマチュアの彗星観測者のみに知られるだけで、何の騒ぎも起こさずに太陽から静かに遠ざかっていくはずだったのですが。

エレーニン彗星よりも大きく明るい彗星がいくつも地球に接近しているのですが、それらが一般の人たちの話題に上ることはありません。たとえば、彗星らしい見事な姿を見せてくれた「本田・ムルコス・パジュサコバ彗星」(写真写真)は、今年 8月15日に地球に 0.060 天文単位(約 900万km、地球から月までの距離の約 24倍)まで近づいたのですが、まったく騒がれませんでした。

エレーニン彗星を構成していた塵の群れが、再び地球のそばにもどってくるのは 1万数千年後になるとのことです。そのころまで、人類は存続しているでしょうか。


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2011年10月14日金曜日

メディアが大噴火 ― アイスランド・カトラ山


10月13日付の欧米各紙はいっせいに、カトラ山の大噴火が切迫しているという記事を掲載しました。刺激的なタイトルも目立ちました。大衆紙ほどセンセーショナルなタイトル、高級紙はやや抑えめのタイトルといったところです。たとえば:

これは一大事と思ってアイスランド気象局のサイトを確認しても、カトラ山周辺の地震はふだんよりも少ない状態。地元アイスランドのニュース・サイトを見ても、それらしい記事は皆無。アイスランドの主要な英語ニュースサイトには、13日付で次のような記事が掲載されている始末です:

両サイトとも、イギリスの高級紙『ガーディアン』(中道左派)の記事を批判的に取り上げています。前者の冒頭部分を以下にテキトー訳します:
An article published in the national British newspaper, The Guardian, today, detailing the possible eruption of the Iceland volcano, Katla, is a prime example of the media over reacting, yet again.

イギリスの全国紙『ザ・ガーディアン』に本日付で掲載された記事は、アイスランドのカトラ火山の噴火の可能性について詳しく書いているが、メディアの示す過剰反応の最も良い事例である。それも 2度目の。

多くのメディアがいっせいにカトラ山の噴火の可能性について報じた背景には、どうやら、ある通信社が流した記事があるようです。各メディアの記事を比較すると、共通の文言や言い回しがでてきます。通信社の記事をそのまま、あるいは手直しして、センセーショナルなタイトルをつけたのでしょう。記事には、「火山学者」がこう言っているとか、「研究者」がこう述べているという記述があるのですが、その火山学者や研究者の具体的な名前や所属が明記されていないことが多いという特徴もあります。

カトラ山噴火についての一斉報道は、目前の不満、たとえばギリシャに端を発する経済危機や、「ウォール街を占拠せよ」という運動の高まりから市民の目をそらすための情報操作か、とも疑いたくなります。

案の定、フィアモンガー(fear-monger、恐怖の商人)の徒輩も、この件に食いついています。彼らは、他の人たちを不安がらせて喜ぶ手合いです。自分がフィアモンガーであるという自覚はないのかも知れませんが。掲示板などで「カトラ山がもうすぐ噴火する」などといった危機感をあおるような投稿を見かけても、反応しないようにしましょう。欧米報道のタイトルにだけ条件反射して、受け売りをしているに過ぎません。記事の中身を読んだり、記事内容の裏付けを確認するなどのことを彼らに期待するのは所詮無理な話です。


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新たに 2カ所から噴火 ― カナリア諸島 (続報)


昨日の記事「新たに 2カ所から噴火 ― カナリア諸島」の続報です。その後、地震の回数が減り、新たな火山噴火もおきていないとのことです。一連の海底噴火によって、エル・イエロ島周辺にかかる圧力が減少したためと考えられています:

以下は、変色水域の写真集です。1枚目は上空から、2枚目は島の高台から撮影したものです。思っていたよりも島に近いところに変色水域が広がっています。3枚目は、専門家の手にする熱赤外線カメラに変色水域が写っています:

変色水域を撮影した動画もあります:

以下は、人工衛星から撮影された変色水域の写真です。画面左端近くに写っているエル・イエロ島の南端周辺から、南西に向かって変色水域が広がっているのがわかります。画面右下の大きな陸塊はアフリカ大陸です:

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2011年10月13日木曜日

吾妻山で火山性微動 ― 山形県・福島県 (続報)


10月6日付「吾妻山で火山性微動 ― 山形県・福島県」で、4日に吾妻山で火山性微動が観測されたことを書きましたが、その後も火山性微動が続いています。11日に発表された「第121回火山噴火予知連絡会全国の火山活動の評価」には、4日に続いて、6日と 11日にも火山性微動が発生したことが記されています:

上記資料から、吾妻山(噴火警戒レベル1、平常)に関する部分を引用します ――
  • 噴気活動はやや高い状態が続いています。
  • 2011年3月12日以降、大穴火口では、夜間に高感度カメラで明るく見える現象をたびたび観測しています。
  • 2011年6月に大穴火口内で新たに地熱の高い箇所が認められました。
  • 2011年10月4日、6日及び 11日に火山性微動が発生しました。火山性微動の発生に先立って微小な傾斜変動が観測されましたが、火山性微動の発生前後で、表面現象及び地震活動に特段の変化は認められませんでした。
  • 火山性地震は少ない状況となっています。
  • ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、火口内では火山ガスの噴出がみられるので警戒が必要です。また、風下側では、火山ガスに注意が必要です。

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