11月9日に打ち上げられ、火星の衛星フォボスの表面物質を地球に持ち帰る予定だったロシアの探査機〝フォボス-グルント〟(Phobos-Grunt)は、火星への惑星間飛行軌道にのるためのロケット・エンジンが点火せず、地球低軌道を周回し続けています。ロシアは修復・再起動を試みていますが、通信が回復しないまま時間が経過しています。まもなく探査機に搭載されているバッテリーが尽きるため、修復も絶望となります:
- Toxic Russian Mars Probe Likely Heading Back to Earth (有毒なロシアの火星探査機は地球に戻ってくる見込み)
フォボス-グルントには、科学調査に使うための少量の放射性物質コバルト-57も搭載されています。
ロシアのメディアは、「史上最も有毒な衛星の落下」と伝えているとのこと。
フォボス-グルントは低い軌道を周回しているため大気の抵抗を受けやすく、このままロケットの点火ができない状態が続くと、11月末か12月初めに大気圏に突入すると考えられています。NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)は11月26日に大気圏に突入すると報告しています。
9月にはアメリカの UARS(6トン)、10月にはドイツの ROSAT(2.6トン)が大気圏突入していますので、フォボスーグルント(13トン)が11月中に大気圏突入すれば、大型衛星の落下が3ヵ月連続することになります。これまでの2回は、いずれも海に落下して被害はありませんでしたが、3度目の正直ということがあるかも知れません。
フォボス-グルントが落下する可能性があるのは、北緯51.4度から南緯51.4度の範囲です。日本も全域がこの範囲に入っています。
フォボス-グルントの現在位置は、以下のページの図で確認できます:
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