2011年8月3日水曜日

小惑星ベスタ


NASAの小惑星探査機ドーン(Dawn = 夜明け、暁、黎明)が7月16日、4大小惑星のひとつであるベスタ(Vesta)に到着し、その周囲を回る軌道に入りました。そして、このほどドーンが撮影したベスタの高解像度の画像が公開されました:

火星の衛星フォボスでも見つかっている球体を転がした跡のような不思議な溝状の地形が、ベスタにもありました。ベスタの場合は、赤道に平行して何本も走っています。この溝状の地形の成因についてはまだよくわかっていませんが、衛星や小惑星などの小天体の多くにこのような溝状の地形があるようです。(フォボスの溝状地形については、当ブログの昨年3月16日付記事「フォボス最接近 (続報)」を参照してください。)

ベスタは、ローマ神話に登場する女神の名前です。以下に『世界大百科事典』(平凡社)から引用します:
ウェスタ Vesta  古代ローマのかまどの女神。ギリシア神話のヘスティアにあたる。彼女は各家庭で崇拝されると同時に、国家のかまどの女神としてローマ人の精神的支柱の一つであった。伝承によれば、2代目の王ヌマが彼女の崇拝を制定し、ローマのフォルムの南にいにしえのわらぶき農家をかたどった円形神殿を建てたという。その神殿には神像はなく,かわりに国家の永続性を象徴する聖火が燃え、ウェスタリス Vestalisと呼ばれる女祭司(当初は2人、のちに6人)がこれを見守った。(以下略)

以下の画像は、2010年11月までに探査機が接近したことのある小惑星と彗星の大きさを比較するものです。画像中の最大の天体は小惑星ルテティア(Lutetia)で、サイズは 132×101×76km です。一方、ドーンが訪れた小惑星ベスタは 578×560×458km ですから、大幅に画面からはみ出してしまします:

ちなみに、上の画像には日本の探査機「はやぶさ」が着陸した小惑星イトカワも記載されているのですが、見つけられるでしょうか。数画素を占めるだけで、まさに芥子粒です。

以下の画像では、ルテティアとベスタの大きさを比較することができます:

ドーン探査機は2007年9月に打ち上げられ、2009年2月に火星の重力を利用して加速し、ようやく今年7月16日にベスタに到達しました。日本の小惑星探査機「はやぶさ」と同じく、キセノンを推進剤としたイオンエンジンを3機搭載しています。ドーンは、ベスタに到着する直前の6月27日に突然エンジンの推力が失われるというトラブルに見舞われています。原因はエンジンを制御するサブシステムの故障で、予備のシステムに切り替えることによって、6月30日に推力を回復しています。

ドーン探査機は、約1年間にわたってベスタの観測を続けたのち、2012年7月にベスタの周回軌道から離脱して、次の目的地である準惑星ケレスに向かいます。ケレスに到着するのは2015年2月になります。地球からケレスまでの総飛行距離は49億kmとなります(日本の「はやぶさ」は地球帰還までに60億kmを飛行)。


過去の関連記事