東北大学の研究結果です。プレート境界で起きる大地震についての研究は、沈み込む海洋プレート(スラブ)の上面と、陸側プレート(上盤側)の下面の相互関係に着目したものがほとんどでしたが、今回の研究は沈み込むスラブの下側の構造と巨大地震との関係に関するものです:
大略以下のような内容です:
- 地震波トモグラフィー法を用いて、これまでにM9.0以上の巨大地震が起きた、日本列島を含む世界の6つの沈み込み帯の地下の詳細な3次元地震波速度構造を調べた。
- 沈み込んでいる海洋プレート(スラブ)下のマントルに、P波速度の遅い(低速度)異常体(SLVA)が存在することが明らかになった。このSLVAは、熱いマントル上昇流を反映している。
- 巨大地震の震源(つまり、破壊の開始点)はSLVAの端部や複数のSLVAの間(SLVAギャップ)の真上に位置する。
- 巨大地震の地震時すべり(つまり、破壊の範囲)は主にSLVAギャップの真上に分布する。
- SLVAとSLVAギャップの浮力の違いが巨大地震発生の一因となる。
- 巨大地震の発生には、スラブ上面付近や上盤プレートの構造と応力場だけでなく、スラブ下の不均質構造も影響を及ぼすと推定できる。
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