5月9日付「ブラジル沖に「大陸」の痕跡 (続報-2)」の続報です。
リオ・グランデ海膨(Rio Grande Rise、地図)の成因については、大陸のかけら説とホットスポット説があることを「続報-2」で紹介しましたが、ホットスポット説については、以下の Ian H. Campbell氏(The Australian National University, Canberra, Australia)の論文にたいへんわかりやすい図があります:
- Testing the plume theory (プリューム学説をテストする)
Image Credit: Ian H. Campbell; White and McKenzie, 1989 (クリックで拡大) |
以下は、図につけられているキャプションを翻訳したものです:
南大西洋の地図。Parana洪水玄武岩、Etendeka洪水玄武岩、ウォルビス海嶺、リオ・グランデ海膨(海台)、トリスタン・ダ・クーニャ島の位置を示す。 現在、(マントル)プリュームはトリスタン・ダ・クーニャ島の地下にある。1億2800万年前から6000万年前にかけて、トリスタン・ダ・クーニャ・プリューム(ウォルビス・ホットスポット)は大西洋中央海嶺の下にあり、海洋底拡大の中心(海嶺中央軸)の東側にウォルビス海嶺、西側にリオ・グランデ海膨という2つの非地震性海嶺を作り出した。
『世界大百科事典』(平凡社)の「大西洋」の項には、次のような記述があります:
南大西洋中央部を横断するリオ・グランデ海台とウォルビス海嶺は、ジュラ紀末以来、中央海嶺上で断続的に噴出形成されてきた火山島ないし海山が、海底拡大とともに西および東方へ移動することでつくられたとする。海嶺上に現在あるトリスタン・ダ・クーニャ島は、そのうちの最も新しい大洋島である。
私は、大西洋の両岸に残る洪水玄武岩や、リオ・グランデ海膨と中央海嶺を挟んで対称的な位置にウォルビス海嶺が存在することなどから、ホットスポット説に魅力を感じています。リオ・グランデ海膨が単なる大陸の割れ残りだとすれば、ウォルビス海嶺の位置は偶然ということになるのでしょうが、そう考えるにはあまりにも対称的すぎます。また、上の図に示された等深線を見ても、リオ・グランデ海膨が中央海嶺とつながっており、孤立した単なる大陸のかけらとは考えにくいと思います。しかし、今回の花崗岩の崖の発見は、ホットスポット説の立場ではどう説明されるのでしょうか。今回の潜航調査にもとづいて出される研究報告や論文を待ちたいと思います。
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