3月 5日、アメリカ空軍が開発中のスペース・プレーン X-37B の 2号機が、フロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げられ軌道にのりました。悪天候による落雷を避けるため、当初の予定より 1日遅れの打ち上げとなりました:
- X-37B thunders off the pad on its way to orbit
- 2nd Boeing-built Orbital Test Vehicle X-37B Begins Flight
X-37B は 270日間宇宙にとどまる能力があると発表されていますが、1号機の飛行が順調だったためか、空軍の幹部は 2号機がそれ以上の期間飛行を継続する可能性を示唆しています。
空軍は依然として X-37B の使用目的を明らかにしていません。多くの専門家は、敵状の偵察が目的であろうという点で一致していますが、以下のような記事も出ています:
- The Air Force shuttle's secret mission: 5 theories (空軍のシャトルの秘密の使命: 5つの説)
5つの説とは次のようなものです:
- 偵察衛星のテストあるいは打ち上げ
- 敵国の衛星の除去 ・・・ スプレー式の塗料を使って
- “Rods from God” を敵地の目標に向かって投下する
- われわれが想像だにしない何か
- まったく何もしない
「2」 について: 黒色の塗料を敵の衛星に吹き付けると、その衛星は短時間でオーバーヒートし機能停止するのだそうです。衛星を物理的に破壊するのとは違って、単純な故障にしか見えないところがミソだそうです。
「3」 は、“Rods from God” (神の投げ降ろす棹) と呼ばれるタングステン製の棒を宇宙から投下することによって、地下深くに建造された敵の基地を破壊するシナリオです。実現すれば地下に基地や核兵器製造施設を持っているとされる北朝鮮や、洞窟に潜伏しているアフガニスタンのタリバン勢力にとっては大きな脅威となることでしょう。
「4」 について: 「1」・「2」・「3」などの目的は、再使用可能なスペース・プレーンよりも、もっと単純な在来の衛星の方がうまく、かつ低コストで実行できるという考えから発しています。宇宙空間から何らかの物を回収するにしても、単純なカプセルとパラシュートで十分。そして、そのような 1度のミッションにしか使えない「使い捨て」の装備の方が建造費がはるかに安く上がる。X-37B のように帰りの燃料を積み込んで軌道まで上がり、自動操縦で地球に帰還する再使用可能な宇宙船が必要だとは考えられない。だから、われわれ部外者が想像できないような目的があるに違いない、という説です。
「5」 は「4」の延長線上にある考えと言ってよいかも知れません。専門家は 「スペース・プレーンでなければ達成できないようなミッションを見いだすのは困難だ。宇宙兵器も、地上に配備するわれわれのテクノロジーに比べれば実用的価値に乏しい」、「要するに、シャトルのユニークな能力は軌道から地上に帰還できることだけだ」、「ペンタゴン(アメリカ国防総省)は、高価でありながら役に立たないと知りつつ、何十億ドルもの予算をスペース・プレーンのコンセプトを生き延びさせるためだけに使っているのではないか」と語っています。
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