40年前の1977年9月5日に打ち上げられたボイジャー1号は、NASAの宇宙機の中では最も高速で最も遠くに到達し、現在、恒星間空間を飛行中の唯一の人工物となっています(NASA's farthest and fastest spacecraft, is the only human-made object in interstellar space, the environment between the stars.)。
このボイジャー1号が11月28日、軌道修正用のロケット・エンジンを1980年11月8日以来37年ぶりに噴射しました:
37年ぶりにロケットを噴射したわけはこうです。ボイジャーには姿勢制御用のロケットと軌道修正用のロケットが搭載されています。前者は10ミリ秒単位の短い噴射をおこなって通信用のアンテナを地球の方向に向けるため、後者はもっと長い時間噴射を続けて飛行軌道を変更するために使われます。ボイジャー1号では、2014年ごろから姿勢制御用ロケットの劣化が目立ち始め、必要な姿勢変更をするために何度も噴射を繰り返さねばならなくなっていました。この問題を解決してボイジャー1号の運用寿命を延ばすために、軌道修正用のロケットで代替することが試みられることになったのです。
車庫の中に何十年も放置されていた自動車のエンジンがすぐにかかるなんて誰も期待しない、とNASAの記事は書いています。ボイジャーの管制チームは何十年も前のデータやアセンブラー言語で書かれた古いプログラムを捜し集めて、軌道変更用ロケットの噴射が安全であることを確認したそうです。
11月28日に軌道修正用ロケットの噴射がおこなわれましたが、噴射成功が確認されたのは翌29日。ボイジャー1号から地球まで電波が届くのに19時間35分を要したからです。
計画では、姿勢制御用のロケットを軌道修正用のロケットに切り替えるのは来年1月から。ただし、軌道修正用ロケットは使用に際してヒーターで加熱する必要があるため、ヒーターに使用するエネルギーが不足するようになったら、再び姿勢制御用ロケットに切り替えて運用することになるとのことです。
ボイジャーの管制チームでは、今回の処置でボイジャー1号の運用寿命が2年から3年程度延びるとみています。
なお、ボイジャー2号の姿勢制御用ロケットには1号ほどの劣化は起きていないとのことです。
以下のページにはボイジャー1号の現在位置を示す図や表があります。同機は「へびつかい座」の方向に飛行中です:
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