2010年9月30日木曜日

ハトの大量死 ― 南アフリカ

9月 26日(日)、南アフリカ共和国のケープ・タウンで、高架になっている高速道路上に大量のハトの死骸が散らばっているのが見つかりました:

一部の死骸には自動車に衝突したり、ひかれたりした痕跡があったものの、他の死体にはそのような痕跡がなく、ハトが死んだ原因はわかっていません。

週末に近くの空軍基地で行われた航空ショーの騒音が原因ではないかとも取り沙汰されていますが、都会に住みついているハトは轟音や衝突音に慣れているのでその可能性はないと鳥類学者は否定しています。

SPCA(動物虐待防止協会?)が調査を続けていますが、周辺のハトがケープ・タウン港の荷役作業でこぼれ落ちた穀物を食料にしていることから、同港で鳥害を防ぐために何らかの毒物が使われた可能性も視野に入れているとのことです。


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レアアースほしさに …… (その 2)

まず、アメリカ議会の情報を専門に伝えるラジオ局 Capitol News Connection のサイトに掲載されている 9月 26日付の記事を紹介します。ラジオ番組 “Power Breakfast” の内容を文字化したものです:

以下に抄訳します:
ワシントン発 ― 希土類金属(rare earth metals)はハイテク産業や兵器産業にとって欠くことのできない重要な物資となっていますが、アメリカ合衆国はどの希土類金属も自給することができません。中国がそのような決定的に重要な無機化合物の第一の供給源であるという事実に対する懸念が議会で広がっています。

おはようございます。Elizabeth Wynne Johnson です。Capitol News Connection がお送りする番組 “Power Breakfast” です。

[コマーシャル] この番組 “Power Breakfast” はレイセオン(Raytheon)社がお送りしています。レイセオンは戦術・戦略目標についての状況認識や情報を提供する Global ISR solutions を推進しています。レイセオン ― お客様の成功が私たちの使命です。

希土類金属はこれまであまり注目されていませんでしたが、急速に脚光を浴びるようになってきました。下院議員の Kathy Dahlkemper (以下 D 議員) さんと Mike Coffman (C 議員) さんは、以前から希土類金属に注意を払ってこられました。

D 議員 ― 今後、皆さんは希土類金属のことや、それがわれわれの将来の発展や技術にとって非常に重要であることを何度も耳にすることになるでしょう。

C 議員 ― これは氷山の一角なんです。多くの方々がこの問題の重大さを本当に理解しているとは言い難いと私は考えています。

日本と中国の間で貿易紛争(レアメタルの実質的対日禁輸)が起こったとの報道が先週末に伝わった時には、すでに今週中に議会で(希土類金属に関する)法案が審議される予定になっていました。

D 議員はペンシルバニア州選出の民主党下院議員で、希土類金属に関する最新の法案の提出者です。彼女は、産業界のロビイスト(複数)が、この問題について関心を持つよう議会に働きかけていると語っています。希土類成分は、再生エネルギーに関係する装置や携帯電話から兵器システムに至るまでハイテク製品の製造において不可欠です。アメリカ合衆国は、使用する希土類物質の 100% を輸入しています。中国は諸外国に対して、中国国内で製造を行わなければ中国から閉め出すと言い始めています。

D 議員 ― わが国の国防総省が関わる製品の多くには希土類金属を含んだ部品が使われており、それは明らかに我々にとっての非常に大きな懸念材料です。我々は、わが国の防衛兵器を中国で製造するようになることは望んでいないのです。

C 議員 ― 他の先進工業国の多くと同じようにわが国は完全に中国に依存しています。ですから、代替手段を見いだし、競争力のあるサプライ・チェーン(供給プロセス)を構築することが重要なのです。

D 議員の提出した法案は、産業界の調整と調査に焦点を当てています。一方、コロラド州選出の共和党下院議員である C 議員が提出した別の法案は、国家備蓄の推進を目指しています。

下院は今度の週末から休会する予定になっています。議員の皆さんはそれまでに法案が審議されることを望んでいます。おそらく、日本と中国の間の希土類物資をめぐる対立があからさまにした(中国の)脅威が、議員の皆さんの意向を後押ししてくれることでしょう。

Capitol News Connection のお送りした “Power Breakfast” でした。

ひるがえって日本の国会をみるとどうでしょうか。議員の「先生」たちは、今回の中国人船長の釈放をめぐって、やれ内閣の責任を追及するだの、検察の幹部を証人喚問せよだのといった内向き・後ろ向きの「内部摩擦」ばかりにエネルギーを浪費して、将来を見据えた資源戦略や外交方針などの議論はそっちのけです。今回の事件の真相を解明することも重要ですが、それよりも優先度が高く先に着手しておくべき事項が山積しています。上記の記事にあるアメリカの議員の活動が完全無欠な手本であるというわけではありませんが、日本の国会議員は見習ってほしいものです。


(続く)

バイカル湖で地震 ― ロシア

バイカル湖地図)で大きな地震があった、とロシアの通信社が伝えています:

記事には地震発生日時が記載されていませんが、震源はバイカル湖内で、ロシア非常事態省の発表ではマグニチュード 6.7。しかし、周辺の集落では揺れを感じず、また被害もなかったとのことです。

一方、アメリカ地質調査所(USGS)の発表資料では、地震が発生したのは 9月 27日(月)で、マグニチュード 4.4、震源の深さ 10 km となっています:

バイカル湖は世界でもっとも古く、もっとも深い湖で、地球上の淡水の 20% が溜まっているとされています。かつては海溝であったものが、プレートの移動による大陸の離合集散によって陸地の中に取り残されてしまったのだそうです。


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2010年9月29日水曜日

レアアースほしさに …… (その 1)

日本人であることをこれほど恥ずかしく思ったことはありません。尖閣諸島の領海内で密漁をしていた中国漁船の船長を公務執行妨害容疑で拘束したものの、中国の恫喝に周章狼狽して釈放した件です。海外の報道を見ていても、日本が中国に無条件降伏、日本が中国に屈服させられた、日本が完全敗北 …… などのタイトルが飛び交いました。

これほどの外交的敗北と国家の威信失墜という失態を演じた内閣は、もし恥というものを知っているのであればすでに総辞職しているのではないでしょうか。

菅首相は急遽予定を変更してベルギーの首都ブリュッセルで開かれる ASEM(アジア欧州会合、Asia-Europe Meeting)に自ら出席し、中国の温家宝首相との会談を模索するとのこと。あまりにも拙速。外交音痴というべきか、交渉下手というべきか。この時期にこちらから会談を求めれば、そのことだけで相手側が優位に立ってしまいます。仮に会談が実現したとしても、会談に応じてくれたことに対する謝意や今回の事件に対する謝罪じみた言質を与えたり、低姿勢で卑屈と受けとられるような立ち居振る舞いで恥の上塗りをしないようにしてほしいものです。私の頭には 「カノッサの屈辱」 という言葉が去来しています。

以下の記事に見られるように、官房長官がすでに卑屈な態度をとっているので非常に心配です。東シナ海・白樺ガス田付近を航行中の中国の海洋調査船について 「周辺にいらっしゃることは確認している」 などなど、この人は日本語のネイティブ・スピーカーなのか疑わしくなってきます。官房長官といえば内閣のスポークス・パーソンですから、もう少し日本語の上手な人になってもらった方が良いのではないでしょうか:

中国が非常に高圧的な態度やレアアースの実質的禁輸措置をとったことで、世界各国には中国に対する警戒感が広がっています。以下にいくつか海外の報道を紹介します。


(続く)

氷河の下で新たな噴火の可能性 ― アイスランド

現地時間 9月 25日(土)の夜、アイスランド南東部のバトナ氷河(Vatnajökull)の北西部にある Hamarinn 火山の近くで、M3.5 と M3.7 の地震が発生しました。この地震に関連して、同国の地球物理学者 Páll Einarsson 氏が新たな火山噴火の可能性を指摘しています:

以下に Einarsson 氏の発言を抄訳します:
この地域で連続して地震が発生することは珍しいことではない。バトナ氷河の下で火山活動が活発化し始めている。

今回の連続地震はバトナ氷河の下に埋もれている Grímsvötn (地図)火山湖群と直接関連するものではないし、火山性の地震に分類できるわけでもない。

しかし、Grímsvötn で数ヶ月のうちに噴火が始まる可能性が非常に高い

エイヤフィヤトラ氷河(Eyjafjallajökull、地図)での噴火に引き続いてミルダルス氷河(Mýrdalsjökull)の下のカトラ(Katla)山が間もなく噴火する可能性があると一部の科学者は考えているが、そのような兆候はない

25日(土)に発生した地震は特に大きな地震というわけではないが、それでも興味深い。1996年にバトナ氷河の下にある Gjálp 山(地図)が噴火し始めた時には、その 8 ~ 9ヶ月前から Hamarinn 山の周辺で地震が連続して発生した。

Hamarinn 山はバトナ氷河の縁にある特殊な火山で、同氷河の下にある Grímsvötn と Skaftárkatlar に沿った火山活動の活発な領域を形成した現象の一端を担っている。

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2010年9月25日土曜日

レユニオン島で噴火切迫

インド洋西部、マダガスカル島の東に浮かぶフランス領のレユニオン島のフルネーズ山(Piton de la Fournaise、地図)で、9月 23日から火口直下の地震が急増、山体の膨張も大きいため、当局は警戒レベルを最高度の “1” に引き上げました:

さまざまな情報を総合すると、9月 23日の夕方頃から山体直下の地震が急増、北側の山腹や頂上付近で山体の膨張が顕著(最大 3cm)、マグマが地表近くまで上昇してきているため、間もなく噴火が始まるであろうとのことです。

フルネーズ山は流動性の高い溶岩を流出させる楯状火山で、しばしば溶岩流出をともなう噴火をおこしています。今年 1月にも溶岩の流出がありました:

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2010年9月23日木曜日

SETI 50周年

SETI (地球外知的生命体探査、Search for Extra-Terrestrial Intelligence) が開始されてから今年で 50年になります。いくつかのメディアが SETI の半世紀をふり返り、今後を展望する記事を掲載しています:

今から 50年前、1960年の春、τ Ceti (クジラ座タウ星)と ε Eridani (エリダヌス座イプシロン星)に電波望遠鏡を向けて、地球外文明の出す人工的な電波を受信しようと試みるプロジェクトがアメリカの天文学者フランク・ドレイク博士によって始められました。このプロジェクトはオズマ計画(Project Ozma)と名付けられ、SETI の始まりとされています。この 2つの恒星が選ばれたのは、地球から比較的近い 10.5光年の距離にあり、太陽と同じタイプの恒星で地球と似た惑星が周囲をまわっている可能性があると考えられたからです。

SETI 開始から 50年が経過しましたが、これまでのところ地球外文明から発せられた電波信号は見つかっていません。銀河系宇宙に存在する恒星の数はあまりにも多く、これまでに詳しく調べられた恒星はごく一部にすぎません。

過去 50年の歴史の中には 「これは!」 と思わせる電波が受信されたことが少なくとも 3度ありました。

1つ目は「CTA102」事件。1960年代の初め、ソビエト連邦の天文学者が、CTA102 と呼ばれる遠い天体が強力な電波を出しており、その電波が約 100日の周期で規則正しく変化していると発表しました。発表をおこなった天文学者たちは、自分たちの発見した電波源は、進歩した科学と強大な力をもった地球外文明であると考えていました。しかしその後、CTA102 は当時は知られていなかったクェーサーと呼ばれる天体であることが明らかになりました。

2つ目は「LGM1」事件。LGM1 は 1967年にイギリスの科学者が発見した電波源です。LGM はリトル・グリーン・メンの略で、宇宙人が緑色のこびとのような姿をしているという当時の通念から名付けられました。この電波源は、CTA102 よりはるかに近いところにあり、驚異的な精度で点滅を繰り返す強い電波信号を送り出していました。その点滅の周期は有効数字 10桁以上の精度で一定でした。イギリスの科学者たちは、地球に向けて送られているメッセージ、あるいは恒星間飛行をする宇宙船のためのビーコンではないかと考えたようです。しかし、これも当時は知られていなかったパルサーと呼ばれる天体であることが後に判明しました。

3つ目は「Wow! シグナル」事件。1977年にアメリカの科学者が観測した電波信号です。狭い周波数帯に集中した強い信号で、銀河系宇宙の中心方向にある「いて座」から送られてきました。現在まで正体が判明していません。地球外文明からの信号であった可能性もわずかながら残っているようです。詳しくは以下の Wikipedia の解説をお読みください:

上記の 3つの事件はそれぞれ、ソビエト連邦、イギリス、アメリカの科学者が関わっていました。SETI は単一のプロジェクトではなく、このようにさまざまな国の科学者によって「細く長く」続けられています。一国の政府の意向や財政状況によって活動が左右されなかったことが、全体として長続きした理由の一つではないかと思います。この種の研究は、何世代、何世紀にもわたって地道に継続する必要があります。そのためには今後とも世界各国に分散して「細く長く」続ける体制をとることが望まれます。

アメリカでは 1984年に設立された民間の非営利法人 SETI Institute (SETI 研究所)が、さまざまな財団、基金、企業、個人などからの出資や寄付金によって運営され、SETI 推進の中心となっています。傘下には SETI リサーチ・センター、宇宙における生命を研究するためのカール・セーガン・センター、教育およびパブリック・アウトリーチ・センターがあります。民間の団体であり、資金面でも政府にほとんど依存していないため、政権の交代などによって活動の方針が左右されることがありません。

日本では兵庫県立西はりま天文台が中心的役割を果たしています:

西はりま天文台は兵庫県南部地震(阪神大震災)の前兆と考えられる電波を受信していたことでも有名です:

高度に発達した地球外文明は電波を通信手段として使わないのではないか、 という悲観論もあります。そのため電波以外の方法、たとえば地球に向けられているレーザー光線や、ダイソン球から漏れてくる赤外線を探すということも試みられています。また、恒星のスペクトルの中に、自然には存在しない物質(たとえばフロンなど)の痕跡を探すことも提案されています(注)

また、高度に発達した地球外文明社会の主体は生身の生物ではなく人工知能になっている可能性も考慮すべきだとの意見も出されています:

願わくば、私が生きているうちに地球外文明からの信号が確認されたとのニュースを見聞きできますように。


(注) 現在も健在であるフランク・ドレイク博士が提案しているものです。地球人類が自分たちの存在を他の恒星系の文明に知らせるもっとも安上がりで容易な方法は、環境問題で回収されたフロンを 100トンほど、ロケットで太陽に打ち込むことだそうです。他の恒星系の観測者が太陽を分光器で観測すれば、自然には存在しないフロンの明瞭な線がスペクトル上に現れるので、太陽系に知的生命が存在することに気づいてもらえるとの想定です。そして、地球人類が容易に実行できるのであれば、よその恒星系の文明も (フロンに限らず何らかの人工物質で) やっているかも知れないから、探してみようという提案です。

2010年9月22日水曜日

天王星と木星が衝

9月 22日(水) 10時に天王星が衝、同 12時に木星が衝となります。「衝」とは地球から見た場合の天体の位置が太陽と正反対になること(その天体と太陽の黄経の差が180°となること、説明図)です。

木星や天王星など、地球より外側の軌道を回っている外惑星は、衝のときに地球にもっとも近づき、もっとも明るくなります。今回の衝では、木星は -2.9等、天王星が +5.7等になります。

衝の位置にある天体は、地球から見た場合に太陽の正反対側あります。したがって、太陽が西に沈むと同時にその天体は東の地平線から昇ってきます。木星と天王星も、太陽が西に沈んでしばらくすると、東の空の低い位置に輝いているのを見ることができます。

翌 23日(木)は中秋の名月、すなわち満月です。そして、19時 44分に木星が月の南 7°09'、19時 51分に天王星が月の南 6°16' まで接近します。月を目標にすれば、木星と天王星を見つけるのは容易です。

なお、24日(金)には金星が最大光度 -4.6等に達します。日没時の南西の空、地平線からの高度 10°前後のところで煌々と輝いています。さらに、29日(水)には金星が火星に 6°30' まで接近します。


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2010年9月16日木曜日

太陽系めぐり

このブログでたびたび紹介している 『ボストン・グローブ』紙の “ザ・ビッグ・ピクチャー” が、太陽系内のいろいろな場所の写真を集めています:

どれもすばらしい写真なのですが、4つだけ注釈を加えておきます:
  • 3番の写真は、太陽の近くから見た地球と月です。NASA の水星探査機メッセンジャーが今年 5月 6日に撮影しました。暗黒の宇宙空間で地球と月がよりそっています。
  • 24番の写真は、木星の発光現象です。左側は今年 6月 3日、右側は今年 8月 20日に発生したものです。木星の大気圏に彗星か小惑星が突入したものとみられています。
  • まれにしか発生しない珍しい現象と考えられてきましたが、このように短期間に相次いで観測されるとなると、考え直す必要があるのかも知れません。もともとわりと頻繁に起きている現象だったが、観測機器の性能向上や価格低下による普及のおかげで、発見される率が上がってきたのか。それとも、これまではまれな現象であったが、そうではなくなりつつある ―― つまり、太陽系内で天体衝突の発生頻度が上がってきているのではないか。おりしも 9月 8日から 9日にかけて、約 12時間のうちに 2つの小惑星が相次いで月の軌道の内側にまで入り込み、地球のそばを通過していくという「事件」があったばかりです (このブログの 8月 24日付記事「木星で発光現象」と 9月 8日付記事「2つの小惑星が地球に接近」を参照してください)。
  • 29番の写真は、土星の衛星タイタンの前を横切る衛星ディオーネ。靄(もや)のかかった大気に覆われ、地表がまったく見えないタイタンと、大気がないディオーネの違いがよくわかります。
  • 32番の動画は、土星の衛星エンケラドスの南極付近にある割れ目から氷の微粒子が噴き出している様子を撮したものです。30番31番もエンケラドスです。前者にも南極付近から噴き出している氷のジェットが写っています。背後に薄く帯状に伸びているのは土星の輪の一部です。

2010年9月15日水曜日

20億年前の原子炉

以下は、約 20億年前に存在した「原子炉」の痕跡の写真です。ウラン鉱床の中でウラン 235 が自然に臨界量に達し、核分裂の連鎖反応が繰り返されていました。現代の原子炉内でおきているのと同じ核分裂の連鎖反応が数十万年間にわたって持続していたとのことです。人が手を伸ばしている先にある黄色い岩石が「原子炉」の痕跡である酸化ウランです:

この天然原子炉が見つかったのは 1972年のことで、場所はアフリカ中部のガボン共和国にあるオクロ鉱山(地図)です。

オクロの天然原子炉の痕跡は、現在の原子炉から生み出される核廃棄物が地下に埋設された後、地質学的な長い時間の中でどのように変化するか、あるいは変化しないかを調べるための貴重な資料となっています。

詳しいことはウィキペディアの解説をお読みください:

タイトルは忘れましたが、SF 作家・豊田有恒氏の小説にオクロの天然原子炉を題材にしたものがありました。天然原子炉が発散した放射能や放射性物質が地球上の生物の進化を促進したという内容だったと記憶しています。

2010年9月14日火曜日

箱根山の地震

箱根山(北緯 35.23°、東経 139.02°、地図)の震源分布図を作ってみました。利用したのは、地震活動解析システムと気象庁一元化地震カタログです。

図 1 は 1981年 1月 1日から 1990年 12月 31日までの 10年間、図 2 は 1991年 1月 1日から 2000年 12月 31日までの 10年間、そして 図 3 は 2001年 1月 1日から 2010年 9月 11日までの約 9年 9ヶ月の間に発生した地震の震源を図示したものです。

図1 1981~1990 (クリックすると拡大します)
図2 1991~2000 (クリックすると拡大します)
図3 2001~2010 (クリックすると拡大します)

各図とも、左上が平面図、その右が南北方向の断面図、下が東西方向の断面図です。平面図の中央から少し上が箱根山の位置です。断面図は地下 30km まで表示しています。

3つの図を比べると、時間の経過とともに箱根山の下で発生する地震の数が増加し、震源が箱根山の地表近くに集まってきている様子が見てとれます。地震数の増加には、観測ネットワークの充実と観測機器の性能向上も影響していると思われます。

富士山についても同様の図を作ってみましたが、箱根山のような変化は見られませんでした。


参考文献
  • 鶴岡 弘 「WWWを用いた地震情報検索・解析システムの開発」 情報処理学会研究報告; データベースシステム 115-9、情報学基礎 49-9、65-70 (1998)

2010年9月13日月曜日

クリーブランド山の警戒レベル引き上げ

アラスカ火山観測所の情報によると、9月 12日、アリューシャン列島のクリーブランド火山(地図)から高さ約 7500m の噴煙が上がっているのが確認され、同山の警戒レベルが “ADVISORY”、航空カラー・コードが “イエロー” に引き上げられたとのことです:

活発な活動を続ける火山が多い(地図)アリューシャン列島の中でも、クリーブランド山はとりわけ活発な火山で、ほとんどいつも山頂から白い噴煙が上がっています。しかし、高度 7500m まで噴煙が上がっているとなると航空機への影響が出てきます。アリューシャン列島周辺は、日本と北米を結ぶ航空路にあたっています。


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2010年9月12日日曜日

「釣魚島に目配りを」

尖閣諸島に関する日本と中国の対立について、アメリカの主要紙『ザ・ニューヨーク・タイムズ』が、1989年に起きた天安門事件についての報道でピューリッツァー賞を受賞したことのあるジャーナリスト Nicholas Kristof 氏の寄稿を 9月 10日付で掲載しています:

記事のタイトルに「Diaoyu Islands(釣魚島)」という中国側の呼び名を使っている時点で、Kristof 氏が日中のどちらの言い分に正当性があると考えているかにじみ出ていますが、一般のアメリカ人にとって馴染みのほとんどない尖閣諸島問題のポイントを簡潔にまとめた第 4段落、第 5段落、第 6段落はわれわれ日本人にとっても参考になると思いますので、以下にテキトー訳します:
もう一つの問題は、もし尖閣諸島で戦闘が発生した場合、理論的にはアメリカは日本を救援する義務があるという点である。日中のどちらが尖閣諸島を領有しているかについてアメリカは立場を明らかにしていないが、日米安全保障条約は日本が行政的に管理している地域の防衛をアメリカが支援するむね明記している。さらに、1972年にアメリカが日本に沖縄を返還したとき、アメリカは日本が尖閣諸島を行政的に管理することに同意している。したがって、尖閣諸島が必然的に日本のものであるということにわれわれが同意しているわけではないとしても、日本が尖閣諸島について戦争を遂行するときにはわれわれは日本を支援せざるを得ないという不条理な立場におかれている。

現実問題としては、もちろん、少しばかりの不毛な岩礁のためにアメリカが条約上の義務を遵守する可能性はゼロである。中国のものである可能性が多分にあるいくつかの島をめぐって、われわれが中国と核対決をする危険を冒すことはない。しかし、われわれが支援しなければ、アメリカと日本の安全保障上の関係は破綻の限界点にまで達するだろう。

それでは、日中どちらの国がこれらの島々に対するより正当な主張をしているのだろうか? 歯切れのよい答えというわけにはいかないが、私の感じでは中国である。中国の航海記録は、何世紀にもわたってそれらの島々が中国のものであったことを示している。1783年製の日本の地図も同様に、それらの島々が中国のものであることを示している。日本がそれらの島々を「発見」したと主張したのは 1884年になってからのことで、自国に併合したのは台湾を獲得したのと同じ 1895年のことである。(それらの島々が “terra nullis”、すなわち 「どこの国にも属していない土地」であったと主張することも可能である。)

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カトラ山で地震 ― アイスランド (続報 21)

(グラフはクリックすると拡大します)

上のグラフは 9月 11日(現地時間)までにカトラ山で発生した地震数の推移です。目立った増加や傾向の変化はありません。依然として、ほとんどの地震は西から北西にかけての山腹・山麓(エイヤフィヤトラヨークトル氷河に近い側)で発生しています。

8月 24日以降、10km より深いところを震源とする地震は発生していません。
  • 8月27日 04:51:14 深さ 1.1 km M1.3
  • 8月28日 03:42:58 深さ 1.0 km M1.3
  • 8月28日 05:52:17 深さ 1.0 km M0.9
  • 8月29日 03:48:14 深さ 1.0 km M1.3
  • 8月29日 07:18:23 深さ 1.6 km M0.5
  • 8月30日 00:05:14 深さ 1.1 km M1.7 (カルデラ内)
  • 8月30日 00:05:15 深さ 1.0 km M1.3
  • 8月30日 00:12:11 深さ 1.0 km M1.1 (カルデラ内)
  • 8月31日 01:10:55 深さ 1.3 km M0.7 (カルデラ内)
  • 8月31日 06:35:20 深さ 0.4 km M0.4
  • 8月31日 08:26:53 深さ 0.0 km M1.0
  • 9月01日 00:50:14 深さ 0.1 km M0.8
  • 9月01日 07:39:48 深さ 0.1 km M0.4
  • 9月01日 11:32:48 深さ 0.1 km M1.0
  • 9月01日 13:30:26 深さ 0.1 km M0.7
  • 9月01日 13:31:07 深さ 1.0 km M0.7
  • 9月01日 13:35:06 深さ 1.0 km M1.2
  • 9月01日 14:03:22 深さ 0.1 km M0.7
  • 9月01日 17:03:32 深さ 0.1 km M0.8
  • 9月04日 00:27:26 深さ 0.1 km M1.0
  • 9月04日 20:25:15 深さ 1.4 km M0.7
  • 9月05日 23:08:07 深さ 0.1 km M1.4
  • 9月05日 23:08:08 深さ 1.1 km M2.0
  • 9月06日 01:41:28 深さ 2.6 km M0.8
  • 9月06日 07:11:08 深さ 4.4 km M0.5
  • 9月06日 08:23:37 深さ 1.9 km M0.8
  • 9月06日 11:10:53 深さ 1.0 km M1.0
  • 9月06日 16:54:17 深さ 1.0 km M0.9
  • 9月06日 22:59:36 深さ 1.0 km M0.7
  • 9月07日 00:06:59 深さ 1.0 km M0.8
  • 9月07日 01:08:08 深さ 1.0 km M0.1
  • 9月07日 03:57:00 深さ 1.0 km M1.2
  • 9月07日 03:57:10 深さ 1.0 km M1.3 (カルデラ内)
  • 9月07日 07:18:00 深さ 1.0 km M1.6
  • 9月07日 18:21:21 深さ 1.0 km M1.5
  • 9月08日 01:53:41 深さ 1.0 km M0.5
  • 9月08日 03:13:17 深さ 1.0 km M0.3
  • 9月08日 07:13:44 深さ 1.0 km M0.5
  • 9月08日 16:06:01 深さ 1.0 km M1.4
  • 9月08日 16:26:25 深さ 1.0 km M1.1
  • 9月08日 16:33:40 深さ 1.0 km M1.7
  • 9月09日 00:10:11 深さ 1.0 km M1.9
  • 9月09日 01:54:29 深さ 1.0 km M0.4 (カルデラ内)
  • 9月09日 03:15:16 深さ 1.0 km M0.6 (カルデラ内)
  • 9月09日 05:52:55 深さ 1.0 km M0.9
  • 9月09日 07:00:48 深さ 1.0 km M1.1
  • 9月09日 08:01:16 深さ 1.0 km M1.1
  • 9月09日 08:22:43 深さ 1.0 km M1.5
  • 9月09日 08:35:27 深さ 5.3 km M1.2 (カルデラ内)
  • 9月09日 08:52:48 深さ 1.0 km M0.8 (カルデラ内)
  • 9月09日 10:40:21 深さ 0.8 km M0.5
  • 9月10日 12:05:29 深さ 1.0 km M0.9 (カルデラ内)
  • 9月11日 13:58:27 深さ 1.1 km M1.4
  • 9月11日 14:31:33 深さ 1.1 km M1.9

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2010年9月9日木曜日

コロンビアに隕石落下、直径 100m のクレーター

現地時間 9月 5日(日)午後 3時すぎ、南米・コロンビアで非常に明るく巨大な火球が目撃され、落下地点で爆発がおきました。落下地点には直径 100m のクレーターができているとのことです:

上記の 2つの記事には少し異同があるので、総合した上で以下に要約・テキトー訳します:
コロンビアの地元当局は、サンタンデール県中央部に落下した「巨大火球」が隕石であったことを確認した。同県では数千人がこの火球を目撃した。

コロンビアのメディアは、現地時間日曜日の午後 3時 15分に空から落下し大爆発を起こした火球を目撃した人たちの証言で終日持ちきりである。

サンタンデール県の県庁所在地・ブカラマンガ市(地図)の市長は、現象の原因が隕石であり、同県内のサン・ホアキンという町(地図)の近くに落下して直径 100m のクレーターを残していることを確認した。衝突の衝撃が同地域を揺さぶったが、これまでのところ死者や負傷者が出ているという情報はないとのことである。

初期の段階では物体の正体が不明だったため、コロンビア空軍が出動し、衝突地点を確認した。

コロンビア空軍は、上空から爆発のあった地点を確認するためヘリコプター(複数)を派遣した。

ナリーニョ大学天文台の台長はラジオ番組で、落下したのは隕石であると語った。

サンタンデール県の農村地域では、爆発によって窓ガラスが粉々になったとの通報(複数)が警察に寄せられている。

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2010年9月8日水曜日

2つの小惑星が地球に接近

日本時間の 9月 8日から翌 9日の朝にかけて、2つの小惑星が相次いで月の軌道の内側に入り込み、地球に接近します:

最初に接近するのは 2010 RX30 と名付けられた小惑星で、8日の午後 6時 51分(日本時間)に地球から 24万 8000km(月と地球の距離の約 60%)のところを通過していきます。この天体の直径は 10~20m と推定されています。

続いて接近するのは 2010 RF12 と名付けられた小惑星で、9日の午前 6時 12分(日本時間)に地球まで 7万 9000km (月と地球の距離の約 20%)に接近します。この天体の直径は 6~14m と推定されています。

これらの天体はアメリカ・アリゾナ州にあるカタリナ掃天天文台で 9月 5日に発見されたものです。この程度の大きさの小惑星は地球に近づいてからでないと発見できないため、発見から地球最接近までが数日という短い時間になってしまいます。今回のように地球のそばを通過していくだけならよいのですが、万が一、地球の大気圏に突入する、あるいは地表/海面に衝突するということが判明しても、観測準備や避難の時間がほとんどないことになります。


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ニュージーランドの大地震は予知されていた?

大きな地震の後にはたいていこの種の話が出てくるのですが、インド南部・マンガロール(地図)在住の学者アルナチャル・クマール博士(Dr Arunachalam Kumar)の自然災害予知がまた的中したと話題になっています:

報道によると、8月 20日にニュージーランドで発生したクジラの大量座礁について電子メールで問い合わせを受けたクマール博士は、「このクジラの大量座礁は、7日以内に起きるインドネシアの火山噴火と 2週間以内に起きる地震の前兆である」 と回答したとのことです。

はたして、8月 29日にインドネシアのシナブン山が 410年ぶりに噴火し、9月 4日にニュージーランドで大地震が発生しました (注: 発生時期は予測よりわずかに遅れています)。

クマール博士の専門は解剖学で、KS ヘッジ・メディカル・アカデミーの教授(記事によっては学部長)のようですが、アマチュア・ナチュラリストという肩書きも散見されます。以下は長いページですが、その中の “A LITTLE BIRD TOLD ME(小さな鳥が教えてくれた)” というタイトルの文章に、博士が動物の行動に興味を持つようになったきっかけが書かれています:

クマール博士がなぜ注目されているかというと、これまでにもクジラ類の座礁情報などをもとに数々の自然災害を予知し的中させてきているからです。

博士を有名にしたのは 2004年の出来事です。同年の 11月末、オーストラリア・タスマニア島で 120頭、ニュージーランド・北島のコーラマンデル(Coromandel、地図)で 50頭のクジラがほぼ同時に海岸に乗りあげ、ほとんどが死ぬという事件がありました。2004年 12月 4日、博士は米国・プリンストン大学が運営するメーリング・リストに次のようなメールを配布しました:
過去何年間にもわたって確認してきた私の観察結果によると、世界各地で散発的に発生するクジラやイルカの集団自殺は、電磁場座標の変化や擾乱、さらに、これから起ころうとしている地殻構造の再配置と何らかの関係がある。

地震の発生日と発生地点を追跡記録した結果、クジラ類の大量座礁から通常 1~2週間以内に大きな地震が発生することがかなり確実であると私は考えている。

そのような海棲哺乳類(この場合はクジラのこと)の大量死がオーストラリアの海岸で起きたとの先週の報道について、私は警告の意味を込めて書いた。数日のうちに地球上のどこかで巨大な打撃(地震)があっても、私は驚かないだろう。

クジラの群の異常な「死の願望」とその不可避の結末である地震との間の関係については、さらに熱意に満ち先入観にとらわれない研究が必要であろう。

このメールの 3週間後、スマトラ沖大地震(M9.1)とインド洋大津波が発生しました (注: これも「1~2週間以内」という記述から少し遅れています)。

「1~2週間以内」という時期の指定はあるものの、「地球上のどこかで」という場所の指定は実質的に何も言っていないに等しく、本当に予知が的中したと考えてよいのか疑問が残ります。しかし、それ以後もクマール博士は数々の自然災害を予知してきたらしく、検索すると過去の報道記事がいくつか見つかります。インドのメディアの中には、クジラ類座礁のニュースが伝わるとクマール博士に見解を求めるという慣行があるところもあるようです。以下は報道記事の例です:

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チリで 2火山が活発化

ペテロア(Peteroa)山

チリとアルゼンチンの国境地帯にあるペテロア山(地図)が小規模な噴火をおこしたとのことです。以下はチリとアルゼンチンの報道です:

以下はチリ国家地質・鉱山局(Sernageomin)の資料です。それによると、 9月 6日にペテロア山が火砕性の噴火をおこし、黒色の噴煙を山頂から 1200m の上空まで吹き上げ、噴煙は風下側約 50km の地点にまで到達したとのことです:

9月 6日の午前 6時 47分には同火山群から南東に約 15km、深さ 13.4km のところで M5.2 の地震が記録されています。

ペテロア山はほぼ連続的に噴煙を上げ続けている火山ですが、9月 4日~5日の週末ごろから火山活動が活発化したようで、4日には火口から 3000m を超える高さまで噴煙が立ちのぼっているのを空軍の航空機が確認しています。


ビジャリカ(Villarrica)山

アルゼンチン・ブエノスアイレスの VAAC(航空路火山灰情報センター)が発表している資料によると、チリ中部のビジャリカ山(地図)から噴煙が上がっているのが、人工衛星が撮影した写真で確認されたとのことです。

理科年表(丸善書店)によれば、ビジャリカ山は 1948~49年の噴火で36(?)人、1964年の噴火で 22人、1971~72年の噴火で15人の死者を出しています。

ちなみに「東京 VAAC」 のホームページは以下にあります:

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2010年9月7日火曜日

2歳の女児が地震予知? ― ニュージーランド

9月 4日(土)午前 4時 35分(現地時間)にニュージーランドで発生した M7.0 の大地震を、2歳になる娘が 20分前に予知していた、と母親が語っているというお話です:

以下に記事の内容をかいつまんでテキトー訳で紹介します:
クライストチャーチ在住の母親が 2歳になる娘の隠れた能力に気づいた。

母子家庭の母親 Rachel Murray は、土曜日の朝 4時 15分頃、耳をつんざくような娘の悲鳴で目を覚ました。「これまで、うちの娘がこんなに激しい叫び声を上げたことはありませんでした。娘は激しく震えて、息をするのも困難な状態でした。娘が夜中に目を覚ますことはこれまでまったくなかったんです。」

娘を何とか眠らせようと努力したがだめだった。Ms Murray はあきらめて、自然に叫び声がおさまるまで娘をそのままにしておくことにした。

「1分ほどたつと娘は静かになりましたが、そのとたんに周りのあらゆるものが揺れ始めたんです。ものがぶつかったり、きしんだりする音が鳴り響きました。天井が落ちてくるんじゃないかと私は心配しました。娘の部屋まで走って行くと、娘はベッドで上半身を起こしていましたが、まったく落ち着いた様子でまっすぐに私の顔を見つめました。その表情は『わたしはこれが起こるのを知っていたのよ』と言っているようでした。」

「私はすぐに娘を抱えてドアフレームの下に避難しました。」(注:欧米ではドアフレームが頑丈なので、地震のときにはドアフレームの所に避難せよということになっています。)

初めのうち、Ms Murray は娘の悲鳴と地震は無関係だと考えていた。しかし、娘が再び叫び声を上げ始め 「ママ、じしん」 と言った数秒後に大きな余震が襲って来るに及んで、関係があると考えるようになった。

「娘が泣き叫び始めると心臓が止まりそうになります」、「子供たちには幽霊とかお化けとかが見えるという話を聞いても信じなかったけれど、今は信じるわ」 と Ms Murray は語っている。

Ms Murray の 自宅は地震の被害を免れた。電気や水道も止まることはなかった。

なお、記事のタイトルにある “Chch” は、地震で大きな被害を被ったニュージーランド第 2 の都市クライストチャーチ(Christchurch)の略号です。


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宇宙の暗い渦巻き

昨年 12月、ノルウェー上空に出現し世界中の注目を集めた「光の渦巻き」にそっくりな天体がハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されました:

写真を直接クリックするか、記事の右側にある 「Fullsize Original」、「Large JPEG」、「Screensize JPEG」 と書かれている部分をクリックすると、拡大した写真を見ることができます。

この天体は IRAS 23166+1655、AFGL 3068、あるいは LL Pegasi(ペガサス座 LL星)と呼ばれ、強い赤外線を出していることで知られていました。地球から約 3000光年の彼方にあり非常に暗いため、これまで撮影された写真では点にしか写っていませんでした。今回、ハッブル宇宙望遠鏡が 33分という長い露光時間をかけて撮影したところ、幾何学的にほぼ完璧な渦巻きの形状が現れました。

この渦巻きの背後には二重星系が隠れています。2つの恒星が互いに相手の周りを回っているのですが、そのうちの一方の星が炭素星で、この渦巻きの原料を供給していると考えられています。

太陽のような恒星は、水素を核融合させてヘリウムを作りエネルギーを発生させています。燃料となる水素を使い切ってしまうと、今度はヘリウムを核融合させて炭素を作り出すようになります。そのような段階に至った恒星が炭素星です。炭素星が周囲の宇宙空間にまき散らす太陽風には炭素が多く含まれています。

