「夜空ノムコウ ― 40億年後 (その1)」の続きです。
5月31日のNASAの発表には、非常に美しいイラストが多数添付されています。
▼ 現在の夜空 ― 天の川の左側に見えている紡錘形の光の塊がアンドロメダ銀河。約250万光年のかなたにあり、見かけ上の直径は満月の数倍で、肉眼でかろうじて見える明るさです:
▼ 20億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河が大きく見えるようになっています:
▼ 37億5千万年後の夜空 ― アンドロメダ銀河が視野のほとんどを占めるようになり、天の川はアンドロメダ銀河の潮汐力によってゆがみ始めています:
▼ 38億5千万年から39億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河接近の衝撃によって新しい恒星の形成が促進され、夜空は多数の星雲や若い恒星からなる散開星団の発する光で輝いています:
- Nighttime Sky View of Future Galaxy Merger: 3.85-3.9 Billion Years
- Nighttime Sky View of Future Galaxy Merger: 3.85-3.9 Billion Years
▼ 40億年後の夜空 ― 最初の接近の後、アンドロメダ銀河は潮汐力によって引き延ばされ、天の川は大きくゆがんでいます。こういう星空のもとで人類が進化したとしたら、いったいどのような神話が生まれていたでしょうか:
▼ 51億年後の夜空 ― 2度目の接近の最中、われわれの銀河系とアンドロメダ銀河の中心部分(コア、核)が2つの明るい塊として見えています。新しい恒星を形成する星雲は目立たなくなっていますが、それはこれまでの恒星の形成によって恒星間のガスや塵が減少しているためです:
▼ 70億年後の夜空 ― アンドロメダ銀河とわれわれの銀河系は融合して一つの巨大な楕円銀河となり、その明るい中心部分(コア、核)が夜空のほとんどを占めています。この楕円銀河では、すでに恒星間のガスや塵が使い尽くされているため、新たな恒星は形成されず、星雲も夜空には見当たらなくなっています。楕円銀河を構成する年老いた恒星は、渦巻き銀河に見られるような回転円盤上に集まることはなく、楕円体の空間を満たすだけです:
▼ アンドロメダ銀河の移動を計測 ― このイラストは、研究チームがハッブル宇宙望遠鏡を向けたアンドロメダ銀河の領域を示しています。アンドロメダ銀河が宇宙空間を移動するとき、この領域内の星は背後にある銀河(複数)に対してそろって移動するように観測されるはずです:
▼ アンドロメダ銀河とわれわれの銀河系の衝突シナリオ ― 2つの銀河は相互の重力によって約40億年後に衝突することが不可避です。さんかく座銀河もこの衝突に巻き込まれます:
▼ 銀河衝突後の太陽の運命 ― 現在の銀河系と、アンドロメダ銀河との融合が完了した後(現在から100億年後)の楕円銀河の大きさを比較した図です。両者には太陽の軌道が描き込まれています。現在の太陽は銀河系の円盤内を周回していますが、アンドロメダ銀河との融合後は、楕円銀河の中心部と周縁部を行き来するループ上の軌道に放り込まれると考えられています:
NASAによれば、アンドロメダ銀河と銀河系の衝突・融合後も、太陽や地球は存続しているだろうとのことですが、そのころには太陽は燃料をあらかた使い尽くして赤色巨星化の兆候を見せていることでしょう。人類は銀河の衝突が起きるはるか以前に絶滅していると思います。仮に人類の系統が存続しているとしても、想像もつかない姿に変容していることでしょう。銀河衝突の夜空を「だれが」、あるいは「何が」見上げることになるのでしょうか。
(完)
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