2009年10月11日日曜日

期待はずれ? ―― LCROSS の月面突入 (続報)

昨日付「意外な結末? ―― LCROSS の月面突入」の続報です。セントール・ロケットと LCROSS の月面衝突では、月面物質の塵の雲は舞い上がらず、衝突予定時刻に衝突想定地点にポツッと小さな光の点が現れただけに終わりました。壮大な打ち上げ花火を期待していたのに、実際は湿った線香花火だったようなものです。期待されたような塵の雲が発生しなかったことについて、失望感と不満が渦巻いています。児童や学童が夜遅くまで寒い屋外で寝袋にくるまって衝突の瞬間を見守った(写真)のですから、その反動も大きいようです。

報道記事の中にも、NASA に対する皮肉や非難が現れるようになってきました:
記事の中には次のようなことも書かれています:
Note to NASA: Next time you spend $79 million on a space mission, scraping together bargains from Northrop Grumman's discount shelves, set aside a few million for a scriptwriter and better-than-B-movie production crew.

NASA への覚え書き: つぎの宇宙ミッションで(今回のように)ノースロップ・グラマン社の安売り特売品を(月に衝突させて)スクラップにするのに 7900万ドルも使うときには、そのうちの数百万ドルを留保して、脚本家と B 級よりはましな映画プロダクションのスタッフを雇うことに使うことだ。
以下の記事は、LCROSS の月面衝突の翌日に NASA が開いた記者会見の様子を伝えています:
会見の中で、7900万ドルをかけたミッションの目的は、月の南極付近で月面物質の塵の雲を巻き上げて、その中に水や氷の痕跡がないか調べることであったのに、塵の雲は発生せず失望していると質問者が発言したのに対して、NASA の担当者は次のように答えています:
ここ数日間、記者の皆さんはわれわれが「月を爆撃する」と書き立て、興奮しすぎであったように思います。(衝突の際に)実際にわれわれが目撃したことは、われわれが事前に議論し、実験室で実験していた想定の範囲内でした。
さらに、期待されたような塵の雲が発生しなかった原因について、研究責任者がいくつかの仮説を披瀝していますが、その中の一つは次のようなものです:
セントール・ロケットと LCROSS 本体が、衝突地点の物質を上方ではなく横方向に放出するような角度でクレーターの内壁に衝突したからかも知れない。
NASA は、観測装置は想定以上に良好に働き十分なデータが取れたので、さまざまな疑問への答はいずれ出されると述べています。

大衆の期待するような見栄えのする結果が得られなかったからといって、性急に研究者や研究機関を非難するのは間違っていると私は思います。研究に対する無用の圧力を生み、研究者を萎縮させることになりかねません。納税者として一言言いたいという気持ちは、わからないでもありませんが。