2015年9月27日日曜日

NASA: 火星についての重要な科学的発見


NASA(アメリカ航空宇宙局)が米国東部時間9月28日11時30分(日本時間29日午前0時30分)から〝a major science finding from the agency’s ongoing exploration of Mars〟(現在進行中の火星探査から得られた重要な科学的発見)について記者会見を行うと発表しました:

28日11時に科学誌〝Nature〟の最新号に掲載された論文の内容詳細が解禁されるのを待っての記者会見です。NASAの「重大発表」の予告ははこれまでも何回か経験していますが、期待はずれがほとんどでした。今回はどうでしょうか。

報道では、記者会見に臨む5人のメンバーのうち特にジョージア工科大学の Lujendra Ojha 氏(写真ホームページ)が注目されています。同氏は地球型惑星の進化を中心に研究を行っており、ホームページにも画像が掲載されている火星のRSL(Recurring Slope Lineae、斜面に繰り返し現れる線状のパターン)現象に関心を寄せています。この現象は、気温が上昇する時期にのみ低緯度から中緯度にあるクレーターの斜面に現れます。塩類を含んだ液体の水が斜面を流れ下っているという見方が大勢です。今回の記者会見で語られる「重要な科学的発見」とは、火星表面で液体の水の存在が確認されたことではないか、と推測されています。

RSLの現れる地域は、2020年以降に打ち上げられる次期火星探査車の着陸地点の候補に挙がっていますが、強い反対意見もあります。探査車を完全に滅菌する方法がない中、液体の水、そして場合によっては火星土着の生物が存在するかも知れない場所に探査車を送り込むことは地球のバクテリアによる汚染や土着生物の絶滅を招きかねないという懸念があるからです。


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2015年9月26日土曜日

地球に異常接近 ― 小惑星 2015 SK7


9月24日に発見された小惑星〝2015 SK7〟が地球に異常接近していたことが分かりました。最接近時刻は9月23日午前6時44分(日本時間、6分程度の誤差を含む)、接近距離は0.069LD(1LD=地球から月までの平均距離)で、地球表面からの高度にすると約2万kmです。気象衛星などの静止軌道は地表から約3万6000kmですから、それよりもかなり内側を通過したことになります。

この小惑星はアポロ群に属し、直径は5~10mと推定されています。最接近時の地球との相対速度は秒速13.7km(時速約4万9000km)と計算されています。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2015 SK7 5~10 9月23日 06:44 0.069


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2015年9月25日金曜日

8歳の少年が地震と津波を予測? ― アルゼンチン


アルゼンチンの8歳の少年が、9月16日(現地時間)にチリで発生した地震と津波を予知していたのでは、と話題になっています。

少年は地震と津波が起こりそうな感じがしたので「チリの津波」という題の作文を書き、先生に提出したのだそうです。題は赤色のアンダーラインが引かれていました。「チリで津波があった。ヘリコプターで救助される人もいた」という内容で、津波に襲われる家の絵が添えられていました。作文が提出されてから数時間後にチリでM8.3の大地震と津波が発生しました:

ただの偶然と考えるのが普通だと思いますが、どうでしょうか。

過去には以下のような報道もありました:

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バスケットボール・ガール


こういう話を見聞きすると涙が止まらなくなります。中国・雲南省。4歳の時に交通事故で両足を失った少女。貧しいため義足を買うことができず、祖父が古いバスケットボールを切って作ってくれたものは ・・・ とにかく写真を見てください:

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チリ大地震と異様な空


現地時間9月17日午後7時54分にチリで発生したM8.3の大地震(現地ではM8.4と報道されているようです)。この揺れの最中に撮影された動画を2本紹介します。

1本目は飛行中のドローンから撮影された魚眼映像。地平線(水平線?)に向かって収束する雲の列が写っています。夕日(残照)の位置から判断して収束点は西、つまり海の方向です。震央地図と見くらべてください。収束する雲の下(手前)には、それらと直交する2列の細長い雲も見えています:

2本目は自宅のそばで撮影されたと思われる映像。やはり収束する雲が写っています:

「地震雲」の信者は迷うことなく「おぉ、これこそ地震雲だ」と欣喜雀躍するかも知れませんね。

以前のチリ地震では以下のような報道もありました:

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小惑星 2015 SZ2 が地球接近


9月30日午後4時52分(日本時間、2分程度の誤差見込み)、小惑星〝2015 SZ2〟が地球に1.32LDまで近づきます(1LD=地球から月までの平均距離)。

この小惑星は9月12日に発見されたもので、アポロ群に属し、直径は24~53mと推定されています。

最接近時の地球との相対速度は遅く、秒速6.14km(時速約2万2000km)と計算されています。

この小惑星は地球最接近に先立って、9月30日午前3時29分(日本時間、2分程度の誤差見込み)に月に1.19LDまで接近します。

小惑星 推定直径
(m)
接近日時
(日本時間)
接近距離
(LD)
2015 SZ2 24~53 9月30日 16:52 1.32


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2015年9月24日木曜日

阿蘇山の次は富士山か?


静岡大学同大教育学部教授で同大学防災総合センター教授でもある小山真人氏(火山学、地震・火山防災)の解説記事です(長文)。 「富士山の観測データは、(中略)今日に至るまで顕著な異常を示さず、火山活動は静穏なままである」、 「そもそも火山の『活動期』の存在は、広く学界に認められたものではない」、 「日本列島の火山活動が活発化しているように見えるのは、2014年9月の御嶽山噴火災害によって火山に注目が集まり、報道の数が圧倒的に増えていることと、火山の異常に対する気象庁の対応もやや過敏となっていることによる効果が大きい」:

記事の末尾にある「各火山の噴火警戒レベルの推移」の図は面白いです。東北地方太平洋沖地震の前後で噴火警戒レベルがどのように変化したのかを比較していますが、実は「3.11地震後も大してレベル変化がなかったが、2014年9月の御嶽山噴火災害の後にレベルが増大した火山が多い」。

報道でさかんに採り上げられることによって、ある現象が普通以上に頻発しているように感じられることはこれまでにもありました ―― ダイオウイカの漂着や捕獲、空からオタマジャクシが降ってくる現象、などなど。


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次は福島沖~房総沖など ― 地震解析ラボ


電気通信大学名誉教授・日本地震予知学会会長の早川正士氏が主宰する地震解析ラボのこれまでの実績と今後の予測を紹介している記事です:

早川氏の予測は、電離層の高度が地震前に低下することを利用するものです。

今後の予測をまとめると以下のとおり。ただし「予測期間中は、複数回にわたって地震が発生する恐れがあり、予測時期と実際の発生日が数日ずれることもある」:
  1. 9月26日まで、内陸部分を含む福島沖から房総沖、内陸でM5・0前後、海底でM5・5前後、最大震度4程度

  2. 9月26日まで、駿河湾から遠州灘(静岡から愛知)、内陸でM5・0前後、海底でM5・5前後、最大震度4程度

  3. 9月26日まで、新潟から岐阜、内陸でM5・5前後、最大震度4程度

  4. 9月27日まで、大阪から徳島にかけて、内陸、海底ともにM5・0前後、最大震度4程度

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クジラが迷い込む ― 青森県八戸市


9月22日、青森県八戸市鮫町の種差海岸(たねさしかいがん、地図)の岩場にクジラが迷い込んでいるのが見つかりましたが、翌23日には死亡が確認されました。「クジラは体の不調で方向感覚を失ったり、体力がなくなったりした時に海岸などに迷い込む」(県営浅虫水族館):

なお、9月11日には大阪府岬町(地図)沖でザトウクジラとみられるクジラが、17日には福岡県の北九州空港(地図)沖で体長約8mのクジラが死んでいるのが見つかっています:
  • 大阪湾で体長10mクジラ死ぬ…ザトウクジラか
  • 北九州空港沖のクジラについては掲載が『毎日新聞』のため登録者以外は読めません。グーグルの検索結果から引用 ―― 体長約8メートルのクジラの死骸が17日、北九州空港沖で見つかった。瀬戸内海では珍しい。船の航行に支障を来すため同日夜に苅田海上保安署の巡視艇と町漁協の漁船が苅田港沿岸まで引っ張った。(以下略)

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マウナ・ロア山の警戒レベル上昇 ― ハワイ


ハワイ島最大の火山であるマウナ・ロア地図)は31年間にわたって静穏な状態が続いていましたが、9月17日、噴火警戒レベルが〝NORMAL〟から〝ADVISORY〟(注意報)に、航空コードが〝GREEN〟から〝YELLOW〟に引き上げられました。山頂部や南西に伸びる地溝帯の上部(upper Southwest Rift Zone)、さらに西側の山麓で浅い地震の頻度が上がっていること、それに伴って浅部マグマ溜まりが膨張していることを示すと考えられる地殻変動が観測されていることがレベル引き上げの理由です:

今回観測されている浅部地震の増加や地殻変動は、1975年と1984年の噴火の前にも見られたとのこと。米国地質調査所(USGS)傘下のハワイ火山観測所(HVO)は、警戒レベルの引き上げは直ちに噴火が起きることを意味しているわけではないとしています。

噴火が発生すれば、粘性の低い熔岩が山頂から東北東方向に伸びる地溝帯に沿って流れ下り、ハワイ島の中心都市ヒロ地図)に達することが心配されています。1881年には実際に熔岩がヒロに到達しています。


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2015年9月22日火曜日

国際地学オリンピック


高校生のための地学コンペティション・第9回国際地学オリンピック(International Earth Science Olympiad; IESO)がブラジルで開かれ、日本から参加した4人全員がメダルを獲得したとのこと(金1、銀1、銅2)です。英語の名称からすると「国際地球科学オリンピック」の方が適切ではないかと思います:

参加したのは22の国と地域から85人。金・銀・銅のメダルは、それぞれ参加者の約10%、約20%、約30%に与えられるとのことですので、参加者の6割前後がメダルを手にすることになります。

過去の問題は以下のページで見ることができます。第3回大会までは実技試験もあったようです:

以下は問題のサンプルです。去年のスペイン大会のものですが、火星探査車キュリオシティに関連した問題が28問も出題されています。その中から比較的容易な問題を一つ:
もし火星にプレートテクトニクスが存在するとしたら、火星の表面に認められると予想される地形は次のうちのどれですか。

a)山脈 b)古いテレーン c)細長い沈降帯(地溝)
d)断層が存在しないこと e)火山帯

もう一つ、同じく去年の出題ですが、チャールズ・ダーウィンの世界周航に関連した26問の中から:

Credit: International Geoscience Education Organization、
NPO法人地学オリンピック日本委員会 (クリックで拡大)

来年の大会は日本の三重県で開かれます。良い成績を期待しています。


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2015年9月21日月曜日

チリ大地震 → 日本大地震


9月17日(現地時間では16日)、チリでM8.3の大地震が発生し日本にも津波が到達しましたが、チリではこの地震の前に火山の激しい噴火やクジラの集団座礁が起きていました:

以下の記事は、「チリでM8以上の巨大地震が発生すると、必ずといっていいほど日本付近で大地震が発生することが過去の研究から判明」しており、「平均すると、チリの地震から4年前後で巨大地震が日本付近を襲っている」という琉球大名誉教授・木村政昭氏の話を紹介しています:

米国地質調査所(USGS)のサイトで検索すると、チリでは過去100年間にM8.0以上の地震が11回発生しています。以下の表はそれら11回の地震と、その後に日本で発生した主な大地震をまとめたものです。チリ側の地震発生年月日は協定世界時(UTC)、日本側は日本標準時(JST)です。日本側の地震は原則としてM7.0以上のものを理科年表と気象庁の被害地震リストから拾い出しましたが、M7.0未満でも被害が大きかった地震も含んでいます:

チリ 日付/M 日本
1922-11-11 M8.3 22-12-08 島原(千々石湾)地震 M6.9+M6.5
23-09-01 関東地震(関東大震災) M7.9
24-01-15 丹沢地震 M7.3
25-05-23 但馬地震 M6.8
27-03-07 北丹後地震 M7.3
30-11-26 北伊豆地震 7.3
31-09-21 西埼玉地震 M6.9
31-11-02 日向灘 M7.1
1943-04-06 M8.1 43-09-10 鳥取地震 M7.2
44-12-07 東南海地震 M7.9
45-01-13 三河地震 M6.8
45-02-10 青森県東方沖 M7.1
46-12-21 南海地震 M8.0
47-09-27 与那国島近海 M7.4
48-06-28 福井地震 M7.1
1950-12-09 M8.2 52-03-04 十勝沖地震 M8.2
52-03-07 大聖寺沖地震 M6.5
52-07-18 吉野地震 M6.7
52-11-05 カムチャツカ半島沖 Mw9.0
53-11-26 房総沖地震 M7.4
58-11-07 エトロフ島付近 M8.1
1960-05-21 M8.1
1960-05-22 M8.6
1960-05-22 M9.6
61-02-27 日向灘 M7.0
61-08-12 釧路沖 M7.2
61-08-19 北美濃地震 M7.0
62-04-23 十勝沖 M7.1
63-03-27 越前岬沖地震 M6.9
63-10-13 エトロフ島付近 M8.1
64-06-16 新潟地震 M7.5
68-04-01 日向灘地震 M7.5
68-05-16 十勝沖地震 M7.9
1985-03-03 M8.0 93-01-15 釧路沖地震 M7.5
93-07-12 北海道南西沖地震 M7.8
94-10-04 北海道東方沖地震 M8.2
94-12-28 三陸はるか沖地震 M7.6
95-01-17 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) M7.3
1995-07-30 M8.0 00-10-06 鳥取県西部地震 M7.3
01-03-24 芸予地震 M6.7
03-05-26 宮城県沖 M7.1
03-09-26 十勝沖地震 M8.0
04-10-23 新潟県中越地震 M6.8
05-03-20 福岡県西方沖 M7.0
05-08-16 宮城県沖 M7.2
2010-02-27 M8.8 (10-02-27 沖縄本島近海 M7.2)
11-03-09 三陸沖 M7.3
11-03-11 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) M9.0
11-04-07 宮城県沖 M7.2
11-04-11 福島県浜通り M7.0
12-12-07 三陸沖 M7.3
13-10-26 福島県沖 M7.1
2014-04-01 M8.2 14-07-12 福島県沖 M7.0
14-11-22 長野県北部 M6.7
15-05-30 小笠原諸島西方沖 M8.1
2015-09-16 M8.3 これから発生?
(注)2010年2月27日の「沖縄本島近海 M7.2」は、チリのM8.8より約10時間先行して発生。

大雑把な傾向として、日本周辺のプレート境界型の大地震は、チリの大地震から数年以内に発生しているということがあるように見受けられます。例えば、関東大地震は294日後、東南海地震は611日後、東北地方太平洋沖地震は377日後に発生しています。


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2015年9月20日日曜日

終末の雲? ― コスタリカ


中米コスタリカ(地図)で9月15日に目撃された異様ですが美しい雲です:

積雲や積乱雲の雲頂部にできるベールのような頭巾雲に背後から太陽光線が当たることによって、彩雲のように虹色に見えているのだそうです。


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2015年9月19日土曜日

冥王星の新しい画像 (続報)


「峨峨」という形容がぴったりの山々、凍った窒素の流れる氷河、何層にも重なる靄。最初の3枚の写真は、ニュー・ホライズンズが冥王星を通りすぎてから撮影したものです。太陽が冥王星の背後にあるため、これまでの画像とは違った雰囲気があります:

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2015年9月18日金曜日

児童の暴力行為急増 ― 和歌山県


和歌山県内の公立小学校で児童の暴力行為が急増しています。14年度は前年の約2倍。一方、中学では減少傾向、高校は微増:


増加は社会的な要因によるものだと思われますが、人間も動物の端くれですから、大地震前には落ち着きをなくしたり攻撃的になったりすることがあるかも知れません。特に幼いほど動物に近い反応があるのやも。


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ラドンとトロンで地震予知? ― 韓国


韓国・慶尚北道蔚珍郡(地図)で「東日本大震災発生の1か月前から15日間、ラドンとトロンの数値が同時に急上昇」、「ラドンと(半減期の短い)トロンを同時に測定することで、地震の前兆現象だけを明確に見分けることが可能」:

トロンはラドンの放射性同位元素で半減期は55.5秒(資料によって若干の差あり):

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阿蘇山あり


桜島や箱根山の噴火警戒レベルが9月1日と11日に引き下げられたと思ったら、14日には阿蘇山が噴火して警戒レベルが「3(入山規制)」に引き上げられました:

この阿蘇山は、海外に伝えられた最初の日本の火山ではないでしょうか。中国の正史『隋書』は倭国(俀國)の風土・習俗などを記述したあと唐突に次のような文言を記載しています:
阿蘇山あり。その石、故なくして火起こり天に接する者、俗以て異となし、因って祷祭を行う。(『新訂 魏志倭人伝 他三篇 ― 中国正史日本伝(1)―』、石原道博、岩波文庫、1994)

