2009年4月26日日曜日

ラクイラ地震とプレートテクトニクス(補足)

4月21日付で「ラクイラ地震とプレートテクトニクス」という記事をこのブログに掲載しました。4月6日にイタリアで発生したラクイラ地震の発震機構をプレートテクトニクスの観点から説明する内容でしたが、その理解を深めるのに役立つと思われる解説を、コロンビア大学(アメリカ・ニューヨーク州)のサイトで見つけました。新生代に入ってからのイタリア半島の地史をわかりやすく解説しています:
4枚の図が掲載されていますが、説明の都合上、左から順番に図1、図2、図3、図4 と呼ぶことにします。

各図の上部に書かれているのは地質年代ですが、意味は以下のとおりです:
Miocene: 中新世(2350万年前~530万年前)
Pliocene: 鮮新世(530万年前~180万年前)
図中で使われる記号の凡例は以下のとおりです:
Arc magmatism: 島弧の火成活動
Active subduction: 活動的な沈み込み帯(海溝)
Thrust belt: 逆断層帯、衝上断層帯
Normal Faulting: 正断層
Newly formed oceanic crust: 新たに形成された海洋地殻
Mesozoic oceanic crust: 中生代に形成された海洋地殻
以下は、解説を意訳したものです:
カラブリア弧は、沈み込み帯を先頭に、伸張領域を背後にしながら、急速に南東方向へ移動した。この移動は、イオニア海を構成する古い中生代の海洋底が沈み込んでいる海溝が後退することによって起きたと考えられている。

図 1 (中新世早期) は、1500万年前の状態を示している。カラブリア弧(図の左側で太い赤線と太い黒線の間の部分)は、サルディニアと結合している。また、古い深い海洋が、今日ティレニア海がある場所に存在している。

図 2 (中新世中期)では、東方向への海溝の後退が、カラブリア弧とサルディニアを分離しようとしている。

図 3 (鮮新世早期)は、300万年前までの状況を示している。カラブリア弧の移動によって古い海洋底は消滅しつつある。カラブリア弧の背後では、島弧の火成活動が起こり、エオリア諸島という火山列島が形成されている。カラブリア弧とサルディニアの分離は新たな海洋地殻の形成をもたらした。沈み込み帯の北部はイタリア半島と衝突し、アペニン山脈を形成した。

図 4 は、現在の状況を示している。沈み込み帯の衝突は、イタリア半島を縦断する形でアペニン山脈を形成している。沈み込み帯の残存部分であるカラブリア海溝は、シチリア島とイタリア半島の間に押し込められている。イタリア半島との衝突によって、カラブリア弧の移動が停止したのか、それともカラブリア海溝あるいはその一部がさらにイオニア海に向かって移動を続けるのかは、はっきりしていない。
新聞記事などでは、「アフリカプレートとユーラシアプレートが衝突している」との一言で片づけられてしまいますが、実際は非常に複雑なテクトニクスがはたらいていることがわかって頂けると思います。この地域の地質学的研究の歴史は世界で最も古く、歴史に名を残す著名な研究者が多く携わってきましたが、それら先人の努力にもかかわらず、さまざまな謎が未解明のままになっていました。しかし現在では、プレートテクトニクスが登場したことによって、それらの多くが解明され、統一的な理解が可能になっています。

Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency