アラブ首長国連邦(UAE、地図)では、韓国から原子力発電所を導入しようとしていますが、同国の連邦原子力規制局(FANR)長官の発言をみるといささか心配になります:
- UAE nuclear plants designed to withstand earthquakes (写真あり)
- UAE Nuclear Plants Designed to Withstand Earthquakes
以下は、FANRの長官である William Travers 博士(上掲記事の写真で左側の人物)の公開討論会での発言です:
The UAE’s nuclear facilities are designed to withstand the frequency and gravity of Korea’s quakes ― of a much graver and of a much larger magnitude than those occurring here in the Gulf region, nuclear energy experts have assured.
UAEの原子力施設は、韓国の地震の頻度と規模に耐えられるように設計されています ― 韓国の地震はペルシャ湾岸地域で発生する地震と比べるとはるかに深刻でマグニチュードも大きいのです、と原子力エネルギーの専門家は保証した。
「ご冗談でしょう、Travers博士」と突っ込みを入れたくなりますが、この発言から、韓国側がどのようなセールス・トークを使ったか想像がつきます。韓国側は、自国が日本に匹敵するぐらいの地震多発国であるとアピールしたのでしょう。実際のところはどうでしょうか。以下の資料の表1や、韓国気象庁の Earthquake Trends をご覧ください:
韓国は、原子力発電所を建設するようになって以降、一度も強い地震を経験していません。一方のペルシャ湾岸では、イランを筆頭にマグニチュード7クラスの地震がかなり起きています:
FANRの長官は、〝The earthquake resistance of the UAE’s nuclear plants is 0.3g [a measure of peak ground acceleration]〟(UAEの原子力発電所は表面最大加速度で 0.3g まで耐えられる)とも述べています。1960年のチリ地震(M9.5)で観測された最大加速度が 0.25~0.3g なので、韓国側は「史上最大のチリ地震の加速度にも耐えられますよ」と売り込み、おそらく UAE側も「それなら大丈夫だろう」と鵜呑みにしたのでしょう。
しかし、イラン・ザランド地震(2005年)の最大加速度が 0.51g、阪神淡路大震災(1995年)が 0.8g、新潟県中越沖地震(2007年)が 1.01g、カンタベリー地震(2011年2月、ニュージーランド)が 2.2g、東北地方太平洋沖地震(2011年)にいたっては 2.99g であることを考えると、0.3g で大丈夫なのかなと心配になります:
さらに、0.3g という設定の当否はさておいたとしても、本当に 0.3g に耐えられるのかも疑問です。韓国の企業連合による落札額は日米の入札額の半分以下です。ダンピングが疑われるほどの低価格で受注したことによる手抜き工事の心配があります。また、韓国企業の商道徳にも疑問符がつきます。0.3g という数字は信用してよいのでしょうか。おりしも、韓国の代表的な自動車メーカーである現代自動車と起亜自動車が、燃費性能の数字を 1リットルあたり約2.6kmも水増ししていたことが米国で発覚しています。
UAEの海岸沿いに建設される原子力発電所で事故が起こり汚染が広がった場合、日本の石油輸入にも甚大な影響がでることは必至です。
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