富士山でもなければ、飛鳥・大和に向かう途中で必ず目にしたであろう世界最大の墳墓・大仙陵古墳(宮内庁によれば仁徳天皇陵)などでもなく、九州の阿蘇山を特筆したのはなぜでしょうか。隋帝国の領域には活火山がなかったため特に珍しかったということもあるかも知れませんが、これは隋と交流があった倭国が九州にあったことを示しているのかも知れません。

『隋書』は、倭国王が「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙なきや」という国書を送って隋の皇帝を怒らせたという故事が載っていることで有名です。定説ではこの国書を送ったのは大和朝廷の推古天皇や聖徳太子だということになっていますが、様々な矛盾や疑問点が指摘されています(例えば、推古天皇は女帝であるのに、倭国王には妻があり、「後宮に女六、七百人あり」と書かれていることなど)。

ここから九州王朝説に話が飛びます。

中国側の歴史書には、日本列島の支配権が倭国から日本へ移ったと受け取れる記述があります。

『隋書』の次の『旧唐書』では倭国と日本が別々に記述されています。倭国については「古(いにしえ)の倭奴国なり」とする一方、日本については「倭国の別種なり」と述べ、さらに「或いは云う、『日本、旧(ふる)くは小国なれども、倭国の地を合わせたり』」、つまり、小国だった日本が倭国を併合したと言う者もいると記しています。

唐側は日本からの使者の説明に納得していなかったようで、使者について「多くは自ら大を矜(ほこ)り、実を以て対(こた)えず。故に中国は焉(これ)を疑う」と書いています。

『旧唐書』に続く『新唐書』では、倭国に関する独立した記述は消えて日本に一本化され、「日本は、古の倭奴なり」として、神武から光孝に至る天皇の系譜を載せています。

以降の中国の正史も全て、日本または日本国として記述しています。

九州王朝説とは ―― 大和朝廷に先行して九州には卑弥呼の邪馬台国に連なる王朝が存在し日本列島の支配者として君臨していた。古くから中国に使者を送っており、中国側の歴史書に記録された倭国はこの九州王朝である。朝鮮半島への出兵を繰り返していたが663年の白村江の戦いで唐・新羅連合軍に大敗して衰退し、700年ごろに日本列島の支配権は近畿の大和朝廷に移った。大和朝廷は九州王朝の歴史を取り込んで太古より列島の支配者であったかのように自己の歴史を捏造した ―― というもので、最初に唱えたのは古田武彦氏です。学会からは無視されたり異端視されたりしていますが、日本列島の支配者は初めから近畿王家であるという定説にみられる様々な矛盾やモヤモヤをスッキリさせてくれる説です。

九州王朝説は古田氏以降、様々な人が修正したり自説を加えるなどして変化し様々なバリエーションができています。根拠の希薄な主張も加えられたりした結果、現時点でウィキペディアに見られる解説などは古田氏のオリジナルからはかなりかけ離れています。古田氏の九州王朝説を正確かつ簡潔にまとめたものとして、以下を紹介します:

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2015年9月17日木曜日

魚類の整列現象


宏観現象画像掲示板」から:

Credit: 「六」氏、宏観現象画像掲示板

この掲示板はいわゆる「地震雲」マニアの巣窟で、単なる雲の写真集のような状態になっており、ふだん見ることはないのですが、今日たまたま開いたところ上掲の投稿が目にとまりました。こういう貴重な情報が増えてほしいものです。

地震の前、なぜ動物は騒ぐのか 電磁気地震学の誕生』(池谷元伺、NHKブックス、1998)には、魚類の整列現象について次のような説明があります:
(魚類の)筋繊維の電気抵抗は、電場が筋繊維に平行では小さく、垂直で7~10倍大きい。このため、多くの動物は体内電流を少なくなる方向に、筋繊維が垂直になるよう並ぶ。または、仲間の陰に隠れる。

写真の鯛の向きが揃っているのは、偶然かも知れませんし人為的な電場やその他の刺激に反応しているのかも知れません。地震の前兆と即断できないのが残念なところです。


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霧島山(御鉢)で火山性地震増加


9月15日、霧島山の御鉢火口(地図)直下を震源とする火山性地震が増加しました。「火山性地震の回数が1日あたり20回以上となったのは、2010年5月2日の21回以来」とのことです:

霧島連山では、えびの高原硫黄山、韓国岳、新燃岳、御鉢が北西から南東に向かってほぼ直線状に並んでいます。

新燃岳は2008年ごろから火山活動が活発化し爆発的噴火を繰り返しましたが、東北地方太平洋沖地震の半年後に発生した小噴火を最後に沈静化しました。

韓国岳では2014年に火山性微動や地殻変動が観測されました:

最近は、えびの高原の硫黄山で火山性微動や傾斜変動がしばしば観測されています:

御鉢では2003年以降、たびたび火山性微動が観測されています。最後に噴火したのは1923年7月ですが、9月には関東大地震(関東大震災)が発生しています。また、1706年1月に噴火(宝永噴火)した際には、その翌年に南海トラフのほぼ全域が震源域となった宝永大地震(M8.4~9.3)が発生、さらにその49日後には富士山が噴火しています(宝永大噴火)。

今回火山性地震が増加した御鉢火口は、坂本龍馬が妻のおりょうを伴って霧島山に登り天の逆矛を見物しようとした際にその縁を歩いたとされています:

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2015年9月14日月曜日

東京湾の地震は予知されていた? (続報)


JESEAの村井俊治・東大名誉教授がおこなっているGPSデータにもとづく地震予測については、以下のような批判が出ています。GPSデータの誤差やノイズを地震の前兆と見なしている、日本でふだんから地震が起きている地域をほとんど全部カバーする広い警戒ゾーンと長い予測期間 ― これでは当たって当たり前だ、という内容です:

横浜地球物理学研究所は個人で営まれている「研究所」ですが、上記の島村英紀氏の批判記事について以下のようなツイートを流しています。確かに似ている部分があります:
すみません、気のせいかも知れませんが、この島村英紀先生が寄稿された記事、わたしのブログの内容を写してませんか…? まあ、内容は間違ってないですし良いのですが。

「当たって当たり前?「MEGA地震予測」を科学的にどう見るか」
http://blogos.com/article/133578/ 

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2015年9月13日日曜日

弥陀ヶ原 噴火していた可能性 ― 富山県


立山連峰の弥陀ヶ原(地図)は1836年(天保7年)の水蒸気噴火以降は明確な噴火の記録がありませんが、1998年(平成10年)から2006年(平成18年)の間に噴火していた可能性のあることが分かりました:

気象庁の「弥陀ヶ原 有史以降の火山活動」には、2006年12月に噴煙活動が活発化したことが記録されています。また、その約4ヶ月後の2007年3月25日には、「平成19年(2007年)能登半島地震」(M6.9、最大震度6強)が発生しています。


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2015年9月12日土曜日

東京湾の地震は予知されていた?


今朝5時49分ごろに東京湾で発生した M5.3、深さ約70km、最大震度5弱の地震について、JESEAの村井俊治・東大名誉教授のツイートから:

以下は村井名誉教授に関するこのブログの記事です:

一方、「地震予知できない」派のロバート・ゲラー東大教授(地震学)は:

ゲラー教授が「某地震予知いかさま師」というときは八ヶ岳南麓天文台の串田氏を意味していることが多いのですが、今回は「・・・たちのみな」とありますので、不特定多数を指しているようです。


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冥王星の新しい画像


冥王星(および太陽系外縁天体)探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星と衛星カロンに接近した際の画像を、NASAが新たに公開しています:

冥王星なんてどうせクレーターだらけか氷に覆われただけの面白みのない世界だろうという予想は見事に裏切られました。これまで探査機が接近もしくは着陸したどの天体とも異なる姿をしています。

ニュー・ホライズンズは、冥王星接近時に取得した観測データや画像を今後約1年をかけて地球に送ってくることになっています。地球から数十億km離れた同探査機が地球に情報を送るスピードは、NASAの〝Launch Press Kit January 2006〟(PDF形式)によれば毎秒約700ビット、上掲の『産経ニュース』によれば「4KB/秒以下」ですから、長期間を要するのは致し方ありません。初期のパソコン通信なみの通信速度です。情報を全部送りきる前にニュー・ホライズンズが故障しませんように。


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ネパールの地震とプレートテクトニクス


4月25日にネパールで発生したM7.8の大地震(USGS資料)は、死者が9000人(注)を越える大きな被害をもたらしました。この地震がどのような地殻変動をもたらしたのか、4月17日から29日の間に人工衛星から観測したデータにもとづいて作成した変動地図を、NASAが公開しています。図の上が北で、赤い部分が隆起した領域、青い部分が沈降した領域を示しています:

このNASAの地図について、地質学者の Chris Rowan 博士が自身のブログでわかりやすく解説しています。博士は、構造地質学、大陸の変形、古地磁気学を専門としています:

博士によれば、他の情報、たとえば地質学的な断面図や地震のメカニズム解などがなくても、このNASAの図だけで、北に向かって浅い角度で傾斜している衝上断層で大規模な破壊が起きたことが明らかなのだそうです。

以下に博士の解説をまとめます。説明図では右が北、左が南です。

地震発生前

地震発生前の地殻変動 Credit: Dr. Chris Rowan

  1. プレートの動きによる力が、インド・プレートを絶えず北に向かって押し、ユーラシア・プレートの下にもぐり込ませている。

  2. 両プレートの接触部分は北に向かって緩やかに傾斜する断層帯で、深さ15~20kmまでは摩擦によって固着している(図の黄色の部分)。

  3. 下側のインド・プレートの移動にともなって、上にかぶさっているユーラシア・プレートの地殻は北向きかつ下向きに引っ張られる。これによって、断層面が固着している部分の上の地面は沈降することになる。

  4. もっと北の領域では、この効果は見られなくなる。断層面が深くなると温度が上昇するので断層面の固着が弱まる。そのため、この領域では地面を下に向かって引き込む力はなくなる。その一方で、南のインド・プレートと北のユーラシア・プレートから圧縮する力を受けているので、地面は押し上げられる。

地震発生後

地震発生後の地殻変動 Credit: Dr. Chris Rowan

  1. 断層帯に蓄積された歪みが十分に大きくなって摩擦に打ち勝つと、断層の破壊が起こり地震が発生する。

  2. 地震前に生じていた隆起や沈降の地殻変動は、その大部分が弾性変形によるものであるので、加わっていた力がなくなると跳ね返って元の形にもどる。

  3. 断層の固着によって下向きに引かれ沈降していた領域は隆起し、両プレートから圧縮する力を受けて隆起していた領域は沈降する。

以下の図は、最近1年間の東北地方の垂直方向の地殻変動を示しています。2011年の東北地方太平洋沖地震の余効変動が現在も続いています。赤い矢印が隆起を、青い矢印が沈降を示しています。ネパールの隆起・沈降のパターンと非常によく似ています:

国土地理院「最新の地殻変動情報」より

(注) 死者数は5月12日に発生したM7.3の地震による死者を含んでいる可能性があります。


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2015年9月11日金曜日

準惑星ケレスに謎の輝点 (続報-4)


準惑星ケレスの謎の輝点を撮影した新たな画像が公開されました。これまでで最も高い解像度です。これまでの画像では都市の夜景のように見えていた輝点群ですが、今回の解像度では、何らかの物質が噴き出した(あるいは今現在も噴き出している)場所のように見えます。輝点群がある Occator クレーターには靄のようなものが漂っているのが観測されていますので、輝点の正体は大規模な噴泉塔のようなものかも知れません:

右上の輝点群に囲まれるようにして直線と円弧で構成されたサーキットのようなものが見えます。


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2015年9月9日水曜日

晴れと雨の境目


子どものころ、晴れているところと雨が降っているところの境目はどうなっているのかということに興味を持った時期がありました。そして、実際にそれを目撃したのは夏休みに母の実家に行った時のことでした。少し離れた水田には夕立が降っているのに自分のいるところは晴れていたのです。妙にワクワクした記憶があります。

以下は、9月4日に東京都心に激しい雨が降った時の様子をヘリコプターから撮影した写真集です。晴れと雨の境目が写っています。1枚目や6枚目の写真では、住宅地が滝壺の中に入ったような状態になっています:

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天然炭酸水の井戸、涸れる ― 福島県金山町


福島県金山町(地図)にある天然炭酸水が涌く井戸で、水のない状態が続いています。「異変が表れたのは6月中旬だった。井戸の深さは約4メートル。例年、雨の少ない夏場になると水位は水深1メートル程度まで下がるが、それを超えて日々減り続けた」、「こんなことは初めてだ」:

原因としては、夏の雨量が少なかったこと、観光客が増えたために汲み上げる量が増えたこと、などが考えられているようです。


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2015年9月8日火曜日

9月15日~28日に小惑星が衝突する?


