2010年8月24日火曜日

木星で発光現象

日本時間 8月 21日午前 3時 22分頃、木星で発光現象がありました。発見したのは熊本県のアマチュア天文観測者です:

木星に衝突した (というよりは木星の大気圏に突入した)天体は、直径数百メートルから 1km 未満と推定されています。

今年 6月 3日にも、今回の現象ときわめてよく似た発光現象が撮影されています:

この 6月 3日の発光現象については、ハッブル宇宙望遠鏡を使った追跡調査がおこなわれ、以下のような結論が出されています:
… the flash was caused not by an exploding asteroid or comet, but instead by a fiery meteor that didn't leave a lasting mark on Jupiter's cloud tops.

この発光現象の閃光は、小惑星や彗星の爆発によるものではなく、木星の雲頂に持続的な痕跡を残さない火球によるものであった。

今回観測された発光現象も同じ原因によるものと考えられます。発光があった地点には痕跡が残っていないことが確認されています。

国立天文台天文情報センター長である渡部潤一准教授のブログに、今回の発光現象を観測した機器類の詳細が記載されています:

1994年 7月におきたシューメーカー・レヴィ第 9彗星の木星突入は 「人類が初めて目撃した地球大気圏外での天体の衝突」とされていますが、その後、木星に何らかの天体が衝突したとみられる現象が何度も観測されています。上に紹介した今年 6月 3日の発光現象のほか、昨年 7月 19日にも何らかの天体が衝突した痕跡とみられる黒斑が木星面に見つかっています(このブログの 09年8月5日付「木星の黒斑、金星の白斑」を参照してください)。

特にこの数年、上記のような現象の発生頻度が上がってきているように私は感じています。観測機器の性能が向上したことや、価格が下がって普及したことによって発見される確率が高くなったことが主な理由だろうと思いますが、ひょっとしたら、実際に太陽系内で天体衝突が発生する率が上がってきているのではないか、との疑念もあります。

太陽系には、天体衝突の頻度が高まる時期が周期的にやってくるという考えがいくつかあります。たとえば、生物の大量絶滅の周期性を説明するために提案されたネメシス仮説。これは、太陽の未発見の伴星(暗い褐色矮星または赤色矮星)がオールトの雲を 2700万年周期で撹乱して莫大な量の岩や氷を太陽系内部に送り込む(もちろん太陽系外にはじき飛ばされるものもある)という説です。未発見の小惑星(準惑星?)がカイパーベルトを刺激して、やはり大量の岩や氷を太陽系内に向かわせるという説もあるようです。また、銀河系内で太陽は銀河面を上下に振動しながら回っているため、オールトの雲に周期的に潮汐力が働き、大量の彗星が発生するとの考えもあります。

以上は数千万年という長い周期の話ですが、不定期にもっと短い間隔で天体衝突多発の時期が訪れるということがあるかも知れません。たとえば、太陽系内のどこかで人類が気づかないうちに小天体の衝突や玉突きが発生して、複数の小天体の軌道が変わったり、衝突の結果生じた破片群が太陽系の内側に向かって広がったり、というシナリオです。今は木星付近をその前線が通過しており、破片の多くが木星の強大な重力に捉えられて発光現象を起こしているが、前線は徐々に火星や地球などの内惑星に近づきつつある ……。話がだいぶ SF的な方向にそれてしまいました。

今回木星面で発見されたような衝突が地球で起きたとしたら、人類絶滅までは行かないまでも大惨事になることは確実です。木星の大気圏は分厚く密度も高いのに対して、地球のそれは薄く密度も低い ―― 木星が爆発物処理班が着用するボム・スーツ(耐爆スーツ)をまとっているとすれば、地球は薄いネグリジェをはおっているにすぎないのです。

おりしも、地球に衝突する可能性のある小惑星や彗星を早期に発見するためのシステム ATLAS (Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System = 小惑星の地球衝突に対する最終警報システム)が科学者のグループによって提案されています:

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