LCROSS(Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)から切り離されていたセントール・ロケットが、日本時間の昨晩8時半過ぎ、月の南極付近にあるカベウス・クレーターに高速で衝突しました。さらに、その数分後に LCROSS 本体も後を追うようにして月面に衝突しました。LCROSS 本体は、先行するセントール・ロケットの衝突を至近距離から観測し、データを地球に送ってきました。月面には 2つの衝突クレーターができたとのことです:
日本では、ちょうど月が東の地平線から昇ってくる時刻に当たったため、観測はできなかったと思われます。
多くの研究者や天文ファンが見守っていた衝突ですが、予想されたいたような強い閃光や塵の雲が発生せず、意外と受け止める人が多いようです:
- Probe Smashed into Moon Fails to Kick Up Cloud of Debris (アメリカン・クロニクル)
- Moon Impact: NASA Plays Down Lack of Fireworks (サイエンス)
LCROSS プロジェクトの科学者たちでさえ塵の噴出を観測できなかった。LCROSS の研究責任者でカリフォルニア州マウンテン・ビューにある NASA のエイムズ研究センターに勤める Anthony Colaprete 氏は「私自身は必ずしも驚いているというわけではない」と語っている。(LCROSS のような)探査では「どのようなことが起きるか、やってみるまでわからない。われわれは、さらにきめの細かい調査に立ち戻るだけだ」。Colaprete 氏の容易にくじけない楽観主義は、衝突地点周辺で検出された注目すべきスペクトルの変化に基づいている。はたして月面の地下に大量の水(氷)が存在するのか否か。今回の LCROSS の衝突によって得られた結果は、12月に開かれる米国地球物理学連合(AGU)の会合まで公表されることはないとのことです。
実は、Colaprete 氏は、同僚たちに塵の雲が発生しないかも知れないという可能性について(事前に)警告していた。「衝突によるクレーターの形成というのは、実証されていない、非常に予測が困難な科学の分野だ」と、彼は 3月におこなわれた月と惑星の科学に関する学会で聴衆に対して述べている。LCROSS チームで衝突のモデリングを担当している研究者たちは、単純な球形ではなく円柱形で、かつ中身が詰まっているわけではなく内部に空洞の多い LCROSS 衝突体のような物体の衝突をシミュレートすることに悪戦苦闘していた。さらに加えて、LCROSS が、形状や組成の判明していない未知の表面に突入することも、困難さを増す要因となっていた。(中略) たとえば、奇妙な観測されていない岩塊が突入地点にあったとすると、衝突によって発生する塵のほとんどを上空ではなく、クレーターの壁に向かって吹き飛ばすこともありうる。
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