2011年10月14日金曜日

メディアが大噴火 ― アイスランド・カトラ山


10月13日付の欧米各紙はいっせいに、カトラ山の大噴火が切迫しているという記事を掲載しました。刺激的なタイトルも目立ちました。大衆紙ほどセンセーショナルなタイトル、高級紙はやや抑えめのタイトルといったところです。たとえば:

これは一大事と思ってアイスランド気象局のサイトを確認しても、カトラ山周辺の地震はふだんよりも少ない状態。地元アイスランドのニュース・サイトを見ても、それらしい記事は皆無。アイスランドの主要な英語ニュースサイトには、13日付で次のような記事が掲載されている始末です:

両サイトとも、イギリスの高級紙『ガーディアン』(中道左派)の記事を批判的に取り上げています。前者の冒頭部分を以下にテキトー訳します:
An article published in the national British newspaper, The Guardian, today, detailing the possible eruption of the Iceland volcano, Katla, is a prime example of the media over reacting, yet again.

イギリスの全国紙『ザ・ガーディアン』に本日付で掲載された記事は、アイスランドのカトラ火山の噴火の可能性について詳しく書いているが、メディアの示す過剰反応の最も良い事例である。それも 2度目の。

多くのメディアがいっせいにカトラ山の噴火の可能性について報じた背景には、どうやら、ある通信社が流した記事があるようです。各メディアの記事を比較すると、共通の文言や言い回しがでてきます。通信社の記事をそのまま、あるいは手直しして、センセーショナルなタイトルをつけたのでしょう。記事には、「火山学者」がこう言っているとか、「研究者」がこう述べているという記述があるのですが、その火山学者や研究者の具体的な名前や所属が明記されていないことが多いという特徴もあります。

カトラ山噴火についての一斉報道は、目前の不満、たとえばギリシャに端を発する経済危機や、「ウォール街を占拠せよ」という運動の高まりから市民の目をそらすための情報操作か、とも疑いたくなります。

案の定、フィアモンガー(fear-monger、恐怖の商人)の徒輩も、この件に食いついています。彼らは、他の人たちを不安がらせて喜ぶ手合いです。自分がフィアモンガーであるという自覚はないのかも知れませんが。掲示板などで「カトラ山がもうすぐ噴火する」などといった危機感をあおるような投稿を見かけても、反応しないようにしましょう。欧米報道のタイトルにだけ条件反射して、受け売りをしているに過ぎません。記事の中身を読んだり、記事内容の裏付けを確認するなどのことを彼らに期待するのは所詮無理な話です。


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