2009年12月30日水曜日

スフリエヒルズ山の噴煙が定期航空便に影響

カリブ海・英領モントセラト島にある火山スフリエヒルズ山は以前から活発な活動を続けていましたが、29日、定期航空路の飛行に影響を与える事態をおこしています:
モントセラト島とスフリエヒルズ山の位置は以下の地図で確認できます:
以下は、NASA の Aqua 衛星搭載の MODIS(中分解能撮像分光放射計)が捉えた噴煙の様子です。右上の「Resolutions:」と書かれているところで、3種類の解像度を選択することができます:

「体感」 噴火予知

フィリピンでは、マヨン山の火山活動が活発化し、周辺住民の避難生活が続いています。そんな中、この火山の噴火を傷の痛みで予知できるという高齢の女性の存在を、フィリピンの新聞が伝えています:
以下は、記事の要約です:
「ローラ・マヨン」として知られるベロニカ・ペレスさん、76歳。1993年、森の中で根菜類を集めているときに、高温の熱風に全身が包まれるのを感じた。溶岩によって四肢や背中に大やけどを負ったのである。さいわい、すぐに病院で治療を受けることができたので、一命はとりとめた。

この出来事が彼女の人生を変えた。彼女の背中には、ドーム状に盛り上がった傷が残った。これがほんのわずかでも痛むとき、マヨン山は噴火するのだという。それまでは「ローラ・ベル」(ベルはベロニカの略)と通称されていたが、「ローラ・マヨン」と呼ばれるようになった。この新しい名前は、彼女の能力がいかに多くの人たちの注目を集めたかを如実に物語っている。

「ここに避難してくる 1週間前、背中の古傷がひどく痛みました。私は家族に、マヨン山が噴火するかも知れないと告げました。」

彼女は、2004年、2006年、そして今年の噴火も背中の古傷の痛みによって予知し的中した、と語っている。

ローラ・マヨンの「予知」したことは、火山の専門家が記録したこととそれなりに一致している。

ローラ・マヨンは、自分の能力を使うことに消極的になっている。それは、冷笑やあざけりをこれまで何度も経験しているからである。「みんな、私のことを笑います。私が年をとって物忘れがひどくなっていると言うのです。」

「以前は、背中の古傷が痛むといつも人びとに伝えていました。でも今は、自分の子どもたちだけにしか話しません。それでも、家族以外の人たちにもある程度は伝わるようです。海外からも私をインタビューしに何人かがやって来たことがあります。日本からと、ベトナムからです。私の話は、アメリカにも伝わっていると聞いたことがあります。なぜだかはわかりませんが。」

隣人の一人は、彼女の「予知」を信じているが、彼女の能力を盲信しているわけではないと言っている。「俺は彼女のことをおおよそ 50% 信じている。火山の噴火は自然が決めること。自然は説明できない。火山学者たちを見てみろ。連中は精密な観測装置を持っているが、いつ噴火するのかを正確に言い当てることができないじゃないか。」

見かけは弱々しいが快活な女性であるローラ・マヨンは、「火山噴火について警告して人びとを助けたいという熱意は、人びとが彼女を信じてくれないために、しばしば誤解される」とこぼす。

彼女は、火山を恐れていない。なぜなら、救い主がいつも彼女を守ってくれていると信じているから。「身に危険が迫ったときには、ただひたすら“Salvador del Mundo, Salva me, Salva ran man ako, ikaw”(*)と唱えるのです。」

(*)スペイン語とタガログ語の混合? 少なくとも“Salvador del Mundo”は、スペイン語で「世界の救い主」の意。
いわゆる「体感」にもとづく地震や噴火の予知についての私の考えは、過去の「体の痛みで地震予知」という記事にも書きましたので繰り返しません。そちらをご覧いただければ幸いです。


過去の関連記事

世界の自然災害、2009年は少なめ

実感とは必ずしも一致しませんが、2009年におきた自然災害による被害は比較的少なめだったそうです:
「大きな災害が少なかったことや北大西洋のハリケーンシーズンが穏やかだったこと」が理由として考えられるとのことです。自然災害で亡くなった人数は約 1万人で、これまでの平均 7万 5千人を大きく下回っているそうです。最大の死者数を出したのは、9月にインドネシアで発生した M7.6 の地震で、約 1200人が亡くなったとのことです。

アシカの群が姿を消す ― サンフランシスコ

サンフランシスコ市のピア 39(39番埠頭)に居着いていたアシカ(sea lions)の大群が、急に姿を消してしまいました:
39番埠頭に最初のアシカが現れたのは、1989年のロマ・プリータ大地震の直後でした。その後、徐々に数を増やし、今年 10月下旬には 1700頭余りに達していました。アシカの出現当初は、埠頭の使用の妨げになり、また悪臭が周辺のレストランや土産物店の営業に悪影響を及ぼすということで、追い払うことが試みられましたが、うまくいきませんでした。その後は、アシカとの共存を目指すさまざまな方策がとられ、ピア 39のアシカの群はサンフランシスコ市にとって大きな観光資源となっていました。来年 1月にはアシカの群の出現 20周年を記念するイベントが催されることになっていましたが、先行きが怪しくなっています。

原因としては、温暖化や海流の変化によるエサ不足ではないかとの説が出されています。しかし、大地震の直後に出現した動物の群が姿を消すということは、地震との関連がどうしても頭をよぎります。サンフランシスコ市は、サンアンドレアス断層かその支脈の活動による大地震にいつ襲われてもおかしくないと言われています。

冥王星までの中間点を通過

冥王星探査機・ニュー・ホライズンズが、12月 29日に地球と冥王星の中間点を通過しました。この日以降、地球よりも冥王星の方が、ニュー・ホライズンズに近くなりました:
ニュー・ホライズンズは 2006年 1月に、太陽系最外縁の「惑星」である冥王星を目指して打ち上げられましたが、同じ年の 8月に開かれた国際天文学連合(IAU)の総会で、冥王星は「準惑星」(dwarf planet)に格下げされてしまいました。「格下げ」と後ろ向きに考えるよりは、新たに設けられた準惑星というグループの代表格になったと理解すれば良いのかも知れません。「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉もあることですので。

以下の写真は、ニュー・ホライズンズが木星の重力を利用して加速するために木星系に近づいた時に撮影されたもので、木星の衛星が 2つ写っています。右上がイオで活火山の噴火が捉えられています。左下がエウロパで、氷の表面の下に海洋があり、ひょっとしたら何らかの生命が存在しているのでは、と言われている天体です:
ニュー・ホライズンズが冥王星系に到達するのは 2015年になります。冥王星を通過した後は、カイパー・ベルトの調査に向かうことになっています。

以下は、ニュー・ホライズンズのプロジェクト・チームが発信しているツイッターのメッセージです:

2009年12月29日火曜日

リダウト山に再活発化の兆し

アラスカのリダウト山は、今年前半、噴火を繰り返しました(下記「過去の関連記事」参照)。噴煙が定期航空路に危険を及ぼし、泥流が麓の石油基地にせまるなど、大きな影響が出ました。その後は、山頂に溶岩ドームを形成し、噴火活動は沈静化していました。

しかし、再び活発化する兆しが現れました。日本時間の 12月 28日午前から山頂付近で微小な地震がおきるようになり、アラスカ火山観測所(AVO)は、航空機に対する警戒レベルをイエローに引き上げています。山頂部の微小な地震は、新たな噴火活動の前兆である可能性があり、また、山頂の溶岩ドームの不安定化も懸念されるとのことです。

以下は報道記事の例です:

過去の関連記事

2009年12月28日月曜日

スマトラ島沖大地震と超強磁場中性子星の巨大フレア

テレビや新聞等で報道されているように、2004年 12月 26日に発生したスマトラ島沖大地震(M9.1 ~ 9.3)とそれに伴うインド洋大津波の発生から 5年が経過し、各国で犠牲者を悼む催しが行われました。この災害では、日本人も数十人が犠牲になっています。

この大災害直後の 12月 27日から 28日にかけて、地球が天文学的な大嵐に襲われたことを記憶している方は少ないと思います。超強磁場中性子星(マグネターSGR 1806-20 の巨大フレアが送り出した、観測史上最大強度の宇宙ガンマ線やエックス線が地球に到達したのです。SGR 1806-20 は、地球から「いて座」の方向に 5万光年離れたところにあり、銀河系中心を挟んで太陽系の反対側に位置する天体です。飛来したガンマ線の強度があまりにも強かったため、軌道上の観測装置のほとんどは飽和するか故障する事態になりました。また、地球の大気上層部も電離し、地球の磁場が大きく変動しました:
当時のことをふり返って、もしスマトラ島沖大地震と観測史上最強の宇宙ガンマ線飛来の前後関係が逆だったらと考えると、実にイヤな気分になります。疑似科学やトンデモ説をもてあそぶ人たちに、格好の材料を与えることになったであろうと思うからです。そして、太陽面でフレアが発生したり、地球の磁気圏が乱れたりするたびに、そのような人たちが「地震が起こるゾ」と大騒ぎする様子が目に浮かびます。当時も、時差の関係などを持ちだして、大地震と宇宙ガンマ線の前後関係を何とか逆転させ、無理矢理、宇宙ガンマ線を大地震の原因に仕立て上げようとする人たちがいたものです。

2009年12月27日日曜日

沖縄地方の今年の地震

沖縄気象台が 12月 22日付で以下の文書を公開しています。今年の沖縄地方の気象と地震の傾向をまとめたものです:
地震については、「沖縄地方とその周辺で観測された地震は、9,852 回(前年 5791回)であった(12月 19日現在)。また、沖縄気象台管内で震度 1以上を観測した地震は、77 回(前年 59回)で、震度 3以上を観測した地震は、6回(前年 5回)であった」とのことです。

マヨン山の地震回数が減少

フィリピンのマヨン山周辺では、金曜日から土曜日にかけて、火山性の地震が減少しています:
避難所暮らしを強いられている周辺住民は、このまま火山活動が沈静化に向かってくれれば、との思いが強いようですが、専門家の見解は逆です。地震回数の減少は、より大規模な爆発的噴火の前兆であり、火山活動は長引くとの見方が大勢です。


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2009年12月25日金曜日

大量のイワシ漂着 ― 千葉県

今月 22日頃から、千葉県の海岸に大量のイワシが打ち上げられています:
原因については、諸説あるようです:
  • 漁船が取れすぎたイワシを捨てた
  • 浅瀬に集まり過ぎて行き場がなくなったイワシが、波で打ち上げられた
  • イルカなどに追われ、逃げ場を失った
  • 海流や海水温の変化

加速しながら移動する磁北極

地磁気の北極が、カナダ北部から速度を上げながらシベリア方面に移動していることは以前から判明していましたが、さらに新しい研究が発表されたようです:
この記事によると、磁北極は「1年に約 64キロというスピードでロシアへ向かって移動」しているとのことです。次のような記述もあります:
磁北は 1831年に発見されてからしばらくは、ほとんど移動していなかった。しかし 1904年に、年間約 15キロの安定した速度で北東方向へ移動し始めた。1989年にはさらにスピードが上がり、2007年には年間 55~60キロの速さでシベリアに向かって移動中であることが確認された。

「南海地震は予知できる」

1946年に発生した昭和南海地震の前兆を集めた本『南海地震は予知できる』(中村不二夫、高知新聞企業)を、朝日新聞が紹介しています:
「地震の前は海全体がくさかった」そうです。

人の記憶は本人の自覚なしに変容するものです。半世紀以上前の記憶を最近になって収集しても、信憑性には疑問符がつくのではないでしょうか。とは言うものの、私はこの本を購入するつもりです。

土星のヘキサゴン、タイタンの輝く湖

“スプリング・ハズ・カム”(春が来た)は、日本人が英語の「現在完了」を学ぶときに最初に出くわす文章ではないでしょうか。現在、土星やその衛星の北半球は、まさに“スプリング・ハズ・カム”状態です。これまで十数年にわたって日の当たらなかった北極圏に太陽光が届くようになり、新たな観測が可能になっています。

以下は、土星を周回中の探査機カッシーニから送られてきた画像をつなぎ合わせた動画です:
土星の北極圏を可視光線で撮影したものですが、六角形(ヘキサゴン)をした大気の流れが写っています。地球にもあるジェット気流が蛇行しているものと考えられていますが、なぜ六角形になるのかは分かっていません。

2006年末に撮影され、翌 2007年に公開された画像にも六角形が写っています。このときは土星の北半球が冬で、北極圏に太陽光が届かないため、可視光線ではなく赤外線で撮影しています。そのため、上記の画像に比べると解像度が劣っています:
土星系最大の衛星タイタンの北半球にも春が訪れています。これまで日の当たらなかった北極圏にある、液体の炭化水素(メタンやエタンなど)をたたえた湖が太陽光を反射して輝いています:
写真は今年 7月に撮影されたものですが、この輝きが雷などの発光現象や火山の噴煙などでないことを確認する作業を経て、このほど公開されました。Kraken Mare(クラーケンの海)と名付けられた湖の南岸部分が、太陽光を反射して輝いているものと考えられています。Kraken Mare は面積約 40万 km² で、地球最大の湖であるカスピ海(37万 km²)や、日本の国土面積を上まわっています。


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2009年12月24日木曜日

NORAD のサイトでサンタを追跡

NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)が恒例の特設サイト “Santa Tracker” を設けています。日本語版も用意されています:
グーグル・マップ上でサンタクロースの現在位置を確認できるほか、NORAD がサンタを追跡する理由も説明されています。

伊豆半島の群発地震と地域限定法則

このブログの 12月 11日付記事「地域限定で地震活動に一定の法則」で、伊豆半島東方沖の地震には以下のような法則があるということを紹介しました:
伊豆半島東方沖: 地震の回数や活動の日数などが、伊豆半島にある「ひずみ計」で観測される地殻変動の値にほぼ比例する
上記記事を書いたときには、まだ伊豆半島の群発地震は始まっていませんでした。その後、群発地震が激化したころ、テレビの報道番組に静岡大学の小山真人教授(名前を示すテロップを見たのが一瞬だったので勘違いかも知れません)が出演して、概略次のように述べていました:
今回の地震では、事前に観測されていたひずみ計などの地殻変動の変化があまり大きくない。したがって、今回の地震はそれほど長く続かずに終息するだろう。火山噴火にいたる可能性も高くない。
まさに、上記の地域限定法則が使われているようです。現在までのところ、小山教授が語ったとおりに推移していることは、皆さんご存知のとおりです。

大地震発生懸念高まる ?

以下は、伊豆の群発地震がまだ収まっていない時期(12月 19日)に『夕刊フジ』が掲載した記事です。サラリーマン向けのいわゆるタブロイド紙ですので、センセーショナリズムに傾いているきらいがありますが、興味を持つ方もおられると思います:
多くの専門家が否定する中で、琉球大学名誉教授の木村政昭氏が次のように警告しています:
これまで発生した大地震では、地震発生前に震源地の周辺部にある活動層の動きが活発化し、大小の地震が頻発する現象がたびたび起きている。今回の群発地震がこうした現象の一種であるならリスクが高まったとみるべきです。

東海地方以外にも今後 10年以内に M6.5- 7 以上の大地震が発生する懸念がある地域は茨城県水戸沖、千葉県北東部、東京の 3つだ。

中でも水戸沖は、中心のプレート周辺の活断層の活動が激しくなっている。今後 4年以内に大地震が発生する危険性が高い。
木村氏の指摘する「千葉県北東部」とは少しずれていますが、今朝は千葉県東方沖を震源とする最大震度 3の地震が 2回おきています:

太陽と月とサンアンドレアス断層

イギリスの学術雑誌『ネイチャー』の 12月 24日号に掲載される論文の紹介記事が、主立ったニュースサイトに掲載されています。カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが執筆したもので、論文の内容は ―― サンアンドレアス断層の地下 25km 付近で発生しているマグニチュード 1クラスの微小地震が、太陽や月による潮汐に非常に敏感に反応していることから、これらの微小地震は地下に閉じこめられた高圧の水が岩石間に存在することによって発生していることが判明した ―― というものです。以下は、紹介記事の例です:
地下 25km 付近の圧力は 600メガ・パスカル。それに対して、太陽や月による潮汐が引きおこす応力は 100パスカル(1000分の 1気圧)程度で、600メガ・パスカルの 600万分の 1。それでも、微小な地震を引きおこしうるのは、超高圧の水が存在しているからだ、という結論です。

この種の研究成果が発表されると、トンデモ説を事とする人たちが研究内容をよく理解することなしに、勝手な拡大解釈をおこないますので注意が必要です。太陽や月による潮汐が大きな地震のきっかけになるか否かについては、今回の研究チームのメンバーは直接の関係があるとは考えておらず、次のように述べています:
Though tides raised in the Earth by the sun and moon are not known to trigger earthquakes directly, they can trigger swarms of deep tremors, ……

(太陽と月によって引きおこされる潮汐が直接地震のきっかけになることは知られていないが、地下深いところで発生する多数の震動のきっかけにはなりうる、 ……)
さらに、次のようにも述べています:
These tremors represent slip along the fault 25 kilometers (15 miles) underground, and this slip should push the fault zone above in a similar pattern, …… But it seems like it must be very subtle, because we actually don't see a tidal signal in regular earthquakes.

(これらの(微小な)震動は、地下 25km で断層に沿った滑りが発生していることを示しており、この滑りは上部の断層帯を同様のパターンで押している、…… しかし、それは非常に微弱だと考えられる。なぜなら、通常の地震には潮汐の影響が実際のところ見られないからである。)

2009年12月23日水曜日

桜島の活動予測

桜島が、観測開始以来最多の年間爆発回数を記録したことを受けて、京都大学防災研究所火山活動研究センターと鹿児島地方気象台が記者会見を行いましたが、その内容を各紙が各様に伝えています:
同じ情報源に基づいていても、記事のタイトルから受ける印象はかなり違います。3つの記事をまとめると ―― 「桜島北側の姶良カルデラ海底にあるマグマだまりが膨張し、一部が桜島の南岳直下に移動」しているので、「約1年前に比べて桜島に供給されるマグマが約10倍に増え」ているが、「小規模な噴火を繰り返すことで、火口直下にマグマがたまりにくい状況になって」おり、「大規模な爆発の可能性は低い」。しかし、「最終的には溶岩流出に至る」見通しである ―― というところでしょうか。

2009年12月17日木曜日

伊豆沖の地震

伊豆沖で地震が続いていますが、無感地震を含めると 100回を超えているそうです:
「火山活動が原因とみられるが、群発地震ではない」とのことです。20年前には、伊東市沖で手石海丘が噴火しています。当時は、観光客が激減して大変だったそうです。

カムチャツカ半島の火山が噴火

カムチャツカ半島にあるベズイミャンヌイ火山が、今日午前から噴火を始めました。日本-北米間などの定期航空路を飛行する航空機に影響を与える可能性があるとのことです:
ベズイミャンヌイ火山の位置は、以下のグーグル・マップで緑色の矢印で示されています:

過去の関連記事

2009年12月16日水曜日

リュウグウノツカイ漂着 ― 富山県

15日、富山県黒部市の黒部川河口付近で、体長約 4m の深海魚・リュウグウノツカイが打ち上げられているのが発見されました:
「平成13年にも黒部市の浜で見つかっています」、「見つかること自体が珍しく、非常に貴重な魚。14日からの荒天で打ち上げられたのではないか」とのことです。

黒部川の流れ込む富山湾では、下記「過去の関連記事」にもあるように、11月 22日にクジラの大群が遊泳しているのが見つかっています。


過去の関連記事

2009年12月15日火曜日

マヨン山から溶岩流出

フィリピンのマヨン山で、大規模な噴火の可能性が高まっています。マヨン山は、今年の 7月から活発化し始め、噴煙を上げるなどしたため、11月半ばには山麓の住民が避難を始めていました。その後、しばらくは沈静化の兆候を見せていたのですが、今月初めから再び活発化、ここに来て顕著な溶岩の流出が始まりました。以下は、Phivolcs (Philippine Institute of Volcanology and Seismology ― 火山と地震について日本の気象庁に相当する役割をもつ機関)のサイトに掲載されたマヨン火山情報です:
上記情報によると、溶岩は火口から 3km の地点まで到達、過去 24時間の火山性地震は 83回、二酸化硫黄ガスの放出は、1日あたり 535トンから、昨日朝の測定で 757トンに増加しているとのことです。

マヨン山の位置は以下のグーグル・マップで確認してください:
マヨン山の東にはフィリピン海溝があり、フィリピン海プレートが沈み込んでいます。上記グーグル・マップの航空写真で、フィリピン海溝からマヨン山の方向に亀裂が伸びていることに注目してください。

以下は、アルジャジーラの記事です。山頂から溶岩が流れ下っているマヨン山の夜景(夕方ではなく早朝に撮影した可能性が高い)の写真が載っています。日本の富士山が噴火したとしたら、駿河湾から眺めた光景はこれに近いものになるのかも知れません:

過去の関連記事

2009年12月13日日曜日

堺市が独自の地震被害予測

堺市が独自の地震被害予測を公表しています:
大阪府の被害想定と比べると、「震度5弱~7の上町断層帯の地震では、ほぼ同程度だった」そうですが、その他の地震では、堺市の被害想定が大幅に上回ったとのことです。その他の地震とは、生駒断層帯(震度 7)、中央構造線断層帯(震度 7)、東南海・南海地震(震度 6強)です。

10日未明に桜島で人工地震 (続報-2)

南日本新聞がダイナマイト発破の様子を撮影した動画を掲載しています:
ダイナマイト発破というと、アクション映画などでの派手な爆発シーンを思い浮かべる方も多いかと思いますが、実は地味なものです。炎も上がらず、音も試験管内の(水素と酸素の)爆鳴気のようです。


過去の関連記事

イノシシ大暴れ ― 和歌山県

12日(土)夜から 13日(日)明け方にかけて、和歌山市中心部の駅前や住宅街で体長約 1m のイノシシが暴走、負傷者が 3人出ています:
「こんな所にイノシシが出没するのは珍しい」(和歌山西警察署)、「これまで付近でイノシシが目撃されたことなどなかったのに……」(負傷者の隣人)。

2009年12月12日土曜日

クリスマス・カード

ハッブル宇宙望遠鏡のサイトが、クリスマス・カードのデザインを無償で公開しています。Space Telescope Science Institute(STScI、宇宙望遠鏡科学研究所)がおこなう、アウトリーチ活動の一環です:
見るだけでも十分に楽しめます。私の好みは、これと、これと、これです。

Image credit: NASA and STScI

新年へのカウントダウン

Google(英語版)のページで、検索ワードを入力せず“I'm Feeling Lucky”ボタンを押すと、大きな書体で数字が表示されます(この記事を書いている時点で 7桁)。どこにも説明が見あたらないのですが、計算してみると 2010年 1月 1日の午前 0時にゼロになりそうです。お試しあれ。

2009年12月11日金曜日

地域限定で地震活動に一定の法則

NHK の報道です(短時間でリンク切れになります):
どんな法則かというと:
伊豆半島東方沖: 地震の回数や活動の日数などが、伊豆半島にある「ひずみ計」で観測される地殻変動の値にほぼ比例する

茨城県沖: マグニチュード7前後の大地震が起きる前に、前震がある

大分県中部: 地震が起きる場所によって規模や活動の期間などが異なる
といったものです。政府の地震調査委員会では、これらの法則を使って地震の規模や時期を予測し、その情報を発表するための方法を検討していくそうです。

2009年12月10日木曜日

日本一小さい火山

「日本一低い」ではなく、「日本一小さい」火山の紹介記事です:
昔、何度か行ったことがあります。なつかしい。頂上まで簡単に登れ、火口の中に下りることができます。火口といってもそれほど深いものではなく、くぼ地と言った方がよいかも知れません。いまは使わなくなった「死火山」という言葉がぴったりで、火山ガスの噴出などの活動はまったくありません。1回の噴火で山体が形成され、その後はまったく噴火していないとのことです。火口の縁は、常緑樹やシダ植物が茂っており、「シダの洞窟」(ハワイ・カウアイ島)のような雰囲気がありました。