二重星系は炭素星が放出した炭素を多く含む「雲」に囲まれているため、写真には現れていません。渦巻き状の構造は、この炭素を多く含む「雲」に二重星の回転運動が作用することによって形成されたと考えられています。


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2010年9月6日月曜日

ニュージーランド南島で M7.0 (補足)

9月 4日(土)にニュージーランドで発生した M7.0 の地震について、地質学者 Chris Rowan 氏(専門は古地磁気学)のブログに、プレートテクトニクスの観点からの解説が載っています:

トランスフォーム断層が縦断する南島

ニュージーランドの主要部分は北島と南島という 2つの島からなっています。

上記ブログ記事の最初の図は、ニュージーランドの地勢の概観です。右下の震源球から伸びている矢印の先端付近で今回の M7.0 の地震が起きました。

図の右上から南下し、ニュージーランドの北島の東側を回り込むようにして南島の北東端に上陸しているのがケルマディック海溝(Kermadec Trench)です。同海溝は北でトンガ海溝につながっています。ケルマディック海溝ではほとんどの部分で付加体が形成されていません。しかし、南端部分(ニュージーランド北島の東側)では付加体が発達して海溝が埋め尽くされ浅くなっているため、ヒクランギ・マージン(Hikurangi Margin)あるいはヒクランギ・トラフと呼ばれています。

ケルマディック海溝-ヒクランギ・マージンでは太平洋プレートがオーストラリア・プレートの下に沈み込んでいます。この沈み込み帯は右横ずれの成分を持っています。そのため、この沈み込み帯がニュージーランド南島に上陸するとマールボロ断層帯(MFZ)とアルパイン断層(AF)という右横ずれのトランスフォーム断層となります。今回の M7.0 の地震は、この断層帯の南側で発生しました。

アルパイン断層は南島の南西で再び海に出て、マッコーリ海溝につながります。マッコーリ海溝では、ケルマディック海溝とは逆に、オーストラリア・プレートが太平洋プレートの下に沈み込んでいます。このように沈み込む主体が逆転する現象は、台湾でも見られます。台湾の北では、琉球海溝でフィリピン海プレートがユーラシア・プレートの下に沈み込んでいるのに対して、台湾の南では、マニラ海溝でユーラシア・プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込んでいます。


プレート境界の移動

2番目の図は、今回の M7.0 の地震がなぜマールボロ断層帯-アルパイン断層のかなり南で発生したかを説明するものです。

ケルマディック海溝-ヒクランギ・マージンは後退=南下しています。この沈み込み帯の後退=南下によって、それに連なるマールボロ断層帯も徐々に南に広がると同時に、活動的な部分も南に移っていることをこの図は示しています。

今回の M7.0 の地震は、このようにして南に広がりつつある部分の前衛で発生したと考えられます。まだ確定しているわけではありませんが、今回の M7.0 の地震は、新たに形成された断層で発生したとの報道があります。すでに、全長 22km、水平方向に最大 4m ずれた新たな断層が 16000年前に堆積した地層を切り裂いて地表に現れているのが見つかっています。科学者によれば、この断層が見つかった地域では氷河期以降地震活動は起きていなかったとのことです。

また、今回の大地震はきわめて短時間のうちに発生した 2つないし 3つの地震が重なったものだとの見解も出されています。

なお、沈み込み帯が後退する(海洋プレートの移動方向とは逆の方向に海溝の軸が移動する)現象は日本海溝でも起きています。そのため、日本海溝は日本列島から徐々に遠ざかっているとされています。


火山の分布

上記のブログ記事では触れていませんが、ニュージーランドの火山について補足します。ニュージーランドでは、北島に火山が多数分布しているのに対して、南島には火山がありません(火山地図)。これは、北島には東のケルマディック海溝-ヒクランギ・マージンから太平洋プレートが沈み込んでいるので島弧型の火山が形成されるのに対して、南島には沈み込んでいるプレートがないので、火山が形成されないということで理解されます。


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2010年9月4日土曜日

地中電磁波観測所を建設 ― 和歌山県串本町

京都産業大学の筒井稔教授が、和歌山県串本町樫野(紀伊大島、地図)に、地中電磁波をとらえる観測施設を建設しているとのことです:

多点観測網の一環として、和歌山県白浜町や三重県の観測所に加えて新たに串本町に建設中とのことです。

地中電磁波観測のもう少し詳しい説明が京都産業大学のサイトにあります:

手法は異なりますが、以下は ULF(極低周波/超低周波)帯の磁気パルス観測網を展開して地震予測を試みているクエイク・ファインダー(QuakeFinder)社のサイトです。表示されている地図はグーグル・マップをベースにして作られているので、拡大・縮小、マウスで掴んでスクロールなどの操作ができます。私はほぼ毎日見ていますが、これまでのところ異常が表示されたのをリアル・タイムで見たことはありません:

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「光芒」現象 ― 山口県岩国市

9月 2日朝、山口県岩国市で「光芒」現象が撮影されました:

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ニュージーランド南島で M7.0

9月 4日(土)午前 4時 35分(日本時間同日午前 1時 35分)、ニュージーランド南島の陸上で M7.0 の地震が発生しました(地図)。震源の深さは暫定値で 5km。震央はニュージーランド第 2の都市・クライストチャーチから 45kmの地点。被害が出ている模様です。

現場は、トンガ・ケルマディック海溝が右斜め収束を起こしながら南島に上陸し、アルパイン断層に移り変わっている場所の南側です。アルパイン断層系では右横ずれ断層が発達しています。

USGS が発表しているモーメント・テンソル解を見ると、今回の地震が右横ずれ断層の活動によって引き起こされたことがわかります。

地震との関連は不明ですが、ニュージーランドでは 8月 20日、北部の海岸に 73頭のゴンドウクジラが打ち上げられているのが見つかっています。同じ海岸では、3年前にも 100頭が打ち上げられていたそうです。

人為的な原因の可能性もありますが、6月には次のような報道がありました:

2010年9月3日金曜日

セウラワ・アガム山の警戒レベル引き上げ ― インドネシア

9月 2日、インドネシア・スマトラ島最北部のナングロ・アチェ・ダルサラーム特別州(インドネシアの地方行政区画)にあるセウラワ・アガム山(スーラワ・アガム山、Mt. Seulawah Agam、地図)で地震が増加し、警戒レベルが引き上げられました:

上記『ジャカルタ・ポスト』紙の記事とインドネシア火山調査所(VSI)の発表を約言すると以下のとおりです:
  • セウラワ・アガム山の火山活動が活発になってきた。特に地震が増加しているので警戒レベルを 1段階引き上げてレベル 2とした。(記事では警戒レベルが引き上げられたのは木曜日となっていますが、VSI の発表では 9月 1日水曜日となっています。)
  • 8月中、火山性微動は 1日あたり 80回(通常の 3~4倍)、火山性地震は 1日あたり 99回(通常の 5~6倍)に増加した。山体での構造性地震を 7回、その他の構造性地震を 40回(1日あたり 1~2回)観測した。
  • セウラワ・アガム山はしばしば霧に覆われているので、目視による観測には制約がある。晴れた日の観測によると山体表面に大きな変化はなく、また山頂の火口から噴煙も上がっていない。

セウラワ・アガム山は海抜 1810m の成層火山で、しばらく噴火していないので深い森林に覆われています。1510年前後と 1839年 1月に噴火の記録があり、ともに火山爆発指数 VEI は 2 と見積もられています。今回噴火に至るとすれば、171年ぶりの噴火となります。

南隣の北スマトラ州では、8月 29日にシナブン山が 410年ぶりの噴火をしています。


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エカルマ山の警戒レベル引き上げ ― 千島列島

サハリン火山噴火対応チーム(SVERT)の 8月 30日付週報によると、千島列島北部・エカルマ島(地図)にあるエカルマ山の警戒レベルが「イエロー」に引き上げられたとのことです:

以下にレポートの内容を摘記します:
  • 8月 10日、エカルマ山から強力な水蒸気の噴出があり、海抜 1800m まで到達しているのをサリチェフ峰調査隊が目視 [サリチェフ峰(日本名:芙蓉山、松輪富士)は千島列島・Matua 島(日本名:松輪島)にある火山]
  • 8月 24日、調査隊がエカルマ島に上陸、南側の山腹で山頂から 250m 下ったところに新たにできた火口からガスが激しく噴出していることを確認。火口周辺の山腹は、厚さ 5cm を超える細かな火山灰に覆われていた。南側の山腹で最近 2回の火砕流(あるいは火砕サージ)が発生していたことが判明。
  • 上記の観測から、エカルマ山は今年 6月初めから 7月末の間に小規模な噴火をおこしていたとみられる。
  • 近い将来、火山活動がさらに激しくなることが予想されるので、警戒レベルを「イエロー」に引き上げる。
  • エカルマ山は 1767年から 1769年にかけて噴火。1980年にも小規模の噴火をおこしている。

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2010年9月2日木曜日

ネバド・デル・ウイラ山に噴火の兆候 ― コロンビア

現地時間 9月 1日朝、南米・コロンビアの火山 ネバド・デル・ウイラ(地図)が大量の火山灰を噴出し始めました:

以下は、ネバド・デル・ウイラの近くにあるポパヤン火山学・地震学観測所の 8月 31日付レポートです:

このレポートからかいつまむと ―― ウイラ山の警戒レベルは 3(イエロー)。同山では過去 1週間に 414回の地震を観測。その内 35回は岩盤の破壊に起因するもの、379回は山体内部での流体の運動にともなうものであった。31日の観測では、1日あたり 4400トンの二酸化硫黄ガスが放出されている。マグマが地表まで上昇してきており、今後火山活動がさらに激しくなることが予想される ―― とのことです。

先週、同じくコロンビアにあるガレラス山で噴火が始まり、警戒レベルが最高度の「レッド」に引き上げられましたが、その後活動が低下して警戒レベルも 1段階引き下げられています。


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「ちきゅう」が沖縄トラフを掘削へ

海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が沖縄トラフの海底にある熱水噴出孔周辺の掘削を行うそうです:

海洋研究開発機構のウェブサイトには研究の概要が以下のように述べられています:
沖縄トラフ熱水域における熱水噴出孔周辺を掘削し、柱状地質試料を採取する事により、熱水活動域の海底下で活動している微生物群集の数および種類、さらにその生態系の実態を世界に先駆けて解明することを目指します。

ここで得られる知見は、現在の地球に残された地下圏における生態系の役割を明らかにするとともに、熱水中に高濃度に含まれるメタンの海底下での生成・供給メカニズム、あるいは海底下熱水鉱床の生成と海底下微生物群集の拡がりの関わりの解明に大きく寄与するものと期待されます。

詳しい、そして少しくだけた解説が以下にあります。末尾に、掘削した孔(人工熱水孔)に設置する「カンダタシステム(現場培養器)」の図があります:

「カンダタ」が何を意味するのか ―― おそらく、芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』の主人公の名前からきているのだろうと思います。図を見ると、メキシコ湾の原油流出事故のイメージと重なって少し嫌な予感がします。

上記新聞記事では「掘削のための航海は九月一日から十月三日までの三十三日間」となっていますが、海洋研究開発機構のウェブサイトによれば、現在「ちきゅう」は母港に停泊中で、出航は 9月 5日となっています。

沖縄トラフ琉球海溝(南西諸島海溝)は混同しやすいですが、まったく別物です。記事にも「琉球諸島の西に広がる沖縄トラフ」、「那覇市の約百五十キロ北西」と書かれているように、沖縄トラフは琉球諸島よりもアジア大陸に近い側、つまり東シナ海側、それに対して琉球海溝は太平洋(フィリピン海)側にあります。両者は、位置も違えばプレートテクトニクス上の性質も真逆と言ってよいほど違います。以下の地図と断面図を見比べると、そのことがよくわかると思います:

琉球海溝を北にたどると南海トラフにつながります。一方、沖縄トラフの北端は九州の西で中央構造線につながると考えられています。


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ヘビが原因の停電 ― 鹿児島県霧島市

8月 30日、鹿児島県霧島市(地図)の JR 日豊線トンネル内で、ヘビが架線に引っかかったために停電、約 2時間にわたって列車の運行ができなくなりました:

昨年に比べて、今年はヘビが原因となった停電は少ないようです。


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2010年9月1日水曜日

コンゴで火山噴火

アフリカ中央部・コンゴ民主共和国(隣接するコンゴ共和国とは別)東部にあるビルンガ国立公園(地図)内の火山が噴火し、貴重な野生生物が生息する地域に向かって溶岩が流れ出しているとのことです:

アイルランドの 1紙のみが 8月 31日付で短く伝えているもので、詳しいことは不明です。ビルンガ国立公園内の主要な火山としては、ニイラゴンゴ山とニャムラギラ山がありますが、記事にはどの火山が噴火したのか書かれていません。

中国のニュースサイトが 30日付で次のような写真を掲載しています:

ビルンガ国立公園は世界遺産に指定されています:


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