私は「奄美諸島」と言い習わしてきましたし、気象情報でも「―諸島」と言っていたように思います。また、手元の地図も「―諸島」と表記しています。しかし、今後、国土地理院が発行する地図では「奄美群島」が決定地名として用いられることになりました。法令上や鹿児島県では、以前から「―群島」が使われてきたのだそうです。そう言われれば、国定公園の名前は「奄美群島国定公園」でした。
「諸島」と「群島」で意味に違いがあるのでしょうか。手持ちの『広辞苑』(岩波書店)では次のようになっています:
しょ‐とう【諸島】 二つ以上の島の集団。「伊豆―」
ぐん‐とう【群島】 群集している島々。「南洋―」
今一つはっきりしませんが、「諸島」の方は島の数が少なくまばらな感じ、「群島」の方は島の数が多く狭い範囲に集まっている感じがあります。島を木にたとえると、「林」と「森」の違いに似ているように思います。伊豆諸島を「伊豆群島」とは言いにくいことが、「諸島」と「群島」の違いを表しているのではないでしょうか。
ところで、辞書には「群島」の関連用語として「群島理論」という言葉が載っています。『広辞苑』では以下のように説明しています:
ぐんとう‐りろん【群島理論】 フィリピンやインドネシアなどの群島国家が主唱する国際法上の理論。群島全体をまとまった一単位として扱い、群島の外端を結ぶ線を群島基線とし、その外側に領海や経済水域を設け、内側の水域を群島国の主権のもとに置こうとするもの。
これを見て、今の時期に「―群島」にそろえたというのは、ひょっとして中国との海底資源争奪戦を意識したからなのかも知れないと一瞬考えましたが、考えすぎでした。