笠山のふもとには風穴がいくつもあり、一年中ほぼ一定の温度の風が吹き出しています。汗ばむ季節には、この風がとても爽快です。辺りには、観光客向けに地元で取れたサザエを壺焼きにするいい匂いが漂っていました。

笠山のふもとでもう一つ忘れてはならないのが、明神池です。海跡湖で、国指定の天然記念物になっています。

以下に関連資料のリンクを掲げます:
  • 笠山(ウィキペディア)(「世界最小の火山」と書かれていますが、これは事実ではないと思います。火山の定義にもよりますが、世界にはもっと小さい火山がいくつもあります。)
  • 萩 笠山
  • 笠山(グーグル・マップ)

ノルウェー上空の奇怪な現象

とりあえず、記事のみ紹介します。ロケットの排気が原因か? 詳細は後ほど:

10日未明に桜島で人工地震 (続報)

予定どおり、今日未明に人工地震による調査がおこなわれました:
「北東部を重点的に調査したのは、(中略) この区域が鹿児島湾海底のマグマだまりから火口の下へマグマが移動する経路である可能性が高いとみられるため」とのことです。


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2009年12月7日月曜日

マラウイで連続地震

東アフリカのマラウイで日曜日の夜から、中規模の地震が連続して発生しています:
震源はマラウイの北部で、ウラニウム鉱山の分布する地域です。これまでに少なくとも 12回の地震が発生。最大規模は M5.8 で、震源の深さはほとんどが 10km 前後。これまでに 6人の負傷者が報告されており、その内 2人は重傷とのことです。

マラウイという国の場所を、地図上で即座に指し示せる人は少ないと思います。以下のグーグル・マップで位置を確認してください:
地震がおきている場所は、大地溝帯の南端部にあたります。USGS(米国地質調査所)の資料でも、今回の地震の発震メカニズムが正断層タイプであることが示されており、地溝が開くことにともなう張力が主体となった地震であることがわかります:
南アフリカ共和国・ヨハネスバーグ西方にある生産量世界第 4位の金鉱山では、連続地震のため、坑内作業員 2人が行方不明となっています。こちらの地震の最大規模は M3.4 です:

10日未明に桜島で人工地震

以下は『南日本新聞』の記事です。10日(木曜日)の未明に、桜島で人工地震による探査がおこなわれます:
人工地震の目的は桜島のマグマの移動経路を精査するため。人工地震を起こすためのダイナマイトの爆発があるのは 15か所。深さは 10m。震動は人には感じられない見込みとのことです。

これまでの調査で桜島のマグマ溜まりは、島の北方約 10km の海底の地下にあると推定されています。つまり、姶良カルデラのほぼ中心部にマグマ溜まりがあり、そこから外輪山の南の一角にある桜島にマグマが供給されているということのようです。

Hi-net の連続波形などにも震動がキャッチされるだろうと思いますので、注目したいと思います。

地震前兆関係の掲示板には、人工地震を自然のものだと言いはったり、人工地震が噴火のきっかけになるのではと心配したりする人たちが出現するかもしれません。


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2009年12月6日日曜日

日本各地で防災訓練や災害対策

師走の 12月に入っても、日本各地でさまざまな名目の防災訓練がおこなわれています。また、各地の自治体では、大災害に備え地元企業と協定を結ぶなどの対策が進められています。

毎年、9月 1日の「防災の日」や、その日を挟む「防災週間」、あるいは「秋の全国火災予防運動」(今年は、11月 9日~11月 15日)には、日本各地でさまざまな防災訓練がおこなわれます。それはいつものことなのですが、今年は、年の瀬が迫る 12月に入っても、自治体や企業などが大災害を想定した訓練や、協定締結をおこなったとの報道が目立ちます。去年もこうでしたっけ?

以下に、12月に入ってからの報道を抜粋してみました:
▼青森県: 断水に備え防災訓練/八戸圏域 (東奥日報)

▼宮城県: 壁壊し人救出!! 石巻地区消防本部 旧ホテル利用、初の実践訓練 (三陸河北新報)

▼宮城県: 情報共有、合同訓練も 塩釜の自主防災組織、連絡協設立 (河北新報)

▼宮城県: 東松島 大曲地区が独自マニュアル 全世帯に配布 (三陸河北新報)

▼福島県: 大地震想定し国際救助隊が訓練/郡山 (福島放送) このブログの記事「中国国際救援隊が国連から資格認証取得」と「日本の国際緊急援助隊が国連の能力評価試験に挑戦」が関係していると思われます。

▼埼玉県: 災害時の救援活動にパチンコ店駐車場を 狭山署、5000台分協定 (毎日新聞)

▼神奈川県: 元町で震災訓練、商店街と地域住民が防災対策で協力/横浜 (神奈川新聞)

▼静岡県: 新幹線、万が一に備え 復旧訓練で手順確認 (静岡新聞) 「今夏発生した駿河湾の地震の際は、多少の線路のゆがみなどがあったが、速やかに復旧できた。今後も訓練に励み …

▼静岡県: 東海地震:発生備え県がパンフ (毎日新聞)

▼三重県: 訓練:大地震に備えて、2800人が避難や消火――伊賀・柘植 /三重 (毎日新聞)

▼京都府: 京都市消防局:重機操作のスペシャリスト「機甲分団」が発足 (毎日新聞) 「災害時に重機を使って障害物を取り除くなどして被災者の救助活動をする」

▼大阪府: JR、震災に備え大阪で新幹線の運行管理 (産経新聞) 1999年からほぼ毎年 1回、1日だけ東京から大阪の第 2総合指令所(場所は公表していない)に運行管理の権限を移して訓練しているとのことで、特別なことではなさそうです。ただ、「普段は別の業務に携わっている兼務指令員ら」が運行を管理するので、この日に乗車するのはちょっと不安?

▼和歌山県: 本番さながら救出訓練 紀伊田辺駅で列車脱線想定 (紀伊民報) 「地震で崩落した土砂に列車(2両編成、乗客18人)が乗り上げ、1両目車両が脱線し、多数のけが人が出ていると想定

▼香川県: 特急列車の脱線事故想定/JR四国が総合訓練 (四国新聞)

▼徳島県: タンク火災想定、19機関250人訓練 四電阿南発電所 (徳島新聞) 「県南部でマグニチュード7の内陸型地震が発生、発電所の備蓄タンクや停泊中のタンカーから油が流出し、火災が発生したとの想定で

▼徳島県: 巡視船の甲板でヘリ離着陸訓練 徳島海保など (徳島新聞) 「南海・東南海地震で津波が発生、多数の負傷者や漂流者が出ているとの想定で

▼高知県: 県庁や県警本部職員ら地震訓練 (朝日新聞)

▼愛媛県: 災害の備え確認 四国中央市防災訓練 (愛媛新聞) 「南海トラフ震源の地震により市内で震度6弱を観測、家屋の倒壊や火災が発生したなどの想定で …」

▼広島県: マックスバリュと災害時協定 呉市 (中国新聞)

▼福岡県: 訓練用地震速報で福岡市営地下鉄が全線一時停止 (産経新聞)

▼佐賀県: 緊急速報「地震だ」 真剣に訓練 (朝日新聞)

▼熊本県: 阿蘇防災訓練に400人 (朝日新聞) 「阿蘇中岳第一火口が突然大噴火し、多数の負傷者が出たという想定で …」(写真あり)

2009年12月5日土曜日

孕(はらみ)のジャン

寺田寅彦博士の『怪異考』をインターネットの電子図書館『青空文庫』で読むことができます:
『怪異考』で最初に取り上げられている怪異は、博士の出身地・高知で言い伝えられている「孕(はらみ)のジャン」という現象です。「孕」は地名で、「ジャン」は擬音語です。

どんな現象かというと:
孕の海にジャンと唱うる稀有のものありけり、たれしの人もいまだその形を見たるものなく、その物は夜半にジャーンと鳴り響きて海上を過ぎ行くなりけり
と言い伝えられているものです。

孕という地名について博士は、「高知の海岸に並行する山脈が浦戸湾(うらどわん)に中断されたその両側の突端の地とその海峡とを込めた名前である」 と書いています。以下のグーグル・マップで確認できます。土佐湾から高知市に向かって入り込む小さな湾(=浦戸湾)が、東西に延びる小山脈を断ち切っています。この部分の海と両岸を孕と呼ぶようです:
博士の生きた時代には、すでにこの現象は起こらなくなっていました。幼少時代の博士に「孕のジャン」の話を語って聞かせた老人たちも、実際にこの現象を体験したわけではなく、さらに前の世代の人から伝え聞いたということのようです。博士は、この現象を「水面にさざ波が立つ」、「魚が釣れなくなる」という言い伝えや、自分の地震体験から、地鳴りであるとの仮説を提示しています:
今問題の孕(はらみ)の地形を見ると、この海峡は、五万分の一の地形図を見れば、何人も疑う余地のないほど明瞭な地殻の割れ目である。すなわち東西に走る連山が南北に走る断層線で中断されたものである。 (中略) もっともこの断層の生成、これに伴なう沈下や滑動の起こった時代は、おそらく非常に古い地質時代に属するもので、その時の歪が現在まで残っていようとは信ぜられない。しかしそのような著しい地殻の古きずが現在の歪に対して時々過敏になりうるであろうと想像するのは単に無稽な空想とは言われないであろう。

それで問題の怪異の一つの可能な説明としては、これは、ある時代、おそらくは宝永地震後、安政地震のころへかけて、この地方の地殻に特殊な歪を生じたために、表層岩石の内部に小規模の地すべりを起こし、従って地鳴りの現象を生じていたのが、近年に至ってその歪が調整されてもはや変動を起こさなくなったのではないかという事である。
高知市を含む四国の南岸は、将来おきるであろう南海トラフ沿いの巨大地震・南海地震で大きな損害を被ることが懸念されています。博士は、この「孕のジャン」という現象が、今後おこるであろう巨大地震の前に復活する可能性を示唆しています:
この作業仮説の正否を吟味しうるためには、われわれは後日を待つほかはない。もし他日この同じ地方に再び頻繁に地鳴りを生ずるような事が起これば、その時にはじめてこの想像が確かめられる事になる。しかしそれまでにどれほどの歳月がたつであろうかという事については全く見当がつかない。ただ漠然と、上記三つの大地震の年代差から考えて、今後数十年ないし百年の間に起こりはしないかと考えられる強震が実際起こるとすれば、その前後に何事かありはしないかという暗示を次の代の人々に残すだけの事である。
博士が、「土佐における大地変」 あるいは上の引用文で 「上記三つの大地震」 としてあげている 3つの大地震について、『理科年表』(丸善株式会社)から抜粋します:
▼684年(天武天皇 7年) M≅8¼
土佐その他南海・東海・西海地方: 山崩れ、河湧き、家屋社寺の倒潰、人畜の死傷多く、津波来襲して土佐の船多数沈没。土佐で田苑 50 余万頃(約 12km²)沈下して海となった。南海トラフ沿いの巨大地震と思われる。

▼1605年(慶長 9年) M7.9 + M7.9
東海・南海・西海諸道: 『慶長地震』: (略) 土佐甲ノ浦で死 350余、崎浜で死 50余、室戸岬付近で死 400余など、ほぼ同時に二つの地震が起こったとする考えと、東海沖の一つの地震とする考えがある。 [『怪異考』原文では「慶長九年(一六〇四)」となっています。慶長 9年は西暦 1604年とほとんど一致しますが、この地震が発生した慶長 9年 12月 16日は、西暦ではすでに 1605年になっていたということのようです。]

▼1707年(宝永 4年) M8.6
五畿・七道: 『宝永地震』: わが国最大級の地震の一つ。 (略) 津波の被害は土佐が最大。室戸・串本・御前崎で 1~2m 隆起し、高知市の東部の地約 20km² が最大 2m 沈下した。遠州灘および紀伊半島沖で二つの巨大地震が同時に起こったとも考えられる。
博士は、最後に 「この『怪異考』は機会があらば、あとを続けたいという希望をもっている。昭和二年十月四日」 と書いています。しかし残念なことに、この 「孕のジャン」 と 「『頽馬(たいば)』『提馬風(たいばふう)』また濃尾(のうび)地方で『ギバ』と称するもの」 という 2つの現象について書いたきり、後続が執筆されることはなかったようです。


