金曜日の『朝日新聞』朝刊には、「ボイジャー太陽系脱出」、「人工物で初」という見出しが躍っていましたが、ボイジャーと同じように将来は太陽系を離脱することになるNASAの冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」が、これまで探査機が近づいたことのない冥王星に向かって飛行中です。
日本時間9月14日18時00分には、地球から26.96天文単位(約40億km)、冥王星まで5.33天文単位(約8億km)のところに到達しています。
ニュー・ホライズンズや各惑星の現在位置 (クリックで拡大) この尺度では地球の公転軌道が非常に小さいことに注目してください。 Image Credit: Analytical Graphics, Inc., NASA |
ニュー・ホライズンズが冥王星に最も接近するのは2015年7月14日前後です。この時、ニュー・ホライズンズは冥王星から1万km、衛星カロンから2万7000kmのところを秒速14km(時速約5万km)という猛スピードで通過します。約700億円(プロジェクト全体の予算)の巨費を投じ、2006年1月の打ち上げから9年半ほどを費やしてやっと冥王星のところまでたどり着いたと思ったら、挨拶もそこそこにサヨナラです。もちろん、最接近の数ヶ月前から数ヶ月後まで冥王星を観測をしますし、カイパーベルトの調査もするのですが、なんだかもったいない気がします。
できれば冥王星の周りを回って、長期間、至近距離からの観測をしたいところですが、冥王星に到達するまでの猛スピードを減殺して周回軌道に投入するだけの燃料を積む余裕がありませんでした。
ニュー・ホライズンズは太陽から遠く離れた場所で観測をおこなうため、太陽電池は使えません。そこで、電力源としてRTG(radioisotope thermoelectric generator: 放射性同位元素熱電発電機)が搭載されています。RTGは放射性同位元素の自然崩壊にともなって発生する熱を利用して発電しますが、ニュー・ホライズンズのRTGには 11kg の二酸化プルトニウム(含有するプルトニウムのほとんどは核兵器に転用できないプルトニウム238)が封入されています。
RTGは、打ち上げ時には240ワットの出力がありますが、年率約3.5ワットで出力が低下するので、ニュー・ホライズンズが冥王星に到達するころには200ワットに下がっています。ほぼ同じ率で出力が低下するので、冥王星を通過後も数十年間は地球に観測データを送り続けることができます。ボイジャー1号・2号、パイオニア1号・2号に続いて太陽系外縁部や恒星間空間の貴重な情報を伝えてくれることでしょう。
ニュー・ホライズンズの詳しい情報は以下に載っています:
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