小惑星帯探査機ドーン(Dawn = 暁、黎明)が準惑星ケレスの周回軌道に入ったとNASAが発表したのは3月6日のことです:
March 6, 2015 ―― NASA's Dawn spacecraft has become the first mission to achieve orbit around a dwarf planet. The spacecraft was approximately 38,000 miles (61,000 kilometers) from Ceres when it was captured by the dwarf planet's gravity at about 4:39 a.m. PST (7:39 a.m. EST) Friday.
(〝NASA Spacecraft Becomes First to Orbit a Dwarf Planet〟より)
それから1ヶ月になろうとしている現在まで、ケレスの新しい近接画像は公開されていません。最後に公開されたのは2月19日に撮影されたものです:
- 準惑星ケレスに謎の輝点 (15年2月26日)
NASAはなぜ新しい画像を公開しないのか。何か変だ、ケレスの表面に何か公表できないものが見つかったので、画像の公開を差し止めているのではないか、という憶測が広がりつつあります。
しかし、真相は別のところにあるようです。この時期にケレスを撮影しても公開に値するような画像にならないからというのが理由なのだそうです。ケレスに接近した際のドーンの軌道を描いた以下の動画をご覧ください。画面右上に表示されている日付にも注意してください:
- Dawn Ceres Trajectory (YuoTube動画)
ドーンはイオン・エンジンを搭載しています。イオン・エンジンは、通常のロケット・エンジンに比べて推力が非常に弱いかわりに、少ない燃料で長時間運転できるという特徴を持っています。このようなエンジンを使ってケレスの周回軌道に入るには、長い時間がかかります。
上の動画を見ると、現在、ドーンはケレスの重力に捉えられたとはいえ、まだケレスから遠いところ(「謎の輝点」を撮影した時よりも遠い)を飛行中です。さらに、ドーンから見えるのはケレスの夜の側ですから、画像があったとしてもその表面の様子はわからないと考えられます。
ケレスの高解像度の画像が得られるようになるのは、ドーンがケレスの昼の側に回り込むようになる4月中旬以降になります。
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