過去の関連記事

2009年12月4日金曜日

『東京マグニチュード8.0』

こういう番組が、深夜枠で放送されていたとは知りませんでした。

総集編の放送は、フジテレビで来週 12月 11日(金)深夜 3時 35分 からです:
番組の公式サイトは以下です:

2009年12月2日水曜日

静岡地震被害見学記

今年 8月 11日(火)早朝に発生した駿河湾の地震を記憶しておられると思います。気象庁の発表では Mj6.5、米国地質調査所 USGS の資料では M6.4 でした。

この地震以前にも、ほぼ同じ場所を震源とする被害地震が何度も発生しています。直近では、「静岡地震」(M6.4、1935年 7月 11日)と「1965年静岡地震」(M6.1、1965年 4月 20日)があります(詳細は、このブログの過去の記事「駿河湾の地震についてあれこれ (その 6)」の「過去の被害地震」という節を参照してください)。

前者の「静岡地震」について、実地に見聞した寺田寅彦(てらだとらひこ)博士が書き留めた『静岡地震被害見学記』を、インターネットの電子図書館・『青空文庫』で読むことができます。博士は、これを「静岡大震災見学の非科学的随筆記録」と称しています:
当時の地名が今も残っているのではないでしょうか。だとすると、地元にお住まいの方たちの中には、この『見学記』の記述で、「あぁ、あそこが…」と思い当たることがあるかも知れません。

それほど長い文章ではありません。時間のある方は是非お読みください。全文を読む時間のない方向けというわけではありませんが、以下は、私なりにポイントを抜粋したものです:

▼この静岡地震では、兵庫県南部地震(阪神大震災)と同じように、被害が狭い帯状の地域に集中する現象があったようです:
山裾の小川に沿った村落の狭い帯状の地帯だけがひどく損害を受けているのは、特別な地形地質のために生じた地震波の干渉にでもよるのか、ともかくも何か物理的にはっきりした意味のある現象であろうと思われたが、それは別問題として、丁度正にそういう処に村落と街道が出来ていたという事にも何か人間対自然の関係を支配する未知の方則に支配された必然な理由があるであろうと思われた。故日下部(くさかべ)博士が昔ある学会で文明と地震との関係を論じたあの奇抜な所説を想い出させられた。
▼昭和 10年(1935年)当時のマスコミも、今と大して変わらなかったようです:
新聞では例によって話が大きく伝えられたようである。新聞編輯者は事実の客観的真相を忠実に伝えるというよりも読者のために「感じを出す」ことの方により多く熱心である。それで自然損害の一番ひどい局部だけを捜し歩いて、その写真を大きく紙面一杯に並べ立てるから、読者の受ける印象ではあたかも静岡全市並びに附近一帯が全部丸潰れになったような風に漠然と感ぜられるのである。このように、読者を欺すという悪意は少しもなくて、しかも結果において読者を欺すのが新聞のテクニックなのである。
現在の TV 報道でも、大きく破壊された建物の映像ばかりを繰り返し放映するので、視聴者の中には被災地全体がそのようなひどい状況だという実態とかけ離れたイメージが形成されがちです。

▼自分や同僚科学者への戒めもあります:
高松という処の村はずれにある或る神社で、社前の鳥居の一本の石柱は他所(よそ)のと同じく東の方へ倒れているのに他の一本は全く別の向きに倒れているので、どうも可笑(おか)しいと思って話し合っていると、居合わせた小学生が、それもやはり東に倒れていたのを、通行の邪魔になるから取片付けたのだと云って教えてくれた。

関東地震のあとで鎌倉の被害を見て歩いたとき、光明寺の境内にある或る碑石が後向きに立っているのを変だと思って故田丸先生と「研究」していたら、居合わせた土地の老人が、それは一度倒れたのを人夫が引起して樹(た)てるとき間違えて後向きにたてたのだと教えてくれた。うっかり「地震による碑石の廻転について」といったような論文の材料にでもして故事付(こじつ)けの数式をこね廻しでもすると、あとでとんだ恥をかくところであった。実験室ばかりで仕事をしている学者達はめったに引っかかる危険のないようなこうした種類の係蹄(わな)が時々「天然」の研究者の行手に待伏せしているのである。
「天災は忘れた頃にやってくる」は博士の言葉といわれていますが、この『見学記』の中にも以下のような文を見ることができます:
こうした非常時の用心を何事もない平時にしておくのは一体利口か馬鹿か、それはどうとも云わば云われるであろうが、用心しておけばその効果の現われる日がいつかは来るという事実だけは間違いないようである。
▼随筆家としても高名な博士の感性や視点で、私が共感したものを 2つ:
茶畑というものも独特な「感覚」のあるものである。あの蒲鉾(かまぼこ)なりに並んだ茶の樹の丸く膨らんだ頭を手で撫(な)でて通りたいような誘惑を感じる。

この幼い子供達のうちには我家が潰れ、また焼かれ、親兄弟に死傷のあったようなのも居るであろうが、そういう子等がずっと大きくなって後に当時を想い出すとき、この閑寂で清涼な神社の境内のテントの下で蓄音機の童謡に聴惚(ききほ)れたあの若干時間の印象が相当鮮明に記憶に浮上がってくる事であろうと思われた。
なお、寺田寅彦博士は、この地震があった年の大晦日に亡くなっています。


過去の関連記事

つくばの大地は夏沈む

GPS の基準点が季節によって上下していたために、それを基準にした各地の高度も季節変動しているように見えていたとのことです:
基準点の高度が、夏に下がり冬に上がる動きをしていたため、各地の高度は逆に夏は上がり冬は下がるように観測されていたとの説明です。原因は、基準点周辺でおこなわれる田植えのための地下水のくみ上げだそうです。

2009年12月1日火曜日

イルカの群出現と地震

今日の産経新聞の記事です:
こういう記事の掲載があると、過去をふり返って宏観異常と地震の関係を考えるきっかけになるので、ありがたいと思います。

で、このイルカの群が出現したあと、対応するような地震はあったのでしょうか。被害地震に限っていえば、「ノー」です。

しいて上げるならば、約半年後の 2000年 6月 26日夕刻から始まった三宅島を中心とする伊豆諸島の群発地震があります。2000年内の有感地震は 14200回超。7月 1日に神津島近海 M6.4、7月 9日に同じく M6.1、7月 15日に新島近海で M6.3、7月 30日に三宅島近海で M6.4、8月 18日に神津島近海で M6.0 が発生しています。

7月 8日には、三宅島の雄山(おやま)が噴火を始め、火山ガスの流出などにより、9月 2日には全島民の避難が指示されました。その後、長期間にわたって避難が続いたことは、記憶されている方も多いと思います。

上記のイルカの出現と、この群発地震を結びつけることには相当の無理があります。タイムラグ(先行時間)が長すぎること、伊豆諸島周辺には他にもイルカやクジラの群がいただろうに、なぜ 1群だけなのか、他の前兆はあったのか、などなど。もちろん、群発地震として認識されるかなり前から、海底で密かに異変が進行していたという可能性はありますが。

伊豆諸島の群発地震については、『日本の地震地図』(岡田義光、東京書籍)を参照しました。


過去の関連記事

上町断層帯

毎日新聞が、「大阪に大地震を起こすかもしれない上町断層帯」について、わかりやすい解説を載せています:
淡路島から伊勢湾までの中央構造線を底辺とし、敦賀湾を頂点とする 「近畿三角地帯」 には活断層が密集していますが、上町断層帯はその南西部に位置し、日本の活断層の中では地震の発生確率が相対的に高いグループに分類されています。

上町断層と上町台地についてのより詳しい説明は以下にあります:

「夜空のスマイリー・フェイス」から 1年

憶えておいででしょうか。ちょうど 1年前、つまり 2008年 12月 1日の夜空に「スマイリー・フェイス」が現れたことを。以下は、その現象に関するこのブログの記事です:
記事の中でリンクを張っている写真の中には、すでにリンク切れとなっているものもありますので、以下を参照してください:
このスマイリー・フェイスは、向かって左側の目が金星(宵の明星)、右側の目が木星、そして口が三日月で構成されています。

天球上で、金星や木星などの惑星はほぼ黄道上を、月は白道上を移動していきます。そして黄道と白道はおおよそ一致している(白道は、黄道の周辺 8 度の範囲におさまる)ため、いろいろな惑星が月と接近してさまざまなパターンを見せてくれます。このスマイリー・フェイスもそのようなパターンの一例に過ぎません。

黄道と白道の関係については、以下の説明がわかりやすいと思います:
このブログの一昨日の記事「『月が赤いです』という投稿」で、月の見かけ上の位置について T氏の誤りを指摘しましたが、このスマイリー・フェイスについても T氏はスゴイことを書いていました:
(前略)
分かりません、原因不明の天体現象です??、↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081202-00000573-san-soci
金星と木星は確かに接近するのは天文学でもちゃんと記載されていますが、これに月が加わって笑顔の形になるというのは過去にもあまり例が無いでしょう。恐らく、私個人的には天文のほうでは無くて見ている側・つまりうちらの地球のほうの自転回転力の変化か?地磁気の変化・つまり磁気フィールドの異常によってこの様な珍しい現象が現われた・と思っています。地球温暖化も影響している可能性は否定できないでしょう。この様な軌道で見える現象というのは天文学でも無く恐らく初めての現象で有ると思います。
(後略)

『ドライブ旅行・運転、他』ブログの 2008年 12月 2日付記事「夕方になって」より引用

引用中のリンク先記事はすでに削除されています。当該記事は、産経新聞が 12月 2日 14時47分付で配信した「次はいつ? 夜空ににっこりマーク」と題するものです。手元にその写しがありますが、著作権の制約上、ここに転載するのは控えます。
上記を読んでいただければ、天体の運行についての T氏の理解がどの程度のものか、おわかりいただけると思います。リンクをたどって続きの部分も読んでいただけると、さらにスゴイ展開を目にすることができます。

先日の赤い月に関連した私の指摘に対して、T氏は的確に答えることができずにいます。そして、あろうことか私を陥れるためのフェイクであったなどという荒唐無稽な言いわけを持ち出し、私に対する事実無根の侮辱や対人論証に終始しています。このスマイリー・フェイスの時も、どなたかを嵌めようとしていたのでしょうか (grin)。

遺跡と天体の写真

昨日の記事「2010年はイースター島で皆既日食」で、モアイ像と皆既状態の太陽や南十字の写真を撮れたら…、ということを書きましたが、なぜそう思うのか。以下の写真で感じていただけるかもしれません:
悠久の時の流れと無限の宇宙の広がりが、ひしひしと迫ってきます。この感覚が、私にはかけがいのないものなのです。

First Anniversary

このブログを始めてから、今日で 1年になります。その間に書いた記事が 430本。われながら、よく続いたと思います。恐る恐る書いた最初の記事は、次のようなものでした:
この 1年、予想以上に多くの方々がこのブログを訪れてくださいました。たいへん感謝しております。

このブログが扱うのは、主として宇宙や地球の現象、つまり高等学校の地学がカバーする分野です。多くの書店で、地学関係の書籍は売れないということで片隅に追いやられるか、ほとんど取り扱われない状態になっています。

昨日買い求めた本には次のような記述があります(著者は京都大学教授で火山学者です):
日本は先進国の中では随一の地震国・火山国です。それにもかかわらず高校で「地学」の教科を履修した学生は一割以下しかいません。そのため大学生の大半は、自然災害に関する知識が中学生レベルというのが現状です。

近い将来に南海地震、首都直下型地震、富士山噴火などを控えている日本にとって、あまりにも無防備で危険きわまりない、と言わざるを得ません。

『京大・鎌田流 知的生産な生き方』(鎌田浩毅、東洋経済新報社)から引用
そのような状況で、このブログに興味を示してくださる方々が事前の想定以上に多かったことは、大いに私の励みとなっています。

今後とも、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

腹が立ったら

以下のようなホームページはいかがでしょうか(笑):
ワイアー・フレームのロボット(?)を、マウス・ポインターで思いっきりひっぱたけます。マウス・ポインターの動きが速いほど、ロボットに加わるダメージが大きくなります。足を狙うと転ばせることもできますが、うまくかわされて、小馬鹿にされることもあります。