2009年2月13日金曜日

衛星衝突

昨日の投稿「シンクロニシティ?」で触れた米・露の人工衛星衝突ですが、様々な反応が出てきています。まず、アメリカ側の衛星を所有しているイリジウム社が出したプレス・リリースですが、アメリカの企業にしては Web での反応がずいぶん遅いという印象です:
上記のリリースを要約すると次のとおりです:
  • 運用中のイリジウム衛星群 66機のうち、1機が失われた。衛星やデブリを追跡している米国政府機関(複数)から得た情報によると、衛星の損失は、すでに使われなくなっていたロシアの衛星との衝突の結果発生したと考えられる。
  • 今回の出来事は、イリジウムのサービスには最小限の影響しか及ぼさないが、イリジウム社は衛星損失による影響に対処する作業にただちに取りかかっている。
  • イリジウムの衛星群は健全な状態を保っており、今回の出来事はイリジウム社側の怠慢やそのテクノロジーの不具合によって生じたものではない。
  • 今回の衝突は、非常にまれで極めて低確率の出来事ではあるが、イリジウムの衛星群はこのような出来事に対応できるように設計されている。イリジウム社は、すでに軌道上にある予備の衛星(複数)のうちの 1機を、失われた衛星の替わりにするための作業に着手している。
  • イリジウム社は、66機の衛星プラス複数の予備衛星からなる世界最大の商用衛星群を運用している。今回の衛星損失によるイリジウム社のお客様への影響としては、短時間の通信中断という非常に限定的なサービス障害がおこる可能性がある。イリジウム社としては、2月13日までにはネットワーク上の解決策を実施できると考えている。さらに、予備待機中の衛星を移動させて、今後 30日以内に失われた衛星の恒久的代替とすることを目指している。
イリジウム社側に瑕疵はないと言っています。

一方、ロシア側の反応も徐々に出てきています。昨日、私もこのブログに書いたように、イリジウム側に衝突を回避する機会があったのではないか、との疑問が出ています:
以下に代表的な反応を紹介します。

ロシアの著名な宇宙専門家 Igor Lisov 氏:
なぜ、デブリ(破片、残骸、宇宙ゴミ)を追跡している NASA の専門家やイリジウム社が衝突を回避することができなかったのか、理解に苦しむ。イリジウムの衛星は稼働中で、軌道を調整することができたはずだ。コンピューター(プログラム)の不具合か、人為的なミスが原因かも知れない。あるいは、小さなデブリにばかり注意を払っていて、(大きな)機能停止状態の衛星には気づかなかったのかも知れない。

今回の衝突で新たに発生したデブリは、類似の軌道を回っている地球観測衛星や気象衛星の多くに危険を及ぼす。近い軌道には非常に多くの衛星が存在している。残った 65機のイリジウム衛星も類似の軌道をとっており、非常に深刻な危険に直面する。衝突によって発生した破片は、さらなる衝突を引き起こし、衝突の連鎖反応が起こりかねない。

より高い軌道には、旧ソビエト連邦が打ち上げた原子力をエネルギー源とした衛星(複数)が、長期間使われないまま地球を回っている。それらの衛星は衝突に対して脆弱である。今回の衝突で発生したデブリがそれらの一つに衝突したとしたら、放射性降下物が地球に危険をもたらすことはないが、飛び散った破片がさらに多くの衛星に害を及ぼす。
ロシア国防省広報官 Yuri Ivanov 氏:
高度約 800kmの軌道は「ジャンク・オービット」(廃品軌道)と呼ばれ、さまざまな国の機能停止した衛星が集まっている。今回の事件は、アメリカの衛星がこのジャンク・オービットに誤って突入したことによっておこったと推定している。
まるで「廃車置き場に突っ込んできて衝突したあげくに、車が壊れたと文句を言われてもねェ」と言っているようです。

以下のページに、今回の衝突と、その後の破片拡散の様子を示す動画があります(動画の冒頭にコマーシャルが入ることがあります)。2つの衛星の軌道がほぼ直交していることがわかります。互いに相手の側面に突っ込む形の衝突だったようです: