『理科年表』(丸善書店)所載の 「日本のおもな火山に関する噴火記録」 と 「日本付近のおもな被害地震年代表」を使って、霧島山の噴火と時間的・地理的に接近して発生した被害地震の対応表を作ってみました。
「日本のおもな火山に関する噴火記録」 には、霧島山の噴火が西暦 742年(天平 14年)以降 44回記載されています。各噴火記録は、噴火場所について「高千穂峡お鉢火口」、「新燃岳山頂火口」、「その他の地点、または噴火地点不明」が区別されているのですが、以下の表ではそれらを区別せずに扱っています。
霧島山の噴火は、フィリピン海プレートの移動方向から考えて日向灘で起きる地震と関連があるように思っていたのですが、実際に表を作ってみると、そのようなケースは予想外に少ないことがわかりました。多かったのは、大分県・熊本県・鹿児島県で、霧島山の噴火と相前後して発生するか、噴火から数年以内に発生する被害地震でした。
霧島山の噴火年 | 地震 |
---|---|
1596 | 1596 豊後 M7.0 高崎山など崩れ、八幡村柞原八幡社拝殿など倒壊。海水が引いた後、大津波が襲来し、別府湾沿岸で被害。大分などで家屋ほとんど流失。「瓜生島」(大分の北にあった沖ノ浜とされる)の 80% 陥没し、死 708 という。 |
1598-1600 | 1605 『慶長地震』 M7.9+M7.9 東海・南海・西海諸道 |
1617-18 | 1619 肥後八代 M6.0 麦島城はじめ公私の家屋が破壊した。 |
― | 1703 豊後 M6.5 府内(大分)山奥 22ヵ村で潰家 273、破損 369、死 1。湯布院筋・大分領で農家 580軒潰れる。豊後頭無村(現日出町豊岡)で人家崩れ、人馬の死があった。 1705 阿蘇付近 (M 不明) 阿蘇で坊の大破や崩れがあったという。岡城で被害があったという。 |
1706 | 1707 『宝永地震』 M8.6 |
1768 | 1768 琉球 (M 不明) 王城などの石垣が崩れた。津波が来て、慶良間島で田園と民家 9戸を損じた。 1769 日向・豊後・肥後 M7¾ 延岡城・大分城で被害多く、寺社・町屋の破損が多かった。熊本領内でも被害が多く、宇和島で強く感じた。津波があった。 |
1771-72 | 1771 八重山・宮古両群島 M7.4 『八重山地震津波』 津波による被害が大きく、石垣島が特にひどかった。全体で家屋流失 2千余、溺死約 1万2千。 |
1880 | 1882 高知市付近 (M 不明) 市中で壁が落ち、板塀が倒れ、石灯籠の頭が落ちるなどの被害があった。 |
1888-89 | 1889 熊本県西部 M6.3 熊本市を中心に半径約 20km の範囲に被害があり、県全体で全潰 239、死 20。橋の落下や破損が多かった。 |
1891 | 1893 鹿児島県南部 M5.3 知覧村付近で強く、家屋・土蔵・石垣・堤防など破損。近くの村々でも被害。倒家 2。 |
1896-97 | 1899 宮崎県沖 M7.1+M6.9 |
1903 | 1905 安芸灘 『芸予地震』 M7¼ 広島・呉・松山付近で被害が大きく (中略) 1903年以来、この近くで地震が多かった。 |
1913-14 | 1913 鹿児島県西部 M5.7+M5.9 1914 鹿児島県中部 『桜島地震』 M7.1 桜島の噴火で発生した地震。鹿児島市で住家全倒 39、死 13、鹿児島郡で死 22余。小津波があった。 |
1959 | 1961 日向灘 M7.0 宮崎・鹿児島両県で死 2、建物全壊 3。九州から中部の沿岸に津波。 |
― | 1968 えびの地震 M6.1 『1968年 日向灘地震』 M7.5 |
1971 | 1975 熊本県阿蘇地方 M6.1 阿蘇外輪山内にある一の宮町三野地区に被害が集中した。 1975 大分県西部 M6.4 |
上の表について注意して頂きたいのは、記載した霧島山の噴火と被害地震の間に因果関係があるのかはわからない、という点です。偶然に、時間的・地理的に接近して発生しただけかも知れません。また、『理科年表』に記載されている 44回の噴火のうち、上の表に入っているのは 14回だけです。それ以外の噴火については、時間的・地理的に接近して発生した被害地震は見あたりませんでした。その点についても留意してください。
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