私は知らなかったのですが、9月15日から28日の間にプエルト・リコ(地図)の近くに小惑星が衝突し、大西洋とメキシコ湾に面しているアメリカ、メキシコ、中南米諸国に甚大な被害をもたらすという風説がネット上に流れているようです。NASAが否定する声明を出しています:

NASA曰く、「小惑星あるいはその他の天体が、その日付に地球に衝突するという話には、一片の証拠もなく科学的根拠は全くありません」、「予見可能な将来に地球に衝突する小惑星あるいは彗星はありません」、「既知の〝地球にとって潜在的脅威となる小惑星〟が、今後100年間に地球に衝突する確率は 0.01%未満です」、「もし言われているような規模の破壊をもたらす天体が存在するとすれば、すでにわれわれの観測網が何らかの兆候をつかんでいるはずです」。

さらにNASA曰く、「このような、天体が地球に間もなく衝突するぞという突飛で根も葉もない主張が広まるのは今回が初めてではありませんし、残念ながら今回が最後というわけにもいかないでしょう。ネット上で毎年繰り返されるお決まりの騒ぎです」、「2011年には〝最後の審判〟の彗星と呼ばれたエレニン彗星についての噂が広まりましたが、この彗星は地球に何の影響を及ぼすこともなく、宇宙空間でバラバラになり、小さな破片の群れになってしまいました」、「2012年12月21日にはマヤの暦が終わることから、大きな小惑星が衝突してこの世の終わりが来るという主張がなされました」、「今年も、小惑星〝2004 BL86〟と〝2014 YB35〟が危険なほど地球に接近すると騒がれましたが、それらの小惑星はそれぞれ1月と3月に、NASAの予報どおりに何ごともなく通りすぎて行きました」。

少し考えてみれば分かることですが、9月15日から28日という大雑把な衝突予測を以て、衝突地点がプエルト・リコ近傍と予測できるはずがありません。地球は24時間で1回転しているのですから、衝突時刻が1時間ずれれば地球は15°回転して衝突地点も大きくずれてしまいます。


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バスク人の系統判明


スペインとフランスの国境となっているピレネー山脈。その西端部のバスク地方(地図)に居住するバスク人は系統不明の民族とされ、その言語はヨーロッパのいかなる言語とも類縁関係がないとされています。そのため、バスク人はアトランティス文明を築いた人々の直系の子孫で、アトランティス大陸が大西洋に没したため、バスク地方に移り住んだのだ、という説が出されたこともあります。

このほど、そのようなバスク人の由来を解き明かしたとする論文が発表されたそうです:

上記記事によると ――
バスク人は狩猟民と農耕民が混合した集団の子孫で、数千年にわたって他の集団から孤立してきた。スペイン北部の El Portalón(地図)で発掘された3500年前から5000年前の石器時代に属する頭骨のゲノム(遺伝情報)を解析した結果、これらの頭骨は現代バスク人の祖先にあたるものであることが判明。この祖先は「先住民」であって他地域からの植民者ではない。別の言い方をすれば、彼らは中近東に淵源を持ち、7000年前にスペインに定住した。

バスク人が長期間にわたって他の民族から孤立していた理由ははっきりしないが、地理的な要因と文化的な要因が関係していたとみられる。ヨーロッパ中にインド・ヨーロッパ語族の言語を広めた植民者たちとは明確に異なっていた。さらに、西暦711年にアラブ人がイベリア半島を征服したときにもバスク人には影響が及ばなかった。

われわれ日本人にとってバスク人はなじみが薄いかも知れません。しかし、日本人の間でも知名度の高いバスク人がいます。なんと言っても、知名度の筆頭はフランシスコ・ザビエルでしょう。さらに、南米大陸の5ヵ国をスペインからの独立に導いたシモン・ボリバル。彼の名前はボリビアという国名にもなっており、ベネズエラ、コロンビア、ボリビア、ペルーの大統領を歴任しています。また、バレエ音楽「ボレロ」や「ダフニスとクロエ」の作曲者モーリス・ラベルはバスク系フランス人です。

さらに付け加えるならば、ベレー帽はバスク地方が発祥地です。キューバ革命に携わったチェ・ゲバラは父親がバスク系で、バスク・ベレーを愛用していました。彼の有名な写真もベレー帽をかぶった姿です。


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