2020年6月29日月曜日

イエローストーンの隆起と間欠泉


イエローストーン国立公園内のノリス間欠泉盆地(Norris Geyser Basin、地図)にあるスティームボート間欠泉(Steamboat Geyer)は、世界で最も高くまで熱水を吹き上げることで有名ですが、その噴出間隔が不規則なことでも知られています。

このブログでは、2018年3月にスティームボート間欠泉が 1289日(約3年半)ぶりに噴出を再開して以来、その活動を記事にしていますが()、長期間の休止を含む不規則な熱水噴出のメカニズムはよくわかっていません。

以下に紹介するのは、米国地質調査所(USGS)に所属する4人の研究者が連名で今年1月に発表した論文で、2018年3月以降のスティームボート間欠泉の記録的な噴出数は、イエローストーンの地下にマグマが貫入したことと、その結果として生じた隆起現象に関係していると指摘しています。貫入したマグマから放出された流体によってノリス間欠泉盆地付近を中心とした領域が隆起し、それに伴って間欠泉の活動が活発になっている、ということのようです:

以下は論文の要旨(Abstract)のテキトー訳です:
最近の(イエローストーンの)活動は、40 年以上前にカルデラ床の隆起が発見されて以来続いてきたイエローストーン・カルデラ内部およびその周辺の地表変動の原因についての議論に新たな洞察を与えている。

2013年後半にカルデラ北縁のノリス間欠泉盆地付近を中心とした異常に急速な隆起(15cm/年以上)が始まり、2014年3月30日に Mw4.9 の地震が発生するまで続いたが、その後、隆起は急速に沈降に転じた。2016年に年間数センチメートルの隆起が再び始まり、少なくとも2018年末まで続いた。

全地球測位システム(GPS)と干渉合成開口レーダーのデータを用いたモデル化は、1996年から2001年の間に深部へのマグマの貫入が進行し、その後、(マグマに由来する)揮発性物質の上昇と蓄積が浅い場所、おそらく数百メートル程度の浅さ、で続いたことを示唆している。

揮発性物質が蓄積している場所の深さは、2014年から2016年にかけての地殻変動のころから浅くなっているように見え、2018年3月に復活したスティームボート間欠泉(Steamboat Geyer)の頻繁な噴出は、この進行中のプロセスが地表に現れたものである可能性が高い

熱水爆発を起こしうる地物(features)はノリス間欠泉盆地の地域で顕著であり、揮発性物質が明らかに浅い場所に蓄積しているということは熱水爆発のリスクの増大を意味している。

マグマに含まれる「揮発性物質」の代表は水分(水蒸気)です。


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