USGS(米国地質調査所)に長年務め、現在はアリゾナ大学で研究を続ける地質学者の Eric Force 氏が面白い研究結果を 『Geoarchaeology』(地質考古学)誌に発表しています。ひとことで言うと、「地質学的に不活発な地域よりも、プレート境界の地震多発地帯に偉大な古代文明は誕生しやすい」という内容です:
以下は、記事の要旨です:
- プレート境界と古代文明の相関は、地震などの破壊的と見なされる自然の力が、実は人類の歴史で建設的な役割を果たしてきたことを示している。
- 15の古代文明のうち 13はプレート境界にある。地震、津波、火山噴火などの脅威があるにもかかわらず、そのほとんどはプレート境界から 75km以内。プレート境界に位置する文明の例は、ローマ、コリント、ミケーネ、エルサレム、ウル(イラク)、ハスティナプラ(インド)など。例外はメンフィス(エジプト)と鄭州(チョンチョウ、中国・河南省の省都。黄河文明発祥地域内の交通の要衝)。
- プレート境界から離れているほど、文明は長期間継続する傾向がある。これは、直面する自然災害が少ないためと考えられる。
- プレート境界が初期の文明の成長を促進したこと説明する理論はいろいろ考えられる。たとえば、プレート境界は十分な水を得やすい、火山は肥沃な土壌の形成を助ける、などなど。
- Force 氏自身は、心理学的な説明を好む ―― 年長者は子供たちに対して(プレート境界がもたらす)多くのリスクや変化に備えるよう言い聞かせる。次の世代は前の世代よりさらに優れた耐震性をもった建築物を造り、より良い食糧の貯蔵法を編み出す。
- イギリス・ヨーク大学の考古学者 Geoff Bailey 氏 も賛意。あるレベルの地質学的不安定さは、そのような地域に存在する社会に組織だった対策を否応なく要求する。社会発展についての「challenge-and-response」理論の一種。
- アフリカにおける初期人類の進化も、気候変動のような要因だけではなく、同様のテクトニックな挑戦によって促進されたと考えられる。
15の古代文明あるいは都市をどのような基準で選んだのか、いま一つはっきりしていません。選択基準によっては、違った結論となったかもしれないと思います。
(写真はマヤ文明のピラミッドです。記事とは直接関係ありません。)