2015年12月30日水曜日
バルカンのノストラダムス ― 盲目の女性予言者 (その2)
12月17日付「バルカンのノストラダムス ― 盲目の女性予言者 (その1)」からの続きです。
バーバ・バンガはその50年を越える予言者としてのキャリアで数百の予言をし、その的中率は85%と言われています。自然や気候変動がもたらす災害についての予言も多く、驚かされるのは1950年代にすでに極地の氷の融解や海水温の上昇を予言していることです。地球温暖化が喧しく取りざたされるようになるのは、それから数十年後のことです。
「読み書きの出来ない田舎娘」がどのようにして“supernatural saint”(超自然の聖者)あるいは“apocalyptic angel”(啓示をもたらす天使)と呼ばれるに至ったのか。記事には彼女の略歴が書かれています。
バーバ・バンガが生まれたのはオスマン帝国(トルコ帝国)の支配下にあったストルミツァ地方(地図)。ストルミツァは現在マケドニア共和国に含まれていますが、記事の別の箇所にはブルガリア生まれ(“Bulgaria-born”)との記述もあります。
普通の生活を送っていた彼女の生活が一変したのは12歳の時です。大嵐(あるいは異常なつむじ風とも)に巻き上げられ地面にたたきつけられました。数日後に家族が瀕死の状態の彼女を見つけたときには、彼女の目は傷つき、分厚い塵やほこりでふさがれていました。貧しいために専門医の治療を受けることができず、彼女は盲目の生涯を送ることになります。
本人が後日語ったところによると、行方不明になっている間に最初のビジョンが見え、人々を癒やす能力と未来を見通す能力を授かったことを悟ったということです。
バーバ・バンガの超自然的な力を信じる人は急速に増え、信奉者の集団が形成されるようになります。彼女は金持ちや権力者や崇拝者たちから頼りにされるサイキック(霊能者)となり、数分間の面会を求めて世界中から彼女の元にやってくる人々の中には国家元首、科学者、歴史学者なども含まれていたとのことです。後には、ブルガリア共産党の指導者たちのアドバイザーも勤めるようになったのですが、彼女の予言を自分の政策に利用する者もいたと伝えられています。
そのような状況から、彼女は国家秘密警察の監視下に置かれるようになり、多くの外国の政治家やビジネスマンが訪れる彼女の自宅は盗聴されていたということです。
(続く)